魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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今、ちょっと考えていることがあるんですが、まどかの家に“犬”を置こうと思っています。


ほむらの意思

~改装中店舗~

 

 あの、ほの暗い水の底みたいな眼と、怖すぎる笑顔を向けられて絶叫してしまった俺達だが

ほむらの話だと、どうやら先輩は俺が戦う前から近くに居た気配があったらしい。

 

多分、近くに控えていて俺達が危なくなったら助けようとしたんだろう。

でも俺が鉄パイプ一本で使い魔と無双していたから出るに出れなくなったんだな。

そんで今度こそ俺達のピンチに姿を現そうとしたら、今度はほむらが現れたもんだから

出番をほむらに取られて拗ねたんだと思う。

 

俺達は正直、メンドクサイ人だなぁと思いつつ、どうすれば機嫌が直るのか話していると、

ほむらにキュゥべえを差し出す様に言われて嫌がるキュゥべえを無理矢理、巴先輩に押し付けると先輩は

 

「お姉さんに任せなさい♪」

 

そう言って暗い雰囲気は消え、嬉しそうにキュゥべえを手から伸びるリボンで奪い取ると、そのリボンでキュゥべえを床に張り付けにしていた。

その際キュゥべえが、

 

『や、やめるんだ!離せショ○カー!!』

 

何処でそんな知識を得たのか知らないが、そんな事を叫んで芋虫の様にもがいている。

その時チラッと、横目でほむらを見たんだが……笑ってた。

キュゥべえを見下すように───まるで、いい気味だとでも言っているような…

 

「いい気味ね」

 

言っちゃたよ!

……と、まぁこんな感じで気合いの入ったキュゥべえの治療が開始した。

 

 

 

※ここからは音声のみでお楽しみ下さい♪

 

 

 

「ウフフフフ♪腕がなるわぁ♪」

ドゥルン…ドゥルン…ブゥイイイイイイィィィン

 

『マミやっやめるんだ!!それは治療に必要ない!普通に魔法で治してくれ!!』

 

「大人しくしてて、じゃないと死ぬわよ(殺すわよ)

 

『……おかしいなぁ…今、君が副音声で殺すって聴こえたんだけど…』

 

「あら、大変!重傷ね。コレも要るかしら?」

ピュィイイイイイイイーーー

 

『ソレ歯科で見た事あるよ!虫歯も無いのにどうしてそんな物が必要なんだい!?』

 

「穴を空けるためよ」

 

『穴!!?』

 

「いいから。じっとしてて、私───貴方を殺したくないの……じゃあ…逝くわよ♪」

ブゥイイイイイイン ピュィイイイイイイイーーー

 

『あ…ァあ…あ゛あ゛あ゛あああああああァァァァーーーー!!!!』

 

 

 

────。

 

──。

 

 

『ふぅ…死にかけたよマミ。……出来れば《アレ》はやめて欲しかった。

あんな治療は二度とごめんだ…』

 

……うん。俺も《アレ》はごめんだわ。

つか、よくあんな治療で怪我と火傷が治ったな。

 

「それじゃキュゥべえも治った事だし、自己紹介でも──」

 

「───それは後にした方がいい」

 

そう、ほむらが先輩の話を遮ぎると、耳を澄ましてみてと言われたので静かにしてみれば、ファンファンと警察のサイレンが鳴っているのが聞こえた。

 

「?何かあったのかしら?」

 

「多分、私がここの鍵が掛かっている扉をTNTで吹き飛ばしたせいね」

 

「「「え゛え゛ええ!!? 」」」

 

なんつー事すんだコイツは

 

「お前、魔法少女なら魔法使って入って来いよ!」

 

「あっ…………そっちの方が早かったのよ…」プイッ

 

「嘘つけ!その間はなんだ絶対忘れてただけだろ!?……オイこっち向け!」

 

ほむらは頬を可愛らしく膨らませ、首を横にして俺達と眼を合わせようとしねぇ

なんでコイツ頭は良いのに何処か抜けてんだよ!

 

「そんな事より早くここを離れないと

───ここからなら私の家が近いわ。そこで話を聞きましょうか」

 

俺達は頷き、先輩の言葉に甘えて近くにあるという、先輩の自宅にお邪魔する事にした。

 

 

 

 

~マミ宅~

 

あの後、警察の捜索を振り切ってデパートを抜け出したクロト達は、デパートから五分程度の距離にある大きなマンションまで来ていた。

 

「ここが私の家よ。さぁ遠慮しないで上がっ──」

 

「うぉー広れぇなぁ!家賃いくらだ?」

 

「クロ君ここ、マンションなのに二階もあるよ!!…ん?なにコレ?『必殺技ノート』?」

 

「うわっ!?スゲー下着、エロエロじゃん」

 

「確か、この辺に…あった……この紅茶も補充しておかないと」

 

家主が家に上がってと言う前に、いつの間にかクロト達はマミの家に勝手に上がり込み、

クロトはリビングのソファーに寝転がって、伸び伸びと(くつろ)ぎ、

まどかは螺旋階段を上って二階を物色し、

さやかは寝室のタンスを引っ張りだして下着を漁り、

ほむらは手慣れた手付きで、キッチンから紅茶の缶を取り出し、盾の中に収納して……、

四人はそれぞれ思い思いに家中を物色している。

……本当に遠慮の『え』の字も無い。

 

それを見たマミは、やめてぇー!と叫んで、クロト達を止めに慌てて家の中に入って行った。

 

 

──── 。

 

 

───。

 

「ハァハァハァ…まったく、油断も隙も、無いわね。あなた達」

 

(しま)いには、冷蔵庫の中身を勝手に取り出して宴会でも始めようかとするクロト達を、息を切らしながら何とか阻止する事に成功したマミは、ジト眼でクロト達を見る。

しかし、四人の反応は…

 

(くつろ)ぎやすそうだったんで…つい」

 

「二階のあるマンションなんて初めてだったから…つい」

 

「学校の男子に高く(下着)売れるかと思って…つい」

 

「紅茶が切れそうで…でも、巴マミのだから別にいいかなと思って…つい」

 

バカにしたように同じ反応で、特に反省の色は見受けられない。

 

「前半の二人はまだ許せるからいいとして、後半の二人はどういう事!!?」

 

と、まぁこんな感じで場は和み、ほむらとマミの何処かギクシャクした雰囲気は何処かに消えていった。

マミは疲れたのか、ハァとため息を吐いてキッチンから紅茶を、冷蔵庫からショートケーキを取ってきてクロト達の前に並べる。

 

「……じゃあ、自己紹介の続きをしましょうか。

私は巴マミ見滝原中学の三年生、あなた達の先輩ね。キュゥべえと契約した魔法少女よ」

 

「二年生の黒崎玄人です。好きに呼んで下さい」

 

「同じく鹿目まどかです。え~と、よろしくお願いします」

 

「はいはーい♪美樹さやかちゃんでーす。よろしくぅ♪」

 

「暁美ほむら…魔法少女よ……好物はモンブラン」

 

「……ねぇ…なんで今、ケーキ見ながら好物言ったの?……出せか?モンブラン出せってか?」

 

……若干(じゃっかん)マミがキャラを崩したが、それ以外は何事も無く簡単な自己紹介は終わった。

 

それから暫くの間、マミとキュゥべえによる先程の不思議な現象についての説明が行われた。

呪いから産まれた魔女と使い魔、希望から産まれた魔法少女、願いを一つだけ叶える代わりに魔法少女となり、その魔女と使い魔と、命を懸けて戦う宿命を背負う事になる等…。

常識的な日常の裏にそんな闇が潜んでいた事に驚くクロト達だが、マミとキュゥべえの説明を時折、険しい顔で黙って聴いているのをクロトは横目で気付いていたが……。

 

この時のクロトには、まだその理由を知らなかった…。

 

「───という訳なの。あなた達がキュゥべえに選ばれたなら他人事じゃないし……ある程度の説明は必要かなって…」

 

「必要ない」

 

ある程度の説明は終わり三人の意思を確認しようとしたマミだが、突如としてほむらがマミの言葉を遮った。

 

「この三人は契約させないわ。特に、クロトとまどかの契約なんて絶対させない」

 

ほむらはクロトとまどかを護るように腕を二人の前まで持って行き、眼を細めてキュゥべえを睨み付ける。

その突然のほむらの言動に、全員が『え?』という疑問を抱いた表情になった。

 

『……どういう事だい?君もこの街の魔法少女になるなら、仲間の多い方が心強いだろうに…』

 

「いいえ、この街は私と巴マミだけで十分事足りる。……必要ない」

 

ほむらの強気な姿勢に、マミは眉を潜めてこう言い返す。

 

「……確かに貴女は、かなりの力を持った魔法少女のようだし、今は私が居るから何とか被害は少ないけど、この広い見滝原を私と貴女だけで魔女を探し出す事は困難な筈よ?」

 

「それについては問題ないわ……私には魔女を探す手段がある。

その手段で魔女を見つければ貴女にも教えるし、それでいいでしょう?」

 

「……貴女…」

 

しかし一歩も退かず、貴重な魔女の情報を渡してまで頑なにクロト達の契約を拒むほむら。

そんな二人のやり取りを、当の本人クロトとまどかは訳が分からず首を傾げていた。

 

「───…私も、別に無理にこの子達に契約を迫る訳じゃないけど…どうしてそこまで…」

 

「…………」

 

ほむらは残りの紅茶を飲み干すと、無言で立ち上がり、夕暮れになってきた見滝原を一望できる窓まで近付いて、その光景を眺めたまま何処か悲しげな声で───こう言った…。

 

「……私はただ…“友達”をこの命懸けの戦いに巻き込みたくないだけ……平和な日常を壊さないで、何時も通りの…穏やかな明日を迎えて欲しい。そう願う事は……いけない事?」

 

「ほむら…お前」

 

「ほむらちゃん…」

 

「あんた…」

 

「……ハァ…参ったわ…」

 

そんな思い遣りのある優しい言葉を、クロト達は嬉しく思い、まどかに至っては目尻に涙を浮かべている。

それはマミも同様でため息を吐き、ほむらが他の魔法少女によくあるような、見返りだけで動くような人物では無く友達思いの優しい女の子だと分かった。

そして彼女のその決意の重さに両手を挙げて、マミは降参のポーズをとっている。

 

「兎に角、私はクロトとまどかを絶対に、魔導士と魔法少女にするわけにはいかないの」

 

「魔導士?」

 

『……それは黒崎玄人の契約時の魔法少女みたいな名称の事かい?』

 

魔導士という聞き覚えの無い単語にマミは疑問符を浮かべ、キュゥべえはクロトの事だろうと思い、ほむらに聞いてみた。

 

「そうよ、私が考えて名付けたの。……どちらにしろクロトを契約させる気は無いけど…」

 

『まぁ、確かに男性を示すならそっちの方がいいかもね…分かった。今度クロトが契約の必要があった時には、そう呼ぶ事にしよう』

 

「安心しなさい。そんな事は有り得ない」

 

ほむらはキュゥべえと眼を合わせ、バチバチと視線の火花が上がっている。

マミはそんな一人と一匹の間に立って、ほむらを(なだ)めると、テーブルに座らせた。

 

「……で?結局、俺達はどうすればいいんだ?」

 

「うん。私も、ほむらの態度で危険な事は分かったんだけどさぁ…」

 

「肝心の魔法少女が、どんなものかよく分かんないから決めようがないんだよねぇ」

 

ここまでの会話が殆ど、キュゥべえ、マミ、ほむらによる二人と一匹の話し合いだった為か、 話に着いていけない三人は、どうしていいか分からない。

 

「…暁美さんの言う事も分からないでもないけど……、

結局の所、決めるのは本人達の意思なんだから、こうするのはどう?

暫くの間、私達の魔女退治を見学して、私達の魔法少女の戦いがどんなものか理解した上で、

その危険を(おか)してまで叶えたい願いがあって、キュゥべえと契約するのかどうか…、

この子達自身が決めたらいいんじゃないかしら?」

 

そのマミの提案に、ほむらは眼を閉じ、数瞬考えを巡らせて渋々といった感じで、

 

「……好きにすればいい。…でも、私の意思は変わらないわ」

 

そう言った。

マミはそれを聞いて苦笑いで『頑固ね』と言い、飲み干したほむらのカップに紅茶のお代わりを入れた。

ほむらは『ありがとう』と礼を言い、紅茶を一口飲むと幾分か気分が和らいだのか、表情が綻ぶ。

 

『僕としてはクロトとまどかには、是非(ぜひ)とも契約して貰いたいものだけどね。特にクロトには』

 

「俺?」

 

『そう、君の様な少年が契約出来る事自体、極めて異例(イレギュラー)なんだけど、それ以上に異常な事が二つある。

一つは君の魔導士としての資質の巨大さだ。只でさえ僕は、まどかの異常な資質の高さに驚いているのに、そのまどかを軽く通り越していて……正直、僕にはコレを言い表す言葉が無い』

 

「私も?」

 

「……キュゥべえ…それ本当?」

 

マミがキュゥべえにそう聞いてしまうのは、無理もなかった。

確かにマミもクロトの圧倒的な資質を感じ取っていたが、まどかの資質がそこまで異常だとは思わなかったのだから……そしてその理由もクロトだった。

クロトの高すぎる資質が、近くにいたまどかの資質を呑み込む程巨大だった為、一本の大きな木が、それ以上の巨大な木の山に隠れる様に感じられなくなっていたからだ。

 

『そうだよ。まどかが契約すれば最高の魔法少女に成れるし、

そして、おそらくクロトが契約すれば多分、過去、現在、未来においても空前絶後。

たった一人だけの史上最強の魔導士に成るだろう』

 

「ハァ~…あんた達スゴいじゃん」

 

「「はぁ………」」

 

キュゥべえの語る壮大な内容に、さやかは話が大き過ぎてよく分からなかったが、二人が桁外れている事は分かって二人に称賛の声を上げるが、クロトとまどかは他人事の様にボケ~としている。

───ほむらはキュゥべえを睨んでいたが……。

 

『そして二つ目だが、クロト……いや、君もだったね。────暁美ほむら』

 

「…………」

 

「なんだよ」

 

『君達に聞きたいんだが、あの戦いで見せた瞳───写輪眼…といったかな……その瞳はなんだい?これでも僕は長い間、人類を見てきたんだが……そんなものは見たことが無いし、聞いた事も無い』

 

「あぁ、コイツか?コイツは──ムグッ!?」

 

キュゥべえの質問に答えようとしたクロトだが、それは隣にいたほむらに口を手で塞がれて止められた。

 

「もう、言わなくていいわクロト。コイツに話す事なんか何も無い」

 

そう言ってキュゥべえを突き放すと、ほむらはクロトの口から手を放す。

 

『……やれやれ、僕が一体何をしたというんだか…分かった。まぁ言いたくないのならそれでいいさ』

 

もう言う事は無いと、キュゥべえは差し出されているケーキを頬張っている。

しかしどうしても、コレだけは聞いておきたかったクロトは、隣で紅茶を啜っているほむらの方に向き直る。

 

「なぁ、ほむら」

 

「なに?」

 

「……俺の写輪眼は、あの状況を考えてみれば、生まれつき持っていたんだろうが…お前はどうして……」

 

「…………」

 

クロトの疑問に、ほむらは俯きながら少しの間黙っていたが、顔を上げてクロトに顔を合わせると、口は微笑んでいた……が、その眼は何処か悲しげな眼をして、クロトを見ていた。

 

────まるで……泣くのを我慢している様な……。

 

「……昔…遠い昔に……ちょっと…ね…」

 

その顔を見たクロトは『そっか』と言い、深い事情があると思ってそれ以上、追求はしなかった。

 

 

その後、難しい話は終わり、その日は日が沈むまで雑談やお茶会等をして、

クロト達は一時の楽しい時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

そして、そろそろ遅くなって来たので四人は帰る事になり、マミはキュゥべえと一緒に見送りに玄関まで来ていた。

……何故か、手に鎖を持って…

 

「ウフフフ♪私、人を家に上げた事が無かったから今日は嬉しかったわ。……名残惜しいわね」

 

「「「あ、あはは…」」」

 

クロトとまどか、さやかの三人は鎖の先にあるモノを見て、頬をヒクつかせている。

 

『マミいつも言っているだろう!!?この家に来る度に夜寂しいからって僕をコレ(首輪)で拘束するのはやめてくれ!!ウオォォォォ!!!!』ズザザザザザッ

 

キュゥべえだった。

キュゥべえはまどかに近付こうと犬用の首輪を嵌められ鎖をビィィィンと引っ張るが、床をガリガリと削っても鋼鉄製の鎖は千切れない。

 

「みんな!何をしているの!?早く帰らないとソイツみたいに帰れなくなるわよ!!」

 

その光景に茫然としていると、既にエレベーターを開けてクロト達をボタンを押しながら待つほむら。

ほむらの声でハッとしたクロト達は、危ない目付きでクロト達を見ているマミに気付き、一刻の猶予も無い事を悟った。

 

「おう!」

 

「うん!」

 

「分かってるわよ!」

 

「また来てねぇ♪」

 

ダッシュで逃げるようにエレベーターに向かうクロト達を、マミはキュゥべえ繋がる鎖片手に手を振っていた。

それを見た三人は───

 

(((絶対行きたくない)))

 

……そう思っていた。

 

 

『まどかァァァァ!!クロトォォォォ!!僕を助けてぇぇ!』

 

 

そんな、デパートで助けを求めてきた様にキュゥべえの断末魔の声を聞き流し、こうして四人は帰路についた

 

 




この作品のほむらは性格が原作と違いますが、その理由は繰り返してきた時間の内容が原作と違うために変化してしまった……という感じなのですが……どうでしょう?

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