今回は字数が多くなったので二話に分けました。
それではドウゾ♪
間違えましたこっちです。
~CDショップ~
仁美が帰った後、ハンバーガーを食べ終わった俺達は、さやかの提案でデパートの中にあるCDショップ店に行くことになった。
目的は俺の親友でもあり、さやかの幼馴染みの上條恭介の為にCDを探したいらしい。恭介は将来有望のヴァイオリニストだったんだが、事故で奏者の命である左手を負傷して現在病院に入院している。
そんな演奏が出来ない恭介をさやかは、せめて好きな演奏を聴いて元気を出して貰おうと最近は良くCDショップ店を巡って街中を歩き回っていたらしい。
「さやかちゃん、コレは?」
「ん?どれどれ……あの、まどかコレ…ポ○モンの歌なんだけど…」
「私、好きだよ?」
「あんたの好きな曲選んでどうすんの!!」
正直、俺も恭介には早く復帰して貰いたいもんだ。
今、俺が良く一緒にいる俺、まどか、さやか、仁美そしてソコにほむらが入れば五人だが男女4:1の割合では流石の俺も、肩身がキツいモノがある。
おまけに全員が美少女なもんだから、学校での男子の嫉妬の視線が凄いのなんのって…そんな訳だから恭介には早く退院して俺達の輪に加わって貰い、4:2の割合にして貰わねば…。
───その為には……
「おーい!さやかコレなんてどうだ?」
「え~と……これエロDVDでしょうがァァ!!」バシッ
そう言って折角持ってきてやったDVDをさやかは床に叩き付けた。
「あ~あ、ケースにヒビが入った。よし!これでお前が買うしか無くなったな」
「ふざけんじゃないわよ!!中学生の女子がこんな物買えるかァァァァ!!てか何でナースモノ!?」
「知らないのか?アイツの病室の本棚にある動物図鑑のカバーに入れてカモフラージュしているエロ本。大体がナースモノだったぞ」
「嘘ォォ!あの図鑑にエロ本がッ!?」
「上條君そんなの読んでるの?」
「ああ。入院した当初、病院は天国だって言ってたし、だからコレを観て貰って色々元気を出して貰おうかと───」
「何の元気を出させる気よ!!?」
───っとまぁ…こんな感じでぐだぐだしていたんじゃ、決まるものも中々決まらず、無駄に時間だけが過ぎていった。
その後も俺達は店内を分かれて捜索していたが、ダルくなった俺とまどかは試曲コーナーで最新の曲を聴いていた。
大体お気に入りのアーティストの曲を聴き終わった俺は、先程から奥の方で掘り出し物を探しているさやかを見てポツリと──
「それにしても、アイツはいつになったら告白すんのかねぇ」
そう言った。
「ん?さやかちゃんの事?」
そんな俺の一人言を、隣にいたまどかにも聞こえたみたいだ。
「ああ、二人っきりで告白の機会がアレだけあるのに、未だにくっつく気配が無いとか…どんだけヘタレなんだよ…。気付かない恭介も恭介だけど…」
アイツは上やん病を患ってんのか?
「あ、アハハ…さやかちゃん、そういう事に弱いから…」
苦笑いするまどかだが、普段はズバズバ言うくせして、いざとなるとコレだもんな。
まどかを少しは見習えよ…さやか。
そんな話をしながらウロウロするさやかを、まどかと一緒に見ていると急にキーンと頭の中に響く様な声が聴こえてきた。
『──ロト、ま、どか!』
「──ッ……なんだ」
「クロ君も…聴こえた?」
「ああ…」
俺は頷いてまどかの方を見てみると、まどかは頭を押さえて頭に響いてくる自分達の名前を呼ぶ声に怯え、不安そうに俺の袖を掴んできた。
当たり前だな、こんな普通じゃあり得ない現象が突然起これば誰だって怖くなるもんだ。
実際、俺もまどかを不安にさせない様に平常心を装っているが、心の中じゃかなり混乱しているしな。
『クロト、まどか僕を助けて…!』
「ッ!クロ君…今助けてって…」
「…行くのか?」
「え?だって助けないと──」
「助けてって事は、この声の奴は危険な所に居るんだろう。
聴こえてきた声の感じからして多分、それは間違い無い───それでも行くのか?」
そんな俺の問いに、まどかは眼を瞑って俺の袖から手を離すと、さっきの不安そうな顔は消えた。
……こんな顔をするって事は決心したみたいだな。
「行くよ!私に出来る事があるなら───やらなくちゃ!」
「ハァこうなったら何言っても聞かねぇーんだもんなぁ…分かった。
でも、お前一人じゃ心配だから俺も行く!俺の傍を離れるなよ?」
「うん!」
俺達は顔を合わせると、頷いて声が聞こえる方に一緒に走っていった。
「ん?」
~店舗改装中の工事現場~
『助けて…助けて…』
「この奥だな…」
“助けて”その声を頼りに、クロトとまどかはデパートのさらに上層部、電気も灯らず、人の気配が無くて、まだ改装の終わっていない立ち入り禁止の看板が立ててある扉の前で、二人は脚を止めていた。
「まどか。扉を開けるから、俺の後ろに」
「うん」
クロトはドアノブに手を掛け、少しだけ扉を開けて中の様子を伺うと、何も居ない事を確認してゆっくりと慎重に部屋に入っていった。
だが、何事も無かったので安全と判断したのか、まどかは大声で助けを求めた主に呼び掛ける。
「どこなのー!!誰か居るの~!!」
「うるせぇェェェ!!」ズパン!
「アブシッ!」
そんなまどかを、クロトは頭を思いっきり叩いて黙らせた。
「痛ァい!痛いよ!!クロ君何するの!?」
「バカ声がでけぇよッ!!!敵が居るかもしれねぇんだぞ!静かにしやがれっ!!」
「クロ君の方が声デカイじゃない静かにしてよ!!そして私もだけどねッ!!」
静かに部屋に入ったつもりが結局は二人の言い争いになってしまい、ギャーギャーと大声で責任の押し付け合いが始まった。
そんな大声で喋っていたからであろう。
二人は天井から聞こえてくるガタガタという音に気付かなかった。───その結果…
ガシャ
ヒューー
ゴガァン
「「へぐあァァ!?」」
アルミでコーティングされた天井の板が二人の脳天にドリフの様に直撃した。おまけに落ちてきた板は大きく、アルミでコーティングしてあるとはいえ、それなりに重量があったので二人の頭にはタンコブが出来ていた。
「ぐう゛あ゛あ゛あぁぁぁ~~!!!」
「ハァッ!~~ッたあァァァいィ!!?」
そのあまりの痛さに、クロトは頭を手で押さえて床をゴロゴロと転がり、まどかは身長差でクロトが緩衝材になったとはいえ、それなりに痛かったらしく涙目で頭を押さえてしゃがみ込んで痛みに耐えている。
「いってな!なんだよ。ったく…──ん?」
「いたたた。どうしたのクロ君──なにこれ?」
二人が落ちてきた天井板を見てみると、その上には白い犬の様な兎の様な…そんな不思議な生き物が、傷だらけで横たわっていた。
見たことの無い生き物が急に現れ、呆気に取られる中、二人の頭の中に再びキーンっと声が直接響いた。
『助けて…』
「!!コイツか?コイツが俺達に助けを…?」
「きっとそうだよ。あぁ…酷い怪我……」
そう言って、まどかは謎の生き物を拾い上げる。
『そいつをこっちに渡して下さい』
「「!?」」
直後、コンクリートの柱の陰からシューーっという息遣いの音が聴こえると、丁寧な言葉でそう言ってきた。
クロトは反射的に近くに落ちていた鉄パイプを拾うと、声が聴こえてきた柱に向かって構える。
『そいつは危険です。私に渡して離れて下さい』
───そう言って、柱の陰から出てきたのは、美しくも妖しい紫色をした頭に龍の鶏冠の様な角が生えた巨大な喋る大蛇だった。
「へ、蛇!?おまけに喋ってる!!クク、クロ君こここれは一体…」
「お、おお落ち落ち着けェェェ!そっそうだ!タイムマシンだ、タイムマシンを探せ!!」
ガタガタ
『……いえ、あなたが落ち着いて下さい』
テンパり捲って落ちているカラーコーンに頭を突っ込んでいるいるクロトに、大蛇から落ち着くように諭されてしまった。
だが二人は大蛇の迫力のある図体で未だにビビりまくり、あたふたしている。大蛇はフゥとため息を吐くと、頭をズイっと謎の生き物を抱えているまどかに近付けた。
『もう一度言います。お願いですからそいつを渡して下さい』
「え?だ、ダメだよぅ!酷い怪我してるんだよ!?」
「何故だ。なんでコイツを狙う?」
しかし、まどかは謎の生き物を隠す様に庇い、クロトはまどかと大蛇の間に立ち塞がってしまった。
そんな二人を大蛇は悲しげな眼をして見てポツリと──
『クロト坊っちゃん…まどかお嬢様…』
そう…小さく呟く。
しかし、それを聞いた二人はえ?という顔になって驚いていた。
「……どうして私達の名前を───坊っちゃん?お嬢様?」
「お前……俺達を知っている…のか?」
『!!そ…それは───ッ!?クッ』
大蛇が言い淀んでいると、クロト達の横から白い煙幕の様なものが噴き出してきた。
「こっちよ、あんた達!」
「さやか!」「さやかちゃん!」
見ると、さやかは何処から拝借したのか消火器を大蛇に向けて噴射している。
クロト達は大蛇が怯んだその隙にさやかの方に駆け出した。
「さやか!やるじゃねぇーか」
「私、さやかちゃんはやれば出来る子だと思ってたよ」
「それって今までは駄目な子だと思われてたってこと!?」
さやかの介入で、見たことの無い大きさの喋る大蛇から、現在逃げ出している俺達は改装中の店内を走っている。
「つーか、なにそれ?生き物?怪我してるじゃん」
「あっそうだった。どうしよう、治療しなきゃ」
「そうだよなぁ…コイツ天井裏から出てきたって事はホコリだらけの所を逃げてたんだろ?消毒しねーと」
水かアルコールを含んだ物があればいいんだが、まだ何も置いていない改装中の店舗にそんな物あるわけが無い。だから俺達は何か無いか、カバンやらポケットの中をごそごそと探っている。
すると、謎の生き物を抱えながら走っているまどかが、カバンの中から何か見付けたみたいだ。
「コレなんてどう?」
まどかがカバンから取り出したのは、ガラスのビンに細かな白い結晶の入っている───塩だった。
「………おい…それ…」
「いいじゃないの?塩ってテレビで言ってたけど、殺菌効果があるんだってさ!」
「ホント!?」
さやかの言葉を真に受けたまどかは、ビンの蓋を……って!?ちょっと待てェェェ!!
「ま、まどか!!やめ──」
「えい!」バサァ
……遅かった。
まどかはビン一杯に入っている“塩”を“傷だらけ”の謎の生き物に頭から全部ぶっかけた。
『ギィヤアアアアアアアアーーーー!!?!?しみるぅーーーー!!』
謎の生き物は、気絶から眼が醒めて全身をジンジンと染み渡る激痛にバタバタとまどかの腕の中で、のたうち回ってまた気絶した。
……だから言ったのに…。
「お前らバカか!?『傷口に塩』ってことわざ知らんのか!!そうなるに決まってんだろ!!!」
「そっそんな事言ったって」
「し、仕方無いじゃん!忘れてたのよ!」
「一応殺菌出来たからもういい!!次は血を止めないと…」
タオルか布があればいいんだが……
俺がそう思って、再びカバンの中を探しているんだがこういう時って中々出てこない。
「ん?コレなに?」
そうしていると、さやかが正面の柱の下に何か落ちているのを見付けたみたいで、走り抜けにソレを拾い上げると俺達にも見える様に見せ付ける。
そこには……ローマ字で──
「ろー……しょ、ん?」
「ローションじゃねぇーか!!なんでそんなモンが落ちてんだよ!?」
「知らないわよ!!」
「もうこの街嫌だよ!今日でソッチ系の物拾うの二回目なんだけど!!?」
「……まぁいいわ。丁度いいじゃんコレを止血剤代りに塗ろう!」
「んなモンで治る訳ねぇだろ!やめとけ、コイツどんな生物なのかも分からねぇのに、そんな…」
俺は必死に止めようとしたんだが、さやかは…
「大丈夫、大丈夫。これ肌に優しいって書いてあるし、火傷をハチミツで治すのと一緒だって」
そんなバカなことを言ってローションをタップリ出して手に馴染ませると、まどかの抱えている生き物にヌタァ~と塗ったくった。
すると、血はローションの膜で覆われたお陰なのか、何とか止まってくれた。───でも…
「さやかちゃん…この子テカテカして気持ち悪いんだけど…」
「もう卑猥な生き物にしか見えないな」
「あ、アハハ~。でも、血が止まって良かった……あり?なんか煙が……」
ローションを塗ったくられた生き物は、プスプスと全身から白い煙を上げている。
───なんか…ヤバくね?
『ぐあああああああーーー!!身体が焼ける様に熱いィィィ!!
き、君達ぼ、僕に一体何を───ぎゃああああーー!!?』
謎の生き物は再び叩き起こされて、もがき苦しんでいる。
ほら見ろ───だから言ったのに…
「どういう事!?なんでこの子……焦げ臭っ!!」
「フム…どうやらコイツの種族はローションが弱点みたいだな」
「呑気に分析してないで早く何とかしなさいよ!!」
「無茶言うな!!ローションなんて水で洗い流すしか無いだろ!」
「水があれば最初からソレで殺菌してるよぉ」
「水って言ったって…私には、このミネラルウォーターしか…」
「「それ水ゥゥゥ!!」」
『早くしてくれェェーー!焼けるぅぅぅーー!!』ジュウウウ
「当て身!」トン
『ウグッ』
そんなカオスな感じで逃げ回っていると
────グニャリと周囲の壁や床が歪んできた。
次回は皆さんもご存知のあの人が…
次話の更新は四月一日の9時です。