魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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皆様のお陰で、お気に入り500になりました。
日間ランキングも六位になったりと、嬉しく思います。

…ただ最近、偶然なのか上位ランキングの人だけの評価を下げている人がいる気がするので、
皆様もお気をつけ下さい。

少し暗くなってしまいましたが、最新話出来ました♪それではドウゾ!


俺、し~らね♪

────それは不思議な空間だった。

 

真っ白な部屋に何かの古文書が部屋をフワフワと漂っていて、

これまた真っ白な床に、上から見れば時計の文字盤の配列で椅子が並べられ、

巨大な振り子の影が、真っ白な空間を横切っていく。

 

そんな見た事も無い場所で、俺はボンヤリとその中の一つの椅子に横たわっていた。

首を動かすのも(だる)く、動こうとする意思さえ削がれていく。

……だけど、うっすらと二人分の話し声だけが聴こえる。

 

『───ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になるわ。……相変わらず普通の人には見えないから、被害は地震とか竜巻とか、そういった大災害として誤解されるだけ』

 

──……ほむら?

 

一人の声の主は友達になったばかりの転校生───暁美ほむら……だと思う。

そして、そう思案をしているともう一人の声も聞こえてきた。

 

『……そんな奴にお前一人で何とかなると思ってんのか?』

 

その声の主は、ほむらを止めようとしているのだろうか?

酷く心配そうな声だ。

 

『…アイツらも死んじまって…お前しか居ないんじゃ…もう俺達もやるしか…』

 

『一人で十分よ!』

 

でも、そんな声の主の声もほむらは突き放す様に遮った。

 

『───には無理でも、私なら一人で──────を撃退できる。

──の援護も、本当は必要なかったの。ただ彼女の顔を立ててあげただけ』

 

所々聞き取れなかったが、ほむらは災害を起こす相手を一人で倒せると強気だ。

……でも……これは…

 

『…強がってんじゃねぇよ』

 

そう…強がりだ。

声を聞いただけで分かる程、このほむらは必死に不安な心を隠そうとしている。

 

『っ!?つ、強がってなんか──』

 

『さっきから手ェ震えさせている奴が何言ってやがる』

 

『ッ!!』

 

『……俺はそうやって自分に嘘をつく様な奴は嫌いだ…』

 

『…………』

 

『強がって自分を隠したって駄目だ。───ちゃんと“見てんだからよ”』

 

『……私は…』

 

───その言葉を聞いて、ここにいるほむらがどう思ったかを知りたいが、それを知る前に俺の瞼は睡魔に襲われて閉じていき……意識は闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~AM7:00~

 

ピピピピピピピッ

 

「…………夢か…」

 

デジタル式電波時計の電子音の音で眼を醒ました俺は、アラームのスイッチを切って、あのボンヤリと記憶に残る夢の事を思い出していた。

……なんというか…昨日会ったアイツと夢に出てきたアイツとじゃ、雰囲気が違う気がすんだよなぁ。

夢のアイツは張り詰めていて刺々しかったけど、昨日お茶会したアイツは優しくなった……様な…。

 

…ハァ~…しかし…

 

「魔法少女…ねぇ…はは、アレも夢だったり…」

 

『おはようクロト♪』

 

「……………」

 

───夢じゃ無かった。

昨日見た不思議生物のキュゥべえが、俺の机の上で挨拶してきた。

 

「…キュゥべえ……お前、マミさん()から抜け出せたのか?」

 

『寝ているマミのあの胸に殺されそうになったけどね。何とかあの監獄(マミ宅)から抜け出せたよ』

 

しみじみ、そう言うキュゥべえだが…───そうか、あの胸に…

 

「男子なら嬉しいシーンなんだろうが…」

 

『君は体験してないから、そんな事が言えるんだよ』

 

やれやれといった感じで首を振ると、キュゥべえは俺の頭まで駆け登って来た。

 

『それより、学校に行く準備をしなくていいのかい?』

 

キュゥべえに言われて、時計を見ればAM7:15を示していた。

 

「ん?…あぁ、もういい時間だな。…行くか」

 

俺は下に降りて身支度を整えると、キュゥべえを頭に乗せたまま、朝飯を戴きに隣のまどかの家に脚を運び、まどかと一緒に学校へ登校する事になった。

 

─────

 

───

 

──

 

~通学路~

 

「オッス!さやか、仁美」

 

「おっはよ~」

 

「おはようございます。まどかさん、クロト君」

 

「おはよ…うえっ!?」

 

俺とまどかが二人に挨拶をすると、仁美は何時も通りに挨拶を返してくれて、さやかは俺の頭からまどかの肩に跳び移っているキュゥべえに視線が釘付けだ。

……仁美の反応を見ると、本当に他の奴には見えないんだな…。

 

『おはよう。さやか』

 

「?さやかさん。どうかなさいましたの?」

 

「へ?…あぁ、ううん。何でもない。行こ行こ」

 

誤魔化す様にそう言うと、さやかは歩き出してまどかに耳打ちしている。

多分、キュゥべえが仁美に見えてないから、その事についてだろうな。…でも、

 

<さやか。仁美に怪しまれるから、此方(こっち)で話せ>

 

<うわっ>

 

俺は、まどかと登校している時にキュゥべえに教えて貰った“念話”を、さやかに使って話し掛けた。

突然頭に響いてきた俺の声に、さやかは身体をビクッとさせる。

 

<便利だよね~頭の中で考えるだけで会話出来るみたいだよ>

 

<ええ?私達、もうリリカルマジカルな力が!?>

 

<んな訳ねぇーだろ>

 

<今は僕が中継しているだけ。内緒話には便利でしょ?>

 

<……変な感じ>

 

そうやって黙ったまま話していたからだろうか。頻繁にまどかの方を見たりするさやかを不審に思った仁美が俺に耳打ちしてきた。

 

「……ねぇクロト君。さやかさん達、どうしたんでしょうか…しきりにお互いを目配せしたりして…」

 

「あぁ…あれはだな…」

 

「ハッ!まさか二人とも、視線だけで会話を!?たった一日で既に、そんな仲になったんですか!?」

 

俺が頭を掻いて何か言い訳を考えていたら、何をトチ狂ったのか…仁美はまどかとさやかが、そういう仲になったと勘違いしているようだ。

 

「そうじゃなくて──」

 

「そうと分かれば、こうしてはいられません。───さやかさーーん!」

 

───駄目だ…仁美に俺の声が届いてない。

軽い興奮状態の仁美はニコニコしたまま、念話で話しているさやかに駆け寄ると、さやかの背中のある部分に人差し指でトンっと突く。

……今、何をした?

 

「ん?仁美どうしたの」

 

「さやかさん。今日の下着の色は何色ですか♪」

 

「はぁっ!?仁美あんた何を言って───水色……あれ?」

 

突然の親友の発言にさやかは驚愕して仁美の方を振り向くんだが…何故かさやかは素直に、自分の下着の色を答えている。

……さやかの顔を見る限り自分の意思じゃないみたいだが……。

 

「ウフフフフ♪成功ですわ♪」

 

「ひっ仁美ちゃん怖いよ…」

 

「仁美ィィィ!!あんた私に何をしたァァァァ!!」

 

「……なんかさっき、お前の背中を指でつついてたぞ」

 

「背中!?」

 

俺の指摘に、さやかは背中を探る様に触っている。

 

「北○神拳、経絡秘孔の一つ《新一》を突きました。

今のさやかさんは自分の意思に関わらず、相手の質問に無条件で答えてしまいます♪」

 

「ちょっ…ええッ!?何でそんな事…」

 

「いえ、なんだか今日はお二方仲がよろしい様なので昨日、私と別れた後、何かあったんじゃないたと思ってその辺の事でも(うかが)おうかと」

 

「いや…まぁ…昨日は色々あったけど…」

 

「まぁ♪」

 

──!さやかの奴、何素直に何かあったって答えてんだ。言えるわけねぇーだろ!!……仕方ねぇ。

 

俺はこの事態を回避すべく、念話をまどかに繋いだ。

 

<まどか!>

 

<あっクロ君どうしよう。今、キュゥべえに聞いたら魔法少女の事を知られるのは不味いって…>

 

<分かってる。俺が仁美を抑えておくから、お前はあのバカ(さやか)を連れて学校に逃げろ!!>

 

<う、うん>

 

<……どうやら、一足遅かったみたいだよ>

 

<<へ?>>

 

キュゥべえに言われてさやか達の方を見ると、

 

「か、身体がァ!?う…腕がァァァァ!?」

 

さやかは腕をピーンと横に伸ばして、十字架に固定されたみたいに固まっている。

仁美の奴、またさやかに何かしたのか!?

 

「逃げられてはいけないので、経絡秘孔の一つ《戦癰》を突かせて戴きました♪

これでさやかさんは、動けない喋るだけのただの木偶(デク)人形…ウフフフフ♪」

 

「仁美ィィィ!!」

 

…そうこうしている内に、状況はさらに悪化したようだ。

───こうなったら、手段は選んでいられない。

俺とまどかは互いに眼を合わせて頷くと、さやかの方に走って行った。

 

「あら?」

 

「あっ!まどか、クロト!!助け──」

 

「ゴメンね?さやかちゃん」

 

「え?──『ドグッ』ぐぇふっ!?」

 

助けを求めるさやかにまどかは謝った後、助走のパワーを乗せたままさやかの懐に潜り込で綺麗に、人体急所の一つ《水月》にボディーブローを放つ。

その一撃の衝撃はさやかの胃袋を貫き、呼吸を一瞬止めて、さやかの意識を闇に沈めた。

 

そして、十字架の形のまま倒れ込むさやかを俺は俵担ぎの要領で担ぐと、仁美を残してまどかと一緒に学校まで走って逃げて行った。

 

『君達……』

 

一連の俺達の行動を、まどかの肩の上から見ていたキュゥべえの非難の視線を受けながら……。

 

 

──────

 

────

 

──

 

「………………」

 

「……それであなた達、こんな状態の美樹さやかを運んで来たのね」

 

「「「あ…あはは……スイマセン」」」

 

未だ、直立したまま十字架の形で白眼を向いて気絶しているさやかをチラッと横目で確認すると、机に脚を組んで腰掛け、床に正座している俺とまどか、仁美の三人をジト目で見るほむら。

キュゥべえは我関せずといった感じで、まどかの鞄の上で寝ている───裏切り者めっ!!

 

……しかし、今のほむらの女王様ポーズ……似合いすぎじゃね?

クラスの男子なんて正座する必要無いのに、俺達の後ろでハァハァと息を荒くして正座しているし…。

 

「それで?……コレ(美樹さやか)どうするの?」

 

ほむらはそう言って、横に立っているさやかを指差した。

 

「何か置物みたいだけど、白目だから怖ェーよ。……取り合えず、眼ェ閉じさせて眼を描いてやるか」

 

そう言って、俺はマジックを持って立ち上がり、気絶しているさやかに近付いて瞼を閉じさせる。

───っと、そこにまどか達も近付いて来た。

 

「楽しそうですわね♪」

 

「化粧道具ならあるわよ」

 

「クロ君。私達も描いていい?」

 

「ん?やるか?」

 

そんな俺達を見ていたクラスの奴等は『なら自分達も』と言って、気絶している事をいいことに、さやかをドンドン装飾していく。

 

 

 

~十分後…

 

 

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

「……うわぁー…」

 

俺達が沈黙する中で、まどかのドン引きする声だけが、教室に響く。

 

やべぇ……やり過ぎた…。

 

それが俺達、クラス全員の心の声だった。

何故ならさやかの青髪はワックスでオールバックにガッチリ固め、額には第三の眼。邪気眼を…

瞼には、まどかが描いた真っ黒な眼で尚更、不気味だ。

 

おまけに顔は、ほむらの持ってきた化粧でケバくされて、袖を捲った腕、脚なんかクラスの奴等が描いた四コマ漫画や、薔薇のアート、ドクロなんかで埋め尽くされている……まるで、何処かのイタズラされた銅像みたいだ。

 

────こんな格好じゃ街はもちろん。学校の廊下も歩けねぇーぞっ!!

 

そんな感じで途方に暮れていると、まどかから念話でか話し掛けてきた。

 

<クロ君どうするのコレ!!もう取り返しがつかないよ!?>

 

<どうするつったって……ヤバイ…メッチャ第三の眼で観られてる気がする…>

 

<おっ…落ち着いて二人とも、この除光液があれば…あっ!>パリン

 

<おいィィィィィィ!!>

 

<ほむらちゃーーーん!!>

 

せめてマジックのインクを落とそうとしたんだろう。

ほむらが化粧箱から除光液を取り出そうとしたんだが、箱の縁に瓶を引っ掛け、ガラス製の瓶は床に落ちて蒸発してしまった。

 

────そして、更に事態は悪化する。

 

「ん……んん…ぁ…」

 

「あっ…不味いです。秘孔の効果が切れそう」

 

「秘孔?」

 

瞼をピクピクさせているさやかを見て、そんな事を言い出した仁美。

俺は気になって思わず聞いたんだが…どういう事だ?

 

「はい。さやかさんがイタズラ中に起きない様に、実はこっそりと秘孔を…」

 

「またかよッ!?」

 

「仁美ちゃん…アミバみたい」

 

「失礼なっ!!?」

 

いや…実際さやかを実験台にしてんだから似たようなモンだろ…。

 

「志筑仁美、落ち着いて!───それより、秘孔の効果が切れると何か不都合でも?」

 

「はい…今は秘孔の効果で動きを封じているのですが、イタズラ中に突いた秘孔は効果が切れると他の秘孔の効果も連動して一緒に切れてしまいます」

仁美のその言葉に、俺達は変わり果てた姿のさやかを見る。

───ってことは…

 

「……気付くよなァ…」

 

「気付くよねぇ~」

 

「気付きますわね」

 

「気付くわ」

 

「……怒るよなァ…」

 

「怒るよねぇ~」

 

「怒りますわね」

 

「ブチ切れね」

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

……俺達とクラスの奴等は顔を合わせて頷き、教室の出口まで走る

 

 

 

──俺、し~らね♪

 

 

 

…走る走る。俺達は現実逃避の為に……さやかの眼が届かない所まで、笑顔で俺達は走る。

………教室に、さやかを一人残して…。

 

 

~一分後…~

 

 

「■■■■■■■■■■■ァァァァァァァァーーーーーー!!!!?!!?」

 

 

…学校中に一人の狂戦士の叫び声が響いてそこかしこから断末魔の声が聞こえたのも……完全な余談だろう

 

『……やれやれ、ホント。人間の考えてる事なんて────訳が分からないよ』

 




次はいよいよ魔女見学!

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