ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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51 それぞれ

 カーテン越しに溢れる日差しと、小鳥の鳴き声で目が覚めた。

 

 今日のようないい天気の日は二度寝をしたい気分だった。

 

 でも出来なかった。

 

 何故ならマリンが同じベッドで寝ていたから。

 

 「はあ~」

 

 大きなため息をついて廊下を歩いていると、アポロが向こう側から歩いてくるのが見えた。

 

 「どうしたんだ? 随分と疲れているように見えるが」

 

 「いや、なんでもないよ。ただ、俺は間違ってしまったのかもしれない」

 

 アポロは疑問符を浮かべて俺の前で歩みを止める。

 

 別に間違いだなんて思ってないよ? マリンは美人だし優しいし、おっぱいも大きいからね。むしろバッチコイって感じだよ。

 

 でもね、個人的には酒の勢いとかそういうのは違うんですよ。ちゃんと恋愛したかったんですよ。

 

 それが間違いだという話なのです。

 

 最初はただ一緒に寝ただけで、やましい事は何もしていないと思ったんだ。だけどマリンが、「き、昨日のこと、覚えてる?」なんて赤い顔して言うもんだから。

 

 これはもう絶対そういうことだろうな、と。服も上下着替えてたしな、下着も含めて。どう考えても言い逃れができない。

 

 ただ、気になるのがマリンの言った「あんなことあなたが言うの初めてだったから驚いちゃった。でも、すごく嬉しかったの」という言葉。

 

 俺は一体マリンをなんて言って口説いたんだ?

 

 何よりムカつくのが昨晩のアレヤコレヤを何一つとして覚えていないことだと思うのね。

 

 まあ、つまり今の心境をあえて言葉にするとすればーー

 

 「勃つ鳥後を濁す、て感じかな」

 

 「なにを言ってるんだキミは」

 

 訳がわからないという表情でアポロは俺をみるのだった。

 

 

 

 

 

 マトリフの住んでいる辺りにある海岸。俺はダイやポップと一緒に特訓に来ていた。

 

 「せりゃッ!」

 

 「ーーうわっ。っげほ、げほ」

 

 数十回の打ち合いの末、ダイは俺の横一文字の一撃で吹き飛ばされた。

 

 「痛てて」

 

 頭から砂浜へ吹き飛んだダイは頭をさすりながら起き上がる。

 

 「情けねえなぁ、ダイ。あっさり負けちまうんだから」

 

 ダイに歩み寄り、ポップはからかうようにダイに軽口を叩く。

 

 「ポップだってさっきマトリフさんに負けたじゃないか」

 

 「俺はまだ師匠に弟子入りしてから日が浅いから良いんでーす。お前はトーヤに弟子入りしてから結構経ってるでしょうが」

 

 「なんだよ、それ~」

 

 ・・・楽しそうだなこいつら。

 

 「それにしてもトーヤも人が悪いぜ。もうダイに教えることない、なんて言って特訓渋ってた癖にぃ」

 

 「お前は本当にヒヨッコだな。もう少し洞察力を身に付けろ」

 

 話を聞いていたマトリフが珍しく俺達の会話に混じってくる。

 

 「なあ、ダイ。お前さんはトーヤと戦ってどう思った?」

 

 「え? あ、えーっと・・・」

 

 マトリフからの質問にダイは言いにくそうに頬をかく。

 

 「俺のことは気にせずバシっと言ってくれ」

 

 「あ、うん。えっと、それじゃあ言うけど。もちろん強かったけど、どっちかというと戦いづらいって感じ・・・かな?」

 

 「まあ、そんなところだろう。わかったか?」

 

 「ぜーんぜん。ーーッイテ」

 

 マトリフにゲンコツをくらい涙目になるポップ。可哀想なので俺からフォローがてら話すことにする。

 

 「俺の戦い方は我流だからね。素振りくらいは兵士に習ったけど、剣術に関してはからっきしだ。剣術だけで考えるなら、ダイの方が数段上だ」

 

 「ふーん。でもなんでそれならダイが負けるんだ?」

 

 「トーヤの基礎能力がダイより遥かに高いからだ。どんな達人でも子供と大人程に開きがあったら勝てやせん。まあ、基礎を疎かにするなってこった」

 

 マトリフに褒められた。なんか嬉しい。

 

 「じゃあダイが言った戦いづらいってのは?」

 

 「トーヤのように動きが素人同然だと逆に剣術を学んだダイからするとやり辛いもんさ。それが自分より動きの早い相手なら尚更な」

 

 俺の言いたいことを全て言われてしまった。

 

 「ダイがトーヤに勝とうと思ったら基礎訓練をしっかり積むか、今以上の剣術でその差を埋めるしかねえな。後は呪文だがそんなもんは覚える必要がねえ」

 

 「ええ!? なんで、俺ももっと強い呪文覚えたいよぉ」

 

 「勇者は強い呪文なんて要らねえ、そんなもんは魔法使いに任せときゃ良いんだ。お前はお前にしかできないことをしろ」

 

 「俺にしかできないこと?」

 

 「決まってんだろ、勇者にしかできないこと。それは『勇気』を出すことさ。いかなる敵にも立ち向かえる勇気があればそれでいい。後のことは仲間に任せておけ」

 

 「ーー勇気。・・・自分にだけは負けられない、か」

 

 それは、いつか俺がダイへと向けて言った言葉だった。ダイはまるで噛みしめるようにその言葉を呟いた。

 

 「お? いい事言うじゃねえか。そうだな、自分に負ける奴は誰とやっても負けるもんさ。まあ、せいぜい頑張んな」

 

 マトリフは話し終えると洞窟の方へと去っていった。

 

 どうでも良いけど、なんか俺ってばダサくない?

 

 なんかダイの師匠ポジだったのにマトリフに取られたような気がする。アバンの次に慕われてたと自負しているのに、このままではダイを取られてしまう。

 

 「よーし! これから必殺技を披露しまーす」

 

 俺は海に向かって全力で霊丸を放ち、ダイとポップの心をわし掴みするのであった。

 




 前回暗かったのでちょい明るめ。
 考えてたストーリーが二転三転してるので、意外に暗い話も増えるかもしれません。

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