痛ぇわ。マジで痛ぇわ。
だって左肩砕けてるんだもん。
肩を押さえたまま動けずにいる。
この世界で骨折ってどうなんだ。
ホイミってどこまで出来るんだろう。さっきは足の痛みは消せたけど。
「トーヤ、肩見せて。今治すから」
ようやく泣き止んだマリンが俺の肩を心配して呪文をかけようとする。
「治すって、マリン。魔法力もう無いだろ。さっき限界まで魔法使ってなかった?」
それともホイミは消費MPが少ないから使えるのだろうか。
思案していると、マリンは首から下げたアクセサリーを取り出した。
「それは?」
紐が通してあるそれは指輪のように見えた。というか指輪だな。
「これ祈りの指輪っていうの」
マリンはその指輪を紐から外し、指に嵌めた。
「こうして祈ると魔法力が回復するんだって。テムジン様から貰ったの」
テムジンって誰やねん。
「何回か使うと壊れてしまうって話で、これもテムジン様が使った後のものらしいけど。後一回位は大丈夫だと思うの」
「良いのか? それってかなり高価なものなんじゃないのか?」
「うん。でもこういう時に使うためのものだから。ーーー。」
そう言ってマリンは目を閉じて何かに祈りを捧げた。
すると指輪が僅かに輝き、宝石の部分が砕け散った。
あ、壊れた。
勿体ないな、魔法力なんてしばらく休めば戻るだろうに。
壊れた指輪をまるで意に介さず、マリンは俺の肩に手を添える。
「ホイミ」
温かい光に包まれ、俺のダメージはみるみるうちに回復していく。
1分もしないうちに治療は終わったらしく、肩を動かすとまるで痛みを感じなかった。
魔法ってすげぇな。
町へ着くと、武装した大人たちがいっぱいいた。
なんでも最近この辺で凶悪なモンスターが出没するようになったらしい。
それってもしかしてグリズリーかなとか思ったけど、俺は気にせずマリンを送り届けることにした。
町に入るとマリンは道が分かるらしく、迷うこと無く進んでいった。
「道が分かるならもう良いよな。ここで俺は帰るぜ」
「あ、待って。まだちゃんとお礼もしてないし、もう少しでーー」
「ああ、いいって。礼なんて。俺もそれなりに楽しかったからさ」
そう、俺は結構この二日間を楽しんでいた。
この世界に来てから初めて人にあったし、かなり痛かったけど冒険っぽいこともした。
ついでに町の場所も分かったしな。
まさにドラクエって感じのイベントだったぜ。
「ほら、早く帰ってみんなを安心させてやれよ。妹も無事だと良いな」
そう言って手を振って別れようとするのだが、マリンは納得しない顔だ。
「あ、そうだ。その指輪くれないか」
マリンの首から下がっている、宝石のない祈りの指輪。
それを指さし俺は続ける。
「こういうのがちょうど欲しいと思ってたんだよ。ダメか?」
「う、ううん。じゃあ、これあげるね」
「ああ、さんきゅー」
指輪を受け取り、今度こそ帰ろうと踵を返す。
「私、しばらくはこの町にいるから、絶対遊びに来てねー」
マリンが手を振って俺を見送る。
「おお、その時はまたどっか遊びに行こうぜ―」
それに手を振って応え、俺は町を出た。
「さてっと」
本当は町で保護してもらう予定だったが、やることが出来たな。
しばらくは一人でじっくり修行だ。
町で保護なんてされたら自由に修行できないだろうからな。
あんなクマにやられかけるなんて、この世界じゃ生きていけない。
少なくともあの程度は自分一人で倒せるようになりたいな。
「ま、気長にやるか。新しい発も考えたし」
それに魔法も覚えなきゃな。
やり方はまた後でマリンにでも聞けばいいだろ。
指輪を無くさないように首から下げ、俺は小屋まで帰っていった。
今回はかなり短めです。
そしてアイテムゲット。この指輪でオリ主は新たな能力を開発します。