キリがいいところまで、書いていたらこんな感じで…
しかし、二話完成しました。
~薔薇園の魔女・結界内部~
結界内に突入したクロト達は、夕焼け色の壁や不自然な木々、いくつもの扉やカラフルな階段といった迷宮が広がっていた。其処は凡そ人が住むような場所ではない───魔女と使い魔が自分達の為だけに生み出した迷宮なのだとクロト達は改めて実感する。
そんな迷宮をマミとほむらが先頭を歩いて現れた使い魔を何時でも駆逐出来る様にし、クロト達はほむら達から貰った武器を鞄から取り出して手に取り、二人の後を追って慎重に進んでいた。
「───にしても、ホント現実離れした所だよな魔女の結界って……」
「そうだね───なんていうか…不気味だよ」
ため息を吐き、ウンザリしたような感じでそう言うクロトと、得体の知れない空間で心細くなったのか、少し震えているまどか。
「だ、大丈夫だよ、まどか。マミさん達がいるんだもん」
「そうね、安心して。
「私は!?」
「それじゃ、美樹さんは私が護ってア・ゲ・ル♪」
ジャラララ
「………………」
ほむらの護衛対象に入ってない事をつっこむさやかに、鎖付きの首輪を持ってにこやかにそう言うマミ。
それを見たさやかは昨日のキュゥべえの姿が脳裏を
「ほむらァァァァーーッ!!お願いだから私も助けてェェェェェーーーッ!!!」
「美樹さやか。五月蝿いわ」
さやかはマミから隠れる様に、ほむらの背中にすがり付いて恥も承知でほむらに助けを求める。
そんなさやかをほむらは鬱陶しそうにしていると、さやかの大声に反応したのか髭を生やしたオレンジ色の胴体に、蝶の
「───暁美さん…」カチャッ
──シュィン──
「来たわね……美樹さやかのせいで」
「悪かったわね!!」
マミは先程とは違い、真剣な表情になってマスケット銃を生み出すと使い魔に向け、
ほむらは戦闘に備えて瞳を写輪眼に切り替え、盾からオートマチックタイプのハンドガンを二丁取り出して両手に持つと、さやかの背中を自分達の後ろにいるクロト達の方へ押した。
三人が安全な場所まで下がったのを確認すると、マミはほむらの方を見て左側にいる使い魔の群れを指差す。どうやら、左側を担当するから右側をほむらに任せると伝えているようだ。
ほむらは頷くと、二人は戦闘の為に使い魔に向かって走って行った
「……これが魔法少女の戦いか…」
その二人の戦闘を、クロト達は其処が危険な場所なのを忘れて魅入っている。
二人の戦闘スタイルは両者とも銃器だが、戦い方はかなり異なっていた。
マミのスタイルは、次から次へとマスケット銃を魔法で生み出し、遠距離にいる使い魔には狙いを定め狙撃を。突撃して体当たりしてくる使い魔には眼にも止まらぬ速度で照準を合わせ、近距離で撃ち抜き、時には撃ち終えたマスケット銃で使い魔を殴り倒していく苦手な距離の無い、安定した戦闘スタイルだ。
片や、ほむらの戦闘スタイルは左腕に装着されている盾の裏から、質量を無視した大きさの銃器を取り出して、写輪眼の圧倒的な動体視力を利用した先読みで使い魔の頭部にあたる部分を正確に射貫く。
魔法で生み出した物では無いので弾を撃ち尽くすと、銃を放り投げて盾からクロトに渡したのと同じクナイを取り出し、無駄の無い動きで襲ってきた使い魔を切り刻むと、舞踊のような風雅な動きで舞い、切り裂く。
───しかし、時折かわせない時があったのだが、その瞬間ほむらの姿がフッと消えて次の瞬間には、攻撃してきた使い魔がバラバラにされているという、かなり特殊な……謎の多い戦闘スタイルを持つ。
「クロ君、マミさん達の動きが見えるの?」
「ん?お前等、見えねぇのか?」
マミ達の戦いを見ていたまどかだが、流れるように使い魔達を葬っていく二人の動きは、常人の動体視力では中々追い付けないようで、クロトの二人の動きが見えるような発言に驚いているようだ。
「いや、私らマミさん達が何してるか速すぎて良く分かんないだけど……って、クロト!!あんた写輪眼って奴になってんじゃん」
「あぁ?」
さやかがクロトの眼を指差してそう言う。
本人も動揺している所をみると、どうやらクロトも知らない間に切り替えていたようだ。
そしてそれを見たクロトの頭の上にいるキュゥべえが、
『……僕の憶測だけど、クロトは一度、魔女の結界に入り込まれたことで自分の生命の危機を自然に感じ取って、写輪眼とやらに無意識に切り替えたんじゃないかな』
「ふ~ん」
漠然とした表現だったからか、良く分かって無さそうな顔をしているクロト。
『多分だけどね』と、キュゥべえは付け加えて興味ありげに、クロトの写輪眼をじっと見ている。
そして───ボソッと、
『────しかし何だろう……この瞳の違和感は…』
「?今、何か言ったか?」
『!…いや、気にしないでくれ』
そう言ってキュゥべえは誤魔化す様に、クロトの写輪眼から視線を外してマミ達方を向いた。
其処には依然として次々と出現する使い魔を駆逐している、マミとほむらの姿が…。
すると突然ほむらの紅く光る写輪眼が、クロト達の方を捉える。
「三人共、後ろ!!」
「「「え?」」」
声を張り上げて叫ぶほむらに、クロト達は反射的にバッと後ろを振り向く。
振り向いた三人の瞳の先には五体の剪定挟みを持った、頭は綿、細長い胴体、蝶の
「──っ!!ヤベッ」
「うわわっ」
「きゃあぁ」
いきなりの事に驚いたまどかとさやかは身を屈め、クロトはクナイを交差して防御の体勢を取った。
───しかし、
『大丈夫だよ』
一匹だけ冷静なキュゥべえは、クロト達にそう言うと次の瞬間には、クロト達の目の前に紫色の光の障壁が現れ、クロト達と使い魔を分断するように三人を護る。
「これは…」
『暁美ほむらが言ってただろう?クロトとまどかに渡された
ヘェーっと感心したように、ほむらから渡された武器をマジマジと見詰めるクロトとまどか。
さやかはそんな二人の武器を羨ましそうに見ている。
「気を抜かないで!ソイツ等は、まだ諦めてないわ!!」
「「「ッ!!」」」
マミはマスケット銃を乱射しながら、三人に
見ると、使い魔達は障壁に身体を押し付け、障壁を無理矢理突き破って、通り抜けようとしている様だ。
それを見たほむらは、襲ってきた使い魔を斬り刻みながら──
「まどか!
まどかに向かって、そう叫ぶ。
まどかはハッとして、ほむらから手渡されていたハンドガンを両手で持ち、使い魔に照準を合わせると引き金を引く。
───ヴァヂヂヂヂィィィ
すると銃口から紫色の紫電が迸り、
───ズキュゥゥン
紫の銃弾が、射線上にいた使い魔一匹を貫いて消滅させた。
「「おぉー!」」
「や、やったの…?」
その光景に、クロトとさやかは感心の声が漏れ、まどかは倒した実感が無いのか手に持つ銃と、使い魔が消滅した場所を交互に見る。
そうやってボーッとしていると、未だ戦っているほむらが話してきた。
「そのハンドガンは、簡易的に私とパスを繋いでいるの。だから私が近くにいる時、私の魔力をまどかの銃に送って、まどかでも撃てる様に
「スゴーイ♪凄いよ!ほむらちゃん───よーし!」
ほむらの説明を聞いて調子に乗ったまどかは、他の使い魔に狙いを定める。
「────でも、気を付けて」
「えーーい!!」
ポシュッ
──最後までほむらの言葉を聞かなかったまどかの一撃は、空気が抜けた様な軽い音を立てて撃ち出され、銃から出てきた物は銃弾ではなく、丸い……白い……なんか出てきた。
そして、出てきたソレは放物線を描いて、射線上にいた使い魔の口に綺麗に入る。
「…………ナニ…コレ…」
「「『………………』」」
………まどかの呆然とした声と、クロト達の間で……微妙な沈黙の空気が流れる。
「それは一度撃つとチャージまで三十秒掛かるわ。
その間、気休めだけどバ○ァリンが撃ち出されるの」
「ホンット気休めだよ! ううん気休めにもなってない。
何で!?何でほむらちゃん銃にバフ○リンなんか詰めちゃったの!!?
バカなの?普通に銃弾でいいでしょ!?」
まどかは、ほむらから語られる予想外の事実に、使い魔を倒しているほむらに問い詰める。
───しかし、ほむらは悲し気な声で、
「────あなたは……優しすぎる」
意味不明なことを言い出した。
「なにその理由!!私が優しいからバファ○ン詰めたの!!?
私、別に身体の半分が優しさで出来てる訳じゃないし、
そんな事言って許されると思ったら大間違いだよッ!!!」
「……いや、でも見てみろよ。一応、効果はあったみたいだぜ?」
まどかは『え?』と、クロトの指差す先程、バファリ○を飲んだ使い魔を見た。
───そこにはホッコリと優しそうな笑顔で、
「顔しか変わってないじゃない!!
逆に優しそうな顔で襲ってくる方が怖いよ!?」
そりゃそうだ。
自分達を襲おうとしてくる敵が、満たされた笑顔で迫って来るなんて恐怖以外の何物でもない。
すると今度は、さやかの方から声が上がった。
「ちょっとあんた等!!遊んでないで助けてよ」
クロトとまどかがさやかの方を見ると、装飾されたバットで使い魔の攻撃を受けている、さやかの姿が…
「さやかァァァ!!さやかが殺されるぅ!!」
「さやかちゃん!?───アレ?……障壁はどうしたの?」
「んなモン出てこないわよ!!どうなってンのコレェェェ!??」
「あっごめんなさい。障壁の設定し忘れてたわ」
「ちょっとォォォォォ!!」
役に立たないバットに、さやかは涙目だ。
さやかはバットに力を入れて、使い魔を押し退けると戦っているマミから、
「美樹さん!バットの柄の黄色いボタンを押すのよ!!」
「!!」
さやかはハッとしてバットの柄を見ると、確かに黄色いボタンがあった。
それを見て、先程のまどかの攻撃がさやかの頭に浮かび、さやかはバットの先端部を使い魔に向けて雄叫びを上げながら掌でボタンを押した。
「ハアアアアアァァァァァ!!!!!!」
カチッ
スパァンッ
すると今度は、紙皿に乗った真っ白な色の…
「生クリームパイが発射されるわ」
生クリームが使い魔の顔面に直撃した。
「「「なんでパイ!!?」」」
「時間が無かったのよ。改造しただけでもありがたかったでしょ?」
ドヤァ顔で自慢気にそう言うマミ。
「全然ありがたくないよ!!ただのパイが出る棒でしょーがァァ!!
バラエティ番組のイタズラレベルだよコレ!
つーかこんなん付ける暇があるなら最初から障壁付けてよ!!」
「アレよ 街中でいきなりパイ投げ祭りが始まっても参加出来るし、
ちょっと甘い物が食べたくなったら、つまみ食いも出来る
「えっ!!マミさん本当ですか!?
やったね さやかちゃん♪これでお菓子代が浮くよ♪」
「あんた等は一生甘いモンでも食ってろォォ!!!!」
カチッ
パァンッ
「うぷっ」
イラついたさやかのパイ攻撃がまどかの顔面に炸裂ゥ!!
……結局さやかは自分の身を護る事が出来ないことが分かっただけだった……。
そんなコントを見ていたクロトは ため息を吐いて、
「お前等(ザンッ)ホント(ズカッ)何(ズバッ)やってんだッ!!(ドッ)」
呆れた様子で、障壁に貼り付く四体の使い魔をクナイで瞬殺する。
それを見て命の危機から脱したことが分かったさやかは、ホッとした様でその場にへたり込んでいる。
「た…助かったぁ~ありがと、クロト」
「ったく、こんなんでこの先に行けんのかよ」
クロトはそう言いながら、生クリームで顔面ベトベトになったまどかを見る。
「ひどいよ~さやかちゃん……あっ甘い♪」
まどかのあまりの緊張感の無さに、果てしない不安がクロトを襲う。
──はぁぁぁぁ……ホント大丈夫かよ…これ…
その後も、クロトの不安はマミとほむらが使い魔を駆逐し、
魔女の結界の最深部に到達するまで続くのであった。
後一話は、明日のこの時間で、投函しときます。