ヴェアヴォルフ~ヘルシングの大尉が転生~   作:むらやま 

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いや、本当なんて書いたらいいのやら。皆さん知っている方はお久しぶりです。知らない方は初めまして。

ええ、本当に1年ちょい掛かりました。書こうと思っても文章に出来ない、よく分からないスランプ?に陥ってしまいました。でもこうしてハーメルンに何とか戻ってこれました。これも皆様の応援のお陰です。ありがとうございます。

相変わらず駄文に超展開、ご都合主義ですが、楽しんで貰えたら幸いです。


第45話 人狼化

「あ・・・しくった」

 

銃声と共にシュレディンガーが砂に膝をついた。だが先程突き飛ばした神崎が逃げ切れていないのを見て、ジャージに隠していたグロック18を引っ張り出し時間を稼ごうとする。

 

パンッ!!

 

・・・が、その判断が仇となった。シュレディンガーが銃を撃とうとするその瞬間シュレディンガーの頭部に不可視の弾丸が当たり血と脳漿を撒き散らす。

 

だが大尉は動揺しない、多分あいつは死なないと知っているからだ。しかし、それを知らない神崎は目の前の状況を見て動揺してしまった。

 

「あ、ああああっ・・・」

しかも、最悪な事にシュレディンガーの死ぬ瞬間を見た神崎が悲鳴を上げて立ち竦んでしまう。

 

「あ、私のせいで・・・」

 

「馬鹿野郎早く隠れろ・・・!」

 

シュレディンガーはまだ転生してから事故で怪我はしたが死んでいない筈だ・・・若干不安ではあるが多分生き返るだろう。問題は神崎をどうするかだ・・・あれじゃ足が竦んでまともに動けんだろう・・・このままじゃ良い的じゃないか・・・

 

「動かないで、キンジ」

 

だが、大尉の予想に反してカナは撃ってこなかった。

 

「これが最後の頼みよ、私と協力して・・・アリアを殺しましょう。」

 

「・・・前と同じだ・・・そんな頼み、聞き入れられん・・・」

 

そう言って大尉がアリアの前に盾になる様に立ち塞がる。

 

「・・・お願いよキンジ、緋緋神が目覚める前にアリアを殺さなければならないわ・・・"教授"がもうすぐそこまで来ているの・・・」

 

「・・・緋緋神?・・・なんだそれ・・・」

 

初めて聞く言葉に対して、大尉の頭に疑問符が付く。

 

「アリアの中にいるもの・・・あれは途轍もない力を持っているわ、そして"教授"も・・・"教授"はアリアにイ・ウーの指導者の座を譲るつもりなのよ。」

 

「・・・おいおい、本気で言ってるのか?・・・途轍もない力だと?・・・それにイ・ウーのリーダー?こいつに?・・・」

 

「緋緋神は恋心と闘争を司る・・・神と言っても差し支えのない存在よ。緋緋神は自身の魂の器に取り憑き乗っ取り・・・世に混乱を巻き起こすの。」

 

・・・歴史は愛と戦争の螺旋階段って言うしな、あがちとんでもない力を持つっていうのは本当なのかも知れん。だがこんな事を俺が思うのは変かも知れないが・・・神ねぇ・・・胡散くさいな。

 

「・・・で、"教授"が神崎をリーダーにする理由は?・・・神崎にその力があるとでも?まさか・・・もう緋緋神さまとやらが取り憑いてるとか?・・・それらしい力は見た事がないがな・・・」

 

「そう・・・いえ、ちょっと違うわね。アリアの体内には緋緋色金が入ってるの。心結びをする為にね、心結びをする為には色金と3年間共にいなければならないのよ。」

 

「・・・3年前・・・なんかあった?・・・」

 

大尉が神崎と目を合わせる。

 

「・・・背中の傷、あったでしょ。」

 

神崎はあまり言いたくないと言う顔をして背中に手をまわす。それを見て大尉は着替えの時に背中にあった銃創を思い出した。

 

「3年前にパーティーで撃たれたのよ、いきなり後ろから。結局犯人も捕まらなかったわ。」

 

「撃ったのは"教授"よ・・・彼には何か計画があったのでしょうね。緋緋神に・・・色金の力に関する何かを。そして今、その計画を完成させる為に"教授"はここに向かっているわ・・・さあ、時間よキンジ、そこを退きなさい!」

 

そう言って大尉とその後ろにいる神崎に向けてシュレディンガーを撃ったのとは別のSAAを向ける。随分とギリギリまで待ったようだ・・・家族、それも兄弟とは戦いたくないらしいな。まったく持ってお人好しだ。

 

・・・まあ、当の俺は戦う気マンマンなんだけどな・・・

 

 

 

 

(やっぱり退かないわね。)

 

最後通告をしたのにも関わらず退かないキンジに、カナはそう判断し、溜め息を吐く。

 

(昔からどこか芯が強いのかなんなのか、やけに頑固な子だったけど、ここまで強情だなんて・・・別にアリアに気があるわけでもないし、前言った通りそこまで闘う事を望んでいるのかしら・・・)

もちろんカナも家族など撃ちたくはない。だがここは大義の為と心を修羅に変えてSAAを構える。

 

弾丸は・・・シャクだが"教授"に貰った弾丸を込めている。もし、弟と戦う時になったら使いなさいと言われたものだ。調べるなとキツく言われ、素材すら知らない。

 

(この前は不可視の弾丸を素手で弾かれた・・・それにあの図体と分厚い防弾コートをSAAで撃ち抜けるか怪しい・・・それなら掴めない位置からビリヤードで撃ち込む!)

 

・・・そしてこのフィールドは幸いにもカナの得意なビリヤードがしやすい石柱が幾つも有る・・・弾を弾いて当てるのには丁度いい所であった。

 

カナは素早く当てる位置を決める。ヒステリアモードで洗練された五感が、脳が、弾丸がどの様に飛ぶかを計算しイメージさせる。掴まれにくい様に全てバラバラの位置にした。そして・・・

 

(・・・ここっ!)

 

SAAは既に抜いてある・・・後は狙った位置に正確に撃ち込む事と、迎撃不可能な速度で早撃ちする事・・・例え銃口で弾丸の行く先を予測しても、アリアをキンジが庇おうとも必ずアリアを殺せる。

 

パパンッ!!

 

(流石に6発は同時に聞こえないらしいわね・・・)

 

ヒステリアモードで強化された視覚・・・弾丸は真っ直ぐ狙った場所へと向かって行く。

 

(・・・どうかしら、流石にこれなら・・・っ!?)

 

・・・カナは驚愕した。恐ろしい事にキンジは・・・それを目で全て追っていたのだ。だが更に恐ろしい事が起き出した。

 

 

ぞわぞわと・・・いや、ヒステリアモードで強化されているだけで実際は凄まじい速度なのだろうが、キンジの被る野球帽としっかり着込んだ分厚いコートから見える顔が、見る見る内に白い毛で覆われていく。

 

 

それだけではない、まるで別の生き物の様に顔が骨格から変わって行く・・・それも顔だけではない。袖口からも白い毛が出ている辺り全身が別の生き物へと変貌したのだ。

 

 

そして、キンジ・・・いや、弟だったモノは弾丸よりも早い速度で両腰に止められたモーゼルに手を伸ばす。そして・・・

 

 

ババンッ!

 

モーゼルの銃口が光る。後にはクシャクシャに潰れた弾丸か6つ、ポトポトッと砂の上に落ちただけであった。

 

(曲射を・・・あのモーゼルで防ぎきった!?そんなバカな・・・)

 

カナは目の前で起きた事が信じられなかった・・・放った弾丸が壁に当たる前、壁で弾いた瞬間、弾かれた後の3回を2丁撃ちで2発づつ迎撃されたのだ。

 

大尉のモーゼルは早撃ち向けではなく、あのロングバレルではなおの事困難なはず・・・更に言うと2丁で早撃ちなど聞いた事すらない・・・だが、目の前にいる"あれ"はそれを難なくやってのけた。

 

最早人間の到底真似出来る技ではない・・・あの化け物揃いな鬼や、それに順ずるモノの芸当である。決してヒステリアモードで片付けられるものでは無い。

 

(・・・本当に、あれはキンジなの?・・・)

 

・・・カナには、遠山キンイチには、目の前にいる存在が本当に弟なのか確信が持てなくなった。

 

 

「・・・銀の弾丸か・・・惜しかったな・・・」

 

そして動揺し、狼狽えたその瞬間、既に目の前には化け物がいた。

 

 

ボクッ!!

 

「ぐぼぉっ!?」

 

大尉の強烈な蹴りがカナの腹にめり込む。くの字どころでは無い、つの字ぐらいの勢いで体が曲がり、地面をまるで水切りの様にバウンドして行く。

 

そして、その勢いが消えるとカナは・・・遠山キンイチはその場で蹲り動けなくなる。

 

(ぐうぅっ・・・!急所を外すので精一杯かッ!まともに動けないとは情けない・・・しかも・・・あからさまに手加減された・・・!)

 

強烈な激痛でヒステリアモードの切れた彼の頭の中に込み上げて来たのは、弟が何者なのかより・・・自分自身への怒りと悔しさであった。

 

 

 

 

(・・・流石だ・・・ほぼ同時に6発の曲射・・・更にあの距離で急所に当たらない様に避けやがった・・・)

 

一方の大尉の方はそんな事つゆ知らず、兄であるキンイチを声に出さず賞賛していた。

 

(正直、ヒステリアモードが強いとは言え・・・あの女吸血鬼ですらまともに避けれなかった技を、あのタイミングで避けるとは・・・手加減はしてしまったが、少しカナと兄貴に対しては過小評価していたのかもしれんな・・・)

 

事実、もし兄貴が俺を確実に殺すつもりで俺に不可視の弾丸6発を全て撃ち込んでいたら、こちらに勝ち目はなかった。全ての弾丸をバラバラな場所に撃ったからこそ、そこから発生したほんの僅かなタイムラグを利用して迎撃する事が出来たのだ。

 

 

そして更にもう一つ、大尉は気になる事があった。

 

地面に落ちた弾丸・・・モーゼルの大口径弾が当たってクシャクシャにマッシュルーミングしているが、それは銀の弾丸であった。

 

(・・・しかし、法化銀弾・・・一体誰だ、俺の正体を知っている奴は・・・もしやミレニアム以外の勢力もこっちに来ているのか?それとも・・・少佐か)

 

そこまで考えてアホらしいと首を振る。そんな事、考えられないしありえない。そもそもこの世界にいるかどうかも怪しいのだ。

 

(・・・でもあの人ならやりかねんな・・・ん?)

 

その時、大尉はどこかで感じた事のある気配を感じた。

それは屋上で遭遇した、シャーロック・ホームズのあの独特な気配だった。

 

 

 

 

その瞬間、見た事の無い緋色の閃光が大尉とアリア、そして船を丸ごと包み込み、それと同時に本日2度目の強烈な爆音と衝撃が船を襲った。

 




去年は本当に忙しかった・・・仕事もヤバかったし、よさこいもやりました。オリジナル作品書いてみようともしたりしました。色々と寄り道したけど、こうして戻って来れて本当に良かったです。

あと小説には関係ありませんが、今年の成人式で自分は成人になります。(実を言うと誕生日はまだちょっと先ですが・・・)

今度の投稿はもっと早くするつもりです。感想と意見、いつでもお待ちしております。

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