ダイは伝説の勇者アバンに弟子入りして修行を受けた。だが修業を終える前に、アバンは蘇った魔王ハドラーに倒されてしまう。
ダイは真の勇者を目指し平和を取り戻すために、兄弟子であるポップと共に冒険の旅に出た。
デルムリン島からロモス王国へ向かったダイとポップは、もう一人のアバンの使徒であるマァムに出会う。
三人はアバンの意思を継ぐ仲間として力を合わせ、ロモス王国を襲撃した百獣魔団長クロコダインを倒した。
ロモス王国を発ちパプニカ王国へ到着したダイたちは魔王軍団軍団長の一人、不死騎団長ヒュンケルと戦うこととなった。
ヒュンケルに苦戦するダイたちの危機を救ったのはクロコダインだった。クロコダインの足止めによりダイとポップは逃走することはできたが、マァムは捕らえられてしまう。
マァムを救出するため地底魔城へ侵入したダイは魔法と剣の合体技を編み出しヒュンケルを倒した。
ヒュンケルを倒したダイたちはレオナ姫の行方を求め、神殿で信号弾をあげるのだった。
「ーーあかんあかん。火薬玉はすべて吹っ飛んじまったわい」
地下倉庫の階段からあがってきたバダックはため息と共に嘆いた。
パプニカでは戦場の合図として信号弾を用いる。『我勝てり』の赤い信号弾をあげることにより、レオナ姫からのコンタクトを図ろうとしたのだ。
しかし、信号弾のある地下倉庫への入口は瓦礫で埋もれていた。その瓦礫に頭を悩ませていたところ、ダイはその役目を買って出たのだった。
呪文と剣技の合体技により、見事瓦礫を吹き飛ばすことに成功した。だが呪文によって火薬に引火したことにより信号弾の火薬玉は暴発してしまったのだった。
「でもとりあえず信号弾はあがったんだし、どこかでレオナ姫が見てるかも」
小さくなって反省しているダイを見かねてマァムがフォローする。
「どうかなあ、あんなむちゃくちゃな色の信号弾じゃかえって怪しまれるんじゃねぇかな~」
足で小突きなポップはダイを意地悪く責めるように言う。
これからどうしたものかと悩んでいるとマァムが空に浮かぶ何かに気がついた。
「みんな! あれを見てっ!!」
「あれは・・・!! あれはパプニカの気球船じゃっ!!!」
マァムの指差す方を単眼鏡で除くバダックが大きな声で叫んだ。
「「おおっ!!」」
気球船から降りたエイミをみて思わずといったふうにダイとポップは声をあげる。
「エイミ殿ではないか!」
「バダックさん。あなただったのね、あの信号弾は」
「なあじいさん。紹介しろよ」
エイミを見て鼻の下をだらしなく伸ばしてポップはバダックを見る。
「バカモンっ。おそれ多いぞ。この御方こそパプニカ三賢者の一人。エイミ殿じゃっ」
「三賢者!? この人が!?」
誰よりも早く反応したのはダイだった。
「あなたは?」
「お、おれダイって言います」
「ダイっ!? あ、あなたが?」
ダイがレオナから貰ったナイフを見せると、エイミはダイたちを気球船に乗せてすぐにバルジ島へと向かった。
気球船に乗りバルジ島へ向かってから随分と時間が経った。
「そういえばダイ。さっきエイミさんが三賢者って聞いて驚いてなかった?」
「そりゃそうだろうよ。こんな若くて美人なヒトが三賢者だなんて言われたら。俺はてっきり爺さんみたいな連中かなぁって」
「あんたと一緒にしないでちょうだい」
話が進まなくなるからかマァムはポップを冷たくあしらう。三賢者という言葉に対するダイの反応にマァムは微妙な違和感を感じていたのだ。
「俺はトーヤから話で聞いたんだよ。だから本人が目の前に現れてビックリしただけだよ」
「トーヤってダイのお師匠さんよね。その人もパプニカの人だっけ?」
「何の話?」
微かに聞こえてきた会話にエイミとバダックが反応した。
「おおっ! そうじゃったそうじゃった。エイミ殿っ。このダイくんはなんとトーヤ殿と知り合いだったそうなんじゃよ」
「ええっ。トーヤと!? ダイくん本当なの?」
詰め寄るエイミの剣幕に気圧されつつもダイはトーヤの話をエイミに話して聞かせた。
「・・・そう、なのね。まさかデルムリン島へ行っていたなんて・・・」
話を聞き終えたエイミは考えを纏めているのか心ここにあらずといった感じだった。
「知り合いとは聞いたが、まさかトーヤ殿がダイくんの師匠じゃったとは」
「そんなんじゃないですよ。トーヤは師匠とか先生って柄じゃないし、どっちかというと友達って言う方が近いかもしれない」
「良かったなあ、ダイ。トーヤって人もパプニカの人間なんだろ? ならバルジ島で会えるんじゃねえか?」
「・・・残念だけど、彼はバルジ島にはいないわ。3ヶ月前に見たのが最後なの。デルムリン島へ行っていたことも知らなかったわ」
「そ、そんな。・・・それじゃトーヤは」
レオナと行動を共にしていると思っていたダイは、エイミの暗い表情を見て不安を募らせる。
もしかして死んでしまったのではないか。そんな考えがダイの頭を過った。
「なぁに、心配要らねぇよ」
そんなダイを元気づけるためポップが大きな声を出してダイの背中を叩く。
「トーヤって人が島を出てから直ぐに世界中で魔王軍が動き出したんだろ? だったらまだそんなに時間は経ってねえ。行方不明って言ってもただ逸れただけかもしれないぜ」
「・・・でも」
励まそうとするポップにそれでも尚ダイの表情は曇ったままだ。
「お前の話じゃ今のお前よりもトーヤって人の方が強いんだろ? だったら軍団長が直接相手にならない限りやられっこないさ」
「そうじゃのう! 易々とトーヤ殿がやられるとは思えんわい」
「・・・そう、だよね。もしかしたらトーヤのことだから一人で魔王軍と戦ってるかもっ」
ダイはムリヤリ笑顔を作って明るく振る舞った。
「島が見えたぞっ」
一緒に気球船に乗り込んでいるパプニカの兵士の一人が声を上げた。
「あれがバルジ島。あの島の真ん中にある塔を拠点に我々は反撃の機会をうかがっていたのよ」
エイミがバルジの塔を指さし説明する。しかしそこから立ち上る煙に皆は直ぐに気がついた。
「何か様子が変じゃぞっ。まさか姫の身になにか!?」
「・・・レオナ」
ダイは気を引き締めながらバルジの塔から立ち上る煙をみつめるのだった。