ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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54 実力

 「下がってろ」

 

 「ッ!?」

 

 俺はダイの襟を掴むと強引に後ろへと投げ飛ばした。

 

 ダイと入れ替わる様にして木刀を構え、バランのギガブレイクを受け止める。

 

 「ーーく、うぅ!!」

 

 雷鳴が轟き、衝撃が辺り一帯を襲う。

 

 俺とバラン以外の全員はその衝撃波に成すすべなく吹き飛ばされた。

 

 「ーーそこをどけ、人間。邪魔をするなら容赦はせんぞ」

 

 「うるせえ、竜の騎士だか知らんが調子にのるなーーオラッ!!」

 

 鍔迫り合いの状態からバランを力ずくで押し返し、木刀の鋒を相手の眉間に向ける。

 

 「ちょっと強いくらいで偉そうにしやがってーーおいッ、お前たちは下がってろ! こいつは俺が相手する」

 

 「で、でもーー」

 

 「トーヤの言う通りだ。バランの相手は今のお前たちには荷が重い」

 

 「ーークロコダイン!?」

 

 突如として現れたクロコダインは皆を守るように斧を構えて俺の隣に立つ。

 

 「気をつけろトーヤ、ヤツの実力は恐らく魔王軍一と言っても過言ではない」

 

 「・・・ヤツの強さは大体見て分かる。クロコダインは皆の盾になってやってくれ」

 

 クロコダインを後ろへ下がらせると、再び前に出て戦闘態勢に入る。

 

 「バカめが、調子にのっているのは貴様の方だ。ギガブレイクを受け止めたことで勘違いしてしまったようだな。だが、先ほどは息子が相手で手加減しただけのこと。本来ならば消し炭になっておるわ」

 

 額の紋章が輝き、静かな怒りと殺意が烈風となって吹き荒れる。

 

 「そーかよ、安心したぜ。さっきのが全力ならどうしようかと思ってたところだ。ほれ、お前の大嫌いな人間様だぞ。遠慮しないでかかってこいよ」

 

 言い終わると同時にバランは霞むようなスピードで突進してくる。

 

 抜かりなく『円』でそれを感知した俺は、慌てることなくバランの振るった剣戟を木刀で受け止めた。

 

 微かに驚いた表情をみせるバラン。その隙を逃さずに、木刀の柄から右手を離してバランの顔面めがけて拳を放つ。

 

 見えているにも関わらずバランはその拳を躱そうともしない。当然だ、竜闘気に包まれた今のバランは鋼鉄の様に硬い。

 

 しかも俺の拳は体重の乗っていないただのジャブだ。そんなものでは当て身程の意味も持たないーーそう思っているんだろうな。

 

 「っぐは!!」

 

 殴り飛ばされ仰け反ったところに前蹴りで追撃を入れる。

 

 たたらを踏んで後退し、バランは困惑の表情で口元を拭う。

 

 「余裕ぶってその様か。息子が見てんだ、もっと気合入れろよ」

 

 「・・・何者だ?」

 

 質問に答えることなく、さっきの仕返しとばかりに今度は俺が地を駆ける。

 

 さあ、ここからが正念場だ。

 

 

 * * *

 

 

 戦いは膠着、すぐに決着はつきそうにない。

 

 そして他の介入を一切許すものでは無かった。

 

 地を砕き、雷鳴が迸り、暴風が吹き荒れる。

 

 ただ見ることでさえも困難を極めた。それ程に激しい戦いが繰り広げられている。

 

 突如として上がる金属音。それはバランの剣戟をトーヤの木刀が弾き返す音だった。

 

 徐々にスピードを上げるバランの剣戟、そのスピードは既にトーヤの動体視力を凌駕していた。

 

 より一層強い踏み込みと襲いかかる凶刃。しかし、木刀の一閃によりそれは阻まれる。

 

 「くッ」

 

 必中の攻撃を叩き返されバランは怪訝に思う。

 

 その僅かな逡巡の隙をつくかのように放たれるトーヤの蹴り。

 

 その蹴りを危なげなく躱して、バランは大きく距離を取る。

 

 バランは目の前に立つ男を警戒していた。

 

 トーヤの動きはド素人。多少戦いに慣れている様に思えるが、それでも動きには隙が多くとても洗練されているとは言い難い。

 

 対してバランの動きは超がつく程の一流だ。流れるような動きと剣捌きは美しくすらある。

 

 超一流とド素人。通常ならば戦いにすらならないそれを、かれこれ10分以上は続けている。

 

 その秘密はトーヤの『念』にある。先ほどバランを殴り飛ばしたとき、トーヤは『凝』を使っていた。

 

 無論それだけではない。この世界の者にはトーヤが使う『オーラ』を視認することが出来る。故に、ただ『凝』をするだけではバラン程の相手なら当然警戒する。

 

 しかし、トーヤは『流』と『隠』を巧みに利用しそれをさせなかった。結果、バランはオーラの込められた攻撃を無防備に受けてしまったのである。

 

 この世界に存在しないはずの技術。四大行と応用技の特性を活かした戦い方は、強みであると同時に唯一の手段と言えるだろう。

 

 「そろそろ本気で行かせてもらおうか」

 

 トーヤの使う技の正体を見抜けずにいたはずのバランだが、ここに来て余裕を取り戻していた。

 

 しかし余裕を持っているのはバランだけではない。今までほぼ互角の戦闘を繰り広げていたトーヤもまた、自らの強さに自信と余裕を持ち始めていた。

 

 「なら俺も」

 

 「嘯くな、貴様は確かに人間としてはかなり出来る。しかしそれもここまで、お前の手の内はよくわかった」

 

 「・・・へぇ」

 

 一瞬、自身の能力を見破られたかと考えたトーヤだが、すぐにそれを否定した。

 

 バランの両眼に闘気が集まっていなかったためだ。闘気でオーラの代わりが出来るのかは分からない。しかし仮に可能だとしてもその場合は『凝』の様に闘気が両眼に集まって然るべきである。

 

 その考えは正しい。現にバランはトーヤの能力を見破ってなどいない。手の内が分かったと告げただけだ。

 

 「打撃を受ける際に何らかの手段で威力を高めているのだろう? ならばそれ以上の防御力を以って受けるのみ」

 

 正体不明の攻撃に対する答えは実にシンプルだった。

 

 故にトーヤの怒りを買った。如何に竜の騎士といえど、それは思い上がりも甚だしい。

 

 ほとんど実力が拮抗している相手の、ましてや『凝』の一撃を防げるだなどとは妄言もいいところだ。

 

 「ならやってみろよッ!!」

 

 怒声とともに疾風と化したトーヤは一瞬の内に間合いを詰める。

 

 もはや『隠』で隠すこともせずに木刀に『凝』をかけて振りかぶる。

 

 最大の威力と最高の速度で放たれた木刀は、いとも容易くバランの首を打ち砕いたーーかに思えた。

 

 「なん・・・だと・・・」

 

 驚愕の声を漏らすも、目の前の事実が理解できない。

 

 最大最高の攻撃は、バランに届くことすらなく竜闘気により阻まれていた。

 




 オリ主くん最大のピンチ。
 ていうかどうしてオリ主くんはバランに勝てると思ったのか。
 彼は後1回変身を残しているというのに・・・。

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