明日も会社だし・・・。しばらく投稿が遅くなるかもです。
キメラの翼を10個と『同行』を入れてっと。
ぐーる、ぐーる、ぐーる。
しばらく釜をかき混ぜると輝き出す。
現在俺は14歳。バーンを倒す準備は順調に進んでいると言っていいだろう。
出来上がったカードを見て、満足気に頷く。
【 同行(アカンパニー) ランク F 回数 218 】
これに気づいたのは、最初に錬金術を成功させてから1年くらい後のことだった。
より強力なカードを作りたいのに、魔法具が全然ない。
世界各地の道具屋へ行き色々と見て回ったのだがどれもパプニカで売っているのと同じようなものだった。
ダンジョンも地底魔城とか行ってみたけど、特に良いアイテムは落ちてなかった。
やっぱりゲームと違って伝説級のアイテムなんてダンジョンに転がってるわけないよね。
大体あそこ今は廃墟だし。
話が逸れたが、そういう経緯があり俺はその時思い悩んでいた。
そのせいでうっかり『同行』のカードとキメラの翼を釜へ放り込んでしまったのだ。
入れてしまったものは仕方ないと調合を続けた結果、カードの回数が1回加算されていたのだ。
更にその『同行』にキメラの翼を加えて調合したところ回数がもう1回加算されていた。
これは嬉しい発見だった。
なにしろ何回も『旧文字』で『同行』の文章書くのってメチャクチャ面倒くさいんだもん。
スペルカードを作るための補助で用意した錬金釜だったけど、これは想像以上に役に立っている。
例えばスペルカードをしまうバインダー。
紙束と布を入れて調合したのだが、システム手帳のようなポケットサイズのバインダーが出来上がった。
普通のバインダーなので特殊な能力とかは何もないけど、スペルカードを持ち運ぶのにはとても便利だ。
同じ要領で、身に付けるものはすべて錬金釜を使って調合した。
この服もそうだ。しかし、この世界のファッションセンスは微妙にズレているようで、現代的には普通のジーパンにTシャツを着ているだけなのに町では目立ちまくっている。
かなり人目は気になるが、それでも良いんだ。長年着慣れたもののほうが動きやすいし。
おっと、そろそろ時間かな。
俺は隅に立てかけてある木刀をベルトに指し、身支度を整える。
そして外に出てバインダーにしまったばかりのスペルカードを取り出した。
「アカンパニー、オン。パプニカ」
アポロたちの勉強部屋だという扉をノックし、返事も待たずに中に入る。
「おじゃましまーす」
中に入ると、机に座ってまるで授業中の中学生のように真面目に座る三人が目に入った。
「あら、トーヤ。早いわね、まだ約束の時間まで随分あるわよ」
「待たせちゃ悪いからな」
俺は言いながら、勝手知ったるなんとやらで許可も取らずに椅子に座る。
ちなみに今のはマリンだ。
子供の頃と違って最近なんだか女らしい口調になっている。
これが思春期というやつだろう。
体つきもなんだか最近エロくなってきた気がする。っていうか服装がエロい気がする。生地が少なすぎるんだよ、この国の人達は。
正直目のやり場に困る。
「どうしてあなたってそういう常識はあるのに、ノックの返事も待てないのかしらね」
俺に小言を言うこの声はエイミだ。
エイミもマリンの真似をしているのか口調が最近はこんな感じだ。
やたらと小言が多いのだが、普段はそんなことはない。大体原因は俺にあるからだ。
「良いじゃないか。トーヤももうこの城では顔なじみとなっている。咎める者なんていないさ」
アポロよ、今まさにあなたの目の前で咎められているじゃないか。
彼らと知り合って早いもので、もうすぐ10年が経とうとしている。
半月に一度くらいでしか会っていなかったので時間に換算してしまえば短いのだろうが、それでも俺は彼らのことを友人だと思っている。
大魔王バーンが出てくるのはそろそろかと思っていたが、この三賢者の容姿を見るにまだ先になりそうだ。
残された時間は後どのくらいあるのだろう。
実はこの世界はダイの大冒険を模しているだけで、実際に大魔王なんて出てきませんよ。なんてことになれば良いのに。
しかしそれは希望的観測というものだろう。準備をしておいて損はないのだ。
「で、いつ行くよ。俺の方はいつでも行けるぜ」
「もう今日の分の勉学は済んでいる。私もいつでも行けるぞ」
アポロに続いてマリンとエイミも頷き、俺達は出かけることにした。
そう、破邪の洞窟へ。
きっかけはアポロだった。彼はこの頃伸び悩んでいるらしく、特訓がしたいと言い出した。
バーンのことなんか知らないくせにどうして強くなりたいのか謎だが、彼が強くなって困ることはないので俺は協力することにした。
かといって賢者である彼と模擬戦なんてやったらどちらかが大怪我しそうなので代案をマリンに求めたら破邪の洞窟を勧められたのだ。
マリンと一緒にいたエイミも、私も特訓したいなどと言い出したので、三賢者+俺で破邪の洞窟へ行くことになったのだ。
まるでピクニックだな。
「準備は良いか? それじゃ、ルーラっ」
俺は皆に見えないようにカードを手に持ち、小声で『同行』を使った。
「凄いわよね、ルーラって。一瞬でこんな遠くまで来てしまえるんだもの。昔はメラも使えなかったのに」
「何年前の話してんだよ。メラだって今じゃバッチリ使えるっつーの」
感心するマリンに軽口を返して、見えないようにカードをしまう。
この世界でルーラを使える人は少ない。三賢者である彼らでさえもルーラは使えないのだ。
となると馬車か気球か徒歩で移動となるが、そんなに時間が掛かるのは御免こうむる。
だからルーラを使えるという嘘を吐いてこうして移動してきたのだ。
破邪の洞窟は前に来たことがあるしな。
「みんな、今日は付き合わせてすまない。今回の目標は15階にあると言われているマホカトールだ。ムリをせずに危ないと思ったらすぐに引き返そう」
アポロは先頭を歩き、破邪の洞窟へと踏み込んでいった。
俺は最後尾を歩き、彼らの背中を見守りながら心の中でつぶやく。
15階って目標低すぎやしませんかねえ。
一気に時間をとばしました。そろそろ本格的な戦闘を書いていこうかなとか思ったので、話の都合上5歳児であんまり強いと迫力ないので。