最近仕事が忙しすぎて全く書けませんでした。
繁忙期だからってやめて欲しいですね。時間外要らないから休みが欲しい。
アバンへ別れを告げた俺は、オーザムへ向かう前にパプニカへ戻ってきていた。
アポロとマリン、そしてロン・ベルクの三人には受け取って欲しい物があったからだ。
アポロへはすでに渡すものは渡した。
”俺が戻らなかったら開けてくれ”と言って渡したためにかなり不安な表情をしていたが、思うところでもあったのか詳しい事情は何も聞かずに受け取ってくれた。
つづいてマリンへ渡そうとしたのだが見つからない。
先に城の一室でロン・ベルクを見つけたので、アポロに渡したときと同じようにアイテムの入った袋を渡す。
「なんだこれは?」
ロン・ベルクはアイテム袋を訝しげに見つめると、ぞんざいに掲げた。
「もし俺が死の大地から戻らなかったら開けて下さい」
「そうか」
「ウェイト、ウェイトッーー何、いきなり開けてるんですか!? 戻らなかったらって言ってるじゃないですか」
袋を漁り始めたロン・ベルクを慌てて止めに入るが、まるで聞く耳持たない。そして中に入っている手紙に気づいて読み始めてしまった。
奪い返すために何度も飛びかかるが、あっさりと躱されてしまう。しかもその最中であっても目は手紙の文章を読み進めている。流石は達人というべきか。
何度やってもムダなので俺は手紙を奪い返すことを諦め、大きなため息を吐いた。
手紙にはこの世界が辿るであろう未来と、アバンが考えた作戦が書いてある。
俺が死の大地でバーンを倒せなかった場合の保険だ。あくまで保険なので知られないに越したことはなかったのだが……。
「安心しろ、別に言いふらしたりはせん」
手紙を読み終えたロン・ベルクは袋の中にあるアイテムを手に取り弄り始める。
まあ、それなら別にいいけどさ。それよりもーー
「よく信じますね。誇大妄想と笑われてもおかしくない内容ですよ」
「別に信じた訳じゃない。この手紙通りになったときはそう動けば良いだけのことだ。どちらにしろ騒ぎ立てるようなことじゃない」
「そ、そうですか」
淡白なのか、合理的なのか。あるいは興味が無いのか……よく分からない人だな。
「それにしてもなんだ、このオモチャみたいなのは。こんなもんで本当になんとかなるのか?」
さっきまで弄くり回していたアイテムを見て、そんな失礼な感想の述べる。
「あんまり適当に扱わないでくださいね。それに世界の命運がかかっていると言っても過言じゃないんですから」
「ふん。そうならないようにお前さんが大魔王を倒すんだろうが」
「まあ、そうなんですけど」
それっきりロン・ベルクは俺のことをそっちのけでアイテムを再び弄りだす。
時折ぶつぶつとあーでもないこーでもないと呟いている姿は完全にヤバイ人だった。
……マリンを探そう。
このままここにいても不毛なので移動することにした。
部屋を出るとロン・ベルクの大きな笑い声が響いてきた。
「できるっ、できるぞ!! この方法なら確実にッ。うははははーーっ!!!」
こわい。
「じゃあ、俺はもう行くよ」
城の屋上。そこでマリンに短く別れを告げる。
アポロとロン・ベルクの二人と同じようにアイテムの入った袋を渡すと、カードを取り出し出立しようした。
「……私は反対よ。あなたはここに残ってみんなのサポートにまわりましょう」
しかし後ろからかかる声にその動きを止める。
その表情からはその言葉の真意をうかがい知ることはできなかった。
「あなたのアイテムがあれば復興に大分貢献できると思うし、それに……そう、思いがけない敵が攻めてきたとしても十分に対処できるじゃない」
「大魔王を倒せば全てに片がつく。最優すべきは大魔王討伐だ」
そんなことはマリンだって分かっているはず。なのに何故いまさらそんなことを言い出すのだろうか。
「で、でも…あなたが行く必要はないじゃない」
「俺だって厳しいながらも戦えるだけの力はある。ダイ達のためにも少しでも協力しないと」
「だ、だけどーー」
何度も行く必要がないと食い下がるマリン。
それを聞く内に俺は気づいてしまった。いや、むしろ何故気づかなかったのか。
簡単な話だった。
この間、マリンは俺が大魔王を倒せると思っていないと言った。
その言葉の意味を俺はてっきり敵と内通しているか、あるいはやる気が無いと糾弾しているのではないかと考えた。
アバンも言っていたじゃないか。俺は鈍感だと。
我ながら本当にそう思う。マリンはそんなことを言いたかったんじゃない。ただーー
「ーー俺のこと、心配してるのか?」
それだけの話だった。
「と、当然よ。だ、だってあなた、この間も殺されかけたのよっ。大魔王を倒せても、あなたが死んでしまっては意味が無いのよ」
ああ、そうか。考えてみれば当然のことだ。
誰だって大切な何かを守るために戦おうとしている。
戦いには勝ったけど大切なモノは失いましたじゃ意味が無いんだ。
こういうことを自分で言うのは自惚れてるみたいで嫌なんだけど、これはそういう話だ。
つまり、なんていうか……その、あれだ…マリンは俺のことを失いたくないんだ。
もしもこれで勘違いだったら自殺級の大打撃。大魔王討伐どころの話ではなくなってしまう。
本当にあってるよな?
でも前に一晩明かしたけどあれについてもなんの言及もないし。
触れられたくない事実だから黙っているのか? それとも俺からなにか言うのを待っているのか?
考えれば考えるほど、思考は袋小路となってしまう。
あー、もうわっかんねぇ!
小賢しいことは考えるなっ、恋愛は心でするもんだっ。
「マリンっ!」
突然大きな声で名前を呼ばれ、マリンはビクっと肩を震わせる。
俺は大きく息を吸い込むと、赤い顔を隠すようにして一気に思いの丈をぶちまけた。
「マリンのことが好きだっ、大魔王を倒したら結婚してくれ!!」
言い終わると同時に踵を返し、マリンの反応を見ることなく空の彼方へそそくさと飛び立った。
”同行”の光の中、浮かれているとも不安ともつかない感情に包まれ、いい年して女子中学生よりも恋愛脳だな。と自嘲するのだった。
フラグは立てていくスタイル。