どうしてこうなった。
粉々になった鎧を眺めてオレはそう考えていた。
核を壊され、体を維持できなくなったオレは追い詰められていた。
せめて誰か一人でも道連れにしなけりゃ死んでも死にきれねえ。
そう思ったオレの前に現れたのはミストバーンだった。
ミストバーン。癖の多い魔王軍の中でも一際謎に包まれた男だ。
オレは必死で助けを求めた。その場しのぎで良い。犬死になんてまっぴら御免だ。
ヤツはオレに炎の暗黒闘気、すなわち魔炎気になるなら助けてやると言ってきた。
それはオレにヤツの部下になれということ。オレはそれを受け入れた。
・・・気に食わない、手段だったがな。
オレには歴史がねえ。ハドラー様がオレを作ってから1年足らずしか経ってねえ。
だからオレには手柄がいるんだ。百年経っても千年経っても手に入らねえ程の手柄が。
そのためならオレは何だってする・・・何だってな。
ミストバーンに貰った鎧の体は最高だった。力が溢れる、漲ってくる。
あんな体を貰っちまったらミストバーン、テメェはもう用済みだ。ダイを殺した後、いずれテメェも殺してやるーーそう思っていた。
なのに何故、オレは今こうなっているんだ。
たったの一撃で最強のはずの鎧は粉々だ。もう身動き一つとれやしねえ。
ちくしょう。ふざけやがって。何が最強の鎧だ。騙しやがって。こんなところで死んで堪るか。
こうなったらもう一度ミストバーンのヤロウから体を貰い、今度こそダイの小僧の息の根を止めてみせる。
「賭けは俺の勝ちってことで良いよな、フレイザード」
「――ッ!?」
もう一度ミストバーンへ助けを求めようとした矢先、突如現れたその男にオレは驚き言葉を失った。
その男は、ダイが来る直前まで戦っていたイカれたヤロウだった。
腹の立つ顔を見たせいで、自分が今死にかけているということさえ忘れそうになる。
「・・・ずいぶんボロボロじゃねえか。そんな姿でお仲間の助っ人ってぇ訳かい」
「お互い様・・つーかお前の方が酷えだろうが、目玉一つのくせ。お前の仲間も呆れて帰っちまったみたいだぜ」
ヤツの示す方向をみると、ミストバーンはいつの間にかいなくなっていた。
どうしようもねえ。オレにはもう何一つ手は残されていない。・・・命乞いをしたところで見逃しちゃくれねぇだろう。
だから最後にオレは精一杯の皮肉を言ってやることにした。コイツにオレという存在を刻み込んでやるために。
「っオレはダイに負けたが、テメェに負けたわけじゃねえ!! あのまま続けてればテメェには勝っていた!!!」
ああそうだ。オレはあの時全力で戦っちゃいなかった。ダイを倒すために力を残していた。
ダイに負けたのもそうだ。コイツさえいなけりゃオレはッーー。
「・・・ああ。お前は強かったよ、フレイザード。もう二度と戦いたくないくらいにな」
それみろッ。コイツはオレを恐れてやがる! クハハハハッ
いくら強かろうが所詮人間ナンテコンナモンヨ。
オレが全りョクで戦うコトさエでキテいれバ、勝ッテイタンダヨ!!!
オレノカチだ! オレダケノショウリダッ。
スベテノショウリとエイコウハオレノモノダ。
カハハハハーーー。
* * *
笑い声を上げて消えていくフレイザードを俺たちは黙って見送った。
「ちょっと、可愛そうだよな。最低な野郎だったけど・・・破片でも集めて墓でも作ってやるか」
ポップはフレイザードの最後に思うところがあったのか、悲しい顔をしていた。
「・・・それは俺がやっておくさ。お前たちはレオナ姫のところへ行くといい」
レオナの名前を聞いて思い出したようにダイとマァムは駆け出し、後ろ髪を引かれるようにしながらポップは少し遅れてその後を追った。
「まったく、文句言う前に死んじまいやがって。よくも丹精込めて作った俺のバルジ島をめちゃくちゃにしやがったな」
フレイザードの鎧の破片と後生大事にしてたメダルを穴に埋めながら呟く。
原作のフレイザードはミストバーンに踏まれて死んだ。それが可愛そうだから思わず飛び出してしまったけど。
「しかもあのヤロウ、俺に勝ったつもりで死んでいきやがった。負けた癖に」
ま、フレイザードらしい最期って感じではあるか。
俺はフレイザードの墓を作り終えると、遅れて加勢にやってきたクロコダインとヒュンケルと一緒にダイたちの元へと向かうのだった。
フレイザードのキャラが掴めない。漫画だと異状にテンションが高いのが原因かもしれません。素の状態はどんな奴なんでしょうね。
明日から仕事ですので次回の投稿遅くなるかもです。