スライム5匹に怯むこと無くマリンは前に出た。
スライムはこれでもモンスターだ。最弱とは言われていが、それでも5歳児よりは遥かに強い。
それが5匹もいるんだ。命にかかわるぞ。
マリンをすぐに後ろへ下がらせようと腕を伸ばす。
「イオっ!」
マリンがスライムに向かって唱えると、光の玉が手から飛び出し大きく爆発した。
スライムたちは吹き飛ばされ、そこには無残な死骸だけが残る。
ちょっと可哀想だと思う。
っていうかこれなに? イオ? 強くね?
俺の霊丸と大して変わらないじゃん。
俺なんて制約つけて一日4発しか撃てないんですけど。
「・・・す、すごいな、マリン。もしかして魔法使い?」
なんとか気を落ち着け、マリンに賛辞の言葉を送る。
劣等感が半端ない。
もしかして念って大したこと無いのかな。
「うん! 賢者なの。まだ卵みたいなものだけど」
「へ、へぇ。凄いねえ」
褒めるとマリンはとても喜んでいた。
本当に凄すぎるでしょ。俺の二年あまりの念の修行は何だったんだよ。
いや、待て。人と比較するのは良くない。
魔法だったら俺だって使える可能性はあるし、その上で念で強化すればいいのだ。
「メ、メラァ!」
誰もいない木に向かって思いっきり叫ぶ。
しかし何も起こらなかった。
「ど、どうしたの?」
突然の行動にマリンは驚いて俺の方を見る。
「・・・いや、俺も使えないかなって」
「呪文?」
「そう。メラならできるかなって」
「トーヤは魔法使いになりたいの?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど。使えたらカッコいいなって思って」
「だったら私が今度教えてあげるね。きっとすぐ使えるようになるよ」
やめて、そんな無邪気な目で見つめないで。せめてバカにしてくれ。
2時間ほど歩いたところで休憩にした。
時間もちょうど昼くらいなので、ここらで昼食にしようと思う。
道中で採取した果物を籠から取り出しマリンに渡す。
「ありがとう。トーヤは凄いね」
「え? 何が?」
「私は道に迷った時に食べ物もないし喉が乾いても何もできなかったのに、こんなに簡単に食べ物採ってきちゃうんだもん」
なにかと思ったらそんなことか。
「森で暮らしてたら嫌でも身につくよ。できなきゃ死ぬだけだしな」
梨のような果実に齧り付きながら、周りにモンスターがいないか気配を探る。
「・・・ずっとこの森に住んでるの?」
「そうだな。気づいたらこの森に居たよ。それからはずっと食べ物採って小屋で過ごしての繰り返しだ」
嘘は言ってないよ。でも、なんとなく俺の話はこれ以上したくないな。ボロが出そうだ。
「とりあえず、それを食べて少し休んだら出発しよう。それから、魔法はあとどのくらい使える?」
「えっと。イオだったらあと4回くらいかな。メラとかヒャドならもう少し使えると思うよ」
「なら、今度からモンスターは俺が倒すから、マリンは自分の身を守るだけにしてくれ」
「う、うん。わかった。でも、トーヤはモンスターと戦えるの?」
さっきメラが使えなかったからって甘く見られてるな。
なら、今度は俺の戦闘能力を拝ませてやろうじゃないか。
昼食を食べ終えしばらく休んだ後、俺達は再び町を目指して歩き出した。
再び歩き出してから2時間くらい経った。
モンスターは一向に現れる気配がない。
いや、良いんだけどね。良いんだけど、なんか寂しい。
せっかく俺の強さを見せつけてやろうと思ったのに。
「もうすぐ森を抜けるな。町まであと少しだぞ」
「うん!」
マリンは口には出さないが、とても疲れているみたいなので元気づける。
どれくらい歩くかわからない状況だと精神的にも辛いだろうしな。
最悪後は俺が背負って行っても良いんだが、モンスターにすぐ対処できなくなるからな。
「お、見ろよ。あそこから平原が見えるぞ」
話しているそばから森を抜けられそうだ。100メートルくらい先に開けた場所が見える。
「ほんとっ?」
マリンは疲れを忘れて走りだし、俺もその後を追う。
「みてみて、トーヤ。あそこに家が見えるよ」
一足先に森を抜けたマリンは、遠くに町を見つけたのか喜びの声をあげた。
しかし、はしゃぐマリンと裏腹に俺は酷く焦っていた。
一歩遅れてマリンに追いついた俺はそいつと目があってしまったのである。
こいつの名前はなんと言っただろうか。
そう、確かグリズリー。
どうみてもクマです。
呪文の威力ってどれくらいか今ひとつ分かりづらいですよね。
みんな地面とかがどれくらい壊れるかとか、それくらいしか判断材料が無い気がします。
とくにクロコダインなんかはポップのメラゾーマに結構びびってましたよね。
その辺の匙加減が難しいですが、上手く調整していこうと思います。
あきらかに可怪しかった場合はご指摘下さい。