ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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 「っ!? あ、あなたは・・・トーヤくんじゃありませんか」

 

 『同行』の光がやむと、目の前にはアバンが立っていた。アバンの場所まで飛んできたので当然のことではあるが。

 

 「お久しぶりです、アバンさん」

 

 驚くアバンに軽く挨拶を済ませ、俺は今いる場所を確認した。

 

 「ここは、破邪の洞窟ですか?」

 

 修行のために何度も入った場所。簡素な作りではあるが、見覚えのある場所なのですぐに分かった。

 

 「・・・ええ。私自身の持つ、破邪の力を強めようと思いましてね。外の現状は理解していますか?」

 

 「その話は先に進みながらでいいですか? 地下に潜るのなら俺も協力しますよ」

 

 言いながら俺は洞窟の先へ歩みを進める。

 

 「あ、トーヤくん? そっちじゃ逆戻り。地下はこっちですよ」

 

 「・・・」

 

 恥ずかしさを誤魔化すため、無言のまま足早に進んでいった。

 

 

 

 

 

 「ーーそうですか。パプニカが」

 

 俺は外でのことを簡単に話した。といっても魔王軍の侵略によりパプニカが崩壊したことくらいだが。

 

 「あなたの言っていた神託の通りになりましたね。ならばこそ我々もできることをやらねばっ」

 

 アバンの正義の心に火が点いたのか、拳を握りしめて気合を入れている。

 

 「ところでアバンさん。あなたの弟子たちは無事に旅立ちましたか?」

 

 「ダイくんとポップのことでしょうか。あの子達ならちゃんと旅立ちましたよ。デルムリン島から出立するのを確認しましたから」

 

 それを聞いて胸を撫で下ろす。

 

 ヒュンケルの行動から原作の進捗は予想が出来ても、実際に他が原作通りに進んでいる保証はない。ダイやポップがハドラーにやられていたとしても不思議はないのだ。

 

 「その様子だと神託に出てきた魔王と戦う弟子というのはあの二人で間違いなかったようですね」

 

 アバンには神託として世界の危機を話したが、アバンの弟子が大魔王と戦うとしか説明していない。今の俺の反応から自分の選択が間違いじゃなかったと判断したんだろう。相変わらず油断ならない人だ。

 

 ぶっちゃけアバンは最終決戦までここに籠もるから隠す必要はないんだけど。それでも敢えて話す必要もない。必要以上に隠すことはしないが、バレても誤魔化すのは面倒なのでやめることにしよう。

 

 「ダイの特訓は上手くいったんですか?」

 

 「それはもうバッチリ・・・とまでは言えませんが、7割方教えることは出来ましたよ。あなたの基礎訓練の成果ですね」

 

 「うっ」

 

 やっぱり俺がダイを特訓していることはバレたか。口止めしなかったしな。

 

 でも7割か、随分といい調子なんじゃないだろうか。それならクロコダインに一方的にやられる心配はないだろうか。

 

 しかしクロコダインの皮膚は鋼鉄並みに硬いって話だしな。紋章なしじゃ難しいのかな。

 

 「ここで重大なお知らせがあるんですが」

 

 俺がダイの先行きを心配していると、アバンが真剣な口調で語りかけてきた。

 

 「な、なんですか?」

 

 「実はですね。私自分の分しか食料を持ってきていないんですよ。半分こしてもいいんですが、そうすると地下へ潜るのはベリーベリーハードとなってしまうんですよ」

 

 冗談めかして話すアバン。俺はその言葉にアバンが背負う巨大なリュックを見る。

 

 洞窟へ潜る場合に重要なのは戦闘能力よりも装備と食料、それに灯りだ。

 

 さっき俺はアバンに協力すると言ったが、アバンからしてみたら何も道具を持たない俺は足手まといでしかないだろう。

 

 「それなら問題ありませんよ。俺は自前のものを使うので。というかアバンさんの食料や回復アイテムも俺のを使うといいですよ」

 

 「ああ、なるほど。あなたは先ほどルーラのようにここへ突然やってきましたもんねえ。その要領で外への出入りは自由という訳ですか」

 

 「それでも良いですが、もっと便利な道具を使いますよ。見ていて下さい。・・・リターン、オン。トーヤ」

 

 呪文を唱えると、俺の目の前に便利なアイテムの数々が現れた。それらを指さし、自慢気にアバンを見る。

 

 「どうです? これで食糧問題は解決です」

 

 「おお、これは凄いですねえ。ルーラの応用でしょうか。いや、そのカードの効果ですか。どちらにしろ素晴らしい能力です」

 

 アバンの称賛の言葉に俺は気を良くする。しかし、良く見るとアバンの表情は少し曇っているようにみえる。

 

 訝しがっていると、アバンはそれに気づき口を開いた。

 

 「あ、いえね。こんなに大量の荷物をどうやって運ぶのかと思いまして。移動するたびにそのカードで呼び寄せるのかなあ、なんて・・・」

 

 「それなら心配いりませんよ。よく見て下さい、台車に載っているでしょう」

 

 「・・・確かに台車に載っているようですが、このままずっと押していくつもりですか?」

 

 洞窟で台車を押していくなんて邪魔にも程がある。さすがに俺だってそこまでバカじゃないぞ。

 

 「ご安心を。これは生きてる台車と言って、このタグを目印に勝手に付いて来ますので。アバンさんの荷物も乗っけちゃって下さい」

 

 

 【 生きてる台車 積載量350キロ 】

 ・後ろを勝手についてきてくれる台車。お買い物や採取に便利。

 

 

 「他にも色々と便利アイテムがあるので、それは進みながら説明します」

 

 こうして俺は破邪の洞窟でアバンをサポートしながら身を潜めた。

 

 アバンには原作より早く地下へ潜ってもらいたいからな。

 




 ちょっと話がマンネリ化している気がして不安です。

 かと言って勢いで話を進めると首を締めることになりそうですし、難しいものですね。

 今までもゆっくり進めて来ましたが、これからもゆっくり目で進もうと思うので、読者のみなさまもお付き合い戴けると幸いです。

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