ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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最近仕事がヤバイです。にもかかわらずオリジナルの短編などを書いてみました。
→『異世界転生するのかと思ったらしなかった話』
よければお読み頂けるとうれしいです。


73 死の大地

 昨日気球船で出立したダイ達はまさに激動の一日を送っていた。

 

 カールの作戦基地に到着したダイ達は、到着してまもなくカールの北方にある漁港サババにて敵の襲撃があったと知らされる。

 

 死の大地へ乗り込むため、サババにて大型船を建造していたのだが、ハドラー親衛騎団の襲撃によって船は破壊されてしまった。

 

 ポップの活躍により辛くも親衛騎団を退けたが、しかし親衛騎団の目的は人間たちへの奇襲ではなかった。

 

 死の大地で待つとの挑戦を言い残し、親衛騎団は死の大地へと去っていった。

 

 作戦の中断を余儀なくされた一行は一旦カール城へ戻ることとなる。

 

 一方。チウは敵のアジトを偵察するため死の大地へ乗り込んでいた。

 

 海底にバーンの居城への入り口を見つけたチウは敵に見つかり絶体絶命の危機に陥った。

 

 その窮地を救ったのは竜騎将バランだった。

 

 チウ捜索のために死の大地へとやってきたポップ、クロコダイン、ヒュンケルの三人は瀕死の状態で倒れるチウを見つける。

 

 姿を隠したバランの存在に逸早く気がついたヒュンケルはポップとチウを先に仲間の元へ帰らせ、バランとの邂逅を果たした。

 

 大魔王バーンを討つと語るバランの助力を得るため、二人は説得を試みる。しかし説得は失敗し交戦状態になってしまう。

 

 その決着となる最後の瞬間、突如姿を現した親衛騎団の女王アルビナス。

 

 結果としてバランとアルビナス双方の攻撃を受けたヒュンケルは再起不能の重症を負ってしまった。

 

 その姿に心を動かされたバランは自身の考えを改め、人間とともにバーンを倒すため共闘することになった。

 

 チウの功績により発見した海底の門。その門を破壊する作戦を立てたダイ達はバランを加えて再度死の大地へと乗り込むのだった。

 

「……なげぇよ」

 

 レオナからことの顛末を聞いた俺の感想はその一言で片付いた。

 

「なによ、せっかく説明してあげたのにその態度はっ」

 

 怒ったように腕を組むレオナを余所に、俺はこれから行われる作戦について考えていた。

 

 海底の門を破壊するダイ・バラン組と地上で敵を引きつけるその他組の二面作戦。

 

 どちらについて行ってもバーンと対面することはできるが、俺はダイとバランに付いて行きたい。

 

 ……行きたいんだけど、あいつらどこにいるんだ?

 

 周囲を見回すがダイ達の姿が見えない。

 

「なあ、ダイ達は?」

 

 そんな素朴な疑問に、レオナは呆れた表情をしてみせる。

 

「なに言ってるのよ。みんなとっくに出発したわよ」

 

「はあ!?」

 

 よくよく考えて見ればベッドはもぬけの殻。重症のはずのヒュンケルが寝ていないのはどう考えても不自然だ。

 

 ということはレオナの言う通り、みんな死の大地に向かったのだろう。

 

 くそぅ、あいつらめ。なぜ俺を置いていくのか。

 

 いや待てよ。昨日ダイ達を見送るとき、あとで行くって言ったっけ? 

 

 あっ言ってねぇや。

 

 だからかチクショウめ。

 

 ダイ達の後を追うため、部屋から勢い良く飛び出す。すると後ろからレオナの叫ぶ声が聞こえてきた。

 

「ヒュンケルが向かったばかりよ!! まだ近くにいると思うわっ!」

 

 片手をあげてレオナに応えると、ヒュンケルの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 海岸へ行くとヒュンケルはすぐに見つかった。

 

 なにやらエイミとラブロマンスじみたことをしているために合流するタイミングが掴めない。

 

 しばらく見守っていると”鎧の魔槍”が飛んできた。どうやらそろそろ終わるようだ。

 

 エイミを残して歩き去るヒュンケルの後を追って声をかける。

 

「トーヤか。お前はパプニカへ残ったのではなかったのか……なぜここにいる?」

 

 せっかく追いついた仲間の反応は心なしか冷たかった。

 

「いや、最初から来るつもりだったから。っていうかーーまぁいいや、べつに。それより、お前すごいな」

 

 鎧を着ているとはいえ、ヒュンケルはとんでもない重傷なのが見て取れた。

 

 市中引き回しのうえ獄門磔にでもあったのかっていうくらいボロボロの状態だ……そんなやつ見たこと無いけど。

 

 とりあえず”エリキシル剤”を飲ませて怪我の回復を試みる。しかし予想に反してヒュンケルの怪我は治らなかった。

 

 レオナは手当をしてもほとんど効果が無いくらい重傷だと言っていた。如何に俺のアイテムの回復能力が高くてもすぐには治らないということだろうか。

 

「ふっ、どちらにしろこのまま戦うつもりだった。お前が気にすることではない」

 

 そう言って再び歩みを始めるヒュンケルだが、さすがにこのまま見ているのは忍びなかった。

 

 こんな状態のやつが戦うなんてありえない。トラックにひかれて血だらけのヤツのほうがまだ元気にみえるぞ。

 

 このままだと確実に死ぬ。原作では死んでなかったから気にしなくてもいいのかもしれないけど、いくらなんでも見ていられない。

 

「ちょっとまて。ーーゲイン」

 

 3回しかつかえない”大天使の息吹”だけど、俺は惜しむことなくここで使用することにした。

 

「なっーー!?」

 

 カードから現れる天使の姿。その天使をみてヒュンケルは目を見開いて声を失う。

 

 ーー妾に何を望むーー

 

「ヒュンケルの身体を治してやってくれ」

 

 ーーお安い御用。ではその者の身体を治してしんぜようーー

 

 天使が一息吹きかけると、瞬く間に傷が癒えていく。癒えた確かめるようにヒュンケルは手を握っては開く。

 

「お、おどろいた。お前は天使か何かなのか」

 

「なにそれ口説いてんの?」 

 

 気持ちの悪いセリフに思わずツッコミを入れてしまう。

 

 アイテムの延長だと説明し納得させると、俺たちは先を急いだ。

 

 それにしても”大天使の息吹”が普通に機能してよかった。一回も使ったことなかったからあまり自信が無かったんだ。

 

 でもこの様子なら大丈夫そうだ。もし俺の手が原作のゴンのように手が吹き飛ばされてても治るのだろうか。

 

 試してみたいと思う反面、そんな事態にはなりたくないと強く思う。

 

 

 

 

 

「お前は来ないと思っていた」

 

 死の大地へ降り立つと、突然ヒュンケルがそんなことを言い出した。

 

「何の話だ?」

 

「魔王軍との戦いのことだ。今までの戦いでも薄々感じていた。お前は仕方なく戦いに身を投じていたのだろう」

 

「あー、そういう話ね。マリンにもそれっぽいことをついこの間言われたよ」

 

 マリンとは付き合いが長いからいいとして、まさかヒュンケルにまでそう思われてるなんてな。もしかしてダイとか他のみんなもそう思ってるのか?

 

「フレイザードや竜騎衆の墓を作っていただろう。そういうやつは戦いには向かない。だからパプニカに残ると聞いた時、それでいいと思った」

 

「墓って……よく見てるな。でもあれはそういうんじゃないよ」

 

 そう。あれは別に優しさとかそういうので作った訳じゃない。

 

 ただ責任を負いたくなかったんだ。運命を変えてしまう責任を。死者を弔うことでその言い訳をしていたんだ。

 

 とにかく、それに関しては俺の中で決着がついた。これからは俺は俺の好きなようにやらせてもらう。そのためにもーー

 

「バーンは俺が倒してみせる。期待しとけ。我に秘策ありだ」

 

 冗談めかして、しかしながら自信満々に言い放つ。

 

「ふふ、すごい自信だな。それが通じなかったらどうするきだ」

 

「そんときは気合でなんとかする。世の中気合さえあればどうにでもなるもんだ」

 

「ならば俺もそれに負けないように気合を入れて戦おう」

 

 ニヒルに笑うヒュンケルと拳を軽くぶつけあってから走った。

 

 ヒュンケルはポップ達のいる方へ。

 

 そして俺はダイ達がいるはずの門の方へ。

 

 

 

 

 

 この辺かなー。

 

 死の大地の海岸沿いを歩き、海を見渡す。

 

 ダイとバランの向かったという門へ向かうには海に潜る必要がある。

 

 しかし泳いだのでは時間がかかるので、可能な限り門の近くまで陸の上を移動しているのだ。

 

 下手に”同行”を使うとこの間みたいにハドラーと交戦中のところへ割り込むことになりかねない。

 

 急いでいるとはいえ渦中へ飛び込むようなマネは控えたい。

 

 エアドロップをポーチからとりだし、口に含む。

 

 さて、そろそろ潜ってーーッ!?

 

 突然感じた気配に弾けるように振り返る。

 

 つんざくような異音に耳を覆いたくなるのをこらえ、その気配のする方へと視線を送る。

 

 そこには、巨大な鎌を優雅に回す死神の姿があった。

 






そういえば最初にオリ主の念能力を決めるのにはかなり苦労しました。
本当はゲットバッカーズの蛮ちゃんみたいに”邪眼”にしようかなとかおもったんですけどね。制約と誓約もまんま使えそうでしたし。

【邪眼】
・目のあった相手に1分間の悪夢をみせる。
・1日に3度しか使用できない。
・同じ対象者にかけるには24時間の間隔が必要。
・1日に3度の誓約を破り4度目の邪眼を使用した場合、術者は死ぬ。

強すぎたのでボツにしました。
似たような理屈でイルミとかシャルナークみたいな針も却下。

強すぎるのも考えものですよね。

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