ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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18 講義その4(実技)

 「本当に大丈夫なの?」

 

 マリンがヒャドを右手に留めながら心配そうな顔をする。

 

 「ヘーキヘーキ。もしものときの準備も万端だし」

 

 先程準備した回復アイテムと、その隣に沸かしてある風呂を指さしながら答える。

 

 風呂は仮にヒャドが直撃した場合の凍傷治療のためだ。

 

 マリン達は回復魔法も使えるし、ここまで準備しておけば万が一ということもないだろう。

 

 「いつでも良いぜっ」

 

 左腕に装着したガントレットを構える。

 

 「それでは、いくぞ。ヒャドッ!」

 

 アポロのヒャドに併せてマリンとエイミも同時に俺に向けてヒャドを放つ。

 

 3つの呪文が飛んでくる中、着弾を待たずに呪文へと駆け出す。

 

 呪文が目前に迫る瞬間、ガントレットでその内の1つを受け、そのまま速度を落とさずに駆け抜けた。

 

 両脇を残り2つの呪文が通り過ぎ、俺が元いた場所で炸裂した。

 

 「っとこんな感じ。て冷たッ」

 

 凍りづけになったガントレットを即座に外してメラで腕を暖める。

 

 「随分と無茶なことをするな。これを私たちもやるのか」

 

 アポロがその様子を見ながら少し引いている。

 

 今やっているのは、フレイザードのフィンガーフレアボムズの対策である。

 

 呪文を同時に放ってもらい、それを躱す特訓だ。

 

 フレイザードのことは話せないので、魔法を使う敵に囲まれた時の対処法として皆には話してある。

 

 やっていること自体はこの間のスライムに囲まれた時の特訓と同じなので大したことはないだろう。

 

 だからだろうか、エイミが不満の声を漏らす。

 

 「この特訓って、モンスターに囲まれた時にやってたことと大して変わらないじゃない。こんな危険な方法でわざわざ特訓する必要あるの?」

 

 その疑問は尤もだ。何しろこの後に彼らは同じことをやらされようとしているんだからな。

 

 「この特訓が無駄に見えるってことか。確かにそう見えるかもな。ではここでクイズだ」

 

 だから、あらかじめ考えていたこの特訓をやらせるための理由を説明することにした。

 

 「10分で地面に1メートルの穴を掘る人間がいたとする。その人間が100人集まったら、10分で100メートルの穴を掘れるか否か」

 

 「・・・できない」

 

 少し考え、エイミは答える。

 

 「理由は?」

 

 「同じ場所で穴を掘る作業をできる人数が限られているからよ」

 

 「正解だ。ではそれが敵の攻撃だと考えてみてくれ」

 

 説明しながら三人の真ん中辺りに移動する。

 

 「こんな風に周りを敵が囲んだ場合、同時に攻撃できるのは前後左右にいる4人くらいだ。それ以上多くなるとそれぞれが邪魔をしてしまうからな」

 

 当たり前のことを真剣に話すのってなんか恥ずかしいよね。だけど皆を納得させるためだから仕方ないね。

 

 「だけどこれは武器や素手で戦う相手を想定した場合の話。もし相手が魔法使いだったらこうはいかない。呪文はさっきの例えとは違って、僅かな距離さえとれていれば20人や30人で一斉に攻撃することができるからな」

 

 右手でメラを発動させ、さっき俺が立っていたところへゆっくりと投げる。

 

 のんびりと飛んで行くメラが向こうへ着弾する前に立て続けに4発のメラを投げる。

 

 時間差で放ったメラは放物線を描き、5発動時に同じ場所へ着弾した。

 

 「こんな感じで呪文はスペース関係なく襲ってくるからな。弱い呪文でも上手く避けないとタダじゃ済まないぞ」

 

 説明だけでなく実際にその威力を見せたからだろう。みんなは納得したようだ。

 

 気が変わらないうちにさっさと特訓を始めるとするか。

 

 

 

 

 

 フィンガーフレアボムズはとても強力な呪文だ。

 

 同じ方向から同時に5発もメラゾーマを放たれたのでは完全に避けるのは不可能だからだ。

 

 もちろん5発のメラゾーマを耐えることなんてもっとできない。

 

 なら、ダメージ覚悟で突っ込むしか無いだろう。

 

 そのためにガントレットを用意したのだ。これを使ってダメージを最小限に抑えて攻撃に移るのが最良の戦い方だろう。

 

 あと何年後になるかはしらないが、確実に皆はフレイザードと戦うことになるのだ。友達として黙って見ていることは出来ない。

 

 これを今経験しておけば、後で必ず役に立つはずだ。

 

 こいつら真面目だからな。今回の特訓が終わっても、きっと練習し続けるだろう。

 

 

 

 椅子に座って彼らの特訓を眺める。

 

 よくやるよな、目標もないのに。

 

 それとも立派な賢者になることが彼らの目標なのだろうか。

 

 そうだ。頑張ったご褒美と言ってはなんだけど、彼らに装備品でもプレゼントしようかな。

 

 特訓も大事だけど、いい装備を整えるのも重要だからな。

 

 そうと決まれば何がいいかな。

 

 『旧文字』を書いただけの装備品は文字の読めない者には使えないし・・・。

 

 かと言ってグリードアイランドのカードは渡せないだろ。というかあれはまだ俺以外のやつが使えるか試してない。試すつもりもないけど。

 

 ならやっぱり錬金釜で調合するか。

 

 錬金釜で作ったアイテムはその素材に『旧文字』を使用していたとしても問題なく使うことができる。

 

 それは彼らが俺の作った『ヒーリングサルブ』や『メンタルウォーター』を使っていることからも分かる。

 

 ただ、俺が念を送り『ヒーリングサルブ』を使った場合は光を放ってホイミのように回復するのに、彼らの場合は普通の薬のように使わなければならなかった。

 

 それでも塗って数分で傷がなくなったり、魔法力が回復したりと異常に効き目が早い。

 

 アトリエシリーズで戦闘中にアイテムを使用できるのが錬金術士だけなのは、こんな理由なのかなと思ったりした。

 




 これで三賢者育成は終了となります。

 次はプレゼント渡してからまたオリ主の念修行とアイテム作りが始まります。

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