魔砲使いになった理由   作:タニアホテル

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プールの竜・後

 日が沈む直前の薄暗がりの中、なのはは砂で汚れた緑のライターを使い火を起こした。

 冒険の物語で主人公と旅の仲間が、火を囲み、語らい合いながら夜を越す。何回前だったか覚えていないが、なのはは森の中を歩いている時、突然それが頭に思い浮かびその光景を夢想した。頭の中で描かれたその光景はどこか味わい深く、魅力的で、心踊るような憧れをなのはに与えた。早速その次の山篭りでなのはは憧れを実現させた。周りにいるのはフェレット一匹と相棒のレイジングハートだけだったが、一応旅の仲間と言えなくはない。

 今自分は物語の一場面と同じ体験をしているんだ!

 なのはは自分のいるその空間を強く意識し、憧れた光景を重ねて、静かな興奮と自己満足に浸った。しかしそれは最初の数十分だけで、しばらくするとほとんど平静になってしまった。実際に体験してみると、思い描いていた光景にあった味わいがあまり感じられない。まるで微睡みの中で見た夢はあんなにも楽しく感じられたのに、目覚めて振り返ってみると実はそれほど楽しくなかった時のようだった。

 なのはは、ぼんやり想像しているうちが一番楽しいのかもしれない、と何だか虚しさを感じた。風向きによって襲い掛かってくる煙が目に染みた。

 とはいえ、現実には現実の楽しさがあり、なのはは揺らめく焚き火の炎にすっかり心を奪われてしまった。それ以来山に来ると、こうして焚き火をするようになった。もちろん火事にならないよう後始末には念を入れているが、なのはは火遊びをしない良い子ではなく、本格的に不良少女の道を歩み始めていた。

 火を囲みながら、ユーノの過去の話や魔法が使われている世界の話、あるいはなのは自身の過去の話や家族、交友関係についてなど、どちらからと言わず思いついたことをお互い語り合った。

 なのはにとって、それは過去に何度も聞いた話で何度も話した内容であるが、こうやって炎で淡く照らされた空間にいると、不思議と穏やかで優しい気持ちで語り合えた。

 ユーノは魔法学院を卒業しているらしい。なのははそれがどれほどのものなのかなよく分からなかったが、その後、遺跡発掘の指揮を任されていたようであるから、相当頭が良いのだろう。いつだったか初めてその話を聞いた時、フェレットが遺跡発掘の指揮を執っている姿とか、現場は皆フェレットなのだろうか、とか、フェレットしか住んでいない世界なのだろうか、とか、フェレットの通う学校は樹の穴なのだろうか、とそれぞれの光景を想像し妄想を膨らませ、なのははなんとも抑え難い笑いにとりつかれた。まるで昔話でおじいさんを歓迎してくれるネズミやスズメたちみたいだと思った。

 そこでなのはは笑いを噛み殺しながら、その溢れる疑問をユーノにぶつけ「ユーノくんの居たところはフェレット天国だね」と言った。するとユーノは吹き出した。

 なのははその反応に、もしかして間違っていたのだろうか、自分はおかしなことを聞いてしまったのだろうか、と内心不安になった。ユーノは「この姿は魔法によるものなんだ。皆がこの姿で生活してるなんて……くく……なのはは面白いこと言うね! 想像したら僕まで笑えてきたよ!」と目を細め声だけで笑った。そしてユーノの姿が光ったかと思うと、それは人の形に変わり、光が消えると、そこにはなのはと同じくらいに見える可愛らしい金髪の少年が笑いながら佇んでいた。

 なのはは目を白黒させながら何か言おうと口を動かすが、驚きと恥ずかしさで声が出ず、魚のようにパクパクさせるだけだった。

 ユーノは人だったのだ。遺跡発掘の指揮を執るフェレットリーダーではなかったのだ。しかも自分と同じくらいの少年だ。フェレットだから少年のような声なのだと思っていたが違ったのだ。なのはは尋常ではない衝撃を受けた。

 なのはは過去を振り返ってみるが、名乗りはしても、自分の年齢を教えたこともなければ、ユーノの年齢を聞いたこともない。そもそもフェレットの年齢なんて普通気にしないだろう。考えたとしても、犬や猫のように歳のとり方が違うかも、程度だ。

 一体何故そんな姿をしているのかと今何歳なのかを聞いてみると、この姿でいるのは魔力の消費を抑えられて怪我の治りも早いから、そして年齢は9歳とのことだった。同い年のユーノが学校を卒業して責任ある仕事に就いて異世界を跨いでいることに、なのはは言い表せぬ焦燥感を覚えた。

 その時から、ユーノと話す時なのはの脳裏には本来の少年の姿が描き出され、話す声の調子によりその少年の表情もころころ変わるのだった。

 

「なのは、僕はそろそろ寝るよ。なんだか眠くなってきちゃった」

「うん、おやすみ。きっとまだ回復しきってないからだよ。ゆっくり休んで」

 

 持ってきた時計に目を向けると21時を回っていた。

 夜は長い。今寝てしまうと、夜明けには程遠い変な時間に目を覚ましてしまう。魔法を使えば暗闇でも見えるようになるが、まだ寝る時間なのにわざわざ起きて活動するのはなんとなく面倒くさかった。もう少ない時間で魔法の練習をする必要はなく、日が昇ってからでも飽きるほど練習できるのだ。

 

「なのははまだ寝ないの?」

「まだ眠くないからね、もう少し起きてるよ」

「そっか、火の後始末に気をつけて。おやすみ」

 

 そう言うとユーノはティッシュ箱に潜り、数秒ほどカサカサと音を立ててから全く動かなくなった。

 あの少年が箱から頭だけ出して「狭いけど悪くないかも」なんて楽しげに言うのだ。思い浮かべると、なんだか可愛くて笑えた。

 草木に巨大な影を撒いている揺れ動く炎を、なのはは膝を抱えじっと見つめていた。森閑とする夜の森に、パチパチと木が弾ける音が響く。葉っぱを敷き詰めた地面に腰を下ろすもどこか湿っぽく、積もる枯れ枝が臀部に当たった。時々、燃やしている木が短くなると、周囲の重なり合う枯れ枝を一本引き抜き、細い両腕に力を込めた。そして軽くしなった後、ようやくバキンと折れたそれを火の中へ放り込む。枯れ枝から生えている刺のような茶色い葉っぱはよく燃えた。

 こうして一人何をするでもなく暖かな熱を頬に感じ、不規則な火のゆらぎを黙って眺めていると、繰り返す前の楽しかった日のこと、魔法に出会って今に至るまでの日々、それらが次から次へと浮かんできては消えていった。なのはは未来を想像しながら、私はできる、私は絶対に負けない、私は強くなれる、と呪文のように何度も口の中で唱えた。そして度々自身の心の奥からぽっと生み出される、あらゆる問い掛けについて黙考し、その答えを探した。

 なのはは基本的に繰り返した日の朝は学校へ行かず神社に向かっていたが、時々、どうしようもなくやるせない気持ちになり、親友に会いたい衝動に駆られたことが何回かあった。その時は初日だけ学校に足を運んだ。突然抱きつかれたり、泣きだされたり、2人はどうすればいいのか分からずあたふたしていたが、優しくなのはを受け入れてくれた。一緒にふざけ合うだけで、まるで魔法のように心のモヤは晴れ、穏やかな気持ちになり、元気づけられた。そして頑張ろうと思えた。もし2人がいなければどうなっていただろうか。戦い続けられたとしても頭が狂っていたかもしれない。それほどまでに2人の存在は、なのはの精神の安定と人間らしさの維持に大きく関わっていた。

 

「釣り行けなかったな」

 

 ふと今ごろになって突然、恭也との約束を思い出し、消え入りそうな声が口から零れた。その瞬間、脳裏にはぱっと恭也の顔が閃き、一緒に風呂に入って語り合ったことと、約束通りに釣りに行った時のもしもの光景がぼんやり浮かんだ。するとこの暗い森の中で一人、未だこんなことをしている自分の情けなさと悲しみが、一瞬、つむじ風のように心を掠めていった。それはいつかの、負の感情の嵐が心に吹き荒れ一人泣きじゃくった時と同じ、皆と離れることを決めた日の朝と同じ類のものだった。

 なのははその前兆を敏感に感じ取ると、全ての思考を放棄し心に小波すら立てぬよう感情を殺そうとした。しかしそんな努力も虚しく、じんわり目頭が熱くなったかと思うと視界が曇り始めた。考えてはいけない、泣いてはいけないと、心の中で何度も何度も繰り返し一生懸命止めようとした。すすり泣きを飲み込もうと唇を噛み締めた。それでも自分の意志とは無関係に涙は込み上げてくるばかりで、目蓋が炎の淡いオレンジに反射して光ったかと思うと、大きな二粒の涙となり、目を離れゆっくり頬を伝った。いったん流れだすともう止まらなかった。

 唐突に、胸元から声を掛けられた。なのはは一瞬はっと呼吸が止まり肩を跳ね上げた。すっかり沈黙だったため、自分の胸元にいる意思を持つ相棒のことが、頭からすっぽり抜け落ち、この場で起きているのは自分だけなのだと勘違いしていたのだ。よりにもよって、まさかこの状況で声を掛けられるとは想像もしていなかった。

 なのはは、かっこ悪くて恥ずかしい今の姿を見せて心配かけさせるわけにはいかないと、急いで目元をぐしぐしと拭った。それから胸元のレイジングハートを持ち上げ、どうしたのかとひきつった声で尋ねた。薄く笑みを浮かべ何でもないかのように振舞っていたが、目元は赤く腫れ、悲しみの名残りが喉を締め付け、時々痙攣的に息を詰まらせた。

 幾許の沈黙の後、レイジングハートがぽつりぽつりと何かを話し始めた。それは普段のように一言だけで終わるものではなく、言葉を選びながらの長い話だった。最初は恐る恐る、そして次第に熱がこもりはじめた。これほど長い言葉を聞いたのは初めてだった。

 状況的に慰めてくれているのだろうか。しかしその雰囲気はそんな同情という単純なものではなかった。それは勇気を振り絞り何か強い意思と決意を込めたような、真摯な言葉だった。まるで自分の内に秘めていた全てを打ち明けるかのように。

 なのははそれを感じとると、表情を引き締め耳を傾けた。いつものように憶測で返事をするわけにはいかなかった。

 レイジングハートの声が止まった時、なのはは非常に申し訳無さそうに眉をよせ、何と答えようか内心でおろおろしていた。

 

「えっと、あのねレイジングハート…………その、なんというか、ごめん。今更なんだけどね、言葉が……レイジングハートの言っている言葉が全然わからないんだ。実は今まで、何て言ってるかその場の雰囲気で予想してただけなの……」

 

 なのはは目を伏せて、自分の悪事を謝罪するような調子で言った。

 まるでその場から意志ある存在が突然消えてしまったかのように、何の言葉も発せられなかった。ただ木の弾ける音と暗闇に隠れる森の囁きだけがはっきり聞こえていた。

 この沈黙は永久に続いているのではないか。そう思えるほどこの短い沈黙は居心地悪く、息が詰まりそうな重い空気がどんより漂っていた。なのははその空気に身動き取れず、申し訳無さにしゅんとしながら、ただじっと耐えていた。手に乗せているレイジングハートが重く感じられた。

 いずれ言わなければならないと思っていた。でも今まで何とかなっていたし、いつかそのうち、もっと仲良くなってからそれとなく指摘すれば、もしくはユーノを介して伝えればいいだろうと考えていた。繰り返す必要がなくなってからでも遅くないと思っていた。もし話すとしたら気楽な状況で話そうと予定していた。それなのに、まさか泣いてる時、しかもとても深刻そうな様子で、今まで聞いたことがないほどの言葉数。こんな状況で伝えることになるなんて、なのはには想定外であり、青天の霹靂であり、不意打ちだった。心の準備なんてできていなかった。

 なのはは先程とは違う涙を流しそうになりながら、何故最初に言っておかなかったんだ、と胸の中で泣き言を何度も呟いた。

 レイジングハートが若干熱を帯びているのは怒っているからなのだろうか。

 

”モウシワケアリマセン……スコシバカリオジカンを”

 

 この重い空気を切り裂くように発せられたレイジングハートの声。それは抑揚や発音が不自然で音声合成のようだったが、確かに日本語だった。

 なのはは突然のことに思考が止まり、ようやっと何か返事をしようとした時、再びレイジングハートが声を発した。

 

”気が回りませんでした。申し訳ありません”

 

 その謝罪の言葉は流暢な日本語であり、どこと無くなのはの声に似ているように感じる。

 

「ううん、こっちこそ黙っててごめん、ね」

 

 なのはは驚きで目を見開き、未だ状況を理解できていないような声で答えた。こうしてレイジングハートと会話していることに、まるで夢を見ているような奇妙な感覚を覚えた。

 

「日本語上手、だね?」

 

”ありがとうございます。今まで気が付かなかったことを恥じ入るばかりです”

 

「えっと……それで、さっき何て言ってたのかについてなんだけど……」

 

”それは…………それはあのっ……わたし、が……”

 

 レイジングハートは何だか言いづらそうに言葉に詰まってしまった。それは先程の決意の篭った長い言葉を発するのに、もうすっかり勇気を使いきってしまったかのようだった。そんな人間臭さを感じさせるレイジングハートに、なのははなんだか親近感を覚え、応援したい気持ちになった。そして深い愛情で包み込むように優しく声を掛けた。

 

「レイジングハートがどうかしたの?」

 

”わたしが、私がずっと……ずっと傍にいます……そう言ったのです”

 

 それはまるで愛の告白だった。なのはは固まり何度もその言葉を頭の中で反芻した。そして泣いてる自分を安心させたかったのだと気付いた。レイジングハートはこれを言うために勇気を振り絞っていたのだ。なんでもないような簡単で短い言葉だった。しかし、それには溢れんばかりの思いが込められていた。

 なのははたちまち嬉しくなって、この小さな相棒が可愛くて堪らなくなった。口元に自然と笑みが浮かぶのを感じた。先ほどの言葉はもっと長かったはずだが、そんなことは気にならなかった。

 

「ありがとうレイジングハート。おかげですごく元気が出たよ。レイジングハートが傍に居てくれるなら何も心配いらないね」

 

 レイジングハートは恥ずかしさを隠すように、無言で数回光った。なのはは炎に視線を移し、口元に優しい笑みを浮かばせながら、温かい気持ちに心を委ねた

 居心地の良い短い沈黙の後、レイジングハートは静かに心の内を吐露しはじめた。

 

”私はずっとご主人様のことを見てきました。何度も立ち上がり、諦めること無く立ち向かうその姿をいつも傍から見てきました。ですが私は……私にはそんなご主人様を守ることも、勝利に導くことも、痛みを和らげることも……涙を拭いてあげることさえできません。こんな頼りにならない無力な私ですが、少しでもご主人様の力になりたいのです。なにか……何か私にできることはないのでしょうか”

 

 何をそんなに深刻そうに話していたのかと思えば、全てはなのはのことを思っての真剣な言葉だった。なのはは、まさかレイジングハートがこれ程までに自分のことを思ってくれているとは想像もしておらず、すっかりどぎまぎしてしまった。しかしそれに応えるため、なのはも自分の今思っている素直な気持ちを伝えた。

 

「私はレイジングハートが頼りないだなんてこれっぽっちも思ったことがないよ? いつも頼りにしてる。私はレイジングハートがいてくれなきゃ何もできないただの子供だよ。レイジングハートは頼りなくなんかないし無力でもない。私の大切な大切な相棒だよ」

 

 レイジングハートはそれきり、すっかり黙りこんでしまった。

 なのはは片手で地面から枝を引き抜くと、火の中に入れた。心は暖かくぽかぽかしていた。しかしふと、レイジングハートの言葉に違和感を覚えた。

 

「レイジングハート、さっき私は諦めること無く何度も立ち向かうって言ったよね。あれって……どういう意味かな」

 

”はい、そのままの意味です。ご主人様は何度やられようと、決して逃げることなく挑み続けています。ここまで来るのにどれほど努力したのか、私は知っています”

 

 この世界ではやられている姿など見せていない。

 思考よりも先に無意識が一瞬のうちにレイジングハートの言葉と事実を結び付け、ひとつの答えがぼんやりと浮かんだ。すると、未だ頭で上手く理解できていないにも拘らず、なのはの心臓はドキリと跳ね上がり、鼓動が急激に早くなった。外にその音が聞こえているのではないかと思うほどだった。全身が震え出すのを感じた。

 

「私が……黒い化け物……最初の暴走体に手も足も出ずにやられたこと知ってる?」

 

”はい、今でも鮮明に。ご主人様と出会った運命の日です。忘れることなどありません”

 

 間違いない。レイジングハートも繰り返していたのだ!

 無意識に潜んでいた答えが確信となって現れた。なのはは頭の中がぐちゃぐちゃになって、何を言えばいいのか、どうしたらいいのか、何もわからなくなった。まるで魂が抜けていくかのように気が遠くなるのを感じた。

 ずっと一人ぼっちだと思っていた。誰も覚えていない過去を背負い、一人ずっと戦い続けていくんだと思っていた。それが重くて辛いだなんて考えたこともなかった。

 

「レイジングハートも……繰り返してたの?」

 

 でも、同じ過去を共有する存在が目の前に現れた時、それが押し潰されそうになるほどの重荷になっていたことをはっきりと感じた。

 

”はい、理由は分かりませんが、私はご主人様と契約して以来、ご主人様が力尽きると同時に契約直後に戻っております”

 

 自分だけではなかった。そう思った瞬間、重荷はすっと軽くなり、なのはの目から涙が溢れた。

 

 

 

 

 明るくなった森の中、なのはとレイジングハートは明日の戦いについて考えていた。

 なのはの気分は、思いがけない運命の仲間の登場によりとても軽やかだった。

 なのははノートを取り出し絵図を描いてみた。が絵が下手だからか正直わかりづらい。しかしレイジングハートは正確にその意図を読み取ってくれた。

 レイジングハートの声は真剣であるが、どことなく幸せそうな雰囲気が滲み出ていた。なのは自身も、誰かとこんな風に試行錯誤して何かを成し遂げようとすることに楽しさを感じた。これまでの一人で戦略を考え、ひたすら魔法の基礎を練習するのとはまるで違った。

 

「ねえ、ふたりとも何について話してるの?」

 

 ユーノは仲間はずれにされているのを感じたのか、不満そうな声だった。なのはの脳裏に不貞腐れている少年の顔が浮かんだ。

 

「それに何だか随分と仲良くなったね」

 

”ユーノ、悲しいことにこれまで私とご主人様の運命は一度交わったきり平行線を辿っていました。しかし運命は再び交わり、今度は決して離れることの無い一本の線となったのです”

 

「はぁ……なんだか抽象的で深い話だね。それとふたりが今話していることにはどういう繋がりがあるんだい? 僕もその一本の線に混ぜて欲しいな」

 

”気付いてないだけであなたは何度も交わっています。そのうちいつか混ざることもできるのではないですか。知りませんけど”

 

 なんだかユーノが可哀想に思えてきたなのはは、優しく声を掛けた。

 

「ユーノくん、ごめんね仲間はずれにしちゃって。実は次に暴走体が現れた時どうやって倒そうか話し合ってたんだよ」

「そうなの? でも次の暴走体なんてどんなやつなのか分からないし、暴走体になるかも分からないんじゃない?」

 

 なのはもレイジングハートも無言になった。これがユーノが一本の線になれない理由だった。だがそれは仕方がないことだ。責めることはできない。レイジングハートが特別なだけなのだ。

 なのはは少し悲しそうに微笑みながら言った。それは恭也と釣りの約束をした時と同じ微笑みだった。

 

「まぁそうなんだけど……あまり深く考えちゃいけないよ。ユーノくんも一緒に考える?」

 

 なのはたちはノートを前に頭を捻った。

 なのはは水竜の攻撃をほとんど失敗することなく避けられる。失敗したとしてもレイジングハートとユーノが防いでくれる。しかし、相変わらず火力不足と体力不足に悩まされていた。そもそも相手の攻撃が間断なく襲ってくるため、接近することもできなければ攻撃をする機会もほとんど無かった。一応、ある攻撃を避けきった直後に大きな隙ができるのだが、体力不足によりそこまで辿り着くのが非常に困難だった。

 

「水の上で戦うのはいいとして、移動手段が足場っていうのが良くないね。どんなに自分に有利に並べたとしても一回で壊されるんじゃ後が続かないよ。たしかに細かい動きは可能になるけれど、その分体力も使うし魔力も使う。絶対に足場じゃなきゃ駄目な理由でもあるのかな? もしそうでないなら空を飛んだほうが賢明だと思うんだけど。それと防御を抜くには最大魔……」

「ちょっと、ちょっとまって。空を飛ぶって何それ」

 

 このフェレットは突然何てことを言い出すんだ。なのはは思わずユーノの言葉を遮った。ユーノ曰く、空中を自由に飛ぶ魔法で、割りと難易度の低い魔法らしい。なのはは、そんなものがあるなら何で先に言わなかったのかと内心で絶叫した。レイジングハートに知ってたかと尋ねると、言わずともいずれ自分で辿り着くと思っていたらしい。過大評価すぎる。なのははもっと早く教えて欲しかったが、それを言えば落ち込んでしまうだろうと考え言えなかった。

 

「いやぁ、ごめん。なのはは僕が教える前に何でもできたから、飛行も当然できるものだと勘違いしていたみたいだ。なのははつい数日前に魔法を使えるようになったばかりなんだもんね。忘れてた」

 

 なのはは早速飛んでみたいと思ったが、ぐっと堪えて作戦会議を続行した。

 

「防御を抜くには最大魔力をぶつけるのが手っ取り早いんだけど、そのためには放出や集束が上手くなきゃいけない。バリアを抜くだけなら相手のバリア能力を上回るバリア貫通能力を付与すればいいけどね」

 

”ご主人様の直射型射撃魔法の練度は、速度威力共にかなりのものです。それはきっと日々の修練と命を懸けた実戦によるものなのでしょう。ですが、やはり元の魔法の威力自体が弱いため、暴走体に必殺の一撃を与えるのは今のままでは厳しいです。威力を求めるなら砲撃魔法を極めるべきです、が……そうですね、砲撃魔法を今から練習したところで時間の無駄です。長所を伸ばすとしましょう。私に少しばかり案があります”

 

「加速と魔力の増大かな?」

 

”ええ、その通りです。ご主人様は今の射撃魔法の威力だけで数回の直撃で相手の防御を砕くことが可能です。それの性能を底上げします。ついでに弾着直後の適切なタイミングで魔力開放するよう調整すれば、それなりのダメージを与えられるかと”

 

「でもそれはかなり難しんじゃないかな。たしかになのはは魔力制御がとても上手だけど、そこまでできるとは思えない。仮に加速増大が行えたとしても、タイミングの調整なんて熟練者でも早々できることでもないと思うんだけど」

 

”そのために私がいるのです。これから私も微力ながら協力させて頂くことになりました。何も問題ありません”

 

「レイジングハート……きみはそんなことができるのかい? 僕の時もその微力を振るって欲しかったな……」

 

 なのはが何か言わずともどんどん話が進んでいく。

 なのはは話を聞きながら身体がぷるぷる震えていた。2人があまりにも頼もしかった。今まで滞っていた全てが今急に動き始めたかのように感じた。先の見えなかった道がぱっと開けたかのように感じた。一人だと進めなかった道も、今ならどこまでも進んでいけそうな気がした。

 一通り意見が出尽くすと実際にやってみようということになった。レイジングハートが作った魔法でなのはとユーノの意識に介入し、まるで現実と変わらない仮想空間で水竜戦を再現する。なのはは、こんなものがあるならもっと早く使いたかった、と思わずにいられなかった。

 気がつけばもう夜だった。

 一体どれほどの時間が経過したのかも分からなくなるほど何度も繰り返し、なのはもユーノもへとへとに疲れ、頭は鉛でも入っているかのように重かった。なのはは練習が終わったら空を飛ぼうと考えていたが、今はもうそれどころではなく、夕食を食べるとすぐに寝ることにした。

 ユーノは今日、なのはとレイジングハートの行動に多くの疑問を持ったはずだが、とくに何を言うでもなく付き合ってくれた。おそらく明日、暴走体を倒せた時に我慢できずに聞いてくるだろう。その時に何を言うか考えて置かなければならない。

 なのはは明日への不安は全く無く、気分はとても良かった。この疲れすらも心地よかった。この日は横たわるとすぐに眠りに落ちてしまった。

 

 

 

 

 なのははプールに進入するため、屋上に上がった。

 暴走体に挑むのはもう慣れているはずだった。しかしなのはは今緊張していた。昨日はレイジングハートとユーノで完璧に攻略できるよう何度も練習した。今日も確認のために数回行い、疲れない程度に魔法の練習もした。今までに無いくらい万全な状態だった。それでも何故か心臓がドクドクと高鳴っていた。

 なのはは緊張を振り払うかのようにガラスを吹き飛ばすと、勢い良く室内へ飛び込んだ。そして覚えたばかりの飛行で宙に留まると、桜色の小さな球を天井の丁度中央辺りに設置して暴走体を待ち構えた。

 この設置した球からは視覚情報が送られてくる。つまりこの場合、真上から見下ろした映像が意識に届く。随分前にレイジングハートに頼んで作ってもらったのだ。サーチャーというらしい。

 

”大丈夫です。ご主人様は一人ではありません”

 

 緊張を解そうとしてくれているのだろう。なのははレイジングハートの言葉に笑みを返し、ハンマーを握り直した。少しだけ落ち着いた気がした。

 

「なのは、ここって……練習の時と同じ場所じゃない?」

「そうだね不思議だね。練習通りにいったら説明するよ。ユーノくん結界張って」

 

 なのはが言い終わると同時にジュエルシードが発動、ユーノは急いで結界魔法を使った。

 暴走体を見たユーノが再び何か言おうとしていたが、結局何も言わずに言葉を飲み込んでいた。

 目の前にはいつものと変わらない、水球を纏った水竜が佇んでいた。

 

「なのは来るよ!」

 

 なのはは高速で迫る水球を必要な分だけその場から移動し、滑るように避けていく。まだやっと安定して飛べる程度の飛行技術だが、こんな攻撃は何の問題にもならない。足場を作ることに意識を割かなくてすむようになったため、随分と心にゆとりができていた。全く被弾する気がしない。

 なのはが避けている間、ユーノは移動しやすい配置を考えながら足場を作っていた。

 なのはは攻撃が止むのと同時に足場の一つに着地し、水竜が潜るのに合わせて別の足場に跳び移った。慣れない飛行よりも魔法を使って床を蹴る方が移動速度は速く、急激な方向転換も可能だった。

 サーチャーで出鱈目に動きまわる水竜の移動方向を見極め、距離を一定に保つ。

 この長大な体を思う存分振り回す攻撃に一体何度巻き込まれたことか。暴れるという単純な攻撃ではあるが、その威力と範囲、移動速度は凄まじい。何も考えずに逃げ回っていると、すぐに嵐の真っ只中に取り込まれてしまうのだ。

 

「いい感じだね、なのは」

「まあ、ね! でも本番はこれから。足場切らしちゃ、駄目だよ!」

「もちろん! ……なのは、今僕は心臓が破裂しそうなほど緊張してるよ」

 

 なのはは髪の毛にしがみつくユーノの報告を無視して、避けることに集中した。少しだけ息が弾んでいるが、今までに比べたら大したことはない。

 避け続けていると水面から一つの水球が出現し、なのは目掛けて飛んできた。それを避けていると今度は2つに変わった。そして3つ、4つと増えていき最終的に10を超える数がなのはを襲った。

 いくつかは水竜自身の攻撃でかき消されることもあるが、それでも避けるのは困難を極める。実戦でこれを避けきったのはかつて一度しか無い。しかしその一度だけで十分だった。これを耐えれば水竜に大きな隙ができることが分かったのだから。その時必殺の一撃を加えられるよう、昨日練習しまくったのだ。

 水竜と距離がある時は飛行しながら水球を避け、水竜が近づきそうになると足場を使ってその場を移動した。レイジングハートはもう数え切れないほどバインドを弾いていた。

 水球が止み、水竜の動きがピタリと止まった。まるで、疲れたからちょっと休憩します、とでもいうように明後日の方を向いてじっとしている。猫が突然動きを止め、何もない空間を見つめる様子にも似ている。

 

”ご主人様”

 

「なのは!」

 

 なのははレイジングハートが新しく作った術式に魔力を流し魔法弾を作る。レイジングハートの補助により、自分の限界を遥かに超える緻密で完璧な魔法制御が行われた。その分魔力も一気に吸い取られてゆく。際限なく魔力が吸い取られ魔法弾がどんどん巨大化、高密度化していくため、なのははなんだか恐くなり、ある程度のところで供給を止めた。

 魔法弾は球体ではなく先の尖った弾丸の形をしており、なのはの胴ほどもあった。密度が高すぎるのか、その色は桜色というより赤紫に近かった。さら目の前には、魔法弾より一回りほど大きい3つの環状魔法陣が、砲身のようにまっすぐ並んでいた。弾道の計算や修正、環状魔法陣の制御は全てレイジングハートに任せてある。

 

”準備出来ました”

 

 なのはは動かぬ水竜を見据えながら息を吸い込むと、合図するようにハンマーを振り声を上げた。

 

「撃てー!」

 

 それとほぼ同時にユーノは何かに気付いたように声を発したが、宙に浮く魔法弾は動き出し魔法陣を通過した瞬間、圧縮、加速、回転が行われ、視認できない速度で放たれてしまった。そして全てが桜色に包まれた。

 なのはたちは吹っ飛ばされ、壁を突き破り、ごろごろ転がって結界手前で止まった。レイジングハートとユーノが瞬時に張ったバリアのおかげで大したダメージはない。

 なのはは何が起こったのかさっぱり分からなかった。自分が吹っ飛ばされたことすら認識していなかった。顔をあげると建物の屋根や壁がほとんど無くなっていた。

 

”ちょっとだけ加減を間違えたみたいです”

 

「ちょっと!? あれのどこがちょっとなの!? 危うく死ぬところだったよ!」

 

 ユーノはなのはのフードから飛び出すと、レイジングハートに向かって悲鳴を上げた。

 

「あんな密度の魔力を爆発させたらどうなるか分かるでしょ!?」

 

 なのははここにきてようやく状況が理解できた。どうやら爆発の威力が強すぎたらしい。練習時は軽く爆風が吹き付ける程度だった。思えば、今回は魔法弾の色が濃く、魔力も多めに吸い取られていた。魔力増大と圧縮がどの程度の比率で行われたのかはレイジングハートにしか分からないが、本人の言うとおりちょっと加減を間違えたのだろう。

 

”申し訳ありませんご主人様。失敗してしまいました”

 

「勝利が目の前に迫ると焦ったり、気分が昂ったり、つい力が入り過ぎちゃうんだよね。今回はなんとか無事だったし、次から気をつけよ?」

 

 なのははふらつきながら立ちあがると、とりあえず壊れた建物の中に入ることにした。中に水竜はおらず、水も元からあった量しかなかった。ジュエルシードの魔力で作られたものだから、封印されると同時に無くなってしまったのだろう。

 水竜が最後にいたプールの底にジュエルシードが3つ沈んでいた。なのはは足場を作ってその真上まで移動すると、うつ伏せになり、ハンマーを目一杯水中に伸ばしてレイジングハートの中に取り込んだ。

 張り詰めていた気が一気に緩んだのか、腕を水中から引き上げると同時にぐるりと仰向けになり、手も足も放り出して大の字になった。身体は気怠く頭はぼーっとしていた。

 

「疲れた」

 

”お疲れ様です。とても格好良かったです”

 

「あれだけ動き回れば仕方がないよ。僕には真似できそうにない」

 

 なのはは、ぽっかり空いた天井から見える翠の空を見つめながら、ハンマーを抱き寄せた。そして埋め込まれたレイジングハートを柔らかな頬にぴったりくっつけた。ひんやりして気持ちがいい。レイジングハートが無性に愛おしく思えた。

 

「レイジングハートとユーノくんのおかげだよ。私一人じゃどうにもならなかった。……ねえ、ユーノくん、この建物どうしよう」

「はは、安心して。結界内の空間は通常の空間とは別だから、結界を戻せば元通り。……でもなのはが割ったガラスは戻らないけどね!」

 

 なのははユーノの言葉に小さく笑った。

 静かで、どことなくしんみりした空気だった。でもとても心地よい。それは各々が達成感に浸っているからなのだろう。

 

「ユーノくん、私に聞きたいことがあるんじゃない?」

「……あるけど、今はいいや。なんだかそんな気分じゃないよ」

「そっか、じゃあそろそろ帰ろう」

「なのはの家に?」

 

 ユーノはなのはが何と答えるか分かりきっていることをわざと聞いてきた。そこにはなのはに対する仲間としての信頼や、友としての気軽さが感じられた。

 

「ふふ、そうだよ、私達の住処にね」

「それは家じゃなくてただの森だよ」

 

 なのはは身を起こして、プールを離れた。

 昼の賑わいがまるで嘘のように感じられる静かな帰り道、なのはは、ふとあることを思い出し小さな声で呟いた。

 

「先手必勝不意打ちで一撃必殺作戦すればよかったな」

 

 

 

 

 帰ってくるとすぐ、今日こそ空を飛んでみようと、なのはは疲れた身体に気合を入れた。ユーノに危ないと言われたが、レイジングハートがいるしそんなに高くまでは飛ばないから大丈夫だと言って森から飛び立った。

 木の高さを超えると、一面、森の木々が規則正しくその尖った深緑の頭を整列させているのが目に入った。それだけでなのはは心がうきうきするのを感じた。

 もっと上に行けばどんな景色に変わるのだろう? なのははゆっくり高度を上げていく。緑の海から突き出た鉄塔が、山の稜線から遠く向こうの地平線まで、赤い灯りを点滅させながら並んでいた。反対を向くと、屋根の低い住宅街と灰色のビル街が続き、その後ろには真っ青な海が広がっていた。船もちらほら見える。貨物船だろうか。

 一通り見渡せる高さまで来ると足場を作り着地した。なのはは端っこから首を伸ばし、そっと下を覗いてみた。巨大樹にぶら下がった時よりも少し高い位置だろうか。なのはは地面に吸い込まれそうになる錯覚を覚えた。落ちたら確実に死ねる。実証済みだから間違いない。そう思うと、このたった一枚の薄い足場に支えられている状態に気付き、鼓動が少しだけ早くなり胃がきゅっと締まった。そっと中央に下がると、恐る恐るゆっくり腰を落とした。少しでも優しく動かないと、足場が壊れて落ちてしまうような気がした。

 飛行している時は恐くなかったのだが、足が床に着き重力の制限をその身に感じると、たちまち落ちる恐怖が湧き上がってきたのだ。

 なのはは下を見ないように遠くを見て気を紛らわせた。

 太陽がないのに昼のように明るく見える世界は、なんとなく不思議だった。魔法を解き視界を元に戻してみる。すると周囲は一気に暗闇に包まれ、街だけが散りばめた宝石のようにポツポツ光輝いていた。目が暗さに慣れると、光のなかった大地が、意外に明るい月の光で照らされて、仄白く光っているのが分かった。

 なのはは時間も恐怖も忘れ、しばらくの間景色を眺めていた。

 つい数日前まで、水竜を倒すこともこんな風に空を飛んで街を見下ろすことも、全く想像できなかった。いつになっても水竜を倒せず、ただ延々と挑み続ける停滞した日々を送らなければならないと思っていた。それが突然、本当に突然、一気に動き出したのだ。しかも動かす切っ掛けはすぐ近くにあったのだ。

 

「もっと早くレイジングハートとユーノに相談すればよかった」

 

 なのはは夜の春風を浴びながら、口元に笑みを浮かべていた。

 

”私ももっと早くに声を掛けていれば良かったと思っています”

 

 レイジングハートの声は優しかった。

 

「ねえ、レイジングハート……私と契約したこと後悔してる?」

 

 なのははレイジングハートに視線を向けず、何でもないかのように軽い調子で言った。しかし心の中は、肯定される不安と申し訳無さで一杯だった。

 もし契約しなければレイジングハートは繰り返すことなど無かっただろう。繰り返す苦しさはなのは自身がよく知っている。せめて簡単に死なないくらい強ければよかったのだが、すぐにやられてしまうほど弱い。道連れを食らうレイジングハートにしたら迷惑極まりないだろう。これでは恨まれても仕方がない。だからきっと後悔しているに違いない。なのははそう考えていた。

 レイジングハートは少し考えているのか、間を空けてから答えた。

 

”今の私はどう見えるでしょうか? 後悔しているように見えますか?”

 

 なのはは何も答えなかった。それだけでレイジングハートがどう思っているのか理解した。目頭が熱くなり、唇を噛み締めた。

 

”今の私からすれば、ご主人様と出会えない世界の方が最大の不幸です。なぜなら私は今、こうしてご主人様といられることに最大の喜びと幸せを感じているからです。あの時の私の選択は間違いではなかったと、自信を持って言えます”

 

 なのはは何も言わず、ぼやけた視界でただ遠くを見つめた。

 神秘的な月の光に満ちた夜の空気が、同じ運命を共に歩み始めた2つの存在を祝福しているようだった。

 

 


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