ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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22 家庭菜園

 バルジ島。そこは無人の孤島である。

 

 巨大な渦が外部からの上陸を妨害する自然要塞と化している島。

 

 人を寄せ付けないそんな場所で俺はひたすらに振り続けている。

 

 なにをって? 決まってるだろ。鍬だよ、鍬。

 

 深夜3時、島全体緑化計画中を絶賛遂行中なのである。

 

 「よいしょー。よいしょー。あ、よいしょー」

 

 リズミカルに鍬を振ることにより寂しさから逃走中。

 

 一人暮らしも長くなるとこういった術を自然に身につけるものなのだ。処世術ですね。

 

 

 

 今日ーーもとい昨日の昼までマリンと視察で訪れていて気がついたのだ。

 

 この島は閑散とし過ぎであるということに。

 

 思い返せばダイの大冒険原作でも避難していた兵士たちが食料のことで喧嘩をしていた。

 

 ならば今のうちに自然豊かな島に変えておけば快適な避難生活を送れるというもの。

 

 「俺ってちょー親切だよね」

 

 人のために苦労を惜しまないこの姿勢。素晴らしいと思いませんか。

 

 っていうのはただの理由付けで、実際は念の修行を思いっきりするのに最適だと思ったからなんだけどね。

 

 今まではアイテム探したり作ったりで念修行は指輪の能力に任せっきりだったからな。

 

 少しは霊丸とか他にもテクニック的な修行をして慣らしておかないと。

 

 なのでまずは『周』の練習からだ。

 

 鍬にオーラを流して地面を耕す。

 

 ゴンとキルアがビスケの元でやっていた穴掘りと同じ様なものだ。

 

 念能力はどこまで行っても基本が大事。こういう地味な努力がいずれ実を結ぶのだ。・・・多分。

 

 

 

 しかしいくら修行と言ってもただ地面を耕しているだけじゃモチベーションが上がらない。

 

 なので先ほど言ったようにこの島を実り豊かな島に変えてみようかなあ、なんてね。

 

 辺りをある程度耕し終えたころ、俺はポケットからカードを取り出して唱えた。

 

 「リターン、オン。トーヤ」

 

 唱えるとカードに記されている数値が一つ減り、目の前に丸い光る球が下りてきた。

 

 光が収まると、そこには自宅のコンテナに入れてあった荷物があった。

 

 これは俺のスペルカード、『再来(リターン)』の能力だ。

 

 

 【 再来(リターン) ランク E 回数 104 】

 ・指定された場所にある荷物を、宣言した場所や人の元へ飛ばす。

 ・場所の指定には『道標(ガイドポスト)』が必要。

 

 

 このカードも『同行』と同じくスペルカードだ。

 

 やはりというか、何故か本家のグリードアイランドとは効果が違う。

 

 しかもこのカードに限っては別のスペルカードと併用しなければ使えないのだから最初は困惑したものだ。

 

 カードの作成者が俺だから、きっと俺の曖昧な記憶を元に適当に作られているのだろう。

 

 『道標』の作り方は簡単で、『旧文字』で「使用した場所や人を記憶する」と紙に書いて材料にするだけでできた。

 

 かくして俺は荷物の搬送には苦労することが無くなったわけだが、良く考えてみると『同行』の往復で荷物なんてどうとでもできるので大したカードではない。

 

 そんな想いを頭の隅に押しやり、緑化計画を再開する。

 

 木を植えるにしろ野菜を作るにしろ、水の準備をしないとな。

 

 荷物の中から器を取り出し、設置しやすい場所を探す。

 

 

 【 湧水の器 】

 ・きれいな水が常に一杯になっている不思議な器。少しでも減るとその分すぐに湧いてくる。

 ・湧いてくる水の量は18,000リットルまで。蓋をして一日経過するとまた湧くようになる。

 

 

 このアイテムは一日おきに蓋を開閉しないといけないから、ずっと使うことを考えると身近な場所へ設置することが好ましい。

 

 川のように上流に置くよりは湖や池の様な場所で橋を架けて手軽に行き来できるようにした方が良いのだ。

 

 しかし、この島にそんな場所はない。ならば仕方ない。

 

 俺はバルジ塔へ登ると、最上階まで上り外を見た。

 

 「あの辺ならいいかなー」

 

 適当な場所へあたりをつけ、人差し指を向ける。

 

 そこへ意識とオーラを集中させ全力の霊丸を放った。

 

 子供の時以来の全力の霊丸。以前とは比べ物にならないほどの大きさのそれは、着弾と同時に爆撃でもあったかのような轟音を響かせた。

 

 土煙が晴れると、そこには直径20メートル近い大きなクレーターができていた。

 

 「おおっ! こりゃすげーわ。毎日の『堅』の成果だな」

 

 オート修行は楽でいいわ。

 

 1分のインターバルを空けて、立て続けにもう3発の霊丸を放つ。

 

 縦横に2✕2で隣接するように霊丸を放ったことにより、その中央には十字状の道ができた。

 

 あとは道を綺麗に舗装し、それぞれのクレーターの底を繋げれば湖の完成だ。

 

 そのためにスコップを片手にクレーターへ飛び降り開通作業を開始した。

 

 

 

 

 

 「よ、ようやく終わったか。意外にしんどいな」

 

 十字の道の下部分を小さく掘って繋げた。水がそれぞれに流れる程度の小さな穴だったが、思った以上に疲れた。

 

 地盤が元々硬いのか、それとも霊丸を4回撃ち切ったためにオーラが切れているのか。どちらにしろ随分と時間が掛かってしまった。

 

 疲れたし今日はもう休もうかな。

 

 水場を作るだけでこんなに掛かるなんて予想外だった。こんなことなら地面耕すよりも先にこっちの作業に取りかかればよかった。

 

 こういうとき段取りの悪い自分が嫌になる。

 

 額の汗を拭い、『再来』でこちらへ飛ばした風呂桶を準備する。

 

 風呂桶が入るとか自宅のコンテナどんだけデカいんだよとか思うかもしれないが、ちゃんと分解して入れたから気にしないでくれ。

 

 再び組み立て終えた風呂桶に『湧水の器』で水を入れる。

 

 水が溜まるまでの間に選んでおこう。

 

 何を選ぶのかというと、これだ。

 

 

 【 美肌入浴剤 】

 ・この入浴剤をお風呂に入れるとあらゆる肌の悩みが解決する。疲労回復効果あり。

 

 

 この入浴剤、実に15種類以上もあるのだ。効果は変わらないが香りはどれも違うので、どの入浴剤を使うかは俺の日々の楽しみだったりする。

 

 「今日は薬湯にするかー。疲れたしな」

 

 風呂桶の水をメラで沸かして入浴剤を入れる。

 

 「くはー、生き返るぜえ」

 

 オヤジ臭く風呂へ浸かり、一日の疲れを癒やす。ひと目を憚らず入るのは良いな。いや、普段もひと目なんか気にしてないけどね。

 

 風呂からあがると片付けは明日にして、今日はもう寝ることにした。

 

 リュックから枕を取り出してバルジ塔の中へ入る。

 

 床へ毛布を敷いて場所を確保し寝転んだ。

 

 「これがあればどこでも安眠だ」

 

 

 【 快眠枕 】

 ・この枕に頭をのせて眠ると4時間で8時間寝たのと同じくらいぐっすり眠れる。枕に頭をのせていないと意味が無いので、寝相の悪い人は注意。

 

 

 明日は湖完成させたいな、なんて考えながら俺の意識は沈んでいった。

 




 もう念能力なのかドラえもんの道具なのか分からないくらい便利な道具出しすぎてますね。

 一応グリードアイランドのカードと類似の効果で少し劣化させています。
 念能力で作ったアイテムなので、これくらいは大丈夫だろうって感じの効果にしています。

 どのアイテムも本筋には関係ないのであまり気にしないで戴けると嬉しいです。

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