ヴェアヴォルフ~ヘルシングの大尉が転生~   作:むらやま 

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この話は28話を投稿した後突貫工事で書いたので少しおかしな所があるかもしれません。もし誤字脱字を見つけたら教えてください。


第29話 宿敵

「狼がこの島に現れただと?」

 

美人であるジャンヌの顔が歪む。

今2人は学園島の中にあるファミレスにいる。今回の集まりは現状の定期報告のような感じだ。

 

「はい、そうなんですよ。まあ、捕まてたらしいんですけどね。」

 

「むう・・・ブラドめ、理子を狙って来たか。あのゲスめ・・・」

 

「?・・・もしかして理子さんとブラドには何か関係が?」

 

もしかして、理子さんを虐待していたのは・・・

 

「知らないのか?理子は幼い頃に両親が他界した後、家が落ちぶれてな・・・その時親戚を名乗る人物にルーマニアに連れて行かれ、そこでブラドに拉致監禁されていたのだ。」

 

「!」

 

やはりあれは虐待の記憶だったか・・・

 

「その時、まともに食事を取れなかったのが原因で彼女は今だに背が小さい・・・服に強い執着があるのはその時ボロ布しかきれなかったからだ。」

 

「ひ、ひでぇ・・・」

 

やっぱりか・・・そのブラドって奴、相当のクズだな・・・しかし何者だ?それとなんで理子さんを攫ったんだ?そんな嗜虐性の強い奴だ、あっさり殺しそうなんだが・・・

 

「今回遠山たちを襲った狼・・・コーカサスハクギンオオカミはブラドのしもべだ、世界各地にいて。かなり遊撃をする様だが・・・相当強いぞ。」

 

せ、世界各地?信じられないな、そんな奴がいるだなんて・・・

 

「奴は・・・ブラドは何者なんですか?」

 

シュレディンガーが単刀直入に聞くとジャンヌはためらった素振りを見せるが、決心したのか話し出す。

 

「・・・わかった、話そう。だがこの事は遠山以外には絶対に話すな。特に神崎にはな。猪突猛進して返り討ちあってこっちに飛び火しては困る。」

 

「神崎さん、戦況は読めても大局は読めませんもんね・・・」

 

「ふふ、まったくだな。」

 

まあ、大尉もこの事は重々承知してるだろうしそんな簡単に口を滑らしたりはしないだろう。

 

「・・・1888年、我が一族の三代前の双子のジャンヌ・ダルクが初代アルセーヌ・リュパンと共にブラドと戦ったが・・・引き分けている。」

 

「・・・3人掛で引き分け・・・あれ?でも三代前って結構昔ですよね?今のブラドは子孫なんですか?」

 

「120年前、パリのエッフェル塔で戦った。奴は人間ではない・・・日本語で言うとなんと言うのだろうな・・・悪魔、化物・・・そう、鬼だな。」

 

「鬼・・・ん?」

 

待てよ?ルーマニア・・・長寿・・・鬼・・・なんだ、すぐそこまで来ているんだけど・・・思い出せない。

 

「・・・ブラドは理子にかなり執着していてな。檻から脱出した理子を追ってイ・ウーまで来たのだ。理子も戦ったが・・・敗北したよ。だが成長が著しかった理子を見てブラドも気が変わったのか、ある条件を出して見逃したんだ。」

 

「ある条件?」

 

「初代アルセーヌ・リュパンを超えたことを証明出来ればもう手出しはしない・・・とな。」

 

「・・・で、その時十字架を持って行ったと・・・」

 

うーん、なんか今回の相手かなりヤバイな・・・これは最悪、僕の能力でこの世から存在を消してしまった方がいいかも・・・

 

「・・・そうだ、ブラドの写真とかはありませんか?顔がわからないんじゃ対処のしようがありません。」

 

「ふむ、そうだな・・・では絵を書いてみるか。」

 

そう言うとジャンヌさんは少し考える素振りを見せると、胸のポケットからメガネを取り出してかける。

 

「・・・?どうしたジロジロ見て、何かついてるか?」

 

「へ?いや、メガネを掛けてるのも可愛いなーと思って。」

 

「なっ!?ば、馬鹿な事を言うんじゃない!!」

 

「顔が赤いですよ?」

 

「お前が変なことを言うからだ!!まったく・・・///」

 

 

 

その頃・・・

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

「・・・どうしたんだドク?急に壁なんか叩いて・・・」

 

「なんか壁を殴らないといけない気がしたんです。」

 

 

 

 

「あの化物は強すぎる。遠山でも1人では無理だろう。」

 

そんな事を言いながらマジックのギャップを取るとジャンヌはブラドの絵を書き始めた。

 

「奴は先程言った様に化物だ、そして紅鳴館は奴の別荘の一つだ。万が一ブラドが帰って来た場合は・・・即刻作戦を中止して逃げろ。」

 

ジャンヌが書く絵にはヘンテコなUFOが書かれたと思ったら、もこもこしたピーマンみたいな顔を書き始めた・・・

 

「もし戦っても逃げる為の戦いをするんだ、奴は双子のジャンヌ・ダルク達はブラドに純銀の弾丸を撃ち込んだりデュランダルで斬ったが奴は死ななかった。聞いた話では奴を倒すには体の何処かにある4箇所の弱点を同時に攻撃、破壊しなければならないらしい。」

 

今度は絵に触手か翼かよくわからない物が描かれる。

 

「純銀?まるで人狼か吸血鬼退治みたいですね。」

 

「?ああ、そう言う言い方もあるのだな、その通り、奴は吸血鬼だ・・・よし、出来たぞ。」

 

・・・吸血鬼か・・・この世界にもいたのか・・・ドクが喜びそう・・・

 

その瞬間、シュレディンガーの中で何かが弾ける。

 

『アーカードの別名を知っていますか?ツェペシュ、ワラキア、ドラキュラ、ドラクル、カズィクル・ベイ、串刺し公、ヴラド・・・読みにくいからブラドなんて言われる場合もあります。覚えておいて損はないでしょう。』

 

そ、そうだ、ブラドは奴の・・・アーカードの別の呼び名だ・・・や、奴もこの世界にいるんだ・・・!・・・た、大変だ、このままじゃあ・・・急いで大尉に知らせないと・・・!

 

「どうしたのだシュレディンガー、顔色が悪いぞ?」

 

「へ?あ、ああ、大丈夫ですよ」

 

そう言うがひたいを冷や汗が伝っていくのがわかるほど汗をかいている。

 

「・・・そうか、ならいいんだが・・・ほら、絵が出来たぞ。」

 

「そうですか、じゃあ拝見・・・」

 

その瞬間、シュレディンガーが凍りつく。

 

・・・な、なんだこれ、なんかぐちゃぐちゃした・・・顔から手が生えてるのか?いや、アーカードだしこれくらいあり得るか、大体戦ってる時こんな感じだし・・・

 

「どうだ、中々うまく描けただろう?特に顔のあたりとかそっくりだ。」

 

「ええ、中々ですね。おかげで探しやすくなると思います・・・おっと、そろそろ行かないと。」

 

「そうか・・・なあ、シュレディンガー」

 

「?なんですか?」

 

「・・・死ぬなよ、お前を失ったら私は・・・」

 

ジャンヌが不安そうな顔をする。どうやらよほど心配な様だ。

それを見たシュレディンガーその心配を跳ね除けるような笑顔でジャンヌに答える。

 

 

「僕は死にませんよ、何たって一度ワラキアを倒した男なんですから。」

 

 

そう言うとシュレディンガーは店を後にした・・・

 

 

 

 

 

その頃・・・

 

「・・・ドク、落ち着け・・・!・・・相談に乗るからハンマーで壁を叩こうとするな・・・!」

 

「離せー!離してくれー!壁を、壁を殴らないといけないんだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後 大尉の家

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

部屋にはミレニアムの面々が勢ぞろいしていた。が、誰一人として喋ろうとせず、各々緊張した空気に包まれていた。特にトバルカインなどは先程から貧乏ゆすりが止まらなくなっている。

 

理由は先程のジャンヌから聞いたワラキアの件である。

 

「・・・えーっと、つまり、アーカードの野郎がこの世界にいると?」

 

ドクが空気を打破しようとシュレディンガーに質問する。

 

「そうかもしれません、でも違うかもしれません。」

 

「・・・違うかもしれない?と言うと?」

 

「ジャンヌの話では奴には4箇所弱点があって、そこを同時に破壊すれば倒せるそうです。ドク、そんな話聞いたことありますか?」

 

「いや、聞いたこともない。そんなのがあるんだったら少佐があんなことしなくても全員で銃持って撃ちまくればそれで終わりですよ。」

 

そう、奴の一番の特徴は今まで吸った何百万もの魂を全て殺さなければ倒せないと言う事だ。その為に少佐は自分の持てるもの全てを使って奴を倒したのだ。

 

「・・・まさか、環境によって吸血鬼の特性が変わったのか・・・!興味深い・・・!」

 

「・・・そ、そんなことはどうだっていいんだ、奴がどこにいるのか、どんな奴なのかわかんねぇんだろ!」

 

「・・・トバルカイン、落ち着け・・・そんなんじゃ勝てるものも勝てなくなる・・・」

 

トバルカインがイライラした口調で言うのを大尉が諌める。

 

「・・・大尉は知らないんだ、奴に喰われてないから・・・!」

 

あの時の記憶がまざまざと蘇ったのだろう、トバルカインの額には大粒の汗が浮かんでいる。

 

「・・・いや、すいません。どうも違う奴だとわかっていても怖いんですよ。」

 

「・・・大丈夫だ、弱点がわかっている点では俺たちが一歩リードいている・・・それに奴のしもべの狼は捕まえた・・・俺たちの事がバレる心配も無いだろう・・・」

 

そう言うと大尉はリップヴァーンに話しかける。彼女もアーカードに喰われた被害者だからだ。

 

「・・・リップヴァーンは?大丈夫か?」

 

「え?あ、はい、大丈夫です。私はあの時の事よく覚えて無いんですよ・・・・・・それに少し気持ちよかったし(ボソッ)」

 

「なんか言ったか?」

 

「い、いえ、何も言ってません!それに私なんかよりもあっちの方をどうにかしないと・・・」

 

「・・・そうなんだよな・・・」

 

そう言って部屋にいる全員がそれを見る・・・

 

「・・・」(゚Д゚)

 

生徒会の激務が原因で口から魂が出かけてるゾーリンをである。

 

「・・・おい、しっかりしろ・・・!まだ会議始まったばかりだぞ・・・!」

 

「・・・は!・・・三途の川の向う岸で前世のおじいちゃんおばあちゃんと、こっちのおじいちゃんおばあちゃんがあたしがどっちの孫かで揉めてた・・・」

 

「・・・死んだら親権問題で荒れるのは間違いないな・・・」

 

何とか死の淵からゾーリンを生還させると、議題を元に戻す。

 

「よし、じゃあ一度状況を整理しましょう。

まず今回の発端は戻ってきた峰理子さん、彼女が大尉に窃盗計画を持ち出したのが原因でしたね。

どうやり彼女はブラドに母親からもらった大事なプレゼントを奪われ、それを取り返す為に大尉と神崎さんに話を持ちかけた。大尉はこれを了承したんですね?」

 

「・・・ああ、もうシュレディンガーに頼んで十字架は持ってるがな・・・」

 

「で、この前トバルカインと武藤が保健室で覗きをしていた所、狼が襲撃して来て怪我人が出たのでトバルカインが無理矢理追っ払い、そのままレキさんと狼を追いかけ、途中で仕事の依頼を受けていた大尉と合流して、狼を捕まえた。」

 

「・・・うん、大体あってる・・・」

 

「そして今度はシュレディンガーですね。

ジャンヌさんに狼の話をした所それがブラドの手下だとわかり、さらには理子さんの過去もある程度調べられた。

そしてブラドの正体がワラキアだとわかり、そのことをたった今報告し終わった。と言った感じですかね。

さて、問題はここから。これからどうするかです。倒す、倒さない、どうするか決めないといけません。」

 

「俺は戦うのには反対だ、もう死にたく無い・・・」

 

トバルカインが真っ先に言う、それもそうだろう。誰だって生まれ変わったのならまたすぐ死ぬ様な事はしたく無いだろう。

 

「・・・わ、私は倒したいです・・・!」

 

今度はリップヴァーンが言う。

 

「もう奴の事で煩わされるのは真っ平御免です・・・!今度こそ、奴との決着をつけます・・・!」

 

「・・・俺は戦ったことは無いが・・・あの頃の能力が無いならこちらにもいくらか勝算がある・・・俺は戦うよ・・・」

 

「私はドラキュラの研究をしたいですし、奴を捕まえられるなら何だってやりますよ。」

 

リップヴァーンの言葉に賛同して、大尉、ドクが立ち上がる。

 

「・・・よく話聞いてなかったけど、あたしもやるよ。シュレディンガー、あんたもやるんだろうね?」

 

「ゾーリン、僕はこの中で唯一アーカードを倒した人物ですよ?奴が生きていると言うのならまた倒すだけです。」

 

続いて、ゾーリン、シュレディンガーも立ち上がる。

 

「・・・ケッ、俺だけ生き残るのも癪だ、やりますよ。ああ、やりますとも!」

 

そしてトバルカインも立ち上がった。

 

「・・・よし、全員立ったな・・・俺たちは前世で奴に煮え湯を飲まされた・・・今度は、俺たちの番だ・・・奴に引導を渡してやれ・・・!」

 

「「「「「おおっーー!!」」」」」

 

 

夜の男子寮に声がこだました・・・

 

 

 




どうだったでしょうか?
次は紅鳴館編です。お楽しみに。

意見・感想お待ちしております。

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