「いやー、話のわかる人で良かったよ」
城下町の食堂で注文した料理を待ちながら笑顔で二人に話しかける。
「本当に、パプニカ王の懐の広さに救われたな」
「もう、二人とも。少しは反省しないと」
マリンは少し呆れた様子で俺とアポロを窘めた。
「わかってるって、ちゃんと反省してるよ」
マジで。もう二度と町中で霊丸は使わない。
「トーヤの責任じゃない、私がせがんだせいだからな。パプニカ王にはテムジン様を通じてもう一度謝罪するつもりだ」
もう終わった話なのに、なんとも殊勝なやつだな。
パプニカ王は子供のしたことだからと笑っていたというのに。
よく考えたら、マリンもイオとか使えるんだよな。
子供に刃物を渡すだけでも危ないのに、あんな爆裂呪文を使えるような子供が三人も城にいるのって割りとヤバいことだよな。
「おまたせしましたー」
店員さんが俺達の前にどんどん料理を並べていく。
きたきたー。
「ず、ずいぶんな量だね。食べられるの?」
マリンは並べられた料理の量に驚いている。
俺が頼んだのはミートソーススパゲティとグラタンだ。
それを二人前ずつ。
マリンとアポロはサンドイッチとコーンスープのみ。
小食だな。俺がご馳走するからなんでも頼んでいいって言ったのに。遠慮してんのかな。
やはり町の食事は良い。
調味料がふんだんに使われてるため、味がしっかりしている。
森での食事は味気ないからな。
素材の味が活きてると言えば聞こえは良いが、素材の味を殺してでも俺は濃い味のものが食べたい。
だから町での食事は本当に良い。引っ越してこようかな。
というわけで引っ越してきました。
パプニカの町ではなくて、近くの森の中だけどね。
岩壁にスコップで穴を掘って洞穴みたいにしてみました。
こういうのはこだわるタイプなので、四角柱を横に突っ込んだみたいな状態で壁にはランタンをいくつも掛けて全体的に明るい感じにしています。
やっぱり明るいと気分が違うよね。
じゃあ気分も変わったことだし、魔法の練習でも始めますか。
石の壁ってのはこういうとき便利だよね。
わざわざ外に出て的を探す必要もないし。
そもそも森だからメラなんて気軽に使えないしね。
俺は精神を集中させて、手のひらを壁に向ける。
「メラッ」
・・・。
やっぱり何もでないな。
もしかして魔法力不足かな。MPが足りなければ呪文が唱えられないのは当然のことだろう。
そういえば、ダイの大冒険の世界では呪文の威力は調整出来るんだっけ。
ものすごく弱いメラだったら出せたりするのかな。
気合を入れすぎていたのかもしれない。もっと気楽にやろう。
人差し指を立ててそこに火が灯るイメージをしてーー。
「メラ」
呪文と共に、俺の人差し指に小さな火が灯った。
おおっ!
これが魔法か。軽く感動したぜ。
・・・でもこれだけか。
俺はメラの契約しかできなかったしな。
・・・これ、実践で役に立つ?
ムリだわな。呪文は諦めて念の修業に専念するか。
紙とペンを用意して『旧文字』を使って文字を書き込む。
『旧文字』は気を使うのでやたらと時間がかかる。
「よし、出来た!」
【 同行(アカンパニー)】
・呪文の使用者を行ったことのある場所か会ったことのある人の元へ飛ばす。
内容はうろ覚えだけど、大切なのは効果だから大丈夫だろう。
外に出て実験してみよう。
「アカンパニー、オン。パプニカへ」
・・・あれ? 何も起こらないな。
おかしいな。木刀の時はちゃんと能力発動したのに。
やっぱり書いたことがそのまま能力になるなんて都合が良すぎたか。
もしくは文章になにか問題でもあるのかな。
グリードアイランドのカードが作れればサポートとしてかなり強いと思ったんだけどな。
『同行』はほとんどルーラと変わらないし、放出系能力で出来そうだったから期待してたんだけど。
これが発動しないとなると、他のカードなんて絶対作れないわ。
グリードアイランドのカードって魅力的なの多いですよね。
オリ主もそう思ったようでカードを作ろうとしましたが、念を覚えて数年のオリ主では、念能力の達人たちが作るグリードアイランドはそう簡単に再現できません。