ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

79 / 89
ようやく大魔王戦が始まろうとしています。
次の次くらいですかね。

お読み頂いている方には、長い上に更新遅くて申し訳なく思っています。
だけど先の展開思いつかないから(涙目)


78 合流

 マキシマムはバーンパレスの守護者である。

 侵入者を確実に始末するため、敵が弱ったところを見計らい出陣する。

 そのやり方を卑怯だと曰い、ミストバーンなどは掃除屋などと揶揄するが、マキシマムはそれを気に留めることなく責務を全うしている。

 

 先の戦いも例外ではなかった。

 死の大地で繰り広げられていた2つの戦いも当然監視していた。

 一つはハドラーと勇者ダイと裏切り者のバランの戦い。もう一つはハドラー新衛騎団と勇者以外の仲間の戦いだ。

 

 いつも通りマキシマムは監視を続け、敵が弱るのを待った。

 しかし、その途中でマキシマムの元へ小さな魔族の子供がやってきた。

 その子供の名はピロロ。

 

 ピロロはマキシマムの足元に縋るようにして助けを求めた。

 ただの魔族の子供の助けなど聞く義理も義務もマキシマムには無かったが、それでも魅力的な内容ではあった。

 曰く、キルバーンがやられた。

 

 キルバーンの実力はマキシマムも知っている。

 そもそも軍団長を始末する任に就いていた男だ。弱いわけがない。

 そんなキルバーンを倒した敵は排除すれば自分の功績はどれ程になるのか。

 

 マキシマムは意気揚々と配下の駒を連れて侵入者の排除へと赴く。

 未知の相手ではあるが消耗している敵など物の数ではないと、自らの勝利を疑うことはなかった。

 

 

 ーー結果はあまりにも予想外だった。否、予想できるはずもない。

 

 

 侵入者と僅かに戦いはしたものの、しかし決着は着かず終い。

 挙句にその戦いを中断せざるを得なかった原因が主であるバーンにあったなどと。

 そして、自らもただの駒としか思われていなかったなどと予想できるはずがない。

 

 

 +

 

 

 地面から這い出し、周りの状況を確認する。

 そこに数十秒前まであった光景は見る影もなかった。

 

 恐ろしいと思った。黒のコアとはあれ程巨大な大陸をも吹き飛ばしてしまうのか。

 先の戦いで侵入者が語ったことを思い出し、今更ながらに血の気が引いていくのを感じた。

 

「よーいしょっとおぉ!!」

 

 気の抜けるような掛け声でトーヤは地中から這い出ると服の汚れを落としている。

 マキシマムはその様子を奇妙なものを見るような目を向けてから口を開く。

 

「何故我輩を助けた?」

「いやいや、あんたら勝手に穴に入ってきたんだろうがよ」

 

 迷惑そうな顔でマキシマムの問に答えると、トーヤは身支度をしてすぐにでも移動しようとしている。

 それを呼び止めるような形で再度質問をぶつける。

 

「そうではない。何故我輩たちにーーいや、どうでも良いことだ……今となってはな」

 

 何かを言いかけて口をつぐむマキシマムと、その様子に眉根を寄せて今度はトーヤが質問をした。

 

「なになに? あんたまさか落ち込んでんの? さっきまでの勢いがないけど」

「な、何をバカな!! 我輩が落ち込むなどとあろう筈がないであろう!?」

 

 マキシマムは追い払うようにトーヤへ向かって手を振った。

 しかし、トーヤはマキシマムを正面から見据えて一向に動く気配がない。

 

「どうした? さっさと行けばよかろう」

「どうもこうもあんたここの守護者だろ。見逃す気か? まあさっきも言った通り俺に戦う気はないけどさ」

 

 トーヤの言葉に何か言い返そうにも、マキシマムは何も思いつかなかった。

 確かにトーヤはマキシマムからすれば侵入者であり、敵である。しかし先の会話とこの惨状のあとでは戦う気など起こらなかった。

 嫌でも視界に入るトーヤが持つキルバーンの頭ーー黒のコアがその気力を奪うのだ。

 

「我輩は………」

 

 どうすればいい? 

 呟く様なその言葉は、しかしマキシマムの口からは溢れることなく消えていった。

 だが、誰に向けて放ったわけでもない問に答えるものがいた。

 

「帰れば良いんじゃね?」

「帰る?」

 

 言葉の意味を図りかねて、マキシマムはオウム返しをした。

 

「ああ、バーンのところに。こんな感じで戦い中断されたのにまた戦うってのもマヌケだしさ、とりあえず今回は無しにしようぜ」

「敵を前にしてオメオメと逃げ帰れと?」

「さっきと言ってることがーーいや、やっぱいい。……あんた独断でここに来たんだろ? バーンからしたら逃げ帰ったことにはならないだろ」

 

 トーヤの言っていることは正しかった。元より反射的に反論しただけで、マキシマムの心の内にそんな不安はありはしない。

 すなわち、マキシマムは大魔王バーンにとって居ても居なくても構わない取るに足らない存在だった。

 その事実を知るのが怖いのだ。

 

「一緒に行くか?」

 

 何気なく吐かれた言葉に、マキシマムは弾かれたように顔を上げた。

 

「バ、バカな……我輩が人間などと行動を共にするはずがなかろう!」

 

 トーヤは頬を掻いて”そりゃそうか”と小さく呟くと、身を翻してその場を去ろうとする。

 

「気になるならバーンに真意を聞いてみれば? 後のことはそれから考えればいいでしょ。ーーじゃあな」

 

 去り際にそう告げてトーヤはダイたちのいる魔宮の扉へと向かっていった。

 その背中を黙って見送り、残されたマキシマムは一人考える。

 

「真意を聞くだと? バーン様に? 我輩はただの駒なのですかと聞けというのか? ハ、ハハハ、ハハーー」

 

 自嘲気味に笑い、そしてマキシマムは周りに立つ部下を見る。

 

 

 +

 

 

 辿り着いた時、そこには横たわるバランと寄り添うように膝を付くダイの姿が見えた。

 乱れる呼吸を整えてみんなの元へ駆け寄る。

 

「はぁ、はぁ……お、おい」

 

 連戦に次ぐ連戦で体力が底を尽きそうだ。おまけに結構な距離走った。

 両膝に手をやり粗い呼吸を吐く俺にようやくみんなが気づく。

 

「……仲間は……みんな無事……か?」

 

 消え入りそうな声でバランが話す。

 宙へと伸ばされた腕をダイは掴み、涙を流しながら答える。

 

「みんな…みんな無事だよ、ヒュンケルだっている」

「…そうか……だがダイよ……わたしはもう助からん……みんなを困らせてはいかん…」

 

 その言葉に息を飲むダイと悲痛そうに顔をそむけるポップ達。

 みるも無残な状態のバランの肉体は、もはや回復呪文すら意味を成さない。

 

「……わたしの体には生命力すら残されていない……いかなる治療も手遅れ…だ」

「う、嘘だ…嘘だ」

 

 傷つく父を前にダイは涙を流す。その涙を見てここで再び覚悟を決めた。

 バランを救う。俺は今日そのために来たんだ。

 

 バランを救えばダイに双竜紋は宿らないだろう。だけどそれでいい。

 ダイにこの世界の行末を背負わせちゃいけない。たった一人に責任を押し付けて、辛い思いさせて、それが必要なんだって誰が言える?

 

 アバンはダイの双竜紋が必要だって言ってたけど、それでも俺がバランを助けたいと言った時反対しなかった。

 もしかして試されていたんじゃないかって直前になって思う。だってあの人、俺よりも他人に甘そうだし。

 

 とにかく、今この時から原作とは明確に違う未来を歩むことになる。

 だけど俺は必ずバーンを倒してみせる。これはその決意表明、バーンを俺が倒すという意志の現れだ。

 

「トーヤ!? な、なにをーー」

「おい、バラン!! 勝手なこと言ってんなよ、育児放棄して挙句こんなところでサヨナラか? いい年して常識ってもんが足りないじゃねえか? 里親に菓子折り持って挨拶くらいしとくのが筋ってもんだぜ!!」

 

 ダイの言葉の先を待たずに俺は”大天使の息吹”を使う。

 2回目の大天使。カードから現れた天使は、神々しいまでの輝きを放つ。

 

「バランの傷を治してくれ! 今すぐに!!」

 ーーお安い御用。ではその者の身体を治してしんぜようーー

 

 頼もしい言葉だった。天使が一息吹きかけると、瞬く間に傷が癒えていく。

 本当に一瞬だった。死にかけていたバランの傷はすっかり消えていた。

 

「なっ……わ、わたしはーーこれは…一体…こんなことが……奇跡か…」

 

 横たわったまま両手を動かしてバランは呆けている。

 ダイは涙を流してバランの回復を喜び、みんなもまた二人の様子にうっすら涙を浮かべている。

 

 そんな二人をみて確信する。

 この選択は間違いなんかじゃないのだと。

 

 




主人公勢ですら出番が殆どないのにマキシマムさんに今後の出番はあるのだろうか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。