タロット使いの魔導師   作:祭永遠

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メインのSAOよりこっちの方が筆が進む不思議


暴れん坊幼竜

俺は大人しく先を歩いている人物に着いていく。その間は会話などなく、ただ黙々と目的地に向かって歩みを進めるだけである。そこそこ沈黙が苦手な俺は勇気を出して話しかけてみた。

 

 

「あのー、お願いした俺が聞くのも変ですけど、どうして俺を連れて行ってくれるんですか?」

 

 

「………その事か…本来なら学院に無関係者はいれないのだがな。お前の友達という幼竜が使い魔のとしての契約をしようとしないんだ…正直こんなことは前代未聞でな……そこにその幼竜の友達だというお前が現れたという訳だ」

 

 

どうやらイルククゥは契約を嫌がっているらしかった。あんな問答無用でさらわれては無理もないと思うのだが、前代未聞ということは少なくとも過去そんな事例は発生したこともないということだ。

そのまま詳しい話を聞きながら歩いて行くと、悲鳴のような声がいくつも聞こえてきた。

 

 

「まだあの幼竜は暴れているのか……」

 

 

学院とやらに近づくにつれてどんどん悲鳴も大きくなっていく。一応怪我人は出ていないらしいのだが、万が一を考えて急いでもらう。

そして学院の入口につくと、案の定イルククゥが周りに少なくない被害を出していた。それを見た俺はこれ以上被害を拡大させないために大声で叫ぶ。

 

 

「イルククゥ!!!!ストップだ!!ステイ!!」

 

 

俺の声に反応したイルククゥは暴れるのをやめたと思ったらきゅいきゅい言いながらこちらに突っ込んできた。

どうして喋らないのか疑問に思ったが理由がありそうなので念話で話しかける。

 

 

『どうした、イルククゥ。なぜ言葉を発しない?』

 

 

『お母さまから人間の前で喋っちゃダメって言われてるのね』

 

 

『俺の前で普通に喋ってたじゃないか』

 

 

『それはびっくりしてつい声が出ちゃったのね!!韻竜は貴重らしいからバレたらダメみたいなのね』

 

 

先程まで大暴れしていた幼竜が急に大人しくなり、しかも突如現れた謎の人物と仲良さげにしているのを見てどよめきが起こっていた。

俺はそれを気にすることなく考え始める。

 

―――なるほど、そういうことか。

 

この世界でも、人の言葉を喋る竜は珍しいものであるらしかった。

どうして使い魔になるのを嫌がっているのか聞くと、行動が制限されるのが嫌だそうだ。暇潰しになるのならそれくらい我慢できるらしいが、どう考えても俺と魔法戦で遊ぶ方が遥かに楽しいし暇潰しにもなるようであり、主にその二つの理由が原因のようであった。

俺はどうにかならないものかと考え、一つの案が脳内で浮上する。

それを実行出来ないかと学院の生徒らしき人物たちを守るように立って、杖を構えている頭が眩しい男性に声をかける。

 

 

「あのー、すみません、どうもあの幼竜は使い魔になっても面白くないのが嫌なそうて……これってどうしても契約しなきゃいけないんですか?」

 

 

「……なんと…!!君はドラゴンの言葉がわかるのかね!?…いや、それよりも……そうだな、そうなる。この使い魔召喚の儀式は神聖なるものであり一度召喚されてしまえばやり直しは効かないのだ」

 

 

なんと融通の効かない儀式なのだろう。使い魔になる生物だって自分の主くらい自分で決めたいと思うのは俺の勝手な想像だろうか。しかしやり直しが効かないとなると、やはりイルククゥには使い魔になってもらうしかない。それをイルククゥに話すと駄々をこね始める。そこで俺は先程思い付いた案をイルククゥに提案するとしょうがないという風に首を二、三回振ったあと了承してくれた。

このドラゴンはかなりの気分屋でもあるので、気が変わらないうちに先の禿げ頭さんに伝える。

 

 

「えっと、大変言いにくいのですが……ヤツは俺がこの学院にいてくれるのであれば使い魔の契約をしてもいいと言ってるのだけど……」

 

 

「なんと…!!それは本当かね!?」

 

 

「ええ。俺も行くところがないので、ここで下働きでもしながら置いてもらえると助かるのですが……」

 

 

「ふむ、そうだな……わかった。それについてはなんとかしよう。生徒一人の進級がかかっているのだ、学院長も下働きの一人を雇うくらいなら許してくれるだろう」

 

 

こうして晴れて俺はトリステイン魔法学院の下働きとなり、イルククゥはタバサの使い魔シルフィードとしてここに残ることとなった。

 

そのあとは順調に使い魔召喚の儀式が進み最後の生徒が出てきた。

ピンクの髪の毛が綺麗な目立つ容姿をした女の子であった。その子が他の生徒と同じように呪文を唱え始めたところで、その子の魔力が急激に膨らんだ。

 

―――っ!?なんだこの膨大な魔力は!?ユニゾンしたときの八神すら越えるだと!?

 

推定魔力量はSSS-程度。

しかも驚きはそれだけじゃなかった。なんと呪文を唱え終わるとそれが爆発したのである。何回も何回もそれを繰り返す。そのたびに巨大な爆発が起こる。俺は相当危険なものだと判断したのだが、周りの生徒たちはそれをわかっていないようで笑って馬鹿にしている。下手をすれば命の危険すらあるというのに暢気すぎる気がした。

彼女の矛先がこちらに向かないのは、この召喚の儀式を成功させたいのであろう。それが三桁に届こうかという頃でそれが成功したようだった。

爆発したところの煙が晴れ、彼女の使い魔となる生物が姿を現す。しかしそこでも俺は驚愕させられた。

なんと煙が晴れた先にいたのは日本人らしき風貌をした男で、なにやら混乱している様子であった。

 

周りがそれをさらに囃し立て、彼女は禿げ頭先生にやり直しを要求するが、先程と同じような理由で断られていた。そして本人が納得しないまま使い魔の契約が結ばれてしまった。俺はあまりの驚愕にその場から動くことができなかったが、その少年が急に声を上げて苦しみだしたので、我に返り少年のそばへ腰を落とす。

 

 

「どうした少年!?大丈夫か!?」

 

 

「いやっ……!!なんか……わっかんねえけど……左手が急に熱くなって……」

 

 

すると上から禿げ頭先生……もといコルベール先生がその答えをくれる。

 

 

「安心したまえ、それは使い魔のルーンを刻んでいるだけだよ。直に治まる」

 

 

コルベールの言葉通り、すでに少年が苦しんでいる様子はなかった。息が荒いのはその名残だろう。

すると少年はここぞとばかりに声を上げた。

 

 

「なんなんだあんたら!?それにここはどこなんだよ!?」

 

 

少年の声に誰も反応せずコルベールが言った。

 

 

「それでは教室に戻るぞ。それと君、あとで学院長室へ案内するのでそれまでどこかで暇を潰しててくれ」

 

 

俺を指差しそう言うと一斉に飛行魔法を発動させて、教室のあるらしき方角へと行ってしまった。その際生徒たちの何人かが少年を召喚してしまった彼女に捨て台詞みたいなものを言っていた。

そしてこの場に残ったのは俺を含めて三人となった。すると彼女の方が溜め息をつき、少年の方へ向き直りいきなり大声で怒鳴った。

 

 

「なんなのよあんた!!」

 

 

その言葉にいきなり召喚されてしまった少年も怒ったようで、負けじと怒鳴り返す。

 

 

「お前こそなんなんだ!!なんで人間が飛べるんだ!!それとさっきの熱さ……一体俺の体に何をしたんだ!!」

 

 

少し言い合いになりこのままじゃ埒があかないと思った俺は二人の間に入る。

 

 

「はいはーいお二人さん。そこまでよ?まずは落ち着いてちゃんとした自己紹介からしなさい」

 

 

急に話しかけられ勢いを削がれたのか少年の方が先に自分の名前を言う。

 

 

「俺は平賀才人。東京にいたはずなんだけど……あんたなんか知ってんのか?見たところ日本人みたいだし」

 

 

「日本人なら目上の人間には敬語を使え。そんなんじゃ将来苦労するぞ。んで?彼女の名前は?」

 

 

「わたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。覚えときなさい」

 

 

「関係ないが俺も一応な……相模智春三等空尉だ、以後よろしく」

 

 

すると才人という少年の顔が驚愕に染まる。

 

 

「なっ!!あん……じゃない、貴方は軍人なんですか!?というか何歳ですか!?俺とあまり変わらないように見えますけど」

 

 

「まあ軍人だな。ちなみに歳は20だ」

 

 

「20で三等空尉!?そんな馬鹿な!?」

 

 

才人はさらに驚いていた。

確かに日本にいたのではあり得ないだろう。しかし俺はミッドチルダの軍人である。あそこは有能であればガンガン上に上げられてしまうので能力をセーブしたりもした。

 

 

「……って、そうだ!!それよりも!!なんなんだよさっきのは!!人が飛んでたぞ!?」

 

 

「「そりゃ飛ぶでしょうよ」」

 

 

当たり前すぎる質問に思わずルイズとハモってしまった。

それを細かく説明しても信じられないようで才人は実演してみろと言う。ルイズはなぜか気まずそうな表情をしていたので俺が実演してみせた。

 

 

「ったく。こんなん見ても面白くないのにな……とりあえずいくぞ?ミクシム、セットアップ」

 

 

《了解、セットアップ》

 

 

「「腕輪が喋った!?」」

 

 

今度は才人とルイズの二人がハモる。うるさいのでスルーする。そしてセットアップが完了したところで、またもや二人揃って声を上げる。

 

 

「「服が替わった!?」」

 

 

「あー!!もううるっさい!!少しは静かにして見てろ!!」

 

 

俺がそう怒鳴りつけると静かになる。ようやく集中できる環境が整い、そのまま飛行魔法を発動させ浮かび上がって魅せる。どんどん加速し学院の周りを一周してきたところで二人の目の前に降り立つ。

二人の表情を見ると驚愕で声も出せないような顔をしていた。才人はともかく、ルイズはなぜそこまで驚いているのか不思議だったが気にせずに声をかける。

 

 

「どうした二人とも。実演してみせてやったぞ」

 

 

「……日本にも魔法使いっていたんだな」

 

 

才人がしみじみと呟く。

 

 

「……いやおかしいでしょなんで人があんなに速く……」

 

 

ルイズはあり得ないものを見たような表情でぶつぶつと小声で何かを呟いていた。

すると学院の方からやけに目立つ頭が特徴のコルベールが飛んできた。授業が終わったらしくこれから学院長室に案内してくれるとのことなので二人に別れをつげてコルベールへとついていった。その際空を飛べるか聞かれたので頷いたら、何かを考える仕種をしてからついてこいと言ったのでそのままついていくことにした。

 

 

 

俺は学院長室に入ってすぐに自分の目を疑った。そこにいたのは最早妖怪レベルの人物で、髪の毛は真っ白に染まり、常識では考えられない位置まで髭を伸ばし、それすらも真っ白に染まっていた。やはりというか、それ以外考えられない口調で学院長と名乗る人物が話始めた。

 

 

「まずは礼を言っておこうかの。君のおかげでミスタバサが留年せずに済んだ。留学生を留年させたとなるとこちらも外聞が悪くなるのでな、いやはや……本当に助かったわい」

 

 

タバサはガリアという国からの留学生らしく、それ以外はほとんど素性がわからないという謎に包まれた生徒らしい。しかしここは貴族であり魔法を学ぶ意思さえあれば体外の人は受け入れる体制らしく、それを気にしても口に出して直接聞くようなことはしないみたいであった。

 

 

「さて、それで君の処遇だが話はそこのハゲール君に聞いておるぞ。なんとも住む所がなく住み込みでここで働きたいとか」

 

 

「学院長、私はハゲールではなくコルベールです。こちらの方はどうやら魔法も使えるらしいので、用心棒として雇っては如何でしょうか?」

 

 

コルベールが間違えられた名前を訂正すると同時に俺の処遇について提案を出す。

 

 

「しかしのう……それなら学院の教師たちで十分じゃろ…他に何かないかのう………ああ、そうじゃ。そう言えばなんとかっていう女性教師が産休を取るとか言ってなかったかね?」

 

 

「そう言えばそうですね……」

 

 

なんとかって人が可哀想に思えた。ここに勤務しているというのに名前すら覚えてもらってないとは……

 

 

「その教師は確か女子寮の管理人もしておったな?そこを任せようじゃないか」

 

 

「ちょーっとストップー!!俺は男だ!!男が女子寮の管理人はさすがにまずいです!!」

 

 

俺には少なくとも常識はあるので思わず声を張る。

すると学院長はなんてことないという風な顔で嬉しくない返事をくれた。

 

 

「その点については心配いらぬ。なんせ貴族はプライドが高いからのう。恐らくじゃが教師でもない管理人は使用人ぐらいとしてしか見られないじゃろうて。いくら魔法が使えてもそこは変わらんよ。しかも君の魔法技術は独特じゃ。先程覗かせてもらったがなるべく人前で使うのは避けるのじゃぞ?」

 

 

有無を言わさずに決定してしまった。反論すれば恐らく仕事がなくなってしまうような気がしたので遺憾ではあるが大人しく従っておく。

というかいつの間に覗いてたんだこの人。どこからかはわからないが、さっきの飛行魔法を見られていたようだ。以後こんなことがないように、俺が管理する場所や休む場所などは徹底的な対策をしよう。

そしてどこからかネズミを出すと、指示を出していた。女生徒たちに説明をしてくれるのだろうと思ったのだが、そのネズミは部屋の隅に行ったかと思うと、いつの間にかそこにいた秘書のような格好をした女性のスカートの下に入ろうとしていた。

するとその女性は足を上げた瞬間ネズミに向かって降り下ろした。ネズミはチューチューと泣きながら学院長の元へと戻っていく。

 

 

「おお、モートソグニルや…大丈夫か?まったく…ミスロングビル、ワシのモートソグニルが傷ついたらどうするつもりじゃ」

 

 

「それが嫌ならば使い魔を使って、スカートの中を覗こうとするのはやめていただけますか?」

 

 

とんだエロじじいである。

それに従う使い魔もなんとも言えない。

 

 

「ちょっとくらい良いではないか、ケチじゃのう」

 

 

そういう問題じゃない。こんなのが管理局にいなくて良かった。俺の中でこの人の評価は一気に下がった。どんな器量のある人でも、ところ構わずそういうことをするのは感心できない。

 

 

「さて……それではミスロングビル。この御仁を寮まで案内してやってくれ」

 

 

「かしこまりました。それでは行きましょう……えっと……」

 

 

「あっ、相模智春です」

 

 

「それではトモハル君、私についてきて下さい。女子寮までご案内します」

 

 

ロングビルはそう言うと先に学院長室を出て行く。俺も慌ててそれを追いかける。学院長室を出る前にお辞儀と挨拶をするのも忘れない。習慣とはなかなか抜けないものである。女性が相手だと途端に会話が難しくなるのは全異世界共通だと思う。会話内容が見付からず黙って後ろからついていくとある大きな建物の前で止まった。

 

 

「ここがトリステイン魔法学院の女子寮となります。管理人室は最上階となります。それでは私はこれで」

 

 

管理人室が最上階!?普通一階じゃないの!?などと言えずにロングビルに礼を述べその背中を見送る。

夜も遅くなってきたので早々に管理人室に入ろうとしたところでルイズと才人の二人と鉢合わせした。

 

 

 




そのうち設定集でタロットの能力一覧みたいなのを出します。
一応ネタバレにならないよう本編で紹介したものから穴埋めしていく形にしようと思ってます。

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