「狼男のだんな・・・」
そう言ったのは敵の女兵士・・・セラス・ビィクトリアと同化したらしい男だった。
「50年前からの誰かさんからのお返しだ・・・受け取れっ!」
男の手には銀の入れ歯が握られている。自分が戦う前に渡した物だ。
どうやらハンデを付けすぎたらしい・・・男の拳が体を貫く。
体から力が抜ける・・・人狼である俺は十字架も聖水も、ましてや銃弾などまるで効かない・・・だが、銀はちがう。体に入ればその量に関係なく即死する。
体から大量の血が飛び出し、立てなくなり地面に倒れこむ。
ああ、床が冷たいな・・・
女が俺を見下ろしている・・・いい戦いだったな・・・そう言えば少佐が言っていたな・・・戦士は死ぬとヴァルハラに行って・・・次の戦いに備えるらしいな・・・
じょじょに意識が薄れてくる・・・だが、自分が死ぬという感じはしなかった。
そう、楽しい夢を見たような、そんな、満足な気持ちだった・・・
楽しい夢だったな・・・もしかしたら次はもっと楽しい夢が見れるかもしれない・・・
そう思うととても楽しみになってくる。そんな期待が死ぬ間際にふくらむ。
楽しみだ・・・さあ・・・次の夢を見よう・・・
その瞬間体を青い炎が包み込み、体が空へと昇っていくのを感じた。
その瞬間の大尉の顔を見たセラスは後にこう語る。
「まるで、楽しい夢を見た子供のような顔だった。」と・・・
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周りからする声で目が覚める。周りは暗く何も見えない・・・どこか暖かい所だ。
・・・どうやら、まだ死んでないようだ・・・。と、そこまで考えてある疑問が出てくる。
ここはどこだ、それに多分だがミレニアムは壊滅しただろう・・・じゃあ誰が俺を助けたんだ?
まさか、あのの女か?・・・いや、それはない。まず、俺は銀を体に入れられた・・・どう会っても助かるはずがない。
さまざまな憶測が頭の中で交差する・・・
「!?」
その瞬間、突然視界が開ける。そこに居たのは・・・
「は~い、産まれましたよ!男の子です!」
「あら?泣きませんね?息はしてますか?」
「ええ、呼吸もちゃんとしてるわ。でも変わった子ね・・・目が紅いし髪も白いわ。」
まさか・・・いや、そんなはずは・・・だがこの状況は・・・
一つの考えが頭の中をグルグルまわるもそれを頭を振って振り払う。
「あっ!今頭を動かしました!」
「きっとお母さんに会いたいのよ。ほら、お母さんですよ~~」
その言葉を聞いて考えが一つになる。
・・・どうやら俺は生まれ変わったらしい・・・
看護婦が体を持ち上げ、俺を産んだらしい女性に渡す。
そして、その横には2mはある巨人が寄り添うように立っている。
「よくがんばったな・・・見ろ、産まれたばかりなのに産声一つあげない・・・きっと豪傑になるぞ。」
「ふふっ、きっとあなたに似たんですよ。」
「いや、俺は泣き虫だったからな・・・おまえ似だろう。」
「もうっ、そんなこと言ったら私が豪傑みたいじゃないですか。」
いや、俺から見たらどっちも豪傑だぞ。俺を産んだ時点で完璧にアウトだ。
「ところで・・・この子の名前は決まってるの?」
「ああ、金次・・・遠山金次だ。」
「ふふっ、いい名前ね。」
遠山金次か・・・まあ、一度死んだ身だ。それに、あの頃も名前で呼ばれず大尉とだけしか呼ばれてなかったからな・・・これが新しい俺の名前か・・・遠山金次・・・悪くない。
ある世界で唯一の人狼だった男は、異世界で新たな産声をあげる事となった。
おまけ
「ところで・・・お乳をあげなくていいのか?」
えっ?
「あら、そうだったわ。」
そう言うと母親が顔を乳に近づける。
おい、ちょっと待て・・・待て!そんな事できるわけ・・・
「は~い、元気に飲んで育ってね。」
羞恥心で気絶する寸前に見たのは母親のおっぱいだった。
だいぶ大尉の感じをやわらかくしました。
これから先、少ないですが最低限大尉には喋っていただこうと思います。
大尉設定
能力 ヒステリアモード
超人的な身体能力を持ち、狼や霧に変身する。基本原作どおりだが、体が違うので要訓練。
動物などといると発動する。本人がそれを動物と思えばいつでも発動できる。(植物、人など)
銀をくらっても大丈夫。
感想、お待ちしています。