魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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皆様、お久し振りエントランスです。

いや~ここ最近、リアルが忙しかったので、暫く来れなかったのですが…なんか評価が急激に下がってて、ビックリしました。
自分の居ない間に一体なにが……。

…まぁ、前書きはこのくらいにして、『お菓子の魔女編』ドウゾお楽しみ下さい。


お菓子の魔女・孵化

~孵化前の魔女結界~

 

グリーフシードによる迷宮形成の(さい)

自ら巻き込まれていったクロトとさやか、そしてキュゥべぇ。

 

その二人と一匹は、前方を警戒するクロトを先頭に、さやかはキュゥべぇを抱いて

結界の最奥にいる結界の主───魔女の元へ向かい歩いていた。

 

「う~…緊張してきた」

 

『怖いかい? さやか』

 

「そりゃまぁね…。アタシは丸腰でクロトは命懸けだし、当然でしょ」

 

『願い事さえ決めてくれれば、クロトかさやか。

どちらかを、この場で魔導士、或いは魔法少女にしてあげられるんだけど…』

 

「う~ん…いざとなったら頼むかも」

 

「俺は死ぬ気無いし、今んとこパスだな」

 

さやかはクロトが手に負えない状況になった時の事を考え、キュゥべぇとの契約を考慮し、

クロトは周囲をキョロキョロと見回し、今までの戦闘経験から危なくなることは無いだろうと判断する。

 

「───しかし、使い魔はチラホラ見掛けるが……襲ってこねぇな」

 

『今は刺激しない限り大丈夫だよ。本当に危ないのは魔女が産まれ、結界内に魔力を持つ魔法少女が侵入して、使い魔がソレを排除しようと動きを活発化させた時だ。

使い魔は本来、魔女の糧となりうる一般人の誘導と、魔女の敵────魔法少女の排除が目的だからね』

 

キュゥべぇの魔女講座に、クロトとさやかはヘェ~と感心した声を上げる。

 

そうやって辺りの使い魔を警戒しながら、慎重に結界の迷宮を進んで行くと“手術中”という病院でよく見掛ける看板の付いた檻があり、その中にこの迷宮を造った原因のグリーフシードが鎮座していた。

 

どうやら目的地に着いたようだ。

 

「────ここか…」

 

「みたいだね。後はまどかが、マミさんを連れて来てくれるまでの辛抱かな?」

 

「だな。……しかし、コイツ(グリーフシード)は何時になったら魔女に産まれるんだ? さっきから光ってばっかで、全然変化がないんだが…」

 

クロトに視線の先には、依然として空気中から黒く淀んだナニかを、球体が徐々に…徐々に発光して吸収してく様子だった。

 

『それは分からない。あと数分の場合もあるし、あと数時間も掛かるかもしれない。

どちらにしろ、僕たちに出来るのはここまでだ。

後はマミ達が間に合うかどうか…───二人とも、もしも間に合わなかった場合は、分かってるね?』

 

「「……………」」

 

……契約…という事なのだろう。

 

元より、さやかは丸腰。

唯一、武器を持っているクロトにしても身体は人間。

無尽蔵に思える使い魔が放たれる魔女の結界内では、数の暴力と体力の消耗で、まず生き残れないだろう。

─────だから…。

 

    クロトとさやか。

どちらかがキュゥべぇと契約し、産まれた魔女への対抗策として考えておけとキュゥべぇは言っているようだ。

 

「ハァ…こんなことなら、ほむらに番号聞いとくんだった。……ここ出たら聞くか」

 

「念話だけじゃ不便だしね。私も聞いとこ」

 

二人はグリーフシードの様子を視ながら、こんなことになった原因を反省しつつ、ほむらの電話番号を聞こうと決意した。

しかし何故、二人はマミの携帯番号を聞こうとしないのだろうか? ───その理由は…。

 

──先輩(マミさん)と番号を交換したら、何があるか分からねぇしな(ないしね)

 

過去、幾度となくマミのヤバイ行動を観てきた二人としては、ぼっちのマミが自分達の連絡先を手に入れた場合を想像して、背筋が寒くなった。

 

そんな事を思いながらも、暫くの間グリーフシードを見張っていたが……。

 

 

────五分後…

 

「……………」

 

「……………」

 

『……………』

 

変化なし

 

────二十分後…

 

チャン♪ チャン♪ チャン♪ チャン♪───

「───7、8、9、10コンボォッ! まだまだ続くぜェ」

 

「え? マジ!? アンタ凄いわね。

……あっ“黄金○番人”ゲッツ! いよっしゃぁッ!! これで進化素材が集まった」

 

「そろそろイベントの時間だな。スタミナ残しておかないと…」

 

「ギャァァーーッ!! チームコスト忘れてたァァ! 雑魚しか入れない」

 

『……………』

 

特に変化なし

 

──── 一時間後…

 

「───でさ、『史上最強の生物(範 馬 勇 次 郎)』との組み手稽古で行けないからって、仁美にあのホテルの最高級バイキングのタダ券貰ったんだよ。…スペードのJ」

 

「いいなぁ。あそこデザートも美味しいって、テレビで出てた有名店じゃん。……クラブのk」

 

『Ufufufu』

 パサッ

 

看護婦さん(・ ・ ・ ・ ・)はハートのAか。

…だからさ、ここの魔女倒したら ほむらも誘って明日、皆で行こうぜ」

 

「マジでッ!? やったァ♪」

 

『君達……』

 

依然と変化なし

 

───とまぁ……ご覧の通り、魔女は産まれる気配が無く暇をもて余したクロト達は、キュゥべぇに見張りを任せっきりにするとスマホを取り出してゲームをしたり、今は襲ってこない“看護婦型の使い魔”を捕まえて一緒に大富豪を興じたりと……やりたい放題だった。仲間外れのキュゥべぇの視線が痛い。

 

というか使い魔がルールを理解しているが、どうやって使い魔と意志疎通したのだろうか?

 

 

………取り敢えず、それは置いとくとして─────その頃、まどかはというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた…お疲れ様。定春」

 

「わん」

 

「…みんな、まだ大丈夫かな?」

 

丁度、定春に跨がって颯爽と駐輪場に到着し、グリーフシードが刺さっていた…現在は一般人には見えない魔女の結界への入り口の前まで来ていた。

 

「ほら、マミさん着きましたよ! ─────…? マミさん?」

 

「…………」

 

一緒に定春に乗っていたハズのマミから、返事が無いことを不審に思ったまどかが振り返って定春の方を見てみると、マミは定春の背中にギューッと抱き締め、毛皮に顔を埋めてその場からピクリとも動かない。

 

心なしか、定春も扱いに困っている様な顔で、まどかに『どうしたらいい?』とでも言いたげだ。

 

「 ……マミさん何してるんですか? 早くしないとクロ君達が───」

 

「ぐすっ……私…もうお嫁…行けない」

 

「ちょっ!? こんな時に泣かないでくださいよぉ ……別にいいじゃないですか、下着観られた(・ ・ ・ ・ ・ ・)くらいで…」

 

完全に他人事の様に話すまどかに、マミは顔を上げてキッとまどかを睨み…。

 

「全っ然よくないわよっ! 百歩…いえ、千歩譲って私の下着を盗ったまでは許すわ!

でも、いくら非常時だからって、よりによってソレ(下着)を聖火ランナーみたいに掲げて私の名前呼ぶ!? おまけに、私が何時も行ってる、賑わう商店街の中を……嫌でも目立つ、定春君に乗って…」

 

「ティヒヒ♪」

 

「なに『それほどでもォ~♪』みたいに笑ってるの!? 笑い事じゃないわよっ!! 貴女が来たお肉屋さんの妙さん『……マミちゃん…女遊びも、程々にね…』って、スッゴい苦笑いで言われたのよ!? 完全に女の子とそんな嗜好だって勘違いされてるでしょコレ!!?

どーしてくれるの!? もう、あの商店街歩けないじゃない!!」

 

そう言い切った後、『私の行き着けの商店街がぁ~!』と言って、再び定春の背中に顔を埋めて泣き寝入りを決め込んだマミ。

 

「…後から私も事情を説明しますから…。

────それより今は、クロ君と連絡を取らないと…」

 

「………………」スッ

 

するとマミは顔を上げずに手だけを掲げて、ソウルジェムで何かに干渉しているようだ。

まどかの頭に念話の声が響いてくる。

…どうやら念話だけ繋ぐから、後は自分達で勝手にしろということらしい。

 

あまりのマミのやる気の無さに、まどかは顔を引き吊らせながらも、仕方なしに何時もの要領で結界に向かって念話を試みる。

 

<キュゥべぇー。キュゥべぇいるの? マミさん連れて来たよ>

 

<まどか? アレ…マミは?>

 

<あ~ぁ……色んな意味でダメみたい。それより、そっちはどんな感じ?>

 

<……何があったか気になるんだが…まぁいいや。

今のところグリーフシードに大きな変化は無い。直ぐに孵化する様子は無いよ>

 

<良かったぁ。クロ君達は大丈夫? 平気?>

 

<暇過ぎて死にそうなくらいだ。さやかなんて横で口を開けて寝てるぞ>

 

<Zzz~~……Zzzz~~…にへへへ、恭介…ダメだよ、それは~>

 

<……ホントだ。寝言で念話を使うって、どれだけ器用なの?>

 

<だろ? おまけに幸せそうなニヤケ顔がムカツク。

今からコイツの耳にイヤホン着けて『着○アリ』のメロディーを流すところだ>

チャーーンチャンチャンチャンチャン─────

 

<────ッ…うっううぅ……あ゛ぁ…や、やめ…て恭介…そっちに、腕、曲がらな……ぁ…ァ…>

 

さやかの幸せそうな寝言の念話の声が一転、聞いているだけで魘されてると分かる声に変わってきた。

 

<恐いッ! 寝言聴いてるだけで恐いよ! もうやめてあげなよ>

 

<ちっ、分かった分かった。んじゃ次は『世にも奇妙な…>

 

<どっちもホラーじゃない!!>

 

自分達が危険な状態にもかかわらず、何時も通りなクロト達。

しかし、そこに静聴していたキュゥべぇから珍しく焦りの混じった声色で話し掛けてきた。

 

<大変だ!! 魔女が、さやかの悪夢の恐怖を感じたのか知らないけど、グリーフシードがさやかの生命力を吸い込み始めて孵化が早まった!!>

 

<<ええぇーーっ!!!??>>

 

……思ったよりも、事態は深刻化してしまったようだ。

 

<な、なにやってるのクロ君!? 早くさやかちゃんを起こしてっ!!>

 

<ダメだ! さっきから目の下や、鼻の下とかに本わさび塗りまくってンのに、全然起きねぇ!?>

 

<なんでわさび持ってるの!?>

 

思わず、まどかからツッコミが入る。

目覚めた後のさやかの顔は、他の誰が見ても悲惨な事になっているだろう。

 

<魔女だよ!

魔女が孵化のエネルギー源として、さやかの生命力を利用しようと目が覚めないようにしているんだ!!>

 

<マジで!? …あぁーマズイ事になった……仕方ない。

まどか、そういう訳で悪いんだが、さやかの体力が尽きる前にさっさと先輩を連れてきてくれ>

 

<えぇ!?……そんな事、言われても…>

 

まどかがチラッとマミの方を見ると、いまだにマミは定春の背中にしがみついたままだ。

 

<頼む!!

早く来てくれたら『レインボー・エレメンタルホテル』にあるバイキングに、明日連れてってやるから>

 

<え? あの有名な───>

 

<「『レインボー・エレメンタルホテル』のバイキングですって!!?」>

 

<おわっ!?>

 

「きゃっ!? まっマミさん?」

 

ホテルの名前を聞いた途端、マミは定春の背中から飛び降りて結界まで近付いて来た。

その顔は、さっさまで落ち込んでいたとは思えないほど顔をニヤつかせ、眼はキラキラと輝かせている。

 

<黒崎君!! 今の話、本当!?>

 

<え、えぇまぁ。友達にタダ券貰ったんで、明日みんなで行こうかと…>

 

クロトが、そう念話で伝えるとマミは小声で『季節限定タルト…レインボーパフェ…食べ放題…』等と呟いた後…、

 

「何してるの鹿目さん!! 黒崎君達が待ってるわ。ボサッとしてないで、速攻で行くわよっ!!」

 

「えっと、ボサッとしてたのはマミさ『シュルルル』え? ───ひゃわっ!?」

 

先程のやる気の無さは何処に行ったのか…。

マミは突っ立っているまどかの胴体にリボンを巻き付けると、まどかを引き連れ、魔女の結界に侵入した。

 

「────ト食べ放題、最高級デザート食べ放題、最高級デザート食べ放題、最高級デザート食べ放題。

……ウフフ♪ 持つべきは頼れる後輩ね♪ まさか、あのホテルのバイキングに行けるなんて♪」

 

「あああぁぁーーッ!! ちょっマミさッ…はや───あぐっ」

 

トリップ状態になったマミは、まどかを凧揚(たこあ)げの(たこ)みたいに引っ張って行き、使い魔を蹴散らしながら結界の迷宮を、スピードを上げて爆走していく。

引っ張られているまどかは、慣性の法則と空気抵抗で背骨から反り返り、くの字に曲がって苦しそうだ。

 

「身体が軽い。 今なら全種類制覇出来る気がする! こんな幸せな気持ち…初めて…」

 

「わ、私ッ…は、こん、な………腰の、いっ痛、み…初…めて…」

 

「もう、なにも怖くない!!」

 

「も、う…腰が、く、砕け…そうで、怖い……です」

 

まどかの苦痛の声はマミには届かず、マミは気分は最早、有頂天。

まどかの腰から、ミシミシと嫌な音が聴こえて来ようともお構い無しだ。

何時もの三倍以上の物凄い速度で、キュゥべぇの位置を確認しながら順調に魔女の結界を進んで行く。

 

 

 

 

 

 

………そして僅か五分後…

 

 

 

 

 ドッガァァァン

 

「助けに来たわよッ!!」

 

「……ぁ……ぅ」

 

結界の最深部の扉を、粉々に吹き飛ばして飛び込んで来たマミ。

その後ろで、まどかはマミの携帯ストラップの様にリボンで繋がり、ぐったりとした状態で転んでいたが…。

 

「いや…早くね?」

 

「全速で来たから当然よ。それより早く美樹さんを起こさないと…」

 

マミは未だ目覚めない さやかの傍ま近付くと手をかざし、さやかの身体を黄色い光で包む。

すると…。

 

「に、肉じゃがッ!! ……はっ、ここは…」

 

…どんな夢を観ていたのだろうか。

さやかは変な寝言でガバッと起き上がった後、少しの間ボーッとしていた……が、

 

「~~~ッ!?? ニ゛ギャア゛ア゛ア゛アアァァーーッッッ!!?

眼っ! 眼がっ!? は、ははは鼻がァァァァッ!!!」

 

目の下と鼻の下に塗られたわさびによって、その意識は一気に覚醒し、さやかは顔を押さえてゴロゴロと地面を転がってもがき苦しんでいる。

 

「あっわりぃ。わさび拭うの忘れてた」

 

「アイタタタ…大丈夫? さやかちゃん」

 

そんなさやかに、体力を吸いとられ続けていた事を思い出したまどかは、彼女の安否を確認するために痛む腰を我慢しながらも傍に近付く。

 

「ゴレ゛のどごが大丈夫に見えんのよォォォォ!!」

 

顔を真っ赤にして、涙が駄々漏れ状態のさやか。

 

「良かったぁ。何時ものさやかちゃんだ」

 

まどかにとって、この何時も通りのリアクションを見る限り、彼女の命に別状は無いようだ。

 

だが…、さやかが目覚めると同時にグリーフシードの発光の間隔も短くなって、ようやくグリーフシードに変化が現れる。

 

『……間に合って良かったよ。丁度、魔女が出て来るところだ……気を付けて』

 

 

 

変化の現れたグリーフシード。

それは何処からともなく現れたお菓子箱に包まれ、クシャクシャに丸まり中から弾け飛ぶ。

中から現れたのは、

 

赤い飴玉の包み紙の様な頭部。

 

黒い赤玉模様のマフラー。

 

そして、赤いマントを靡かせる胴体。

 

魔女とは思えないほど小柄な可愛らしい縫いぐるみは、ヒラヒラと宙を舞うと背の高い椅子とテーブルの一席へと腰掛ける。

 

「…縫いぐるみ?」

 

「なんか、ちょっと可愛いかも」

 

「な、涙で…前が見えない」

 

「小さいからって油断はダメよ。小さくても魔女は魔女。大きさなんて関係ないんだから」

 

そう言って、マミは一丁のマスケット銃を取り出すと、産まれたばかりの魔女へと足を向け歩んで行く。

その途中、彼女は振り返り、

 

「それじゃ行ってくるわ。────それと、黒崎君。

この魔女倒したら、バイキングの件……忘れないでよね♪」

 

溢れんばかりの笑顔でクロトにそう言うと、彼女は魔女の元へ向けて跳躍する。

 

 

 

──────だが……、

 

この時、この戦いが、仲間の願いを裏切り、

 

      そしてあんな事になろうとは……その時、彼女も彼も、誰も知らなかった…。

 

 

 

 

 




エントランスからのお知らせです。

事が始まる前

黒崎玄人の日常

以上の2つを加筆、変更、削除をしました。
内容も、以前の1.5倍程増えてる物もあるので、読んで序でに感想を貰えたら幸いです。

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