ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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41 禁呪法

 フレイザードが自身の異変に気づいたとき、それは加速度的に進んでいった。

 

 「み、みてっ! フレイザードの氷の半身が溶けていくわっ」

 

 レオナの声に周りの兵士もフレイザードを注視する。するとレオナの言葉通り、フレイザードの半身は少しづつ溶け出し始めていた。

 

 「く、クソッタレがぁッ!!! こ、こんなことがッ・・・こんなことがあってたまるかぁ!!!」

 

 アポロとマリンのメラゾーマを吸収しながら口汚く罵るも、フレイザードに為す術はない。

 

 このままでは氷の半身は消滅してしまうだろう。それを回避するべく、フレイザードは決死の覚悟で呪文を放った。

 

 「フィンガー・フレア・ボムズッ!!!」

 

 狙いも定まらない巨大な5つの炎は激しい爆発音と共にその場にいる全員を襲う。

 

 爆発と熱風にある兵士は焼かれ、ある兵士は塔から落下していった。

 

 至近距離いたアポロとマリン。そして守るべきレオナが無事だったのはただの偶然としか言いようがない。

 

 「な、なんて奴だ。メラゾーマを同時に5発も放つとはーー」

 

 辛うじて起き上がったアポロはなんとか視認できたフィンガー・フレア・ボムズに驚愕する。

 

 マリンも起き上がると直ぐにフレイザードの姿を探したが、意外なことにフレイザードは地に伏したまま息も絶え絶えの状態だった。

 

 「どうやら貴様にとっても今のは賭けに出たようだな。その様子ではもう戦うことなどできまい」

 

 「ち、ちくしょう・・・どうなってやがんだ一体ッ!? どうしてオレの身体がこの程度でッ!!」

 

 自身の身体に何が起きたのか分からず、フレイザードは怒鳴り二人を睨みつける。

 

 二人の呪文を受け止めたとき、フレイザードは彼らが自身の魔力許容量の限界を突破させ自滅することを目論んでいると考えた。

 

 今までに戦った者たちの中にはそれを狙ってきたものはいるし、事実二人は自滅を狙っていた。

 

 「人間を侮ったわね、フレイザード。アポロとマリンの魔法力は並じゃない。いくらあなたでも吸収しきれなかったのよ」

 

 後方で戦いを見ていたレオナはフレイザードに敗因を告げる。

 

 「ふざけるんじゃねえッ!! 人間ごときの魔法力がオレを上回るわけがねえッ」

 

 激高して怒鳴るフレイザードだが、内心では冷静に自身を分析していた。

 

 魔力許容量にはかなりの余裕があった。確かに人間にしては高い魔法力を有していたようだが、少なくとも身体が溶け始めた時点では限界には程遠かった。

 

 つまり身体が溶けた原因は別にあるということ。そもそも許容量を超えたのなら氷の半身にのみ異変が訪れるのは可怪しい。

 

 二人分のメラゾーマを近距離で受けたことが影響したのか? 否、その程度で溶けていては普段から自身の繰り出す炎で自滅している筈だ。

 

 崩れかけの半身に力を入れて起き上がりながらフレイザードは考えを巡らせ続ける。

 

 しかしどんなに考えても答えに辿り着かない。一体何故氷の半身は崩れたのか・・・。

 

 「ーー解せないという面持ちだな。黄泉の手向けに教えてやろう」

 

 じりじりと間合いを詰めながらアポロはフレイザードに語りかける。

 

 一見隙だらけに見える行動であるがそこに油断はなく、隙あらば呪文を打ち込むつもりだった。手負いとはいて未だフレイザードには先程の様な爆発力があるのだ。安易に攻めることはできない。

 

 フレイザードもそこは分かっているのか話に乗るふりをして対峙するアポロとマリンの様子を伺った。

 

 「あなた、禁呪法で生み出された呪法生命体よね」

 

 「・・・それがどうしたッ」

 

 「呪法生命体には力の源となる核がある。本来なら人間よりも丈夫な作りの呪法生命体だけど、あなたの場合は少し違う」

 

 話しながらも隙を伺いつつマリンは続ける。

 

 「炎と氷という相反する属性を持っているあなたは、その核の中に二種類の属性の魔力を持っているの」

 

 その言葉にフレイザードは思案した。確かに自身の核には二種類の魔力がある。それは核本体を見ても分かることだった。

 

 「その核は黄金比とも言えるほどに絶妙なバランスで魔力をコントロールして炎と氷の身体を維持している。だけど少量ならいざ知らず、あなたは私達の炎のエネルギーを多く吸収しすぎたのよ」

 

 「・・・オレの強くなった炎の身体に氷の身体がついていけなくなったって訳か」

 

 「その通りよ。今のあなたの炎のエネルギーは強すぎる。その結果最も弱い部分に影響が現れたのよ。もしも私達がヒャドで攻撃していたら、反対に炎の身体がそうなっていたでしょうね」

 

 自身に起こった現象を理解したフレイザードは目を瞑ると途端に静かになった。

 

 そんなフレイザードの挙動にアポロとマリンは困惑する。

 

 「ーーどうした。勝ち目がないと見て降参するのか」

 

 不審に思うも不可解な行動に二人は攻撃できずにいた。

 

 「いや、なあに。ただ感心しただけのことよ。三賢者とか名乗るだけあって博識じゃねえか、勉強になったぜ。これからは気をつけねえとなぁ」

 

 「貴様にこれからなどないぞっ。ここで我らに倒させるのだからな」

 

 「クククっ。調子に乗るなよッ!! この青二才がッ!!!」

 

 フレイザードは突如怒声を上げたかと思うと溶けていた半身を再生させた。

 

 「みんなふせて!!」

 

 只ならぬフレイザードの様子にマリンは叫ぶと自身も身構えた。

 

 「氷炎爆花散!!!!」

 

 叫ぶフレイザードを中心に一抱え程もある石が四方八方へ飛散する。

 

 石の直撃にアポロは腕を砕かれ、マリンも破片に裂傷を負わされながら吹き飛ばされた。

 

 後ろに控えていたレオナ達も例外ではない。離れていたためにダメージこそ少いが、全身を石に強打されとても戦える状態にはなかった。

 

 「形勢逆転だなァ!! クッカッカカカカ」

 

 「ーーま、まだだ。まだ戦えるぞっ」

 

 笑うフレイザードを睨みつけ、自身に回復呪文をかけながら起き上がろうとするアポロとマリン。しかし直ぐに異変に気づいた。

 

 「じゅ、呪文が使えないーーだと!?」

 

 折れた腕にホイミをかけるもほとんど効果が無い。薄く光るのみで遅々として回復しない自らの呪文にアポロは困惑する。

 

 「ククククッ。ーー氷炎結界呪法!!!! これこそ我が氷炎魔団の不敗を支える究極の戦法!」

 

 そう言ってフレイザードは塔の外を指さした。そこには先程まで無かったはずの巨大な炎と氷に柱が見えた。

 

 「あの炎魔塔と氷魔塔がオレの核に作用して強力な結界陣をはっているのさ! この結界陣の中においてはオレ以外のやつは力も呪文も封じられてしまうんだ!!!」

 

 フレイザードの語った事実に驚愕するアポロとマリンだが、そんな暇も与えずにフレイザードが襲いかかってきた。

 

 呪文が発動できないために両腕をクロスさせ防御するアポロだが、フレイザードの振るう腕に簡単になぎ倒されてしまう。

 

 倒れたところを踏みつけられ、まったく為す術のないアポロ。そして全員の心を焦りと恐怖が支配していく。

 

 「残念だったな、もう少しでオレを倒すことが出来たかもしれねえのによォ。臆病な人間の性ってやつかねェ。命のかかった戦いで様子見なんざしてるからだ」

 

 とどめを刺すつもりなのか、フレイザードの右手から氷柱を伸ばして振りかぶった。

 

 「あばよッ! 精々オレに傷をつけたことをあの世で自慢しなッーーーウッ!?」

 

 振り下ろされた氷柱がアポロを串刺しにするその直前、フレイザードの腕にナイフが突き刺さる。

 

 「だ、誰だーー。て、てめえッ・・・生きてやがったのか!?」

 

 「みんなから離れろフレイザードっ!!」

 

 まさに間一髪。フレイザードの目線の先には勇者ダイの姿があった。

 




 結局フレイザードが溶けたのは呪文のエネルギー吸った自滅なので深く考えないで下さい。

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