ージュリアンー
ナバールがサムシアンの集会を狙い、単身アジトへと向かったことに気付いた俺。ナバールの強さは知っている、『紅の剣士』の異名は伊達じゃない。…しかしそれでも心配なんだ、どんなにナバールが強くとも相手は多勢だ。
それも凶賊集団の中で最凶と言われるだけあって、その強さで悪名轟く奴が何人もいる。その筆頭がナバール、…そして頭領のハイマン。…ハイマンは強い、サムシアンの中でも飛び抜けている。せめてもの救いは、奴が集会に顔を出すことがないってこと。頭領故に根城でふんぞり返っている、…アジトへ集まる奴等をコマと考えているからだ。…それにしても多勢に無勢であることに変わりない、どう考えてもナバールが不利である。
…考えれば考える程、ナバールの身が心配で妙に焦ってしまう。この調子が続いたら、くだらないミスを犯してしまいそうだ。そう考えた俺は子供達に発破を掛ける、ナバールを助ける為に頑張ってくれと。…そう言えば子供達は気合を入れて頑張ってくれた、…この子達もナバールのことが好きなんだな。それを知ると心が温かくなる、………もう一頑張りだな!
…子供達の頑張りもあって、俺の視界に同盟軍と思われる軍列が入った。一応子供達をこの場に残し、俺は単身その列へ。俺の登場に最大限の警戒をされたが、敵意がないことに気付くとそれを解いてくれた。小隊長と思わしき兵士に理由を話せば、上へ話を通してくれるとか。それと子供達も保護してくれるという、…ありがたい。
子供達を迎えに行って戻ってきてみれば、そこには王子様っぽい兄ちゃん? と厳つい爺さん騎士。暫くしてから天馬に乗った美人さんと竜騎士が、………あれ? この竜騎士の兄さん、…ナバールがライバル視している手配書の竜騎士じゃないか?
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ーオルドレイクー
天馬隊を周囲へ散らしてから暫く、マルス王子からの伝令が俺の下へ。何でも森の中から一人の男が現れ、子供達を連れて保護を求めてきたらしい。更に重要な話があるとかで、俺もその場に同席して欲しいとのこと。…まぁここはサムシアンの支配地、その男がただ者ではないことは確実。故に万が一を考えての同席か、マルス王子も成長しとるね。直ぐに動ける俺を呼ぶとは、…何かあれば空を飛ぶ俺は身軽だからな。
伝令によって呼ばれた俺は、軍の指揮をレナさんに任せてシーダ王女と共にマルス王子の下へ。そこにいたのは赤髪の優男と子供達、……む? この優男には見覚えが。…今世ではなく前世?
……………ああ!? コイツ、…ジュリアンじゃないか!
原作で囚われのレナさんを連れ出した盗賊、元サムシアンのジュリアン。…デビルマウンテンに何かあるってーのはジュリアンのことか、確かにレナさんが関わっていたわな。まぁ俺の存在のお陰でレナさんは此方に、ジュリアンはレナさんの代わりに子供達という違いがあるけれど。…ってことは敵にナバールがいるな、…これは強敵だ。本来の道筋ではシーダ王女がナバールを説得するが、さて…今回はどうなることやら。
…何て考えていたが、ジュリアンの話を聞いて驚いた。ナバールがジュリアンの相棒、そして子供達の仇を取る為にサムシアンを裏切り単身アジトへ。この段階でジュリアンが孤児院と関わっていることにも驚いたが、紅の剣士と恐れられているナバールが子供達を気に掛けていた。…サムシアンに殺された孤児院の院長と子供達の仇、それを成し遂げようとしていることに驚かない方がおかしい。
ナバールがサムシアンに雇われていることを忘れていた、…がその存在は知っていた。その必殺剣は全てを斬り裂き、その血で身を
泣く子も黙ると言われているナバールがねぇ、…戦うことしか興味がなかった戦闘狂が人の仇か。…何が彼を変えたのか、…やはり子供なのか?
因みにこの話は子供達のいない所で行っている、聞かせることなんか出来ないだろ。こんなにも慕っているジュリアンがサムシアンの一員だった、大切な院長と仲間を殺した者達の一員。最悪…人間不信になってしまう、それだけは駄目だろう。
…俺としては助けたいと言うジュリアンの頼みを聞いてやりたい、ナバールは死なすに惜しい人物だ。変わったのなら尚更である、…死合をした仲でもあるしな。
ナバールは原作以上の強さになると思う。