聖剣コンビ?がノルマクリアを目指す   作:せるん2

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今回は今までより短いですが、キリのいいとこまで行ったので投下します。
あと、この作品にアンチ・ヘイトタグはつけていませんが、一部のキャラとかに、「ちょっとどうなんそれ?」みたいにツッコむことはあると思います。
ただ、アンチやヘイトってほどのことにはならないように気をつけます。


2話 木乃香と刹那、そしてニュー

どうも皆さんこんにちは。

聖剣コンビの胸が大きい方、ニュー・絡繰です。元・佐藤でもあります。

 

うん、今日も絶好調だな私! 意味わかんない!

 

聖剣コンビってのは私たち2人を一括りに纏めるときに、私の脳内で勝手に使ってる称号である。割とお気に入り。

 

それにしても、『私』、か。一度死ぬ前の『俺』は、自分の脳内での一人称が変化するとは考えもしなかったな。

かつて『僕』から『俺』へと変化した前例があるにも関わらず、だ。

 

ま、どうでもいいけどね。

それにしても話題が飛びやすい。話が脱線しやすいのは内藤君ことアルトリアとの共通した欠点だったりする。

 

そんな私だが、今は麻帆良の名所、図書館島にいる。

そこで、近衛木乃香、宮崎のどか、綾瀬夕映、早乙女ハルナらから図書館探検部について説明を受けている。

 

「と、いう感じですね。大体の要綱は理解していただけましたか、ニューさん?」

 

「大丈夫」

 

「では、安全確保のための最重要注意事項3つをお答えください」

 

「……私たち中学生だけで探索できるのは地下3階まで。単独で地下に潜らない。『まだ行ける』は『もう危ない』」

 

「OKです。それでは、今日はこれから地下1階の入口付近を軽く散策します。初心者のニューさんもいますし、それでいいですよね? ハルナ、のどか、このかさん」

 

「いいよー。同じクラスの仲間、さらに言うなら体育の時間見る限りなら即戦力って感じだし。もうちょい慣れさせたら私たちの班が奥の方まで潜るための戦力になって貰うのだ!」

 

「ハルナ……もう少し言葉選ぼうよ。よろしくね、ニューさん」

 

「ニューさん。眼帯つけとるけど大丈夫? 弱視の治療やって話やけど……」

 

「左で十分見えてる。それに、視覚以外の感覚がそこそこに鋭敏だから」

 

「なるほど、古とかと似た人種か」

 

「んー、それなら問題はないんかな? 入口の近くやし。でも、無理はせんといてな」

 

「……ありがとう。これからよろしく」

 

「うん、よろしゅうな。ニューさん」「よろしくです」「よろしくー」「よろしく」

 

とりあえず、同級生としてのコネで同じ班に入れてもらうことには成功、かな?

 

以前から言っていた通り、図書館探検部に入部した。これでも近衛木乃香の護衛補助だしね。

ま、この図書館島では怪我することはあったとしても死ぬことはないだろうから、これは近衛木乃香から一定の信用を得ることを目的とした行動なんだけど。

図書館島は学園の魔法使いが安全管理しているし、これは原作知識だが、アルビレオ・イマもいる。自殺しようとしても死ねない安全レベルだ。

 

近衛木乃香と仲良くする理由は2つある。まず1つ、その方が有事の際に円滑に仕事ができそうだから。

ちょっと細かく言うなら、単純に近くにいなきゃ襲われても気づかないとか、長い期間の護衛なら相手のこと好ましく思ってた方が心情的には頑張りたくなるってのが理由。

私の存在に気づかれるな、みたいな忍者染みた任務でもない。護衛していることをバレないように、かつ魔法の隠匿に気をつけさえすれば(近いうちにバレるが)、近い距離で一緒にいることができる『友人』という関係は都合がいい。

理由2つ目はまた今度。

 

さて、私と同じ護衛の桜咲刹那は……この学園なら安全だし、あの登下校を物陰からストーキングする程度のことでも充分な仕事をしていると言える。

この学園の外についても、傍に控えていないという欠点こそあるものの、神鳴流を修めた彼女ならそこらの政治家のSPとは比べ物にならないほど頼りになるだろう。

 

それでも不安要素として見られているのは、それだけ近衛木乃香が大きい爆弾であるというのもあるが、それ以上に彼女、桜咲刹那の経歴・人格面の危うさが問題視されているからだ。

 

それについては、明日、彼女を見ながら考察しよう。『私たち』の予想通りなら、何らかのリアクションを示すはずだ。

 

 

 

 

次の日、朝、2-A教室。

 

「いやー! ニューさん、昨日は良かったよ! あれだけ動けるなら今日はもう一気に下層まで行っちゃう?」

 

朝一から大きな声で話しかけてきたのは早乙女ハルナ。

 

前世からの軽い人見知りと現世での研究所暮らしでコミュ障ちっくになってしまった今の私には、こういうフランクな対応が凄くありがたい。

 

1LDKで初対面の内藤君相手に物怖じせずに話せたのは、許容範囲越えた事態に暴走してたからにすぎないのだ……でも、その辺どうも、彼には過大評価されてた気がする。

チャットで無様な姿を見せて以来、少しはマシになったように思うが……ま、こっちも向こうのことをかなり贔屓目で見ているから強くは言えないけど。

 

「ハルナ、朝からうるさいです。でも、確かにニューさんは筋がいいです。身体能力や身のこなしもさることながら、一回教えただけでほとんどの機材を使いこなしていましたし」

 

ふふ、早乙女にどう答えたもんかと思ってたら助け舟。ロールプレイとはいえ人とハキハキ話せるアルトリアが羨ましい。

こっちはロールプレイすると茶々丸以上に会話が弾まなくなるから、ロールプレイはせずに素で会話してるけど、素がコミュ力不足っていうね……。

 

さて、綾瀬夕映が今言った通り、私は昨日の活動で実力を示した。これでも造られ精錬された生体兵器。ラーニング能力は高いのだ。施設での洗脳教育の賜物でもある、というのは複雑だが。

 

「でも、ニューさん、本を借りませんでしたよね……。読みたい本、見つかりませんでしたか?」

 

「いや、その……」

 

ちょっと悲しそうに宮崎のどかが聞いてきた。……ここで誤解しないで欲しいが、私は図書館探検部を仕事の手段としてだけではなく、学園生活を楽しむ活動としても力を入れて頑張るつもりだ。

だけど、昨日は読みたい本はあるにはあったけど、人前で手に取るにはまだ度胸が足りなかったというか何というか…………当たり障りないカモフラージュ用に何か借りればよかったか?

 

 

「お? なんかニューさんから仄かにラブ臭を感じる……!」

 

「!?」

 

なんだこの女!? 早乙女……あなどれないな、などと無駄シリアス。しゃーない。答えよう。

 

「恋愛小説借りようと思ったけど……借りてるところを人に見られるのが、ちょっと恥ずかしくて」

 

あれだ。家族と一緒にレンタルビデオ店行った時に萌えアニメ借りられないのと一緒だ。

でも、恋愛系の本って今の私とアルトリアに一番必要なものだと思うんだよね。お互い戦闘力は結構いい感じだけど、そっち方面は実力不足もいいところだし。

 

で、そんなヘタレた発言をした私に宮崎さんがキっと視線を向けて一言。

 

「恥ずかしくなんてないよ!」

 

うおっ! びっくりした。宮崎さんってこの時期からこんなでかい声出せる人だったのか。

早乙女と綾瀬さんはやれやれって顔してるけど。

 

「あ、その、ごめんなさい。でも、読むことを恥じなければいけない本なんて、その、ないと、思います……」

 

すぐに我に返って弱弱しく付け足したが。

……確かに、今の私の発言は本が大好きな人たちには失礼だったな。それを教えてくれた彼女には真摯に対応しなくてはなるまい。

 

「……宮崎さん。耳、貸して」

 

「え? あ、はい」

 

不思議そうな顔しながらも耳をこちらに近付けてくれた。

よし、覚悟は決まった。それに、この人はこういうことを人に話すタイプではないだろう。

他の人に聞こえないように耳元でボソボソと呟く。

 

「兄と妹の、その、ドギツい近親ものを借りたかったんだけど……」ボソボソ

 

「ぶふぃはふぁっ!?」

 

女子中学生が出しちゃいけない声でリアクションとりつつ噴き出すという器用な真似をやってのけた宮崎さん。

うん、変なこと聞かせてごめんね。彼女には、早乙女のラブ臭発言と私の今の告白でおおよその事情が掴めてしまったのだろう。

 

「げほっげほっ、はー、はー。それじゃあ、その、しょうがない、ですよね……」

 

顔真っ赤にしつつも引かずに話してくれるあたり、優しい子だよなー。

 

「あ、ニューさんも、耳貸してください」

 

「? どうぞ」

 

こちらがそうしたように、彼女もボソボソと呟いてきた。

 

「ニューさんが読みたいジャンルでオススメの本のリスト、後で書きだしてこっそり渡しますね」ボソボソ

 

「!!」

 

流石ビブリオマニア……エロっちい小説も数多く読んでいるな! まあ、文学的に有名な本って結構内容エロいの多いしね。彼女がエロいというわけではないはず。

 

「むう。何の話をしていたのやら……」

 

「まあまあハルナ。早速仲良くなってくれたようで良かったではありませんか」

 

綾瀬さんの言う通り、仲良くなるのはいいことだ。仲が悪いよりずっといい。やっぱり男にしろ女にしろ下の話は仲良くなる切っ掛けにはいいのか……? 

 

「あれ? 4人とも朝から集まって何しとるん? うちも仲間に入れてー」

 

来たな近衛木乃香。そんでもってターゲットは……いる。よし、これで計画を実行できる。

 

「おはよう、このか。今、ニューさんとのどかが仲良くなったとこ」

 

「ええなー。ニューさん、うちとも仲良うしてー」

 

近衛さんはテンションを上げて、席について椅子に座ってる私に軽く抱きついてきた。座ってる私に立っている彼女が抱きついてきたため、顔が微妙に胸に埋まる。

 

 

     ピクっ

 

 

お、例の彼女が微妙に反応した気配が。普段の彼女はそんな隙をまるで見せないのだけれど、やっぱり私と近衛さんが近づくのには思うところがあるのかな、桜咲刹那?

 

それにしても近衛さん……女子中学生のスキンシップってこんな感じなのか? いや、これは彼女なりの気遣いだろう。

このクラスでの私って『隣のクラスにいる前からの友達とばっかりつるんでて同級生に融け込もうとしない人』みたいな立ち位置になってきてるからな。

敢えてフレンドリーに接して、私に心を開いてもらおうとしているのだろう……まるで問題児だな、私。

 

いずれにしろ、これは好都合。この状況を利用して、桜咲をさらに刺激するぞ!

 

「……いいよ、近衛さん。私もあなたとは、いや、あなたたちと……仲良く、したい」

 

ぎゃー、恥ずかしい。こんなんキャラじゃないって! いや、ぎこちない喋りなのはとても今の私らしいけれど!

 

さらに! こっから腰に触れる程度に手を回し、軽く抱き合ってる感じにする!!

 

 

     さわっ

 

 

この行動には流石にちょっと面食らった近衛さん。だが、すぐに笑顔になった。

 

「ニューさん……。うん、ええよ。うちら、もう友達やん♪」

 

 

     ぎゅっ

 

 

近衛さんはさっきよりも力を込めて抱きしめ返してきた。

その表情は赤子を抱く母親のような慈愛に満ちていて……私は罪悪感で心が痛かった。

 

近衛さんには、私が『人付き合いが苦手だけど、降って湧いた機会に勇気を出して新しい対人関係を築こうと一歩踏み出した、いじらしい女の子』に見えているのだろう……。

いや、そういう心情も少なからずあるから、丸っきり嘘というわけではないんだけど、彼女の好意を利用してるのも本当だから胸が痛い。……これから五年間、頑張って護衛(の補助)するから許してね?

 

「おうおう見せつけてくれちゃってー。私らも友達だよー。な、ゆえ?」

 

「そうです。同じ部活の仲間ですしね」

 

「ニューさん。リスト書き出しておいたよ」ボソッ

 

他の3人も輪に加わる。転入して約3週間、なんかようやくクラスに馴染めそうだ……。

 

ほぼ密着していた近衛さんの胸から少し顔を離し、桜咲の方を盗み見る。

 

「……」

 

椅子に座り、腕を組んで微妙に私たちの輪に、薄眼で目線を向けていた。その視線に含まれる感情は微笑ましさと羨望、ってところかな?

私が抱きついたときにも特に物騒な気配はなかったから、彼女にも私が『友達作りのために勇気を出した女の子』に見えたのだろう。それであの微笑ましいものを見る目線か。彼女も基本的には善人だな。

 

羨望は……そりゃ、好きな人に抱きつかれてるヤツなんて羨ましいに決まってるか。

 

よし、最後の仕上げ。桜咲に、私が桜咲の様子を窺っていたことを気づかせる。

 

彼女に向けた意識をちょっと強めてみれば、さすがに優秀。見られていたことに動揺する気配を見せながらもすぐに視線を戻す。

だがしかし! その目線が戻りきる前、私の顔がまだ見えている瞬間に……!

 

 

     ニヤリ

 

 

悪意を込めた笑いを、口元に浮かべた。

 

 

「!!」

 

 

それに驚いてまた私に目線を戻してきても後の祭り。私はすでに近衛さんたちとの会話に戻っている。

 

それから1分ほど、穏やかではない闘気を背中に受け続けたが、やがて行動の不毛さを悟ったのか彼女はいつもの瞑想スタイルに戻った。

 

 

ふ、ふふふふ、ははははは、あーはっはっはっはっはっはっはぁ!!!!

 

無様だねえ、桜咲刹那!! そう、これこそが近衛木乃香と仲良くする理由その2だ!

 

私が近衛木乃香の護衛の補助になったというのは、当然彼女も学園長から聞かされたはず。

その時に、おそらく、学園長は彼女に気を使って『あくまで補助』だとか『政府の人間が強く言うから念のため』とか励ましの言葉をかけただろうが、それでも桜咲は深く落ち込んだに違いない。

自分では力不足だと面と向かって言われたようなものだし、自虐的な性格の彼女なら『それもその通りだ』と考えたことだろう。

実際、彼女は近衛さんに関することだと自分をいくらでも卑下できる材料がある。出自とか、守れなかった過去とか。

 

でも、そんな風に考えながらも彼女は近衛木乃香LOVE。自分の立場を奪う相手のことは、正直な話、あまり印象よく思わないだろう。

つまり、私に対して、初対面より前からネガティブな感情を持っている。

 

それは、これからの学園生活やノルマクリアに向ける動きでは不安要素になるだろうなと思っていたのだが……そこに来たのが、あの小ノルマだ。

 

 

①桜咲刹那と近衛木乃香を、原作開始時までに仲好く日常会話を交わす仲にすること。

 

 

これを達成するには、とにかくこの2人にアクションをかけなくてはならない。

 

そこで私たちは作戦を考えた。

 

そして、その作戦の第1段階にして近衛木乃香と仲良くする理由その2が、『近衛木乃香と接触して、桜咲刹那を焚きつける』だ。

 

それはさっきの反応を見る限り、間違いなく成功した。

 

おそらく、彼女は私と近衛さんが抱き合った時、こんなことを考えたはずだ。

 

『政府から送られた人間ということで色眼鏡で見ていたが……お嬢様のことをただの護衛対象としてではなく、友人としても見るのならば、そこまで不安に思わなくてもいいかもしれない。……悔しいが、私よりも余程上手くやるだろうし、な』

 

その思考が、私のあの悪役スマイルで、酷い感じに変化したことだろう。私に『ほんの一厘ほどでも、近衛木乃香を害する意思』があるように見えたかな?

もしそう見えたなら好都合。彼女は心の奥底で抱いているはずの『どす黒い嫉妬心』に従い、私を悪く思うことに躊躇いを持たなくなるだろう。

 

ふふふ、桜咲。あなたのことは手に取るように分かる。

 

近衛木乃香が大好きで愛おしくて大切で愛されたくて愛したくて、掛け替えのない存在で……だからこそ、拒絶されるのが怖くて触れあうことさえできない臆病者。

 

アルトリアはそんなあなたに余りいい感情を抱いていないようだった。努力家で迷いのない彼女には、今のあなたの剣が腑抜けて見えているんだろうね。

 

でも、私はあなたのこと、わりと好きだ。

 

同族意識とでも言うのか……本当は大好きな人に愛されたいのに、自分の醜い部分が気になって近づけなくて、でもそのくせ自分以外が近づくのも嫌で。

 

そんなあなたに、私は自分を重ね合わせて見ている。いや、私のが酷いか。私が桜咲なら、さっきの私が近衛さんに抱きついたのを見た段階で私をぶっ殺してる。

 

お互い未熟者だ。

 

でも、今のあなたがどれだけ情けなくても、ちゃんと成長することもできるのだと、私は知っている。

 

凄く勝手な理屈だしノルマ最優先だが、原作という決められた運命のレールの前にあなたが成長できれば、私はとても勇気づけられると思う。

 

 

さて、次は第2段階。アルトリアの出番だ。

 

さあ、待っていろ桜咲!

 

 

あなたを近衛木乃香とラブラブにしてやる!!

 

 

そして2人でトゥントゥンしあう仲になるがいいわ!!!

 

 

ふははははははーーーーっ!!!!

 

 

「うおっ、ニューさんがなんかすっげー悪い顔してる」

 

 

 

<続く>

 

 

 

 




今読み返すと投下したばっかのプロローグや1話でも「ああ、ここをこうすれば」とかみたいに考えちゃいますね。しっかり練習作になってます。
全体の流れは決めつつも、基本勢いで書いてく作品なので荒い部分が目立つかと思いますが、これからもよろしくお願いします。

ではまた次回。

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