ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:七夕0707

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16 講義その2

 「熱量を上げると大きくなる。下げると小さくなる。サイズは変えても熱量は変わらない。ということで良いか」

 

 「はい」

 

 「魔法力は熱量を上げると増加して、下げると削減できるのね」

 

 「はい」

 

 「同じく魔法力はサイズを大きくすると増加で、小さくすると少なくなるのね」

 

 「そうです」

 

 俺の1時間にも渡る熱弁を30秒で終わらせられた。

 

 偉そうなことを語ってただけにこれは恥ずかしい。

 

 さっそく彼らはメラミをメラ並みの威力に変え、その分の魔力を大きさに変換させていた。

 

 俺が先程みせた炎よりも巨大なものができあがり、辺りをジリジリと熱気が襲う。

 

 直径にしたら5メートルくらいか。めちゃくちゃでかいな。

 

 「やったっ。私にも出来たわ」

 

 マリンが自分のメラミを見ながら喜び飛び跳ねる。

 

 そんな物騒なもの掲げながらはしゃがないで下さい。

 

 「これなら低階層の雑魚モンスターは一掃だな」

 

 「なるほど、配分と工夫というのはこういうことか」

 

 感心しながら彼らは呪文を試す。

 

 

 

 「よし。次は戦闘中の基本というか、注意事項をいくつか説明する」

 

 気を取り直して講義を続けることにする。本当は呪文のコントロールを手取り足取り教えてやろうかと思ったんだけど、普通にできるみたいなので省略だ。

 

 大きさを変えるだけじゃなくて他にも使い方とかあるんだけど、それは実践で説明しすることにしよう。

 

 「注意事項?」

 

 マリンが小首をかしげて俺を見る。

 

 「そう、注意事項。大きなのは二つあって、一つ目はエイミ」

 

 「え、私?」

 

 急に矛先を向けられて驚いたようだ。

 

 「そうだよ。さっきの洞窟での戦闘中の話だ。逃げようとするモンスターに攻撃しようとしてたよな」

 

 「え、ええ。逃がさないようにそうしたのだけど」

 

 何が悪いかわからず、微妙にオロオロしだす。ちょっとかわいいなクソ。

 

 「軍隊とか組織とか、とにかく後が控えてるような敵だったら追撃はありだけど。今回みたいな洞窟探索では体力や魔力消費は最小限に留めるのが基本だ。逃げる敵を追うことはしないでくれ」

 

 「わかったわ、次からは気をつけます」

 

 なんか素直だな。

 

 「でも、相手の知能が高くて増援を呼びそうだったら攻撃したほうが良いから、そこは臨機応変にな」

 

 実際間違ったことをしようとした訳ではなかったため、フォローしておく。

 

 「で、二つ目なんだけど。これは実際に見てもらった方が早いと思うから付いて来てくれ」

 

 

 

 

 

 破邪の洞窟へ入って少し歩く。

 

 そこでモンスターがでるまですこし待つ。

 

 1階だから出てくるとしたらスライムだ。

 

 「あ、モンスターよ。どうするの」

 

 マリンが現れたスライムの方を指さした。

 

 「ちょっと俺が相手して時間稼いでくる。集まってきたら声かけるから待っててくれ」

 

 アポロ達をおいてスライムの方へ走る。

 

 スライムは俺の様子を伺いつつ、隙を見て体当たりを仕掛けてくる。

 

 「ピギー」

 

 残念だけど、もうコイツの体当たり程度じゃまるでダメージ通らないんだよね。

 

 俺の体は指輪の効果で常に『堅』の状態になっている。全力の一割の『堅』で更にそのオーラの三割は指輪に吸われているため、本気の7%の『堅』だ。

 

 それでも十分なほどの防御力だ。といっても相手はスライムなので自慢できるほどのことではないが。

 

 何もしないでスライムの攻撃を受け続けて5分が経つと、更にスライムが集まってきた。

 

 全部で12匹か。練習にはちょうど良いかな。

 

 俺は後ろに控える三人へ大声で話しかける。

 

 「これから、こいつらをメラだけで倒すからっ。よーく見てろよっ」

 

 彼らが見やすいように立ち位置を意識して、スライムとの戦闘を開始する。

 

 「まず、相手が大勢いて囲まれた時の対処法だっ」

 

 そう言って12匹のスライムの真ん中に大きくジャンプして飛び込んだ。

 

 突然の奇行に三人が息を呑んで見守る中、俺は戦闘を続行する。

 

 「こういう場合、ちんたら手をこまねいていたら袋叩きに遭うだけだっ。どこでもいいから抜け出せそうな場所に穴を空けろっ」

 

 包囲しているスライムの間隔が一番離れている辺りにメラを放つ。

 

 「このとき敵に直接呪文をぶつけても良いが、目的はこの状況からの脱出なので命中させるのは二の次だっ」

 

 狙いの適当なメラに半身を焼かれてスライムが倒れる。その隙間を縫ってスライムの包囲網から抜けだした。

 

 「今のが包囲された時の対処法っ。次に、敵をかい潜って向こう側へ行かなければならない時の戦い方を見せるっ」

 

 時間を掛けたためか、1匹倒したにも関わらずスライムは14匹に増えていた。

 

 スライムの群れへ駆け出しながら、メラを掌に生み出して突っ込む。

 

 「さっき包囲を抜けたとき同様っ。進行方向に呪文を撃って道を作る」

 

 言葉通りにメラを投げ込み僅かな道を作る。しかし、今度は数も多いため向こう側へ抜けるほどの隙間はない。

 

 「重要なのは呪文を放ったらすぐに次の呪文の準備をして、いつでも放てるようにしておくことだ」

 

 近づく俺にスライムは体当たりをしてきたが、少し体をずらして回避する。

 

 そしてそのスライムがその場を離れたことでできた隙間にメラ撃つ。

 

 メラが波紋となって僅かな隙を作り、更にその隙間にメラ撃っていく。

 

 次々と生まれた隙間を縫うように走り、向こう側に抜けた俺は、みんなに大きく手を振った。

 

 「呪文を上手く使って、こうやってモンスターの群れを突っ切るんだぞっ」

 

 さて、ここまで見せればもう良いだろう。

 

 メラを先程洞窟の外で見せたように巨大化させる。

 

 直径4メートルにもなるメラを大きく振りかぶり、スライムの群れへと投げ込んだ。

 

 サイズこそ大きいが威力は普通のメラより抑えてあるので、通れなくなる程熱くはない。

 

 『堅』を少し強めに纏い、メラ炎をかき分けてみんなの元へと歩いて戻った。

 

 「どうだ? 全然戦い方が違うだろ。コッチの方が絶対良いって」

 

 アポロの肩に手をおいて声を掛ける。

 

 そしてその時、マリンが不思議なモノをみるような眼差しで見ていることに気がついた。

 

 「ど、どうかしたか?」

 

 もしかして俺の戦闘が凄すぎたか。これでも力をセーブして戦ったのだが。

 

 マリンは俺がグリズリーと戦っているのも過去に見ているしな。強いからって次期勇者だなんだと騒がれたら困るんだけどな。

 

 固唾を飲んで彼女の次の言葉を待つと、返ってきたのは意外な言葉だった。

 

 「あなたの服。どうしてあの炎の中をゆっくりと歩いても燃えないの?」

 

 マリンの言葉に俺はマンガのように大きくずっこけることになった。

 

 ・・・意外に気持ちいいな、こうやってコケるの。

 




 そろそろ飽きられてないか心配になってきました。

 でもまだ本編に入るまで幾つか書きたいことがあるので今しばらくお待ち下さい。

 

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