魔法少女まどか☆マギカ~心を写す瞳~   作:エントランス

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自分で言うのもなんですが、結構シリアスになってると思います


お前と出会えてよかった(逆行のプロローグ)

~見滝原・廃墟~

 

…雨が……降っていた。

そこはもう、近代都市の名残は無く…屋上から地面に落ち、瓦礫となったビル…根元から吹き飛ばされた樹木…アスファルトが剥がれ、剥き出しになった地面…そこに貯まる雨水。

そんな廃墟に、フラフラしながら誰かを捜すように辺りを見回している少女がいた。

 

~ほむらside~

 

――『――……だった』黒崎君が、あの時言った言葉が何故か頭から離れない。

風の音でよく聞こえなかったがとても、大事な事だったと思う。

だって、あの時の黒崎君、私をみて……笑顔だった。その後、二人は笑いながら光になって、ワルプルギスの夜の亀裂の部分にぶつかってワルプルギスの夜をなんとか追い返せた。

でも…… 光が消えると二人が地面に落ちていくのが見えた。

――生きていて欲しい。そう願い私は二人が落ちたここに向かった。

そして――とても見覚えのある物があった、…私も着ている制服と…黒いレインコートだった。二人がいた!そう思って急いで駆け寄った……でも…

 

「そ…んな」

 

――鹿目さんは……水に沈んで息をしてなかった…死んでいる。

黒崎君は……脇腹に鉄骨が刺さって動かなかった…死んでいる。

 

「どう…して」ポタッ

 

――私は泣いた。嗚咽しながらこんな運命を恨んだ

 

「私なんか助けるよりも私は

……あなた達に…生きていて欲しかったのに――う゛うぅ」

 

――なぜ運命は私なんかを生かそうとしたのだろう。

この人達がいれば私は満足だったのに……

 

――そこに悪魔のような囁きが聞こえた

 

『それは本当かい?暁美ほむら』

『君はその祈りの為に魂を賭けられるかい?その祈りの為に魔女と戦い続ける運命を受け入れるなら僕が力になってあげられるよ』

 

――私は顔をあげるそこには、いつもの表情のキュウべぇがいた。

…なにか…おかしいでもキュウべぇの言葉でその疑問も消えた。

 

「あなたと契約すればどんな願いでも叶えられるの?」

『そうとも、今の君にはその資格がありそうだ』

『教えてごらん君はどんな――!』

 

「え?」

 

――手を……誰かに握られてる感触がした…誰だろう?

ここには…もう誰も

 

ほむらは握られてる手を見てみた。

そこには――ほむらの方を見ている死んだ筈のクロトだった

 

「黒…崎君?」

~ほむらside out~

 

 

 

~ワルプルギス戦後~

 

そこには二人の男女がいた――クロトとまどかだった。ワルプルギスの夜を捨て身の特攻でなんとか撃退出来たものの、その代償は大きかった。

まどかは、満身創痍で立つことも出来ない程だ

クロトも、満身創痍だが這いずってまどかの隣まで来た

 

「よう…まどか…生きてるか?」

 

「なんとか…でもないみたい」

 

まどかは、ソウルジェムを掌に置いて クロトに見えるようにした

――ソウルジェムは大きくひび割れ今にも壊れそうだ

 

「お前も……か、俺もだ」

 

クロトの勾玉のソウルジェムも亀裂が入り、あまり持たないだろう

 

「これじゃ魔法……使えないね」

 

「俺は…後、一回だけは使えそうだ」

 

「……自分を治しなよ」

 

それを聞いたクロトは首を振った

 

「お前を一人に出来るかよ……一緒に逝ってやるよ幼馴染みだろ?」

 

「……ありがとう…クロ君」ピシッ

 

「ああ」

 

まどかのソウルジェムは――――もう限界だ

 

「またね…クロ君――さよう…な……ら」ピシッ

パキッィィイイン

 

まどかのソウルジェムは――――砕けた

 

「まど…か」

クロトは静かに――泣いた。今までのまどかの記憶を思い出しながら

 

『わたしまどか、きみは?』

『クロトじゃなくてクロ君でいい?』

『わたしドンクサイから』

『クロ君!似合う?』

『皆には、ナイショだよ♪』

『私、魔法少女になって良かったと…そう思うんだ』

 

 

 

 

クロトの瞳に変化が起こる

今まで二つだった勾玉が三つになり、完全な巴紋が完成した。

水に写った瞳の変化にクロトは苦笑した

 

「はは、今更変わってもなぁ……遅いんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

――ピッガガガ…――

 

――これは…随分久しぶりだな。

最近は見なかったのに…でも、なんで急にこれが?

 

 

 

景色が入れ替わる…どうやら今回は洞窟のようだ。と言っても洞窟はどんどん崩れていき、生き埋めにされそうだ。

そんな中、声が聞こえる。見てみると――少年が右半身を岩で潰されていた。

 

――なっ!?巻き込まれたのか?…クソ!やっぱり触れねぇ

 

クロトは岩を退かそうとしたが、すり抜けてしまう。これは映像なので当たり前だが、クロトはこの痛々しい光景をなんとかしたかった。

だが、そんなクロトを置いて話は進み――映像は少年が岩に飲み込まれて終わった

 

――……確かに…残せるなら残したい…だが…誰に?

 

すると、止まっていた映像の一部に穴が空き、吸い込まれ歪みだした。

 

――!?これは一体?

 

歪みは捻れ出してクロトを飲み込んでいく

 

――今度は何なんだよ。俺…この先どうなるんだ?

 

 

 

 

 

~神層界~

 

巨大な大樹の根元の泉に二人はいた神と天使だ、天使は泉に手を入れ眼を閉じ、何かを探るように集中しており、神は誰かと通信しているようだ

 

「じいさん…あれにそんな事してたの?大丈夫かよ。仮にもそっちの主神やってるのに…」

 

『しょうがないじゃろ、あの時は色々焦っていたんじゃから』

 

「だからって異世界の魂を引っ張って来んなよ。どうすんだよ…そのせいであの世界の歴史かなり変わっちゃったじゃねぇか!もう戻らねぇぞ」

 

『それならお主もそれを落とした責任があるじゃろ』

 

「まぁ、そうだけどな…ハァもういいや後は、あの世界がどうなるか見届けるしかない」

 

『そうじゃのう…この先は誰にも分からんが』

 

「これから来る奴が、どうするかによるな」

 

『ウム…ん?なんじゃ?

……転生者が死んだ!?あの愚か者め!!』

プッ

通信は途切れたようだ

「………どっちが愚か者だ、アホじじい」

 

そこに天使から声がかかる

 

「お父様、あの子の意識体が見つかりました。

どうやら、魂の記憶を追体験していたようですね。ギリギリ間に合いました。」

 

「そうか、ったく魂が完全なら楽だったのに、あんな状態じゃ苦労するなぁ」

 

「……苦労したの私なんですが――それじゃ行きますよ…えい!」

 

天使が泉から手を取り出すと、そこには赤い色の光球があった。

それは天使の手を離れて、地面に落ちると――クロトの姿になった

 

 

 

 

 

――あれ?どこだ…ここ?あの時、確か孔に吸い込まれて……ダメだ思い出せねぇ

 

「気分はどうだ、少年」

 

「ん?あんたら誰だ?」

 

クロトの視線に居たのは和服姿の男と羽の付いた女がいた。二人とも人間離れした容姿をしており、人間ではないと、直感で気付いた。

 

「俺か?俺はΛΨΤΡΦだ」「私はжпфгюです」

 

何を言っているのか理解出来なかった。明らかに人間の出せる声では無い。

 

「………ゴメンどうやって発音すんの?」

 

「あっ!そうだった。お前らじゃ分からないよな。気軽に神でいいよ」

 

「それじゃ私は天使で」

 

「…そっか…で?俺はこれからどうなるんだ?」

 

クロトは少し驚いていたが、直ぐに神と天使だと認めた上で、二人にこれからどうなるかを聞く。

 

「……お前どうしてそんな簡単に認めるんだ?普通頭がおかしいと思うだろ」

 

「そうですよ。ここに来る方は皆、そう言って信じないんですよ?」

 

そんな疑問を言う二人にクロトは当たり前のように言った

 

「何言ってんだ――魔法や奇跡があるなら、神だっているだろ」

 

「「………」」

 

二人は少し呆気に取られたような顔をしたが、神は気を取り直し、クロトに言う

 

「なるほどな…うん。お前、面白いわ」

 

「それで、さっきの続きは?」

 

「ああ、そうだったな。まずは────すまんかった」

 

「ごめんなさい」

 

「…なんで謝るんだ」

 

「後ろの泉を見てみろ、そこに映像を流しながら説明するから」

 

言われた通り、振り返って泉を見る。そこには泉を眺めている神の映像が映っていた

 

「事の始まりは、ここからだな」

 

神の言うことを聞きながらクロトは泉を見てみていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいうことか…確か母さんが言ってたっけ。生まれたての時、高熱で危なかったって、

あれってあんた達のせいだったのか」

 

「そいうことだ悪かったな…それともう一つ、お前が夢とかで見てた奴があっただろ?あれな、写輪眼を創ったじいさんから聞いたんだが、実際にその眼があった世界で、眼の所有者達の魂の欠片を詰め込んで創ったみたいだから、その影響がお前に出て来たんだろう」

 

「なんつーことしてんだよ。そのじいさん」

 

「まったくな……さて、黒崎玄人お前に聞きたいことがある」

 

今まで疲れたような顔をしていた神が、真剣な顔になりクロトを見る

 

「これは本来禁止されているが、こんな事に巻き込んだ詫びとして一つだけ願いを叶えてやる。お前が元の身体に戻る事も、街を元通りにすることも…なんでもいい」

 

「……俺は…」

 

『私はもう誰にも頼らない!』

 

その時、泉から声が聞こえた。いつも聞いている声が…だがこんな険しい声は聞いた事は無いクロトは慌てて泉を覗きこんだ――そこには

 

『誰に分かって貰う必要は無い!』

 

『私が全ての魔女を倒してみせる!』

 

ほむらがいた、髪は今のままだがメガネを外し、顔は何かを決意したような無表情でいつものオロオロした表情ではない…そしてクロトの見たほむらの姿は――魔法少女だった

 

「…どういう事だ…こんなほむら…見たことが無い」

 

「それは本来の流れの彼女だ、写輪眼の無い本来のな」

 

「これが!?こんなのが未来のアイツなのか!?

こんな……心が壊れかけのような顔をしたこいつが?……嘘だろ」

 

「本当だ。まぁお前が居たことでどうなるかは分からんが、多分同じような展開になるだろう」

 

クロトは膝から崩れ落ち、涙を落とした

 

「俺は…こんな顔をさせない為に魔導士になったのに。

これじゃ俺は何のために……」ポチャン

 

泉に涙が落ちて波紋を作る。波紋が止むと、そこには自分の顔があった

 

──俺は今まで何のために……ハハ折角この眼も変わったってのにこれじゃなんの意味も……

 

 

 

 

 

 

『──見届けてやるよ』

 

 

 

 

 

ハハッ……まだ、あるじゃねぇーか。アイツにしてやれる事が…。

……あの言葉は、そうしろって意味かもな。

……いいぜ!やってやるよ。アイツの為なら、そんなの全然惜しくない!!

 

「……なぁ神様」

 

「なんだ」

 

「さっき言ってたよな。

このほむらは写輪眼の無い…俺の居ない世界のほむらだって」

 

「……お前、なに考えてる」

 

「コイツはたった独りで戦い続けてたからこうなっちまったと思うんだ。

……誰かが見ていてやんねーと……アイツ、壊れちまう……だから」

 

クロトは立ち上がり、真っ直ぐ神を見つめる。その顔に迷いは無かった。

 

『――――――――』

 

「……いいんだな?まだ生きる事は出来るんだぞ?」

 

「そしたら、まどかを置いて行くことになる。

幼馴染みの約束は破れねぇーよ」

 

「――分かった……帰りは泉に飛び込め、そうすれば帰れる」

 

「ありがとよ」

 

クロトは泉の前に立ち振り返り、見送ってくれる神達を見た。

 

「いい忘れたけど……写輪眼、ありがとな。

この眼が無かったら、アイツ─────護れなかった」

 

クロトはそう言い残し、泉に飛び込む。

 

ザパァア

 

ポタッ

「……なにが『ありがとう』だ。こっちのセリフだ……バカ野郎が」

「うう゛ぅ」

 

二人は涙を流しながら、クロトの飛び込んだ泉を見ていた

 

 

 

 

 

 

~見滝原・廃墟~

 

――意識が…戻ってくる…近くでアイツが泣いてやがるな…ったく本当、泣き虫だな。

まぁ仕方ないか、俺も立場逆なら泣くし当たり前か…ん?声?

 

「あなたと契約すればどんな願いでも叶えられるの?」

――まずいな…あまり時間がねぇ

 

『そうとも、今の君にはその資格がありそうだ』

クロトは腕に力を入れほむらに手を伸ばした

『教えてごらん君は――!』

ギュ

「え?…黒、崎君?」

 

「よう…ほむら…ケガは…ねぇーか?」

 

「ッ!黒崎君!?良かった!今、助けを――」

ほむらは慌てて携帯に手を伸ばした…だが

 

「やめろ、いいんだほむら…俺はもうダメみたいだ…自分の身体の感覚すらねぇ」

クロトの手で押さえられた

 

「そんな…」

「…キュウべぇ…」

『…なんだい』

「少し…席外せ」

『…分かった』フッ

 

そういいキュウべぇは姿を消した

クロトはほむらを見て問いただす。

 

「ほむら…お前…魔法少女になるつもりか?」

 

「グス……うん…あなた達を…グス…助けたい」

 

「やめとけ…俺達みたいになるつもりか?…死ぬぞ」

 

ほむらはメガネを外し涙をふきクロトに強い意志の籠った眼で見つめ、クロトの手を握った

 

「私は…あなた達を…絶対助ける!!」

 

「…ハァ…お前は普段気弱なクセして…こういう時だけ強いんだから…参るぜ…分かったよ」

 

「え?」

 

「認めるよ…お前が…魔法少女になるの」

 

「黒崎…君」

ほむらの眼には再び涙が溜まった。そこでクロトは本題に入る

 

「そいう事なら…お前に魔法少女前祝いやらないとな…ほむら」

 

「そんな!?私…このペンダント…だけで…」

 

そう言い首にかけられたペンダントをクロトに見えるようにする。だがクロトは首を振りほむらの頬に手を置き言った

 

「なにがいいか…思いついたんだ…なに安心しろ、役に立たない余計な物じゃない」

 

 

 

 

 

『俺のこの写輪眼をやるからよ……うけとってくれ』

 

 

 

 

「ッ!う゛う゛ぁぁぁあああーーー!!」

ほむらはクロトにすがり付き大声で泣き叫んだ…クロトは自分の眼に手をかざす

 

「これが俺の最後の魔法だ」

ピキ ピキ

紅い光が眼に集まり、眼が正方形の箱型になり、クロトの手に浮かんでいる。

 

「ほむら…いくぞ?」

 

「グス…う゛ん゛」

 

「安心しろ…これからは…お前の眼になってこれから先を見届けてやるよ…お前は独りじゃない

俺が、ずっと見てる」

 

ほむらはメガネを取り、眼を見開くクロトが箱をほむらの眼に押し入れる。箱はほむらの眼に溶け込むように消えていった

ほむらの瞳に変化が表れた、紫色の瞳は紅くなり、三つの巴紋が刻まれた『写輪眼』へと変化した

クロトは写輪眼を譲渡し終えると、魔法衣は解けた

 

「ハァ…上手くいった」

 

「私…聞きたいことが…グス…あるの…」

 

「なんだ?」

 

「黒崎君…ワルプルギスに、挑む前、何て、言ったの……」

 

「なん、だ?聞こえ、なかったのか?」

 

コク

 

「……よかった。返事を聞けなかったのが、心残りだったんだ。

これで、悔いなく……逝ける」

 

ほむらはクロトの言葉を聞き逃さないよう、黙って聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ほむら。俺はお前が――――好きだったよ」

ピキキ

「え?」

 

「お前と出会えて、本当に……よかった」

ピシッ

「…………うん。私も、あなたが…………好きッ!」

 

「…ありがとう」

カシャァァァアアン

 

クロトのソウルジェムは、砕け……散った……。

 

「黒崎君?ねぇ…ねぇ……」

 

ほむらはクロトを揺すった──が、既に事切れている。

 

「う゛……う゛あ゛あ゛あぁぁぁああッッ!!」

 

悲痛な叫びが誰も居なくなった周辺に響き渡った

 

 

 

~ほむらside~

 

『では暁美ほむら改めて聞くよ?君の願いは?』

 

「私は」

 

――黒崎君も居なくなった…だけど彼もいる…私と一緒に私と同じ物を見ている。

だからこの先どんな事があっても…大丈夫――彼が見ていてくれる

 

ほむらは三日月のペンダントを握りしめキュウべぇに言う

 

「私の願いは――この人達との出会いをやり直したい!

二人に護られる私じゃなくて、二人を護る私になりたい!!」

 

「うぐっ」

――願いを言うと私の胸に激しい痛みが走った。だけどこんな痛み!二人の方がもっと痛かった!

だから……待ってて必ずあなた達を助ける!!

 

ほむらの胸から紫色の光の珠が浮かび上がる。

 

『契約は成立だ!君の祈りはエントロピーを凌駕した、解き放ってごらん』

 

 

 

――私は光に手を伸ばす…あの楽しかった毎日をもう一度過ごす為に

 

カシャン

 




次回、新章です

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