聖剣コンビ?がノルマクリアを目指す   作:せるん2

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書く気力はあるのに時間がない……できれば2、3日に1回は投下したいんですけどね。


4話 アルトリアとニュー、そして学園長

 

 やまなか:小ノルマ①のクリアおめでとう。

 やまなか:クリアまでがかなり早かったな。原作開始前までが期限だったんだけど、うん、余裕を持つのはいいことだ。

 やまなか:でも、予定が繰り上がったりはしないから、次のノルマは原作開始時まで通達されないからなー。

 やまなか:余った時間は好きに使えばいいさ。力を高めるもよし、麻帆良での地盤を固めるもよし。

 やまなか:大ノルマ③の当てを探す、でもいいしな。

 やまなか:それじゃあ、また。バイバイ。

 

      やまなか さん が 退室 しました。

 

 せいばあ:行ったな。

 にゅう:行ったね。

 せいばあ:……

 にゅう:…………

 せいばあ:しゃああああああああ!!! ミッションコンプリートおおおおおお!!!

 にゅう:まだ1個目だけどねええええええええええええええ!!!!!!

 せいばあ:それ言うなよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 にゅう:ごめええええええええええええんん!!!!!!!

 せいばあ:あ、もういいや。

 にゅう:そっすか。

 

ひゃっはー、アルトリアです。ちょっとテンション上がり過ぎた。まだ1つ目だが、記念すべき1つ目だからこそ喜びたかったんです。

 

 せいばあ:これからの方針については……ひとまず置いておこう。まずはこのノルマクリアの過程で発生した人間関係の変化について報告しあおうじゃないか。

 

結構しっちゃかめっちゃかにしちゃったしなあ、ニューが。ここらで状況を整理するのも悪くない。

 

 にゅう:ではまず、私から報告をば。

 にゅう:変化の少ないとこから報告してくね。私がクラスメイトの大半と一言二言は会話できるようになったよ。一歩引いてる組とは無理だけど。

 せいばあ:そこはいい。重要な話じゃあない。

 にゅう:図書館探検部の皆と友達になったよ。

 にゅう:桜咲と近衛さんがバカップルみたいになったよ。

 にゅう:私と近衛さんが仲良くしてると桜咲がうざいよ。

 にゅう:桜咲とは表面上の仲は悪いけど、内面ではそこそこ分かりあえてる気がするよ。

 にゅう:原作見てても思ってたけど、距離が近くなって確信した。桜咲って根っこは馬鹿だよ。

 にゅう:以上。

 せいばあ:投げやりだが簡潔だ。褒めて遣わす。

 にゅう:ははーっ!

 

今日はお互いテンションおかしいなー。まあ、転生者チャットの時はいつも似たようなもんだけど。

 

 せいばあ:次は俺だな。刹那と部活で手合わせをする機会が増えた。なんか心機一転って感じ。剣道というよりは剣術の訓練っぽくなってるけど。

 せいばあ:刹那って馬鹿だよね。俺らに嵌められたことにまるで気づいてないぞ。学園長辺りはちょっぴり気づいてたのに。

 せいばあ:以上。

 にゅう:短いね。

 せいばあ:俺、2-Aで関わりあんの刹那だけだし。

 にゅう:その点ちょっと不安だよね……いや、あらゆるノルマに対応できる可能性を上げるために、交流が深い人間と浅い人間に別れていた方がいいのかな?

 にゅう:ま、そこまで深く考えなくていいかもだけど。

 せいばあ:どちらにしろ、俺がそっちのクラスで君や刹那以外に絡むのは今のところ不自然だしな。この違うクラスってのは結構な足枷だ。

 にゅう:考え付く限りだと、期末試験編、エヴァ編、修学旅行編は私がメインで動くことになりそうだね。流れに沿って動く分には問題ないけど、多分どこかにノルマはくるだろうしなあ。

 せいばあ:期末試験はとりあえず勉強しとけばいい。エヴァ編は、ノルマで動かざるをえない場合を除けば動く必要ないだろ。問題は修学旅行だが……。

 にゅう:今回のノルマであの2人が仲良くなったこと。そして、私がその2人と交友を深めることができたというのは修学旅行編において大きなアドバンテージなのでは?

 せいばあ:……ノルマの内容次第だと思うけど。例えば『エヴァの代わりにリョウメンスクナを撃破しろ』ってノルマがきたとしたら、今の君たちの人間関係じゃ無理だろ。

 にゅう:確かに、近衛さんが攫われようがないからね。桜咲がしっかり近くで守ってる上に、私が護衛補助。

 にゅう:正直、天ヶ崎千草程度に遅れをとる気はしない。月詠も小太郎も同じく。こんなんじゃスクナ復活しそうにない。唯一、私の戦力じゃ不安なフェイトにしたってさ……

 せいばあ:あの段階で表舞台に出た理由がよく分からないヤツだからな。近衛木乃香にスクナ、それにネギと色々揃ってる場面ではあるが、本来の計画がある以上、本気で動くことはないだろうよ。

 にゅう:例え本気で来たとしても、いざとなればあなたに助っ人して貰えばどうとでもなるだろうし。ねえ、最強クラスさん?

 

……確かに本国とかからはそういう評価されてるけどさ。実際にそのランクの連中との戦闘経験があるわけじゃないっていう不安要素があるんだよ。 

 

 せいばあ:ふえぇ、期待が大きくて緊張するよぉ…………まあ、総合能力じゃそのレベルだと思うけど、ところどころの厄介さは君が上じゃないか? 

 にゅう:自分も相当倒すの面倒なヤツだという自覚があるけど、そっちもいい勝負じゃない? お互いちょっとした映像で戦闘データ見せあった程度の印象だけど。

 せいばあ:……俺とニュー。実際に闘りあってみる?

 

簡単な組み手ぐらいは部活後にやっていたが、お互い本気の装備でやったことはない。

 

 にゅう:……機会があれば是非。私の特性上、アルトリアのような強者と戦えるのはとても有難い。

 せいばあ:よし。いつになるか分からないけど関東魔法協会の訓練場借りてやろう。そっちは政府からの出向ってのがあってまだ難しいだろうけど、一応こっちはこの麻帆良で修業中の魔法生徒だからな。

 にゅう:君レベルでも修業期間取らされるんだなあ。習慣って面倒。

 せいばあ:力ばっかりあってもアレだし、どこかの何とか管理局じゃないんだから普通だよ。俺、まだ若いし。

 にゅう:そんなもんか……あれ、そういや私……この世界じゃ4歳にもなってねえ!?

 せいばあ:いやいや。今が2002年で、君がユニットとして精錬されたのが1年前弱で、普通にクローンとして生まれたのがそっから3年前だから……マジだ!? 茶々丸よりは年上だけど、2-Aで下から2番目にガキじゃねーか!?

 にゅう:いやー、びっくりした。どうでもいいけど。

 せいばあ:確かに、大した問題じゃなかった。近況報告も終わったし、これからの方針についての話に移ろう。

 

まあ、心構えについての話になりそうだが。

 

 にゅう:方針って言っても、さっきも話した通り、ノルマをクリアすることで原作の流れは改変されるから、実際ノルマ発表されるまでは山中の言う通りの行動する以外はなくない?

 せいばあ:そうなんだよなあ……そもそも、俺らの存在だけで、既に原作改変が起きてるから、あんまり盲目的に原作知識に頼れないのが痛い。原作知識それ自体もうろ覚えだが。

 にゅう:だよねえ。私がいたから、この時期は頭が固いはずの桜咲があんなに精神的に脆くなっていたわけだし。

 せいばあ:言い方悪いが、その御蔭でノルマクリアの難易度は下がったけどな。でも、これからは逆のパターンもありそうで怖い。

 にゅう:さっき言ってたパターンの場合の話? 本当になあ。ノルマ伝えられる時期によっては結構対策練れると思うけど。

 せいばあ:やっぱさ。個々の力を高めるのは勿論、ノルマクリアのためや原作知識からくる多少強引な行動を取ったりしても疑われない程度の麻帆良での地盤固めってのが一番堅実だな。

 にゅう:だね。私はクラスの皆と。君は魔法協会の人たちと。そして私たちが仲良くすることで私も協会から、あなたも2-A(3-A)からいい印象を持たれるようにする。そんなところ?

 せいばあ:そうだな、それしかない……。

 

他の考えもあると言えば……あ、やっぱ無理だったわ、そういえば。

 

 にゅう:なんだその3点リーダー。他に何かあるの?

 せいばあ:いや、考えたけど無理だって結論が出たのがあってな。

 せいばあ:俺たちが転生者で、この世界の未来についての知識があるってぶっちゃけることで学園側から力を借り、原作における危機については安全策をとるって案。

 にゅう:……ああ。心情的に嫌だというのは別にしろ、何より状況的に無理だね。

 せいばあ:そう。まず、俺たちが転生者だと証明することができない。読心術でさえ、転生関係のことを読めないというのは山中からのお墨付きだ。

 せいばあ:そんな状況でそんな妄言喚くやつがいたら、俺なら医者呼ぶね。

 にゅう:……山中のヤツ。難易度調整しっかりやってるんだな。ハードモードとは言わないが、絶対にイージーモードにはさせないって気合いが伝わってくる。

 せいばあ:最初に言われてて覚悟してたことだけど、実際に体験して、これからの展開が多少なりとも予想できるようになったことで危機感が現実のものになったな。

 にゅう:……ごちゃごちゃ考えても仕方ないって結論が出ただけ良しとしよう。次のノルマ発表までとにかく頑張って学園生活を送るのみだ。

 

んー。『佐藤君』だった頃の君は、人から言われるか追い込まれなきゃ努力できないタイプって聞いてたけど……まあ、今の人生は常にノルマに追い込まれてるとも言えるからな。

このノルマ達成前提の人生は、君にとっては充実したものなのかもしれない。今は人生のスパイスである(と聞く)恋やら愛にも目覚めているようだし、モチベーションもバッチリ。

 

うん。ニューはまだ強くなるだろう。俺ももっと努力して、もっと頼りになる存在になろう。

 

 せいばあ:んじゃあ。そういう方針で動こう。訓練場を君と一緒に使えるようになったらまた知らせる。

 にゅう:それじゃあ、今日はここまでかな?

 せいばあ:そうだね。おやすみ。

 にゅう:おやすみ。また明日。

 

      せいばあ さん が 退室 しました。

 

      にゅう  さん が 退室 しました。

 

 

さて、パソコン落としてもう寝よ。明日からは先生方に訓練場の話通すためにニューを売り込んでいかなきゃいけないし……。

 

 

この時の俺たちは気づいていなかった。俺たちが、予想以上にアイツに期待されてしまっていたことに……。

 

 

     やまなか さん が 入室 しました。

 

 やまなか:この子らなら、難易度上げても大丈夫かな。

 

     やまなか さん が 退室 しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

キング・クリムゾン! アルトリアです。

 

春先に小ノルマをクリアして早10ヶ月。

俺たち2人がどの程度の人間関係を築けたかについて軽く整理しよう。刹那? アイツはお嬢様とイチャイチャしてるよ。最近はアスナともそこそこ仲いいみたいだね。

 

ニューは2-Aで何人かの生徒からは呼び捨てにされる程度にはクラスに居場所を得て、俺は俺でニューと仲のいい数名とは顔を合わせたら挨拶するようになった。

 

関東魔法協会、麻帆良の魔法使いたちとの関係についても良好だ。

俺については言うまでもない。元々イギリスでの評価も高く、元ネタに引っ張られたようなカリスマ持ち。この10ヶ月で完璧にとけ込み、魔法先生たちからの信頼も厚い優等生だ。

ニューも俺の縁で魔法使いたちとそこそこに交流を持つことができた。刹那と同じく外から出向という扱いのニューは最初の内こそ警戒されていたが、学園長のさりげない計らいで、最近は同年代の魔法使いたちと一緒に修業をすることもできるようになった。

……学園長はニューが善意からくるお節介を焼いて刹那と近衛木乃香の仲を修復したと思っているからな。言葉にはしないが、内心かなり感謝しているっぽい。

実際ニューは元ネタっぽく病んでこそいるものの、惚れた相手の話題さえでなければ普通にいい子なので、皆から信用されるのは早かった。

 

少し話が変わるが、この世界のラグナがニューに何の手も出さなかったのは、その時のニューがヤンデレな態度を取らなかったからだと思う。元ネタでは妹と同じ顔したヤツがヤンデレしてて嫌悪感覚えたから問答無用でぶっ壊すルート入った部分もあると思うんだよな。

もちろん、この世界のラグナと元ネタさんは別の人生歩んでるから、価値観も違ったんだで済む話でもあるけど。

いずれにしろ、今のままラグナと再会してヤンデレモードに入れば確実に悪印象持たれるだろうから、このすぐには会えないって状況は実はニューにとって、そこまで悪いものではないのかもしれない。

離れている時間を利用して、自分の感情をコントロールできるように成長することが、ニューにとってある意味、山中から課されるものより重要な『ノルマ』と言えるだろう。

……たまにチャットで話をふって、どんな反応をするか見ているが……うん、道は遠い。話を振ると、ラグナラグナうるさくなる。まだ全然抑えられないようだ。

 

話を戻す。

そんなこんなで、原作開始までの麻帆良での地盤固めは順調にいった。

もう2月だし、魔法先生や生徒が噂してるし、そろそろネギが来るはず……ちょい複雑だ。

 

「アルトリア?」

 

おっといけない。これからニューとの模擬戦闘を始めるところだったんだ。気が抜けてるなー、殺されちまうぞ俺。

 

場所は学園結界の一部を利用した結構な強度を持つ認識阻害効果もある結界。森の中の開けた場所だ。

周りじゃ高音や愛衣、萌が真剣な面持ちで、美空があくびをかきながら俺たち2人の様子を窺っている。

 

「いえ、始めましょう」

 

そういって、俺は制服の上から魔法を展開し、蒼いドレスの上に鎧を着込んだ、あの有名な衣装となった。

 

高音とかは一旦裸になってから魔法で衣装を装備しているが、俺は一応最強クラス。ちょっとばかり高度な魔法を使うが、こうして一瞬で、着替える必要もなく衣装チェンジができる。

その上、空気を圧縮したことにより刀身を隠した『エクスカリバー』も呼び出す。まるでアーティファクトを呼び出すが如しだが、カードによる召喚ではなく、持ち主である俺の意思のみで出てくる分、便利度は上だ。

 

だが、それは相手も同じこと。

 

「わかった……ユニット起動」

 

ニューがそう言うと、彼女の上空からその体躯よりも大きな剣が振ってきた。そしてその剣が彼女の後ろに降り立つと、一瞬で変形しニューに装備された。

白いケープを羽織っていた制服姿は、ピッタリと身体のラインが見える蒼白いボディスーツの上に、両手両足が刀身となっているアーマーと、眼帯で隠した目にセンサーがついたバイザーを装着した姿となった。

さらにそれだけではなく、彼女の周りには蒼が混じった白銀の8本の剣が浮かび、長い1本の三つ編みの先にも小さな剣が髪飾りのように装備されている。周りに浮かぶ剣のように、彼女自身も地面から少し浮いている。そりゃ足が刀身になってるし、そっちの方がいいよな。

 

ムラクモ。それが彼女の装備した剣、ユニットの名前。この学園では学園長と私、後は葉加瀬聡美の関係者以外の人間には、このユニットこそが別次元に存在する『天叢雲剣』の力を引き出すものであり、ニューはそれの適合者という某シンフォギア的な設定で通っているが、もちろん真実は違う。

実際は、あのユニットを装備した状態のニューのことをムラクモと呼ぶ。言うなれば、ニューという存在そのものが神器『天叢雲剣』なのだ。

 

 

ここで、俺とニューの『エクスカリバー』と『天叢雲剣』がこの世界ではどういう設定になっているのか簡単に説明しようと思う。

 

エクスカリバーは、まあ元ネタの元ネタである『アーサー王伝説』とさほど変わらない。すっげー剣で、でもどちらかというと鞘のが凄いといった感じ。

俺の身体がFateのセイバーだったのは、剣に選ばれる資格を得るため程度の意味しかなかったのだろう。生まれた時の俺には才能こそあっても『サーヴァント・セイバー』としての力はなかったわけだし。

それを、無理矢理にこの世界の魔法を戦闘に取り入れることによってセイバーのような戦闘スタイルを獲得した点については『頑張ったなあ、俺』と素直に胸を張ることができる。セイバーのスキルは対魔力も含めて、きっちり身に付けた。実際は魔力強化と魔法障壁を鍛え上げたことによる対魔力(物理)だが。

他の技だってこっちの魔法を基礎から応用まで修得したことで再現可能となった。今の俺はセイバーという戦士であると同時に、この世界において優秀な魔法使いでもあるのだ。

 

そんなわけで、才能溢れる肉体に生まれた以外には基本的に『エクスカリバー』を手に入れる運命にいただけだった俺だが、ニューは生い立ち以外は結構優遇されてたと思う。

 

まず、この世界の『天叢雲剣』についての話をしよう。元々この世界の神話・伝承は俺たちが元いた世界とさほど違いはない。

つまり、天皇家が所有している『天叢雲剣』が形代だとか、熱田神宮に古来からのものが現存しているだとか、そもそもどのような情況で『現存』とするかだとか色々議論されている。

だが、このネギま世界ではそもそも高位の魔物だとか神に類するものだとかは、魔界(確か、魔界は金星の裏世界だったか? 他のは覚えてない、というか設定あったっけ?)やらの別次元からきた存在で、こちらで普通に倒しても滅ぶことはないとかいう設定がある。作中ではさらっと説明されただけなので詳しい理屈は知らないし、もしかしたら設定を勘違いしているかもしれないが。

リョウメンスクナノカミだってあれだけ派手に倒しても、実際は封印がせいぜいだったようだし。

それと同じで、神の御神体とも言える『天叢雲剣』は、この世界に存在こそしているだろうが、その力の大本となる本体は、神だとかがいる次元に存在しているとされている。

 

そういう発想に至った連中が、本体との結びつきが強い形代が残っている『天叢雲剣』ならこちらの世界に比較的簡単にサルベージが行え、その神々が元いたという高次の次元に接触することができるのではないかと考えた。

その後の研究で生まれたのがニューである。

ニューは『天叢雲剣』をこちらに定着させたり、限られた使用目的でとはいえ、その別の次元から無尽蔵にエネルギーを取りだすことができる(元ネタで言うところの蒼の力だろうか?)。

研究者たちはそこからさらに研究を発展させようとしていたらしいが、その前に潰された。

 

ここまで話せば分かるだろうが、ニューは貰った能力『天叢雲剣』が肉体の性能とも直結しているので、初期スペックだけならこちらよりもべらぼうに高い。

無尽蔵のエネルギーから造りだされる剣群による苛烈な攻撃に、再生能力。しかもおまけにライフリンクで死なないとくれば、アヴァロン持ってる俺より不死身という、わけわかんないしぶとさだ。

 

『天叢雲剣』も神器である分、『エクスカリバー』よりも格は上であると言える。多分、殺傷能力だけならスクナを封印ではなく完全消滅させられる威力だ。

 

まあ、現状の戦闘能力はこちらが上だが。

 

あれ? 今までの話を言っててちょっと思ったが、俺らUQホルダーに加入できそうじゃね? そんな気はまるでないけど。

 

こういう自慢話、偶に俺ら以外の誰かに話してみたい衝動に駆られるんだよなあ。

 

 

……そろそろ始めるか。

 

「さて、では開始の合図は……美空、お願いします」

 

さっきあくびこいてた春日美空に合図を頼む。そういや美空も2-Aだったなあ。俺と2-Aで関わりある人もう1人いたわ。

 

「えっ、あ、はい! そんじゃあ……始めっ!」

 

「対象の殲滅を開始します」

 

そういうと、ニューが宙に浮いたまま滑らかな動きで接近してきた。その口調はどこか機械染みている。ていうか殲滅はやめろ、殺す気か。

 

周りに浮かんだ8本の剣を器用に、ロボットアニメ風にいうとソードビットみたいに動かし連撃をしかけてきた。

 

それに対して俺は無詠唱・戦いの歌強化版で身体に魔力を通して強化し迎え撃つ。

 

「対象、切断」

 

「この程度っ!」

 

剣は縦横無尽に三次元機動しつつ俺の前後左右上下から襲いかかってきたが、見えていた剣も死角から来た剣も全て弾き返した。

 

最初の模擬戦闘の頃に比べれば、その生体兵器としての高い学習能力を生かした相当にえげつない連撃だったが……これでも俺は最強クラスに位置する女。その強さは兵器の学習機能だとかそういうのとは別の次元に足を突っ込んでいる。まだ単純な技量では負ける気がしないな。

 

この肉体は鍛えれば鍛えた分だけ強くなった。前世のできないことをできるようにする努力とは違い、できることをさらに洗練する努力というのは最高だった。おかげで向こうじゃ暇さえあれば鍛錬してて、先生方を心配させたもんだ。

こっちに来てからは魔法生徒としての責務やら平和な女子中学生の型に嵌められて落ち着いたが……イギリスでは優等生すぎて問題児という扱いだったな。まあ、もう1人似たような評価をされてたヤツがいたけど……。

 

「ペタル展開」

 

と、余計なこと考えてる暇はないか。先ほどまでの攻撃はこちらに隙を作るための布石。剣を遠隔操作しながらも自分自身は既に距離を取った場所で魔法陣を展開している。

 

「射出」

 

そしてその魔法陣から何本もの赤黒く輝く剣が弾幕となって射出された。これこそがニューの元ネタ作品が格ゲーにも関わらずSTG扱いされた所以!

 

さっきの剣はエクスカリバーでさえも弾くのが精一杯で、砕くことができないという強度が強みだったが、こちらは手数で押してくる。

しかも、魔法陣はニューの傍だけではなく、戦闘範囲内どこにでも現れて剣を射出するので並の戦士では避けることさえ難しい。

 

しかもこの剣は別次元から取りだされる無尽蔵のエネルギーで作られたものが召喚されているので、弾切れがない。……この点から、ニューは戦闘において神楽坂アスナと滅茶苦茶相性が悪かったりする。

 

それはいいとして問題は俺だ。とはいえ、そこまで対応に苦慮しないが。

 

所詮はあの弾幕の剣は即席で作ったもの。

彼女の装着したユニットの手足とあの8本の剣は、次元の向こう側にある『天叢雲剣』の一部を次元境界接触用素体であるニューを使ってこの世界の存在として定着させ製造したものだからこそ、オリジナルに近い強度があった。

 

しかし、即席で作った剣の射出は、恐ろしい威力ではあるものの、せいぜいが魔法の射手(サギタ・マギカ)の数十倍という程度。

 

これならエクスカリバーでも砕けるし、

 

「はあっ!」

 

俺の無詠唱呪文を利用した魔力放出モドキでも何とかなる。

 

剣で捌ききれなかった死角からの弾幕を、身体に触れる寸前にそこから魔力を勢いよく放出して弾き返したのだ。

潤沢な魔力があって初めてできる技だからその辺の魔法使いは真似をしないように!

 

そろそろ攻めるか。

 

前方から迫っていた剣を砕き、ニューに向かって魔力放出でブーストしながら前進し切りかかる。

 

「無駄」

 

その程度は、もちろんニューの周りに浮かぶ白銀の剣に防がれる、が、防がれたままその剣を力づくでニューまで押し込み、

 

「せいっ!」

 

そのまま纏めて単純な筋力で吹き飛ばした。

 

そうなると当然また距離が離れて不利……にはならず、攻撃する暇を与えずに、姿勢を崩したニューにすぐさま追撃を仕掛ける。

その途中でまた剣を射出されるが、破れかぶれの攻撃なんて怖くない。最小の動きでかわして迫り、切りつける。

 

「状況、対応」

 

それをギリギリで回避するニュー。まあ、当てられる場面でもあったが、模擬戦闘はニューの動きの質を上げるというのが主目的だ。

 

 

こちらは基本的にニューがギリギリで『対応できないだろう』攻撃を仕掛けている。それでも対応してくるんだから、あの身体のスペックも相当化け物だ。

 

だが、やはりいつまでもは攻撃に対応できずに段々じり貧になって負ける、というのがニューのいつものパターンだ。

今回が記念すべき10回目の戦闘だが、そろそろ10分以上もつようになるかな?

 

 

 

 

……そんな期待をしてたが、あれから向こうも白銀の剣での連撃や防御、赤黒い剣群での牽制を挟んで対抗してきたが、そろそろ負けパターンに入ったな。まだ7分しか経ってないのに。

 

「殲滅」

 

無理矢理距離を取ったのまではいいが、魔法陣を前面に大きく展開して剣群による弾幕の密度を上げて攻撃するという手段に出るとは……。

 

確かに、目の前に迫る弾幕は一発一発が普通の魔法使い相手なら余裕で殺せる威力だし、密度もなかなか。避けるスペースがない。

 

それでも魔力放出で無理に遠くまで跳んで回避はできるだろうが、そんな必要はない。

これなら死角から召喚した剣でちまちま牽制してた方がマシだったぞ。なんてったって俺は、正面からの攻撃には滅法強いからな!

 

自分の剣を弾幕に向けて突きだし、剣に纏わせていた魔法を解放する!

 

「風王鉄槌(ストライク・エア)」

 

その瞬間。

剣の刀身を見えなくするために張られていた風の結界が解放され暴風となり、眼前に迫った弾幕を粉々に吹き飛ばし、そのままの勢いでニューも遥か彼方までぶっ飛ばした。

 

……3キロぐらいは飛んだかな?防御されなきゃ麻帆良の外までホームランできたんだけど。

 

正直、この技については元ネタさんを超えてると思う。風の上級結界呪文を圧縮して使ってるからなあ。元ネタに詳しいわけではないので実際はどうなのか分からないけど。

 

「うっわあ……相変わらず友達相手に容赦ないっすね」

 

もう終わったと判断したのか、開始の合図をしてくれた美空が声をかけてきた。

……毎回こんなことしてるみたいに言うなよ。今回は偶々だ、偶々。それにお互い致命傷だとか後に残るケガとかはありえない身体だから、このぐらい問題ないんだよ。

 

「今のニューはちょっと迂闊でしたからね。軽い忠告のようなものです。それに……まだ終わっていませんよ」

 

「ほへ?」

 

吹き飛ばした先からはまだ戦意が伝わってくる……もしかして、さっきの迂闊な攻撃は俺に風王鉄槌を使わせて大きく距離を稼ぐための罠……?

 

それなら、不味い。

 

 

「――――――――開放、次――――――陣――」

 

 

!!

 

ほら、凄い力の波動を感じる! 急いで止めねば!!

 

 

「そ――白銀――――て――根源、八岐――より――――を否――粛清――者よ」

 

 

速度強化重視の身体強化と魔力放出のブースト噴射でマッハ数十のスピードを出し、ニューとの距離をほぼ0まで戻す!

よし、既に上空にヤバい力を感じる魔法陣が展開されてしまっているけど、これなら間に合う……!?

 

やばい! この身体の優れた直感が何かを叫んでいる! けど、もう止まらな……

 

「フィールド発生」

 

ガクン、と身体がその場に縫いつけられた。重力魔法……!? 

 

すぐ近くまで迫った所にいるニューがこちらに手を向けていた。そして俺の足元にも魔法陣……嵌められた!

今までこんなの一度も……てか元ネタにそんな技あったっけ? 覚えてねえよ畜生!

ていうか、この程度ならすぐ脱出できるだろうけど、今はそれどころじゃ……!

 

 

「『薙ぎ払え』」

 

 

重力場を発生させるまでに、準備は終えていたのだろう。俺たちの上空の魔法陣から建物サイズの巨大な剣が飛来してきた。

格ゲーで言うところの超必殺技……元ネタ風に言うとアストラル・ヒート!!

 

まずいまずい。これほとんどオリジナルの『天叢雲剣』召喚してきてる! 当たれば消し炭も残らない!!

 

回避――不可。重力場から無理矢理脱出して直撃を避けることはできるがダメージは免れない。そのダメージで倒れてる隙に首元に剣を突きつけられれば模擬戦闘という形式上、俺が敗北する。

 

この間、実際はほとんど思考せず、身体は既に最適な行動に移っていた。

 

エクスカリバーに一瞬で大量の魔力をこめ、さらにそのエネルギーを最上の質へと変換する!!

 

「エクス……!!」

 

「!!!」

 

そしてそのままぁっ!!!

 

「カリ『そこまでじゃ』バッ!?」

 

この声は……学園長!? いつの間に……いや、確か戦闘始まって3分頃に顔出してたな。

 

「…………状況終了」

 

そういうと、ニューは俺の3M手前まで迫っていた巨大な剣を引っ込め、自らもユニットを外して戦闘体制を解除していた。

こちらも大人しくエクスカリバーを送還し、衣装も制服へと戻す。

 

やっべー。訓練場の結界、学園結界ごとぶっ壊すとこだったぜ。

 

2人揃って元の場所まで戻り、そこで待っていた学園長に謝罪する。

 

「申し訳ありません、学園長。熱くなりすぎました。止めていただいて感謝します」

 

「……アルトリアは悪くない。最初に後先考えずに大技だした私が悪い……本当にすみませんでした」

 

頭を下げる。いや、ニューの技は威力は大きくてもあのまま使ってれば攻撃範囲そのものはそこまで大きくなかっただろうから、結界は壊れなかったはず。

それならやっぱり、負けたくないって我が儘でエクスカリバーぶっぱして結界壊す寸前だった俺のが悪いと思うけど。

 

「ほっほっ。構わんよ。むしろ君らが全力で戦える施設を用意できない儂が悪いんじゃよ。ここは君らのような若者のための修業場所なんじゃからな」

 

学園長……相変わらず適当っすね! お咎めなしとか、ありがとうございます!!

 

「じゃが……反省文ぐらいは書いて貰おうかの」

 

ですよねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………。

あ、どうも、ニュー・絡繰です。

 

さっき、止められてなければ…………私が負けてたな。

 

エクスカリバーの光の斬撃エネルギーであの大剣を逸らされ、そのまま私の身体もエネルギーに呑み込まれて……ひっどいことになってただろうね。

 

なんだかんだで、志を同じくする仲間と差があり過ぎるのも申し訳ないから、10戦かけて罠を張ったとっておきの秘策だったんだけどな……最強クラスってのがどういうものか思い知らされた。

私のスペック、なんだかんだで滅茶苦茶高いのになあ……。

私が所属している政府の機関は、魔法等を使用したテロから国の重要人物を守る職場なので、当然ながら旧世界の実力者が集まっており、神鳴流剣士とか西洋魔法使いで戦闘能力評価Aクラス前後の人たちが多数いる。

麻帆良に来る前から、その同僚たち『複数名を同時に』相手取っても圧倒出来てたから、非公式ながらも、ここに来る前から大体AAクラス程度の力はあった。

ここに来て、アルトリアや他の魔法生徒たちと修業することにより、今はAA+以上、ラカン式戦闘力表でいうなら約3000程度の強さまで高められたが。

 

まあそれはかなり大雑把な見方で、実際私の装備の殺傷能力や回復能力を考えれば、大物食いも十分に可能なはず……なんだけど、アルトリア強すぎる。

アルトリア自身は『実際に最強クラスの存在と戦ったことはないし、実際はおそらく一段落ちた強さだと思う』とか言ってたが……んなこたあない。

 

アルトリアも『鞘』の影響でほぼ不老不死だし、剣技や実戦における勘は私の学習能力を超えて天才的で、攻撃力も対城級だ。私相手だと目立たない要素だが、防御だって優れた身体強化に魔法障壁でフェイトとかラカン並ときている。その上重傷負っても即時回復。

私の兵器としてのスペックを使った詳細かつ適当な計算上、アルトリアの強さはラカン式戦闘力表で最低でも10000に達していると思われる。

 

さらにこっからも成長するだろうし……私もどうにかしなきゃなあ。終盤キツいことになりそうだ。

 

 

「さて、魔法生徒の諸君。もう先生方には伝えたことなのじゃが……明日、この麻帆良に新たな魔法先生が赴任する」

 

 

お、これはまさか……。

 

「が、学園長、それってもしかして!」

 

佐倉、慌てすぎ。

 

「ふむ、もう噂になっとったか。では正式に伝えるが……明日この学園に来るのはナギの息子、ネギ・スプリングフィールド君じゃ」

 

周りの皆がざわざわと騒ぎ出す。私も微妙にテンション上がった……こういうのは今のこの世界で生きる存在としてどうなのかと思うが、やっぱりミーハーな理由で興奮してしまう。

 

「とは言っても、暫くは先生としての仕事に慣れてもらいたいから、お主たちとの正式な顔合わせはまだ先になるがのう」

 

みんな一気にテンション下がった! なんか溜息聞こえる。高音さん辺りかな?

 

 

「じゃが……アルトリア君。お主はネギ君と同じメルディアナの卒業生で、在学中は彼と親しかったと聞く。それとなく気に掛けておいてくれんかの?」

 

 

何ぃ!?

 

え……マジ?

 

驚いた勢いのままアルトリアに視線を向ける。他の皆も同様だ。

 

「……ええ。分かりました」

 

アルトリアは俺からの視線から逃げるように学園長の方に向き直ると、歯切れ悪く返事をした。

 

「頼むぞい。本来力を貸して上げてほしい高畑君は出張が多くてな」

 

それを気にした様子もなく学園長が答えた。……相変わらずアルトリアは歯に何か挟まったような表情だ。

 

 

 

アルトリア……これから寮に戻ってからのチャット、覚悟しろよ……!

 

 

 

<続く>

 

 

 

 

 




戦闘回。というよりは、原作開始前の戦闘力や性能の説明回。
でも、これで次からは合間に説明挟まなくていいから戦闘シーンが楽になる。はず。

ではまた次回。

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