魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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始まりの時間
黒崎 玄人の日常


何事にも『始まり』はある。

 

先が見えない旅路にも、初めに『始まり』はあった。

 

『終わり』を望む者よ…。

 

全ての『終わり』を望みたくば───。

 

 

 

汝、己の記憶を掘り起こし『始まり』の記憶を望みたもう……。

 

 

 

 

 

 

 

───ザ…ザァァァ────

 

見渡す限り砂、岩の柱に彼らはいた。

一方は数百人もの軍勢で皆、刀や苦無を身に固め武装し、額には『忍』と書かれた額当てを…。

 

もう一方は、鎧を身に付け、肌の色に生気の無い。

そして髪は長く右眼が隠れて覗く左眼のみが、瞳に不思議な幾何学模様を描いて、

紅玉の如く、紅く輝いていた。

 

 

『奴の写輪眼には気を付けろォ!!』

 

 

誰かがそう言い、紅眼の男が歩き……歩く速度を上げ、徐々に走り出す。

それを見た軍勢の方も、対向するように走り出し、男に向かって突撃して行った。

 

両者が衝突し、先に噴き吹き飛んだのは─────軍勢の方だ。

紅眼の男は、相手の攻撃を先読みするかのように先回りし、攻撃を避け、体術で的確に急所を破壊してゆく。

 

時には武器を奪い、武器が耐えきれず折れると、倒した相手の武器を使って斬り倒す。

そんな男の猛攻に、果敢にも斬り掛かろうとした者もいたが……

 

 

───キュィン───

 

『う、うぁぁ…』

 

男と眼を合わせた途端、蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなってしまった。

 

そして、男は次の軍勢に眼を向け、纏めて排除すべく走り出し────

 

 

 

メキャッ

 

 

「あだっ!?」

 

 

……中学生位の少年がベッドから落ち、フローリングの床に後頭部を強打していた。

 

 

 

~少年side~

 

 

「いつつ……また、夢かよ。紅眼の忍者とか……中二病か、俺は。……確かに中二年だけど…」

 

俺の名前は黒崎 玄人。この近代化してきた見滝原の見滝原中学の二年生だ。

現在この家にしていて両親も居るには居るが、現在は二人とも海外出張でイタリアに行っている。

 

「にしても、ここ最近、あんなんばっかだな。

この前は巨大牛ダコと人間で、しかも人間が勝ったし…無茶苦茶だな」

 

そう言いながら欠伸と背伸びをし、眠気を覚まして時計を確認すると…

 

───AM7:25───

 

「あっヤバッ! 詢子さんに怒られる、支度しねーとっ!!」

 

思ったより時間の無くて焦った俺は、歯を磨き、制服に着替えてから家の戸締りを確認すると急ぎ、隣の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす」

 

「やぁ、クロト君おはよ。朝御飯出来てるよ」

 

「あっ知久さん おはようございます。」

 

この人は鹿目知久さん。

家事、菜園、料理など、見ての通り主夫で、意外にもハンティングが得意。

しかし時たま天然が入ってる。おまけに外見年齢が二十代前半で止まって、ちょっと不老な人だ。

 

軽い挨拶を交わし、玄関から上げてもらってダイニングに入る。

すると中から元気な声が聞こえてきた。

 

「あーっ! くろーオハヨー」

 

「クロ君おはよう。遅かったね?」

 

「やーと来たか。このネボスケ」

 

一番最初、俺に気付いて挨拶してきたこの子は鹿目タツヤ。

鹿目家の癒し的な存在で、いまだ拙い話し方で無邪気。其処がカワイイと近所で評判だ。

俺は親しみを込めて『たっくん』と呼んでいる。

 

二番目の俺を、『クロ君』と呼ぶコイツは鹿目まどか。

産まれた頃からの付き合いで、俗に言う“幼馴染み”という奴だ。

コイツとは昔、それ以上の……やっぱやめた……恥ずい。

まぁ兎に角、ホント優しい性格をした奴で、悪い事は正そうとする…まぁ俗に言う人がいい奴だ。

 

そして最後、俺に寝坊助の烙印を押したこの人は鹿目詢子さん。

とても若々しい美人で、有名企業のキャリアウーマン。

だが、普段はヤンキー口調で酒好き、よく酔い潰れるオッサ──『ギロッ』…お、お姉さまだ。

この人の人生経験談は参考になる事が多く、俺もまどかもよく話を聞いて貰っている。

 

心臓を射抜かれた様なゾクッとするメンチビームを一瞬味わいながらも、俺は余っている椅子に座る。

 

「あはは、スイマセン夢見が悪くて」

 

「ふーん、まぁいいや。時間無いし、さっさと食べちゃいな」

 

「はい…イタダキマス」

 

何故、俺がこの鹿目家でメシを食べているのか。

それは中年に入った頃まで話は遡るが当時、会社の都合上、イタリアに海外出張に行くことになったのだが、俺は日本で友達になった奴と離れたく無かった。

 

だから俺は両親に悪いと思いつつも日本に残りたいと言ったが、生活はどうするんだ? と言われて困っている所に、両親と仲も良かった詢子さんから

『一人暮らしの食生活じゃ健康に悪い。此方で食べな!』

と言われ、鹿目家全員の賛成もあり、こうして毎日ご馳走になっている。

 

……本当にこの人達には頭が上がらない。

今の俺が、こうしていられるのもこの人達のお蔭だ。

第一の両親が、父さんと母さんなのだとしたら、

俺の第二の両親は、知久さんと詢子さんなんだろうな…。

 

 

 

「コーヒーのおかわりは?」

 

「ん、いいや」

 

詢子さんは時計を見て、もう出ないといけないのだろう。

毎朝、鹿目家流の恒例の挨拶。

詢子さんはたっくんと知久さんにキスをし、俺とまどかにハイタッチをして『おしっ!』

と、気合いを入れて仕事に赴く。

 

……俺も行かねぇと…

 

「まどかァ早くしろー。先、行くぞー」

 

「え?──うわっはやっ!? 待ってよぉ」

 

「「いってきまーす」」

 

こうして俺達は、何時の友達のいる集合場所まで急いで走って行くのであった。

 

────────

 

─────

 

───

 

 

「あんた達おそーい」

 

「ごめーんさやかちゃん」

 

「悪いな」

 

腰に手を当てて、ふてくされ気味な顔をして俺達に文句を言うコイツは美樹さやか。

…悪い奴じゃないんだが、猪突猛進気味な性格から気の合わない奴と喧嘩越しになる事が多い。

正義感が強いせいなんだろうが……。

 

あっそうそう補足として、コイツの幼馴染みと俺は小学校以来の親友だ。

「おはようございます。まどかさん、クロト君」

 

「おはよう仁美ちゃん」「オッス待たせたな」

 

「いいえ」

 

次に挨拶をしてきた、おっとりとしたお嬢様風の雰囲気のコイツは志筑仁美。

お嬢様風と言ったが正真正銘のお嬢様だ。

実家はこの街に根を降ろす志筑財閥のご令嬢で、世界的に五本指に入る影響力を持つスーパー企業。

実は、この見滝原の近代的な発展の陰の立役者らしくて、総理も頭が上がらない。

正直、なんで一般人の俺達が友達になれたのかが不思議だ。

 

因みに仁美、結構モテる。

 

 

 

────ッと、まぁこんな感じで挨拶もそこそこに交わし、並んで歩き通学していると…

 

「そう言えば、まどか。お前、夜更かしでもしてんのか?」

 

「え゛? ど、どうして?」

 

「いや、お前先週から授業中、いつも眠そうにしてたからな」

 

「そうだよね。私達と話ていても上の空だったこともあったし」

 

「あら、まどかさん。夜更かしは美容の敵ですわよ?」

 

俺達の追及に、まどかはわたわたと、慌てた様子で…

 

「そ、そんなんじゃないよ! それならクロ君だって最近、眠そうじゃない」

 

……俺に方向転換させようとしやがった…。

 

「……誤魔化したな」

「誤魔化したね」

「誤魔化しましたわね」

 

「はうっ!?」

 

言葉の三段突きを喰らって、よろめくまどか。

そんな言い訳が俺達に通じるとでも思ってんのか?

…しかし、その事にさやかの方はまどかよりも気になったみたいだ。

 

「まぁ、まどかの事は置いとくとして……それで? クロト。あんたの方はどうしたの?」

 

「クロ君、夢見が悪いらしいよ」

 

「夢、ですか……どんな夢ですの?」

 

「ん? そうだなァ…最近見たのは巨大牛ダコVS人間一人だな」

 

そんな有り得ない組み合わせの話を聞いた三人は、苦笑して…

 

「なんつー夢よ。人間側、圧倒的に不利じゃない」

 

「そうか? でも、なんとか勝ってたぜ?」

 

「ええっ!!? うそ、どうやって?!」

 

「んー…人間側が、変わった模様の紅眼でタコを睨んだら、何も無いところから黒い炎が出て、たこ焼きにしてたな」

 

「まぁ、紅眼なんてお伽噺みたいですわね」

 

「ふーん、で? 今日のは?」

 

「今日のは───『キーンコーン』って、ヤバい少し話過ぎた! お前ら行くぞ!!」

 

「あっ! ちょっ、ちょっと待ってよ」

 

 

 

 

 

~HR~

 

コホン

 

俺達の担任の早乙女和子先生は深刻そうに咳払いをして…

 

「今日は皆さんに大事なお話があります」ダンッ!

 

「目玉焼きとは、おしょうですかお塩ですかっ!!」

 

…かなりどうでもいいことを話された。

ホントどうでもいい。

 

「ハイっ!黒崎君ッ!!」

 

「そうですねぇ……俺は半熟のマヨネーズですかね?」

 

「「「「「………………」」」」」ピキッ

クラスの空気が凍った気がした

 

「………( ノД`)…」

ダッ

 

先生は無言で教室から逃げ出した 。

あの様子から見るに、先生また恋人に逃げられたのか…。

憐れな、食い物で胃袋掴もうとして、食い物で逃げられちゃ世話ないな。

 

『センセェーーッ!!』

 

「あちゃーやり過ぎたな、こりゃ───ん? 誰だ?」

 

先生の逃げた扉の方を見てみると、

二房の三つ編みのお下げをして赤いフレームの眼鏡をした女の子がいて、

どうしていいのか分からず、オロオロしている様に見える。

……取り敢えず話し掛けてみっか。

 

「なぁ、あんたどうしたの?」

 

「え? …あ、あの先生、は?」

 

「早乙女先生?」

 

コク

 

「…あの様子じゃ暫く戻って来ねぇな。……何か用事があったのか?」

 

「そ、その、私、転校…生で」

 

「……マジかよ。どうしy──『おい黒崎』? 岩黒、どうした?」

 

「コレ」

 

「……プロフィールか?」

 

周りを見てみると『お前がやれ!』という視線を送っていた。

……いや、確かに俺が先生を追い出したようなモンだが……あ~…わかったよ。

やればいいんだろ、やれば……ハァ、まぁいいけど…。

 

「取り敢えず、暁美さん。俺が先生に変わって自己紹介するから入ってきてくれ」

 

「は、はい」

 

俺はプロフィールを見ながら、ホワイトボードに大きく彼女の名前を書いた。

 

 

暁美 ほむら

 

……美しい暁の(ほむら)か…綺麗な名前だ…。

 

「あ、あの暁、美、ほむら……です」

 

──うっ……モジモジしてる姿が小動物っぽいんだけど…。

 

保護欲が掻き立てられる様な仕草に、内心ドキドキしていたのは……内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

────これが、俺とほむらのファーストコンタクト……俺とほむらの『始まり』の記憶。

 

 




中途半端ですがここまでにしておきます。

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