「・・・やっと解放されたな・・・」
事件後、俺たちに待っていたのは約2日にも及ぶ尋問であった。
・・・やはり戦闘機を落としたのはやり過ぎだったな・・・まさか公安も出てくるとは・・・危うく洗いざらい話しそうになったぞ・・・
「まったく、こんな扱い不当よ!あたし達と戦闘機の墜落は関係ないのに!」
「・・・ソウダネー・・・」
互いにあの尋問官は感じが悪かっただの、あの尋問室臭きつかっただの悪口を言い合いながら帰路につく。
「キンジ、今回のご褒美にあたしにご飯を食べさせてもいいわよ?」
「・・・ダメだ・・・」
「なんでよ!」
「・・・お前が無茶苦茶食べるからだ・・・お前の腹は膨れたかもしれんが俺の財布が餓死しかけたぞ・・・」
・・・ただでさえウチは馬鹿みたいに食うやつ(自分含め)がいるから・・・あの時は本当に食い逃げしなきゃいけなくなる所だった・・・
「ふふっ、キンジにしては面白い冗談言うじゃない」
・・・まったく、何が面白いんだか・・・
そんな事を思いつつ、大尉は気になっていた事を聞いてみる。
「・・・そういえば、イギリスに帰る話はどうなったんだ?」
「ああ、あれね、まだイギリスの奴らしつこいのよ『早く戻って来て仕事しろー!』って、やんなっちゃうわ」
「・・・大変だな・・・じゃあ、やっぱり帰るのか?」
「そうね・・・でも今回は凄いわよ!ヘリでイギリスの空母まで飛んでジェット機に乗り換えて帰るんだから!」
「・・・ハハッ、それはすごいな・・・」
「・・・」
「・・・」
ひと時の沈黙が訪れる・・・
「・・・なあ、神崎・・・」
「・・・ん?なに?」
大尉が口を開いたのはもう、男子寮の真ん前に来たときだった。
「・・・実はな、オペラをやりたいんだ・・・」
「・・・?」
突然の言葉に神崎が首を傾げる
「・・・それでな、大体のメンバーは揃ったんだが独奏曲のパートをやれる奴が居なくてな・・・」
「・・・え?それって・・・」
「・・・どうだ、うちに来て独奏曲のパートをやってくれないか?・・・アクとクセが強いが全員優秀な奴ばかりだぞ?」
そう言って大尉は神崎に手を差し出した
「・・・あたしなんかでいいの?後悔しても知らないわよ。」
「・・・そんなもん、百も承知さ・・・」
神崎の小さな手が恐る恐る伸びていく・・・
「どうしても・・・あたしじゃなきゃダメ?ほ、ほら、あたし戦闘と直感しか特技がないし・・・」
「・・・こう見えて人選眼には自信があってな・・・大丈夫だ、お前の出来ないことは・・・裏方のおれがやってやるさ・・・」
そして、とうとう神崎と大尉の手が重なり合った。
「・・・これからビシバシ行くから!しっかりついて来なさいよ!」
「・・・お手柔らかに・・・さあ帰るぞ、今日は戦勝パーティーだ。」
翌日、神崎はヘリポートに行かなかった。
武偵高校長室
「・・・はっはっはっ、面白い冗談だね。ウチの生徒が戦闘機を落とした?あり得んね。まさか、あんなデタラメな調査報告書を信じろと?」
『だが確かに弾丸はお前のとこの校舎から撃たれた物に間違いない。』
「で、放たれた弾丸は空中で戦闘機を穴あきチーズみたいにしたと?しかも一発で?君も冗談が上手くなったな、まだ及第点と言った所だが・・・」
『・・・』
「そうだな、君の話を実証しようとするなら撃った本人にやって貰うのが一番いいだろう。『戦闘機をあの時の条件下で撃ち落としてください』ってね」
『・・・緑松、お前は一体何を考えてるんだ・・・』
「決まっているじゃあないか、大事な大事な生徒の事さ。じゃあまた、犯人を見つけたら教えてくれ。」
そう言って電話を切る。
「やれやれ、まったく世話の焼ける生徒だよ・・・」
ボストーク 内部
「ふー、家財道具の運び入れ終わり!さーて、後は配線をして動作確認するだけ・・・」
ボストークの中の一番広い部屋に家財道具・・・パソコン、テレビ、冷蔵庫を運び入れていく。
コンコン
「失礼するよ」
「ん?ほーむずさん?何か用ですか?」
丁寧にノックして部屋に入って来たのは口利きをしてくれた『@ほーむず』であった。
「ああ、用が有るのは私じゃあないんだ・・・来なさい」
そう言うと彼の背後から1人の少女・・・雪のように白い髪を後ろで束ね、肌も同じくらい白い超絶美人が現れた。
「ジャンヌだ、お初にお目に掛かるな、お前がプロフェシオンの期待している有望株・・・シュレディンガーだな?」
「はい、そうですけど・・・何のようで?」
「お前に聞きたいことがあってな・・・」
「聞きたい事?教えられる範囲の事ならいいですけど・・・」
「聞きたい事は他でもない、星伽白雪についてだ。」
第2章、開幕
・・・まさかここまで書くことが出来るとは・・・嬉しい限りです。
感想意見、お待ちしております。