俺「うーん、この作品にもジャッカルの精やハルコンネの精みたいなのを出したいが、俺モーゼルであんなキャラ濃いやつ思いつかんな。かと言ってキャラが薄くては作った意味ないし・・・」
友人「・・・緋弾ってエクスカリバー出てくるよな?」
俺「ああ、そういえば・・・」
友人「・・・エクスカリバーの精がいるだろう?(ゲス顔)」
俺「!!」
もしかしたらその内あのムーミンもどきが大尉の夢の中に出てくるかもしれない。
ピラミディオン台場・・・数年前に海岸に流れ着いた巨大なピラミッド型の漂着物に着目した都知事がデザインさせた、日本初の公営カジノである。先述のとおり大きなピラミッド型をしており、その周りを海へとつながるプールが流れているのが特徴だ。
「・・・噂では聞いてたが、中々の大きさだな・・・」
「ええ、本場アメリカのカジノ経営会社も建設時に多額の資金提供したらしいそうで。中はもっとすごいらしいですよ。」
と、そのピラミディオンを見渡しながら大尉とトバルカインがゲートをくぐる。すでに中に神崎、由美江、レキの三人が従業員として潜入している。
「すまないが両替を頼みたい、今日は窓から青いカナリアが入ってきたんだ。きっとツイてる。」
ホールの玄関から中に入り、クーラーの効いているエントランスにあるチェンジカウンターで事前に打ち合わせした合言葉を言って、一千万円分のチップを貰う。
「・・・あとこれ、自腹分です・・・」
と、大尉が懐から最後の大隊(生活費10万)を引っ張り出す。・・・先ほど受け取ったチップは偽物で、儲けても自分の物にならない。そう、自腹を切るしかないのだ。
(・・・トバルカイン、失敗したらどうなるかわかるな?)
(了解、決死の覚悟で挑みます)
店員が10万円をチップに交換すると、すばやく二人の間でマバタキによる暗号でのやり取りが行われる。こっちは全戦力で挑むんだ、これでミスれば俺たちの食事は毎日のりたまご飯・・・いや、最悪ただのご飯になるだろう。だがここで成功すれば平賀さんから買った武器弾薬代を全てチャラにできるかも知れないのだ。
(・・・頼んだぞ・・・お前が希望だ・・・)
(ええ、わかってますとも。任せて下さい。)
そう言ってチップを受け取ったトバルカインは得意げな顔をしながら、スロットコーナーへと向かって行く。
そして、トバルカインの背を見送ると大尉も行動を開始する。
(・・・と言っても俺はそこまで運がいい訳でもない・・・マイナスこかない為に下手な行動は取らないようにしないとな・・・ま、貰った偽チップで遊ぶかな・・・)
と、そう考えた大尉はとりあえず言われた通り、カジノの見回りをする。
先ほどトバルカインが向かったパチスロコーナーは値段設定が他よりいくらか安い為、普通のサラリーマンや観光客で賑わっている。
ちなみにトバルカインの計画ではパチスロで資金を作って上のルーレットフロア・・・賭け金が最低100万のフロアで勝負に出るつもりらしい。見れば既にトバルカインのプレイする台には見学者が集まり出しており、ざわざわとした空気があたりを包んでいた。
「何ボサッと突っ立ってんのよこのバカ!」グシャ!
「がっ!?・・・おい、話しかけてくるんじゃない・・・バレるだろうが・・・」
カジノを見学しているといつの間にか至近距離まで接近していた神崎が大尉の足を思いっきり踏みつける。どうやら不機嫌なようだ。
「・・・お前仕事は出来てるのか?・・・全然客寄って来てないじゃないか・・・」
よく見れば近くにいる他のバニーさんにはお客がドリンクを注文しているのに神崎には一向に話しかけようとしない・・・いや、理由は何と無くわかるけど・・・
「失礼ね、ちゃんとやってるわよ。でもどこ行っても誰も寄って来ないのよ。それよりあれ、何やってるのよ」
と、神崎が顎で指す方向にはギャラリーをざわざわさせているトバルカインがいる。
「・・・何って、パチンコ玉をお金に変える錬金術に挑戦してるんだよ・・・」
「随分安っぽい錬金術ね」
「・・・大丈夫、後でルーレットっていうチップ1枚を100万円にする錬金術もやるから・・・それより、白雪とレキは?・・・あいつらの配置も確認しておきたいんだが・・・」
「あの2人?白雪ならさっき向こうのバーカウンターの方にいたわ。レキは上のルーレットフロアよ。あんたは仕事サボんないでよ。」
そう言い残すとトレーを持ち直したら神崎はまた別のフロアへと向かって行った・・・
・・・うーん、神崎は私服警備に向いてないないな・・・残る2人は仕事出来てるんだろうか・・・ローマカトリックの暗殺者と凄腕スナイパー・・・普通に心配だ。
とりあえず神崎に教えられた通り、由美江のいるホールまで来ると、姿を探す。と・・・
「・・・」シャカシャカシャカシャカ
いたよ、バーカウンターの所に。なんかピチッとしたバーテンの格好をしてボサボサの髪を後ろで束ね、得意げにシェイカーを振ってる。
「やべえ超美人」
「ちょっと暗い感じがいいよな」
「どうですお嬢さん、後でレストランへでも・・・」
・・・そして、席には紳士達がズラリと並んでいた。正直座りたくない。
しかし話かけるには座るしかなく、大尉は席を探して空いていた一番端の席に座る。由美江も大尉が座ったのに気が付くと、注文を聞きに来たフリをして大尉の方へと来る。
「・・・ご注文は?」『何しに来た』パチパチ
「・・・ミルクを1杯くれ・・・」『見回りだ』パチパチ
トバルカインと行ったように、他の人に聞かれないように瞬きで会話をする。暗号は転生してから覚えてよかったと思う事の一つだ。人に話せないような事も人前で話せるからな。
『問題は・・・特にないな』
『目の前を見ろ、問題だらけだろうが』
「・・・」プイッ
「目を逸らすな」
『別にケンカも禁止事項もしてないのならいいだろ。それよりもお前、渡した服どうした?』
『あんなのを十代女子に着せんな、バチ当たるぞ』
ちなみに由美江が言っている服とはバニーガールの服の事である。神崎がアレではと思い由美江にもやって貰おうと思っていたのだが・・・いや、別に今の格好も十分似合っているので特に問題はないが・・・
『恥ずかしがるような事でもないだろ。巻末マンガでホテルのウェイターに変装してたじゃないか、ミニスカの』
『メタい話するな。それよりも、こんなとこで油売ってていいのか?』
「・・・?」
「・・・」クイッ
由美江が顎で刺す先には、カウンターで喋っている2人組がいる。どうやら盗み聞きしろと言う事らしい。とりあえず由美江に言われた通り、2人組の会話に耳を傾ける。
「いやー、上の試合凄かったな」
「あの白髪の子、美少女なのにすげえテクだよ。俺もあんな風にやれたらな〜」
「あの日本のビル・ゲイツをあそこまで負かすんだもんな。あれだって相当場数踏んでるはずなんだぜ?」
「あーあ、もう少し見てけばよかったな・・・まだやってるだろうし」
『な?』
「・・・」
・・・しまった、レキはノーマークだった・・・神崎、由美江も問題起こして無かったのに思わぬ伏兵だな・・・狙撃手だけに
「・・・つまんねーぞ」
「・・・なぜわかったし・・・」
・・・しかし、このままだと確実にとトラブルが発生するな・・・しかもレキの奴もあんまり話せるタイプではないし、体格も大人相手では分が悪い・・・
『しょうがない。由美江、ここは頼んだ。怪しい奴が通ったら無線で連絡しろ。武器はあるな?』
『カウンターの下にデカイのを一つ』
そう由美江とやり取りすると大尉は席を立ち、上のフロアへと向かう。
・・・しかし日本のビル・ゲイツね・・・たまにテレビで出てる年収ウン十億でよく雑誌に美女と一緒にいるのを取られていて、しかもその女が毎回違うと言うほどの女好き・・・そんな男がレキと勝負してると言うことは、そう言う事だろうな・・・あいつもあいつで下手に失礼な事してないと言いけど・・・
豪華な剥製が並ぶルーレットフロアにはすでに人集りが出来ていた。大尉はカジノから貰ったパスを使ってフロアの人集りの中に入っていき、ルーレット台全体が見える所まで移動する。と・・・
「・・・」
・・・居た、レキだ。いつものセーラ服ではなく、ディーラーの服に金色のボタンのついたチョッキを羽織っている。
「・・・では、プレイヤーは次のベットをどうぞ」
と、レキがいつもの無表情で台に向き直る。それに反応してか周囲のギャラリーも盛り上がり始める。
「ははっ、こんなに強くて可憐なディーラーは始めてだよ。まさかこの僕が1時間も立たずに3500万も負けるだなんてね」
・・・どうやらプレイヤーやビルゲイツ一人らしい。まあ、参加費100万なんて桁はちょっと一般人には理解出来んだろうな・・・しかし3500万も負かしたのか?レキの奴イカサマしてないだろうな・・・
「・・・じゃあ、残りの持ち分・・負け分と同じ3500万を全てノワールに賭けよう!」
と、ビルゲイツが熱のこもった声と共に手元にあったチップを全て黒のマスに置く。そして見ているギャラリーが拍手喝采する。
・・・マズイな、素人目でもわかるくらい興奮してる・・・しかもコイツだけでなく周りのギャラリーもだ、これじゃあ引くに引けん・・・
「黒ですね?ではこの手球が黒に落ちれば配当は二倍です。よろしいですか?」
「ああ、だが配当金はいらない。勝ったら君を貰う。」
「・・・」
「僕は豪運な女性をモノにする事で運を得てきたんでね」
・・・わかってはいたが、こいつロリコンだぞ・・・こんな幼児体型の奴を口説くなんて・・・そしてそれと相対しているレキはというと口調も表情にも変化がない・・・ここで何も言わないのはマズイ、他人から不機嫌になったと思われてしまう・・・周りもまるでタイマンが始まるかのような空気になっている。
・・・しょうがない、ここは俺が入って場を盛り下げ「俺も参加するぜぇ」・・・え?
聞き覚えのある、間延びした声がした方を向く。
「俺も参加する。聞こえてねぇのか?」
突然の参加者に周りのギャラリーがどよめき注目が集まる中、そんな視線をどこ吹く風と言わんばかりにその参加者は堂々と歩き、席へと着く。そう、その男とは・・・
・・・ト、トバルカイン・・・!
トバルカインはビルゲイツの隣に座ると、懐から1枚・・・あれ一つで100万円の価値があるチップをテーブルの上に出す。どうやらパチンコで儲けたあと、さらにブラックジャックで得意のトランプ能力を発揮したらしい。
・・・たった40分そこらで100万も儲けるとは・・・やはり連れてきて正解だった・・・
「なんだお前、彼女は渡さんぞ」
「色ボケと一緒にすんじゃねぇ」
横に座ってきたトバルカインにビルゲイツが突っかかるが、トバルカインも反抗する。ギャラリーはと言うと・・・むしろ盛り上がりを見せていた。どうやら前のフロアでトバルカインの勝負を見ていた奴らがついてきたらしい。と、トバルカインがギャラリーの中にいる大尉に気がつき、マバタキで大尉に暗号を送る。
『大丈夫、安心しててくれ。この勝負はもう俺らのものです』
『・・・どういうことだ?』
『見てればわかります』
突然のトバルカインの意味深な暗号に大尉が首をかしげていると・・・
「俺はそうだな・・・せっかくだからこの赤の36にするぜ!」
そう言うとジャラ、とチップを赤の36に移動させる。
「!!?」
・・・ひ、一目賭けだと・・・!確かに配当は36倍だが、いくらなんでも確率が低すぎる・・・!
トバルカインのした行動・・・一目賭けに大尉は驚愕した。そして周りはそのトバルカインの行動にビルゲイツがかすみそうなぐらい一気に盛り上がりを見せる。
一賭目とはルーレットのインサイドベットの賭け方の一つ、特定の一つの数字に金を賭けるもので、配当は最高の36倍・・・だがこのルーレットは36区画、確率は36分の1だ・・・自分でルーレットを操作・・・イカサマでもしない限りリスクが大き過ぎる・・・ここまで貯めた100万をパーにする気か・・・?
「・・・では、時間です。」
大尉の心配をよそにレキが参加締め切りを示すと、何の躊躇もなく球をルーレット上に転がす。
『頼むぞ・・・ミスったら10分の9殺しだからな』
『いや、それ殆ど死んでるじゃないですかぁ・・・』
トバルカインとやり取りしている間にも、球は速度を落として仕切り板の上を跳ねる。
社長が、大尉が、観客が、球の行く末を身を乗り出して見守り、トバルカインとレキがまるで結果がわかっているかのように堂々としている。そして・・・
カラッカラッ・・・カラカラ・・・コロン
「・・・赤の36。2人目のプレイヤーの勝ちです。配当は36倍、おめでとうございます」ジャラジャラ
トバルカイン「グッド!!」
観客「「「「「「ウオオオオオオオオ!!」」」」」
大尉&社長「・・・」(゚Д゚)ポカーン
・・・え?あ?う?は?へ?ちょっと目の前で起きていることが、頭でわかってるけど理解出来ないんだが・・・え、えーっと、100×36だから・・・・・3千5百万円?・・・いや、6百万か?・・・ア、アカン、焦って計算出来ん(汗・・・くっ、ミレニアムにいた頃は金の山を見ても動じなかったのに・・・
「ハ、ハハハッ・・・」
そして負けた社長は乾いた笑い声を上げていた・・・いや、気持ちはわからんでもない・・・
「流石に7000万は痛いな・・・でもここまで金を落としてやったんだ、ケー番とメルアドだけでも教えてくれないか?」
「お引き取り下さい。帰った方がいいですよ」
「いや、そこを何とか・・・メルアドだけでも」
・・・社長、どんだけ気に入ったんだよ・・・まあ、転んでもタダでは起きない所は評価するけど・・・
「せめて!せめて名前だけでも!」
「お集まりの皆さんもお帰り下さい。」
レキが社長のナンパを無視して観客に帰るよう促す。と・・・
「良くない風が吹き込んでいます。」
「「?」」
レキの言葉にその場にいたトバルカインや社長が首を傾げる。その瞬間だった・・・
バッ!!ドガシャアアアアン!!
「!?」
突如、レキの後ろにあった剥製の中から何かが飛び出し、驚いてひっくり返った社長を尻目に観客を飛び越え、後ろの方にいた人に体当りしたのだ。衝撃でその後ろにあったスロットマシンが叩き割れ、コインをあたりに飛び散らせる。
「一体なんだぁ?」
「イ、イベントか?」
「いや、今日はたいしたイベントはなかったは・・・な、なんだありゃあ!?」
それを見たトバルカインがスットンキョンな声を上げて驚く。さらに近くにいた観客もそれを見てパニックを起こして一目散に逃げ出す。
それは、まるでペンキでも被ってしまったのかと思うほど黒く、上半身には何も身につけず、腰にも粗末な布切れを巻いているだけだ・・・だが、それが異常なのはそんなことではない。人の頭があるところに、犬の頭部がついているのだ。着ぐるみや、特殊メイクなどではない、間違いなく本物だ。さらに悪いことに手には大型の斧も装備している。
そいつは首に噛み付いた狼を振りほどくと、バイクほどの重さがあるそいつを近くあったスロットに投げて叩きつけ武器を持ち直すと、大尉たちの方向に向き直る。
「・・・気を付けてください、奴の狙いは私たちです」
レキがカウンターの下に隠していたドラグノフを引っ張り出し、弾丸を装填する。
「んなもん見りゃわかんだよ!」
トバルカインも臨戦態勢に入ると、懐から無数のトランプを取り出す。
「・・・まあ、こっちから行く手間省けたな・・・」
大尉もホルスターからモーゼルを抜くとジャッカル兵に銃口を向ける。その瞬間だった・・・
ズバァッッ!!ゴトン!
・・・・・・突然、ジャッカル兵の首が切り飛ばされて頭はどこかへ吹っ飛び、体は砂に戻っていく。そしてその砂になっていく体を踏みつけ、彼女が現れた。
「・・・おい、獲物取るなよ・・・白雪」
「・・・早いもん勝ち」
そう言う由美江の肩に担がれた刀は、まるで持ち主の気持ちを表すかのようにギラギラと輝いていた・・・
・・・目の前に現れ、仲間を次々と屠る残虐な敵・・・恋人にご執心でまともな指示をしない上司に板挟みにされても俺たちは戦い続ける。
「・・・転職しよ」
「おれエジプトに帰るわ」
次回「ジャッカル兵の憂鬱」
どーも仕事もプライベートも忙しくて睡眠時間削りながら書いてます。その割に遅筆でホントにすいません。
そう言えば以前、大尉変身しないね、と質問されたので今更ながら回答を・・・変身させる気はもちろんあります。ぶっちゃけ後から使えばよかったと反省してます。
意見や感想、質問、誤記修正点、その他いつでもお待ちしております。そしてこの作品を読んでくれている皆さん。いつもありがとう。