ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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59 覇者の剣

 「これが覇者の剣かぁ」

 

 剣をしげしげと見つめながらダイは声を漏らす。

 

 「ほっほっほ、如何にもそれが伝説の剣ーー”覇者の剣”である」

 

 そんなダイに満面の笑みを浮かべながらロモス王は答えた。

 

 ザムザを倒した俺達は、その褒美としてロモス王から”覇者の剣”を貰うこととなった。

 

 元々大会の賞品だったし、他の大会出場者が手も足も出ないバケモノを倒したのだ。実質優勝みたいなものだろう。

 

 それは誰もが分かっていたため、異を唱える者はいなかった。というよりも是非貰ってくれという感じだった。

 

 「”覇者の剣”は以前ダイに授けた”覇者の冠”と同じくオリハルコンで出来ておるんじゃよ。そしてオリハルコンは永久不滅の金属と言い伝えられておる。きっとこれからの戦いに大いに力を発揮することじゃろう」

 

 その説明を聞き、誰もが『へぇ~』だの『ほぉ~』だのと感嘆の声を漏らしている。

 

 いや、偽物なんですけどね。

 

 本来なら紋章アバンストラッシュの威力に耐えられずにボロボロになり、本物の”覇者の剣”がないことをザムザから告げられるわけだが、使ってない以上ザムザは何も言わずに塵となって消えた。

 

 その時は深く考えず”覇者の剣(偽)”を手にすればダイが偽物だと気付くだろうと高をくくっていたわけだが・・・。

 

 中々気付く様子のないダイに若干の不安を覚える。

 

 「ど、どうだ、ダイ。”覇者の剣”を手にした感想は」

 

 早く気づいてくれと言わんばかりに俺はダイに剣のことを尋ねる。

 

 「うん、よく分からないけど凄いパワーを感じるよ。もしかしたら紋章の力にも耐えられるかも知れない」

 

 ダメだわこれ、全然疑ってないわ。

 

 何故だ、何故気づかない。キミは原作だとポップの実家で武器の良し悪しについて語ってたよね。なら気づいてくれ。

 

 もしかしてザムザのやつすり替えていないのか?

 

 いやいや、そんな筈ないよな。ザムザがロモスへ潜入してた理由としてはきっと”覇者の剣”が大きなウエイトを占めているに違いない。

 

 もちろん大会出場者を生体実験の材料にするのもあっただろうが、そんなもんはその辺のやつとっ捕まえれば良いだけだ。わざわざ潜入なんて面倒なことをする必要はない。

 

 ならばやはり”覇者の剣”は偽物だと考えていいだろう。

 

 あー、そうか。そういうことか。わかったぞ、ダイが気づかない理由が。

 

 原作でザムザにアバンストラッシュ使った後、確かに剣はボロボロになった。

 

 しかしよく考えて見れば、結構頑丈なパプニカのナイフはストラッシュを放つ前に消滅。ヒュンケルの魔剣でさえも一発放った後に消滅したのだ。

 

 ボロボロになりながらも形を保っていた”覇者の剣(偽)”が異常なのだ。

 

 きっと偽物であってもかなりの業物に違いない。それこそ”鎧の魔剣”に匹敵するくらいの。

 

 この仮定が正しければダイが見抜けないのも仕方のない事だ。なにしろ一流の剣には違いないのだから。

 

 ならばどうやってそれを気づかせる?

 

 さすがに直接『それ偽物じゃね?』とは言い辛い。少なくともロモス王の居るこの場で言う勇気は俺にはない。

 

 ・・・どうしよ。

 

 剣の話題で盛り上がるみんなを尻目に、俺は一人頭を悩ませるのだった。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・。

 

 

 

 「そういやぁ、トーヤの木刀ってスゲェ頑丈だよな」

 

 「そういえばそうだね。バランと戦った時も木刀で真魔剛竜剣と打ち合ってたっけ」

 

 両手を頭の後ろで組みながら何とはなしに疑問を口にするポップと、それに乗っかるダイ。

 

 その戦いを見ていないマァムは静かに目線だけこちらに向けた。

 

 「あー、そうだな。木刀に闘気を流してるから、普通の武器よりは相当頑丈なはずだよ」

 

 ”覇者の剣”をどうするか悩んでいるので、あまり会話に参加したくないのだが、水を向けられてしまっては仕方ないので適当に会話をする。

 

 「真魔剛竜剣って伝説の武器なんでしょ? 闘気を込めたからって木刀で戦えるなんて凄いわよね。それに闘気の力で武器が壊れたりもしてないみたいだし」

 

 「ダイだって元々普通に紋章使ってる時は剣がダメになったりしなかったんだろ? なら俺程度の闘気なら込めても別に問題ないって」

 

 「そうかな? 闘気の強さなら俺とそこまで変わらないと思うけど」

 

 「うーん、確かに”凝”を使えばかなりダイに近い力は出せーー」

 

 そこまで話して俺はムリヤリ続く言葉を飲み込んだ。

 

 「「「ぎょう?」」」

 

 しかし時既に遅し。三人揃って同じ言葉を口にした。

 

 ・・・まぁいいか。別に隠すほどのことでもないし、そもそも他の奴らじゃマネできないだろうし。

 

 「仕方ない、これは俺の使う技術でな。教えてやるけど他言は控えてくれよーー」

 

 こうして、俺は自身の”念”のことをダイ達に話した。

 

 もっとも、系統や習得率などは話していない。あくまで”念”とは闘気を自在に操る技術であるということにして ”纒” ”練” ”絶” ”発” の四大行と応用技の存在を話しただけだ。

 

 知識としてだけでも知っていれば、彼らならそれを自分流でアレンジして使ってくれるかもしれないしな。

 

 そして、俺の思惑とは裏腹に”念”の存在を話したことにより、思いがけず”覇者の剣”が偽物だと気づかせる千載一遇のチャンスが転がり込んでくるのであった。

 

 




もし私がオリ主くんの立場なら絶対に念の存在は明かしませんが、みなさんはどうでしょうか。むしろあけすけに言うタイプの方もいるかもしれませんね。

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