ーナバールー
ジュリアンに付き合い、孤児院へと僅かな支援を施していた。ジュリアンとは違い多芸ではない、俺に出来ることは剣を教えてやることだけ。…それだけの繋がり、それだけだというのに俺は………。
ジュリアンと生き残った子供達をガルダへと向かわせ、俺は久々に
未だかつて感じたことのない悲しみが俺の中を燻っているが故、…嬉々として剣を振るうことは出来ない。…ただ殺そう、殺して殺して殺し尽くすことでこの悲しみを払おう。…この先にあるものが己の死だとしても、
アジトへと辿り着いた俺は、挨拶代わりに門番の首を斬る。落ちたその首を無造作に掴み、乱暴に扉を蹴り破り侵入。いつもとは違う登場に奴等の視線が俺に集中、その視線を浴びながら手にした首を奴等へ向けて投げ込み…、
「…お前達との関係は今を以て終わりだ。」
そう告げれば見知った顔の男が、
「…ナバール! 俺達を裏切るってのか!!」
怒髪天を
「…その首がその証だが?」
心底馬鹿にした声色で返せば、奴…奴等は顔を赤く染めて、
「「「「ぶち殺せぇぇぇぇぇっ!!」」」」
各々武器を持ち襲い掛かってくる。俺は剣を強く握り締め、
「………ふっ。」
奴等に一閃、俺達の死闘が始まった。
…斬り払っても斬り払っても、絶えることなく襲い掛かってくる。アジト内は既に血の海、死臭漂う地獄と化している。そんな地獄で俺は剣を振るう、数えるのが馬鹿らしくなる程に斬った。しかし奴等の数は減るどころか、…増えているような気がする。まぁ…当然か、正面から堂々と俺は裏切った。暗殺紛いや奇襲は好かん、…それ以上にそれでは心が晴れぬ。
多くの者を斬り伏せたが故に、俺の剣…キルソードの斬れ味が鈍る。それに合わせて体力の低下が目立ち始め、小さな傷が増えてきた。そんな俺の状態に奴等は笑みを深め、嬉々として獰猛に襲い続けてくる。…そろそろこの俺も年貢の納め時かもしれぬ、そう考え始めたのだが…。
俺の目に入ったのは何の変哲もない鉄の剣、…鉄の剣なのだが身に覚えがある物。…俺が子供達に与えた剣、アレで立ち向かい散った幼き命。
………………。
……そうか、…まだ倒れるのは早いか。そう思った俺は、
「…まだやれる、…俺はまだ人。」
自然とそんな言葉を小さく呟いた。毎日のように聞いていたジュリアンの口癖、…それを俺が口にするか。………面白い、存外俺はジュリアンに影響を受けていたようだ。
手にしていたキルソードを捨て、新たに手にするは鉄の剣。どうしてか、…この場に倒れる自身を想像出来ん。この俺が奮い立つ日が来るとは、…本当に面白い!
「…さぁ、…第二幕といこうか!」
鉄の剣を頭上に掲げて跳躍、新たな一閃と共に想いを乗せた戦いが始まる。
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ーオルドレイクー
マルス王子率いる同盟軍の主力と別れた俺達。俺の騎竜にはリンダとジュリアン、リンダが俺の前に陣取りジュリアンが背後。ご満悦のリンダとは違いジュリアンは緊張気味、初めて竜に乗ったようだから仕方がないかと。オグマ達はそれぞれ一人ずつ天馬騎士と相乗り、…何か互いに恥ずかしがっているけれど何故?
…とにかくそんな編成で空を舞い、ジュリアンの案内でアジトを目指す。ナバールはそう簡単に殺られるような男ではない、…がそれでも急がなくては。多勢に無勢だからきっと満身創痍、遅れれば遅れる程ナバールの生存率が…。例え強者でも疲れや武器の劣化は避けられない、そうなってしまえば…言わずもがな。
眼中にアジトを捉えた。…このまま急襲するぞ! リンダ、彼処を吹き飛ばせ! 崩すのではなく吹き飛ばすんだ、エルファイアーの使用を許可する!!
ドゴォォォォォンッ!!
よし! 綺麗に吹き飛ばしたな、よくやったリンダ! …全騎、俺に続け!! 天馬騎士達はオグマ達を降下させ次第離脱、上空にて待機せよ! 俺はオグマ達と行くがリンダとジュリアンは…って、ジュリアン! …何故お前が一番に飛び出すんだ! リンダもそれに続くな!! ………えぇいっ!!