タロット使いの魔導師   作:祭永遠

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異世界さん、こんにちは

俺が目を覚ますとそこは知らない土地であった。

周りは木々に囲まれており、近場に川らしき物があるのか水の流れる音が聞こえる。時折聞いたこともないような鳴き声が聞こえたりするのは、ここが俺の知っている世界ではないことを物語っていた。

 

俺は重い腰を上げ、辺りを見渡す。デバイスであるミクシムでサーチャーを飛ばし、それ経由で上空からの様子も確かめる。しかし四方八方に自然が見えるだけで街らしきものは一つも見当たらない。

するとミクシムから情報が入り、魔力反応が一つ近くにあることを教えてくれる。

 

この多い繁った木々の中に一つだけの魔力反応…俺と同じように跳ばされた人間かもしれないと思い、その反応の方へ歩みを進める。

だがその先にいたのは予想外の生物で、俺は思わず後退り、その際に木の枝を踏んでまい居場所がバレてしまった。

 

 

「#℃§&£¢∞仝※∀!!」

 

 

俺はそれを聞いて驚愕した。

この生物……ドラゴンはなんと(何語かはわからないが)言葉を喋ったのである。その事実に会話が成り立つ可能性があることがわかり、とりあえず話かけてみる。ドラゴンは頭の良い生物なので、もしかしたら俺の言葉を理解してくれるかもしれないと信じて。

 

 

「おーい!!ドラゴンさんや!!ここがどこだかわかりますかい!?」

 

 

そのドラゴンはビクッと体を揺らしたあと首を傾げる。どうやら何を言っているのかわからないみたいだった。

それがわかればいつまでもこのドラゴンとにらめっこしている義理はないので早々に立ち去る。しかしすぐにそのドラゴンは俺の後を飛んで追いかけてくる。

 

 

「うへー………やっぱり肉食か!!ちっきしょー!!ミクシム、セットアップ!!」

 

 

《了解、セットアップ》

 

 

ちなみにこのデバイスは翻訳機能もついているし、外国語の成績がお陀仏な俺用に日本語で話してくれる優れものだ。ちなみに翻訳機能はミクシムに登録されている外国語のみに対応する。よってこの場ですぐにというのは難しいのである。

 

セットアップが完了し、バリアジャケットを纏う。

俺のバリアジャケットは、わかりやすく学ランである。ちなみに上は長ランで、風のあるところではバッサバサ靡いてうるさい。

 

俺は飛行魔法を展開し上空へと向かう。

ドラゴンの前に出るより先に魔力弾を生成し、自身の周りに浮かべる。そのドラゴンはヴォルテールみたいな化け物よりは数段小さく、幼竜にも見えた。魔力容量もそこまで多くなく、いっても精々A~AAランクであると思われた。

 

そして俺はドラゴンの前に出ると同時に牽制として魔力弾を飛ばした。すると幼竜は驚いたように旋回しそれを避ける。その際にまた何か言語を話していたようだが聞き取れなかった。

 

 

「ミクシム、言語解析頼めるか!?」

 

 

《了解、やってみましょう》

 

 

ミクシムが言語解析をしてる間は、魔法は自分で発動させなければならない。マルチタスクで飛行魔法と魔力弾の計算を行いドラゴンとの戦闘を続ける。

このドラゴン魔法はイマイチだが飛ぶ速度がかなり速い。

 

―――ミクシムっ…まだかっ

 

 

この間も魔力弾を生成、ドラゴンに向かい放つ。

二つの魔法を同時使用するたびに、意味がわからない言語でドラゴンが反応を示す。

 

 

《主、言語解析が完了しました。すぐに対応させます。私がいればこちらの言葉も翻訳することが出来ますので、言葉は通じます。今から魔法の計算はお任せください》

 

 

「ナイスだ、ミクシム!!」

 

 

言うと同時にサイドポーチから月のカードを取りだしミクシムへスラッシュさせる。

 

 

「第一詩編解放」

 

 

すると自分の魔力とは違う力が体中に溢れるのがわかる。

そしてこちらに向かってくるドラゴンに、俺の後ろから出てくる黄色の物体を見せる。

それを見たドラゴンは声を上げた。

 

 

「きゅい!?なんなのねこれ!?体がどんどん凍ってくのね…ああもう翼にきて飛べなくなってしまうのね……」

 

 

―――――パチンっ

 

 

指を鳴らして能力を解除する。そしてドラゴンに話しかける。

 

 

「そこのドラゴンさん、俺の質問に答えてくれませんか?拒否すれば先程の事が現実になりますよ」

 

 

 

「きゅ!?わかったのね!!答えるから凍らせるのはやめてほしいのね!!」

 

 

幼竜だからかいきなり言葉が通じても疑問に思わないらしい。色々質問をしてわかったことがある。ここは魔法技術はあるが、管理世界ではないようであった。そしてこのドラゴンの名前はイルククゥというものであった。

その名前を聞いた際に頭の隅で何かが反応したのだが、これが何かはわからなかった。

 

イルククゥから得た情報を整理すると、この世界はハルケギニアというらしい。トリステイン、ゲルマニア、ガリア等の国がある。話を聞く限り文化レベルは高くなく、電気や自動車などもないらしい。

 

 

「それよりもこっちも聞きたいことがあるのねっ」

 

 

「ん?答えられることなら何でも答えるよ」

 

 

「どうして魔法を二つ以上使えるのね?人間は下等な生物だから一つの魔法を使うと他の魔法は使えないはずなのね」

 

 

「そんなバカな……って待てよ……昔そんな話をどっかで……ってああああああ!!!!」

 

 

「きゅい!?いきなり大声出すななのね!!」

 

 

イルククゥが何か言っていたが最早何も聞こえなかった。

トリステイン、ガリア、それにゲルマニア……ハルケギニアに魔法は一つ発動させると他の魔法は使えない、これが揃うのは一つしかない。ゼロの使い魔だ。

 

前の人生でラノベを読んでいた記憶がある。内容はほとんど覚えてないが、登場人物くらいなら名前を聞けば思い出せるだろう。そしてこの幼竜のイルククゥ……誰かの使い魔になっていた気がする。

 

そしてここにいるということは、まだ使い魔にはなっていないらしい。

自由に喋っているのがいい証拠だ。

 

それにしてもゼロの使い魔か……俺の人生どうなってんだろうな……跳ばされんならもっと平和な世界がよかった。

とりあえずポジティブにいこう。使い魔として召喚されるまで俺の訓練に付き合ってもらおう。命の心配をせずにドラゴンと戦える機会なんてそうそうあるもんじゃない。

どうやらイルククゥも暇潰しにちょうどいいと思ったのかすぐに了承してくれた。それからはそこそこ面白かった。

 

今まで出来なかった幻獣との戦闘、それをひたすらやっていた。

限定解除も全てのカードで試し、出来る限り弱点や弱い部分などを徹底的に調べ上げた。

 

ミクシムが言うには正確にはわからないがこの世界に来てから4、5日程度たったらしい。その間に連絡を試してもらったり、魔力を無駄に放出し居場所を知らせたりしようとしたが無駄だった。

すると突然イルククゥの悲鳴が聞こえた。

 

 

「きゅいきゅい!?なんなのねこれ!?体が吸い込まれるのね!?トモハル!!助けるのねっ」

 

 

「これは問答無用なのか!?イルククゥ!!そのまま身を任せて大丈夫だ!!その出口には悪いものはない!!安心しろ、後で遊びに行ってやる!!」

 

 

そこまで言ったところでイルククゥの全身が、全て青い鏡のようなものに吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、まずはミクシムをセットアップ。後はイルククゥの魔力を感知できる場所まで行くだけである。まあ、これが一番めんどくさいのだが。

そして半日ほど飛び続けただろうか。ようやくそれらしき魔力反応を感知した。

そこにあったのは城のような見た目の建物であった。目立たないように近場で降り、カードを一枚取り出す。そのカードの名は皇帝。

 

 

「第一詩編解放」

 

 

このカードの能力は目の見える範囲で瞬間移動ができるというもの。正確には自分の周りの空気と移動したい位置の空気を入れ替えると、移動ができるというものだが瞬間移動とあまり変わらない。

 

そして一気にそこまで近づいた。しかしそこでこの建物の関係者らしき人物に止められた。

 

 

「ふむ、待ちたまえ。ここから先は神聖なる学舎だ。関係者以外は入らないでいただきたいな」

 

 

「今日使い魔の召喚ありましたよね?その中で誰かが幼竜を召喚した筈です。その幼竜俺の友達なんですけど会えないですかね?」

 

 

するとその人は悩んだ素振りを見せると一言だけ呟いた。

 

 

「………いいだろう、着いてこい」

 

 

予想外の答えに拍子抜けしてしまった。魔法至上主義のことだから断られると思っていた。その場合は無理矢理入るつもりだったが。

 

そして俺はイルククゥに会うためにその人物に着いていった。

 

 

 

 


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