またグダってるかもしれません。
俺と神崎が紅鳴館で働く最後の日・・・そして作戦実行の日が来た。
役割分担は俺が小夜鳴とくっちゃべって時間稼ぎをして、その間に神崎が監視センサーとトラップまみれの金庫からバレずに十字架を盗む作業になる。
・・・自分で言っててなんだが、この分担、バランス悪くないか?・・・だって俺喋ってるだけだぞ?・・・まあ、あいつうまく話できないだろうし、小柄だから狭いところとかに入り込めるだろうからいい分担だとは思うが・・・
と、大尉が考えていると無線から通信が入る。
『キー君、そろそろ始めるから先生を外に連れ出して。』
「・・・了解・・・」
・・・さて、始まったな・・・じゃあ俺も仕事をするかな・・・
そう言うと大尉は小夜鳴の研究室まで行きドアをノックする。
コンコン
『はい、どうしました?』
「・・・小夜鳴先生、ホールに飾ってある品の事を聞きたいんですけど・・・」
『わかりました、すぐに行きます。』
そう言うと小夜鳴はドアを開け、大尉とホールへ行った。
『キー君が先生を連れ出したよ。』
「了解、確認したわ。今から行くわ。ちゃんとオペレートしなさいよ。」
『は!オルメスに言われる筋合いはないよ。』
「上等よ、じゃあ行くわよ!」
そう言うと神崎はビリヤード台の下の穴へと入って行った・・・
「こちらアリア、モグラはコウモリになった。」
『オッケー、予定通りだね。」
今回理子が建てた作戦は地下金庫の扉を開けるのをやめ、地上階から掘った穴を通って金庫まで行って、逆さ吊りの状態でお宝を頂戴すると言う頭に血が上りそうな作戦だ。
特に今回の作戦では、キンジがデカすぎてセンサーに当たってしまうリスクが高いのと、キンジがうまいこと小夜鳴と仲良くなったため、この役目を神崎がやることとなったのだ。
「作戦終了まであとどのくらい?」
『キー君がかなり時間を稼いでるからまだだいぶ時間があるから、ゆっくり慎重にやればいいよ。』
「この絨毯はあるクソ探偵とモンゴルに行った時に、現地の人から貰った物です。綺麗な模様でしょう?とても価値があるそうですよ。」
「・・・動物の毛ですね・・・さすがモンゴル・・・」
(・・・今クソ探偵って言ったよな・・・)
「じゃあ今度はこのアフリカの鬼のお面を・・・」
『うん、この調子ならまだ大丈夫。素早く落ち着いて作業をして。』
「大丈夫よ、えーっと、Eの12にCの7、A13、D6ね」
『そうそう、その調子。次は・・・』
理子に言われたとおり、針金で出来たレールをつないで行く。理子の指示と神崎の的確な作業によってこちらも順調に進んで行った・・・
「・・・で、その呼び出して来た美人姉妹が揃って私に刃物を向けて来たんですよ。さらに傍らには片メガネの偉そうな紳士がいましてね、合計3人で襲いかかって来たんですよ。」
「・・・よく勝てましたね・・・」
「いやー、私も苦戦しましたよ。途中で向こうが引き下がってくれましたからなんとかなりましたけどね。」
「よし!十字架に届いたわ!あと少し・・・」
『焦らないでね、ここで失敗したら全部パーだよ。』
「わかってる・・・」
少しずつ・・・少しずつ、十字架が近づく。そして・・・
「・・・よし、ゲットしたわ。今度は偽物を置くわね。」
『もう少しだよ!頑張れー!』
「・・・まったく、あのクソ探偵にはうんざりさせられますよ。私はパシリじゃないのに面倒ごとに呼び出して来て、あっち行ってこいこっち行ってこいだの無理難題ばっかりなんですよ!まあ、自分にも理由があるんですが・・・」
「・・・先生ほどの人が頭が上がらないんですか?・・・」
「本当に頭がいいんですよ、そんでもってよく切れるから尚更たちが悪い。」
大尉の方はと言うと、途中から小夜鳴の愚痴を聞くだけになっていた。
「十字架を置いたわ、これから戻るわね。」
『完璧だよアリア!あとは戻るだけだけど持って帰るまでがドロボーだよ!』
「わかってるわよ」
そう言うと神崎は赤外線の網をするするとくぐり抜け、天井の穴へとと戻る。
「天井の板を戻して・・・よし!ミッションコンプリートよ!」
そう言う神崎の手には大尉がシュレディンガーに置かせた偽物の十字架が握られていた。
「遠山君はワイン派ですか?」
「・・・ビール派です・・・黒ビールにウィンナーが1番・・・」
「あっはっはっは、それならドイツに行ってみるといいかもしれませんねー」
(・・・魂はドイツ人なんですけどね・・・)
そして、大尉と酒を飲み始めてほろ酔いの小夜鳴の無駄話は帰るギリギリまで続いた。
ーーーーーーーーーーー
「・・・では2人とも、お疲れ様でしたね。あと伊達君と武藤君にも一言言っておいてください。」
仕事が終わり、この紅鳴館から離れる時間となった。
「・・・わかりました、それじゃあまた学校で・・・」
「ありがとうございました。」
「はい、また今度」
大尉と神崎は挨拶をすませると、そそくさと紅鳴館を離れることにした。小夜鳴の方も挨拶を済ませるとまた地下研究室へと戻って行った。
「・・・ずいぶんあっさりしてるな・・・」
「そんなもんなんでしょ?ハウスキーパーもこれが始めてじゃないんだし。」
・・・なんか、やな予感・・・
大尉は不穏な空気を感じずにいられなかった・・・
1時間後
今2人は横浜にある、横浜ランドマークタワーの下に来ていた。理由は理子に依頼された十字架(偽)を渡す為である。
「・・・もう何日も働き通しだからな・・・風呂に入りたい・・・」
「そうね、シャワーでも浴びたいわ・・・まあ、今回の仕事、あんたとならもう少しやってもよかったけど・・・」
「?・・・なんか言ったか・・・」
「ううん、なんにも。」
そう言うと大尉と神崎はビルへと入って行った・・・
ポーン♪ ガチャン
「・・・着いたな・・・」
エレベーターを使ってタワーの屋上に上がると、下には綺麗な夜景が広がっていた。パンフレットによれば300m近くあるらしい。
「キーくぅーん!」ダダダッ!
「・・・」ひらり
駆け寄って来た理子を大尉が一切無駄のない動作で避ける。
「よ、避けられただとッ・・・!」
「・・・茶番はいい・・・こっちはさっさと要件を済ましたいんだ・・・」
「ぶぅー、キー君ノリがわるーい!」
「・・・ほら、十字架だ・・・受け取れ・・・」ポイッ
「おっとっと」パシッ
大尉が投げた十字架を理子がキャッチする。
「やったー!さすが2人とも!乙でーす!」
そう言うと理子は首にかけていたチェーンに十字架を素早く通してしまった。そして、よほど嬉しかったのか変な踊りまでし始める始末だ。
「理子、喜ぶのはそのくらいにして、約束はちゃんと守るのよ。」
横を見るとこめかみがピクピクしてる神崎が腕組みをして仁王立ちしていた。どうやらイライラしているらしい。
「アリアはほんっとに理子の事わかってなぁーい。ねぇ、キー君。」
そんでイライラの原因である理子はそんなものどこ吹く風と言った様子で、まるで気にせずに不敵な笑みを浮かべて大尉に手招きする。そして大尉が近づくと髪を止めるリボンを向けて来た。
「お礼はちゃんと上げちゃう。はい、プレゼントのリボンを解いてください」
「・・・?・・・ほどけってこの髪留めの事か?・・・」
大尉はとりあえず理子の言う通り、リボンを解く。
「くふっ」
その瞬間、大尉は自分の愚かさを激しく後悔することとなった。
パンパンパン!!
・・・理子が大尉に向けて発砲したのだ。
「!?」
大尉はリボンに気を取られていた為、咄嗟に行動出来ずに、撃たれたまま神崎の方へと転がる。
・・・クソが、情けないが完全に油断していた・・・こいつ、俺がリボンに気を取られている隙に・・・防弾制服の下まで銃を突っ込みやがった、まるでスリみたいに・・・!
「な、なにしてんのよ理子!」
目の前で大尉が撃たれたのを見た神崎は理子に向けて素早く銃を向けると共に、撃たれて転がって来た大尉に駆け寄る。
「しっかりしなさい!どこを撃たれたの!」
「・・・大丈夫だ、それよりもあいつから目を離すな・・・」
撃たれた所を抑えつつ、大尉が神崎に支えられて立ち上がる。撃たれた傷はすでに回復しているが、痛みが少し残っていて、ジンジンと痛んでいる。
「そうだよねぇー、立ち上がってもらわないと困るよキー君。立ってもらわないと、キー君のお兄さんから聞いた話が嘘って事になっちゃうからね。」
「・・・何?・・・」
「理子、キー君に勝つ為にキー君のお兄さんから色々聞いたんだよ?キー君のヒステリアモードがかなり変わってる事とか、信じられないくらいの身体能力とか、ね?」
「・・・」
「ごめんねキー君。理子、わるーい子なの。この十字架さえ戻ってくれば理子的には、もう欲しいカードは揃っちゃったんだぁ」
理子が笑う。あの時の、ハイジャックの時の笑顔だ。
そしてその笑顔のままホルスターから銃・・・P99を2丁取り出した。
「先に抜いてあげるよ、オルメス。その方がやりやすいでしょ?」
「気が利くじゃない、これで正当防衛だわ。キンジ、行くわよ。」
「・・・」スチャ
神崎の声に応えて、大尉がUSPを抜く。
・・・しまったな、時間がある時に出来た銃をトバルカインから受け取りに行くべきだったな・・・
「・・・さっき『なんでこんなもの』って言ったよね、アリア」
理子がにいっと笑い、こちらを見据える。
「これはただの十字架じゃない、これはお母様が・・・理子が大好きだったお母様が『これはリュパン家の全ての財宝を引き換えにしても釣り合う宝物なのよ。』ってお母様が下さった秘宝なんだよ。だから理子は捕まってた頃もこれだけは取られないようにずっと口の中に隠してたんだよ。」
「・・・」( ;´Д`)
・・・偽物って言うタイミングを逃した・・・このタイミングで「ごめん!それ偽物!」って言ったら間違いなく関係が修復不可能になってしまう・・・
「そしてある夜気付いたの、この十字架は・・・いや、この金属は、理子に力をくれる。それで檻からも抜け出せたんだよ。この力で・・・!」
理子の髪がハイジャックの時みたいに動き出す・・・が、あの時と同じく、そこまで力があるように見えない。どうやら十字架が無いせいで本調子ではないようだ。
「・・・な、なんで、この十字架があればもっと力が出るはずなのに・・・」
理子の顔が驚愕によって歪む。
・・・どうしよう、今本物持ってないからどのみち渡せない・・・ここは潔く謝って勝負はまた後日にしてもらおう・・・
「・・・理子、その、とても言い出しにくいんだが・・・」
そう言って大尉が理子に謝ろうと話しかけた時だった。
ライトの無い薄暗がりでよく見えなかったが、理子の後ろに誰かにが立っているのが大尉に見えたのだ。
「・・・!!理子!避けろ!」
「へ?」
バチッッッッッ!!!
「ぎっ!?」
そいつが理子に何かを押し付けると電撃音と共に理子の顔が苦痛に歪み、倒れる。
「な、なに!?」
神崎は理子の後ろにいた奴に気づけず、状況をうまく理解出来ていないようだ。
・・・くそ、俺でも気付けなかった・・・まるで気配が無かったぞ・・・
目の前から近づかれたのにもかかわらず気付けなかった事に大尉も少しうろたえる。が、理子を襲った人物を見てさらに驚愕することとなった。
「そんな・・・まさか、小夜鳴?・・・」
彼の手にはに不似合いな拳銃が握られていたが間違いなく大尉達の学校の非常勤講師である小夜鳴に間違い無かった。小夜鳴はいつもと同じように上品なスーツに身を包み、クールなイケメンスマイルを浮かべている。
「神崎さん、遠山君、ちょっとの間動かないでくださいね?うっかり殺してしまうかもしれませんから。」
彼の握っている銃は、大尉達に向けられていた。
GW中、人生初のサバゲーをやったんですがボルトアクションライフルは楽しいですね。当たらないけど(笑
次でワラキア戦ですね、作者のせっかち癖でここまで来るのがかなり早い・・・もう少しペースダウンしてもいいかな。
意見・感想いつでもお待ちしております。