ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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52 ドラゴン

 俺はダイ達とベンガーナへ来ていた。

 

 ヒュンケル達が偵察から戻るまでの間に魔王軍と戦うための力を蓄えるためだ。

 

 冒険の基本はいい装備から。そんな訳でダイの装備を買いに来たのだ。

 

 メンバーはダイとレオナとポップ、あと俺ね。

 

 マァムは武闘家になると言って旅に出た。魔弾銃が壊れたわけでもないのに不思議なこともあるもんだ。

 

 SFとかで良く耳にする修正力とか抑止力とかそういった類のものが働いているのだろうか。

 

 まあ、本当にそんなものがあるのなら俺がこの世界に転生する時点でおかしいんですけどね。

 

 そんなことはさておき、俺達は目的通り装備を買うことができた。ドラゴンキラーのオークションである。

 

 レオナは手持ちの金が少なかったらしいので俺が競り落とした。

 

 結果として22,000Gも払ってしまった。換算すると220万円ですよ? 前世での一番高い買い物の車でさえ200万だったというのに。

 

 しかも買った後に思い出したんだけど、別にここで買わなくてもこの後の戦闘のどさくさに紛れてダイってドラゴンキラー使ってたよね。

 

 完全なるムダ金である。・・・なんか考えてたら気分悪くなってきた。

 

 「どうしたんだ? 二日酔いのときの師匠みたいになってるぞ」

 

 ポップは俺の心情を知ってか知らずかそんな軽口を叩く。

 

 この間の宴会の後の話かな。マトリフってば飲み過ぎた次の日は死にそうな顔してたから。薬飲ませたらケロっとしてたけど。

 

 俺のこの鬱な気分も薬を飲めば少しは晴れるのだろうか。

 

 まあいいだろう。ちゃんと占い師ナバラとメルルとの邂逅も無事果たし、イベントとしてはいい感じで順調だと言えるのだから。

 

 「な、なんだあっ!?」

 

 突然の地鳴りと地響きに、皆が驚き悲鳴を上げる。

 

 「お、おいっ。アレをみろ! ドラゴンだっ!!」

 

 その内の一人が窓から外を覗き、街を襲っているドラゴンの見て叫んだ。ヒドラ1匹にドラゴンが5匹。普通なら街が壊滅しても可怪しくない。

 

 途端に店の中はパニックになり、まるでこの世の終わりと言わんばかりの騒ぎになっていた。

 

 「どうする? ドラゴンがあんなにいたんじゃ少々分が悪いぜ」

 

 「ならポップとレオナはみんなを避難させてくれ。ダイはヒドラを頼む、ドラゴンキラーがあれば問題ないだろう」

 

 適当に指示を出して俺は窓枠に足をかける。

 

 「お、お前はどうするんだよ」

 

 「ヒドラより弱いとはいえドラゴン5匹が街中へ散ったら面倒だ。一箇所におびき寄せてまとめて相手する」

 

 こうしている間にも街の人々が殺されているかもしれないんだ、急がないと。

 

 窓から飛び降り、俺はドラゴン達のいる方角へ向かって走りだした。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・。

 

 

 

 街外れの荒野。

 

 うまくドラゴンだけをおびき寄せた俺は、走る足を止めて後ろを振り返る。

 

 目の前には5匹のドラゴン。俺は固唾を呑んで奴らが攻撃してくるのを待つ。

 

 その内の1匹が炎を吐き出そうとしているのが分かった。

 

 瞬間、俺はそのドラゴンへ向かって走った。

 

 それを迎撃するかのような別のドラゴンの攻撃。

 

 巨体を大きく回転させ、俺の身の丈の3倍以上の太さの尾を振り回した。

 

 しかしその尾は俺よりも先に炎を吐こうとするドラゴンへと直撃する。

 

 堪らず倒れるドラゴン。その顔面へ俺が跳び乗ると、仲間の上にもかかわらずドラゴンたちはこぞって追撃を仕掛けてきた。

 

 回避、跳躍、回避、跳躍。何度も何度も同じ動作を繰り返し、ドラゴンたちにダメージを蓄積させていく。

 

 100を超える辺りでドラゴンたちの動きが目に見えて鈍ってきた。

 

 既に残りのドラゴンは2匹。3匹は同士討ちで倒れている。

 

 そろそろ良いだろう。

 

 人差し指へとオーラを集め、残りの2匹が同一線上に並ぶ位置へと移動する。

 

 響く轟音。眩い光。荒れ狂う暴風がその場を支配する。

 

 巨体をものともせず、俺の放った霊丸は地面を深く抉りながらドラゴンと荒野の彼方へと消えていった。

 

 「なんだ、楽勝じゃん」

 

 戦闘を無傷で終えた俺は、緊張で滲んだ額の汗を拭って安堵した。

 

 デカくてパワーがあっても、知能がなければ大したことないな。円を使えば動きモロわかりだし。

 

 どうやらこういう戦い方のほうが俺には向いているようだ。

 

 1対1で相手の動きを先読みして戦うんじゃなくて、複数の動きを利用して相手を陥れるやり方。

 

 前者は純粋な武人としての強さ。後者は立ち回りの上手さ。要は作戦勝ちみたいなものだ。

 

 思い返せばフレイザードの時もそうだった。相手を自分の土俵に持ち込んで、最後は霊丸で作った巨大な穴へ誘導させた。

 

 力が弱いのならば知恵で戦うしかないからな。今はまだ大丈夫だけど、いつか付いて行けなくなる筈だ。

 

 今度からはこういった戦い方を意識してみるかな。

 

 「ん?」

 

 ダイたちの元へ向かうべく歩き出そうとしたとき、ふと気配を感じた。

 

 その先へ視線を送る。そこには先ほど自滅させたドラゴンたちの姿があった。

 

 その内の1匹が動き出そうとしている。どうやら気絶していただけらしい。

 

 トドメを刺すべく霊丸の構えを取るーーしかしオーラが集まらない。

 

 「あ、まだムリか」

 

 まだ1分経っていなかったようだ。

 

 あと少しで1分経つけど・・・せっかくなので新技のテストでもするか。

 

 コッチは使いどころが難しいため、まだモンスターに向けて放ったことがない。

 

 瀕死のドラゴン相手なら、実験としては十分だろう。

 

 荒野には俺とドラゴンのみ。

 

 魔力を高めて準備する。

 

 暴走しかける力の奔流を押さえつけ、ムリヤリ術を完成させた。

 

 次の瞬間、ドラゴンは跡形もなく消え去った。

 




 ただの消化試合です。次回はバランですね。
 漫画だとすぐにテランへ移動してましたけど、日数的にはどうなっているのか。

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