チョコチョコとは書いていたのですが、今回の話はオリジナルだったので苦労しました 。
さて、今回の話なんですが以前、前書きで書いていた物語です。
所々おかしい所が在るかもしれませんが、お楽しみ頂けたら幸いです。
それではドウゾ!
~放課後・通学路(雨)~
~まどかside~
「ハァ、ハァ、ハァ」
さやかちゃんが生死をさまよった魔女退治から翌日。
私は太陽の光が完全に隠れる程ぶ厚い雲に覆われて、バケツの水をひっくり返した様な大雨の中。
傘を忘れてしまい、
「───もうっ、みんな薄情だよ」
クロ君は入院中の友達、上条君のお見舞い。
さやかちゃんはその上条君の事で、最近何か悩んでいて……どこかに御出掛け。
仁美ちゃんは、北○神拳の“柔の拳”と“剛の拳”の使い手の兄弟子さん達と組み手のお稽古。
マミさんは ほむらちゃんが見付けた魔女の報告で、魔女の数が多いから二人で手分けして
魔女退治に出掛けちゃって今日は見学は無しになったんだよねぇ………。
結局、みんな用事があったから、用事の無い私は一人で家に帰るしかないし……。
「ハァ、ハァ……フゥ…ちょっと、雨宿り、しよ…」
走り疲れた私は少し公園に寄り道して、屋根のある木製のベンチで一休みすることにしました。
濡れた制服は日の差さないこの天気で肌寒く、鳥肌が立って……何か温かい物が欲しいなぁ。
「あ~ぁ……雨、止まないなぁ」
相変わらずどしゃ降りな雨に気が滅入ってしまい、今なら簡単に魔女の結界へ導かれそうな気分に浸っていた私ですが その時、公園の片隅に
「ん?なんだろ…」
私はどうしても気になって『どうせ濡れてるのだから別にいいや』と思って雨の中、その子達の所に駆け寄って行きました。
「ねぇ君達、どうしたの?」
「?おねえさん…だれ?」
「私?私はねぇ、まどかって言うの。
君達がここに居たから気になって来ちゃたんだ♪何してるの?」
この位の小さな子は、知らない人を怖がったりする場合が多い。
だから私は怖がらせない様に子供達と同じ視線になるように膝を曲げて話し掛けると
この子達は少し考えてヒソヒソと小声で話し合って
……たどたどしい話し方だったけど、ゆっくり話してくれたの。
「あのね。わたしたち、あのこのおせわしてたんだけど…」
「ぼくたちのおこずかいじゃ……たりなくなっちゃた…」
「おれたちのいえじゃダメだって───だから、こいつをかってくれるひと、さがしてた」
「??あの子?」
この子達の言う“あの子”が分からない私でしたが、この子達はそんな私を見て
三人共、先程指差していた公園の片隅に生えている森の中を指差しました。
「「「コレ」」」
「ワン」
それは……とっても、とっても大きな、真っ白いワンちゃんで…
「────わあっ…」
小さい頃から大きい動物に憧れていた私は、思わず喜びを帯びた声色になってしまった。
……確かにこの子は子供のお小遣いで養える子じゃない。
──それなら…
そう思った私の心は、もう決まってしまいました。
私はこの子のお世話をしていた子供達に、譲って貰えないか聞いてみると涙を流して喜んでくれて…
───この子と私が濡れない様にって、傘まで譲って貰っちゃた。
この雨の降る中、一匹の新しい家族が増える事を願い───
素直に着いてきてくれるこの子の温かく、柔らかい
───名前……何にしようかなぁ~
~まどかside out~
───────
─────
───
~鹿目邸~
「おっそーーいぃ~
まぁどかの奴ぅ~なぁにぃやってんだぁぁ~」
「ママ飲み過ぎだよ」
夕飯を食べ終え、クロトはタツヤの遊び相手をしてあやし、知久は会社を終えて風呂で疲れを癒した後の詢子の晩酌をして、詢子はそんないまだ帰らない娘───まどかを、酔っ払いながらも心配している。
「まぁまぁ。ねぇ、まぁまぁ」
ガクガク
「───ウプッ…」
そんな酔い潰れた母親をタツヤも心配したのか、クロトの元を離れて眩しい笑顔のまま、詢子の腕をガクガクと揺らす。
揺られた詢子は顔を真っ青にして……かなりヤバそうだ。
「たっくん、ママはソッとしといて
「はぁーーい♪」
クロトはタツヤにそう注意すると、タツヤは素直にクロトの所にやって来ると嬉しそうな顔で、クロトに高い高いをして貰っていた。
「それにしても、こんなに遅いまどかも珍しいね。
……どうしたんだろう───玄人君、何か聞いてないかい?」
「すいません。俺も学校で別れたっきりで…」
申し訳なさそうにするクロトに、知久は苦笑して『いや、いいんだよ』と言う。
そして流石にこんなに遅いまどかを心配して、知久は警察に電話を入れようかと考えていると──
ガチャッ
『た、ただいまぁ~』
玄関の方から聞き慣れた、その張本人の帰宅した声が聞こえてくる。
娘の声を聞いた詢子と知久はホッとして全員が玄関に集まると、
そこには見慣れない小さめの傘を持った、びしょ濡れのまどかがいた。
「遅そ──って、まどか!あんたびしょ濡れじゃない!!風邪引いちまうよ。
知久、タオル持って来てやんな」
遅いと文句を言おうとした詢子だが、娘の酷い有り様を見ると酔いも冷め、
叱るのも後回しに夫にタオルを取って来るように頼む。
知久は『うん分かった』と言って、風呂場の方へ小走りで向かって行った。
「まどか遅ぇぞ、何やってたんだ。俺達より早く帰ってただろ?」
「う、うん。ゴメンね……ちょっと寄り道しちゃってて…」
そう言って、テヘヘと苦笑いをしていると──
「はい、まどか。タオルだよ」
「あっ、ありがとうパパ」
タオルを手渡され、ツインテールにしているリボンを
「……ハァ…まぁなんにせよ。あんたが無事で良かったよ」
詢子は改めてホッとしていると、髪を乾かしたまどかはモジモジと指を動かしながら、
「あの…それでね……ママとパパにお願いがあるんだけど……いいかな?」
上目遣いで両親に頼み事をする。
「うん分かった。パパに任せてくれ」
そしてそんな娘の姿を見た知久は、内容も聞かず間髪入れずにOKを出した。
「はやっ!!決断はやっ!!知久、あんたまどかに甘くない!?」
「しょうがないじゃないか。愛する娘にあんな上目遣いで頼まれたら全国のパパさんは全員断れないよ」
「あのー…せめて内容も聞いて…
──後、パパ。恥ずかしいからクロ君の前でそんな事言わないでよ!!」
「そんなぁ」
「いや、俺の前でも後ろでもやめてくれ…」
クロトは知久の『娘LOVE』に顔をげんなりさせ、まどかは顔を真っ赤にすると、
もう…と言ってため息を吐き、本題に入った。
「あのね。私、公園で犬を拾っちゃったの。とっっても可愛くて良い子なんだけど、身体が大きくて捨てられちゃったみたいで……。だからお願いッ!!お世話もちゃんとするから犬を飼わせて!!」
「まどか…」
詢子は初めて見る、娘の真っ直ぐで必死な瞳を見てこう思っていた。
──まどかが、私達にワガママを……まどかは文句も言わないし、私達に迷惑を掛けまいと頑張ってきた……そんな娘が自分達にワガママを言った──なら、私は親として……
「………ちゃんと散歩はさせるんだよ…」
「!!ママッ」
「ただし!!エサ代は私達も出してやるけど、
あんたの小遣いからも少し引く。……それでもいい?」
「うん!!」
「なら良し!連れてきな」
「ハーーイ♪」
元気よく返事をすると、まどかは玄関を出ていく。
その背を見ていたクロトは、詢子に聞いてみた。
「いいんですか?飼い主が見捨てるくらい大きい犬なんですよ?」
「アハハ♪大きいと言っても所詮、大型犬位だろ?私の収入をナメんなよ。
犬コロ一匹くらいどうってことないさ」
そう言って笑い飛ばす詢子に、クロトは肩を竦めて『そうですか』と言う。
するとガチャッと玄関が少し開き、まどかの頭が出てくる。
「おまたせ~じゃあ行くよ~。おいで───」
そして、扉が───開け放たれた…。
「
「ワン」
「「「………………」」」
まどかの能天気な声とは裏腹に、痛い沈黙が玄関を支配するもの無理はないだろう。
何故ならまどかが連れてきた犬は真っ白な毛で覆われ、眉毛は特徴的な勾玉の様な形をしており、
………大きさは、お座りをしている状態で170cmを越えて、推定300kg以上は在ろう超巨大犬だった。
「……あり?アタシまだ酔ってんのかなぁ…まどかの二倍はありそうな犬が見える」
「……詢子さん…現実だよ」
それを聞いた詢子は汗をダラダラ流し、
「捨ててこい」
速攻で言い放った。
「ええぇっ!?なんで!?」
「ったりめぇーだッ!!大きいって言うからゴールデンレトリバーぐらいかと思ったら……
なんだこのバカデカい巨大犬は!!?つか、これ本当に犬なの!?せめて名称の分かる犬拾って来い!!」
「定春」
「なにちゃっかり名前まで付けてんだァァ!!もう飼う気満々か!!?
養えるかァァこんなもん!!元いった所に捨ててこい!!!」
「いっ嫌だよ!こんな肌寒い雨の日に外なんか居たら夜風に当たって死んじゃうもん!!」
まどかは定春を庇う様に抱き付く。
───しかし
「まどかが心配しなくても定春は一人でもやって行けるって」
「詢子さんは定春の何を知ってるっていうんですか!!?」
想定外にデカかった定春のペット化をなんとしても阻止したかった詢子は、そんな無責任な事を言ってクロトからツッコミを受けている。
「ねぇ、分かってくれるわよね」
詢子は優しく語り掛ける様な声で、おもむろに定春の頭に手を伸ばし…
「定は……」
バクン
「「「「あ」」」」
頭を食われた。
……夕飯を終えて家族団欒の時間帯に一匹の家族が増え、
一人のキャリアウーマンの悲鳴が響き渡る……。
─────時間は流れ、翌朝
次話は二日後を予定しています。