読むのが遅いと言われる作者ですが、そこは許してくだされ。
………で一言。
ジェイガンのトゲが短いのが気に入らない、FCはもっと長かったぞ!
トゲの長さがジェイガンの価値である!
ーオルドレイクー
タリス王からの問いに目を閉じて思い出す、この世へ転生してから自身の身に起きたことを………。
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父はアカネイア聖王国の聖騎士セルボルト、母はマケドニア王国の元竜騎士クラレット。そんな両親に憧れて研鑽を積み竜騎士となった、導かれるかのように入手したグングニルとティルフィング。弟のキールが生まれて喜んで、実力が認められてニーナ様の付き人兼護衛となった。国の為に、ニーナ様の為に、家族の為に、領地の為に、民達の為に、俺の全てを尽くして生涯を終える。そんな未来を想い描いて、アカネイア聖王国と共に在り続けていく。いずれ来るであろうドルーアの侵攻を両親と共に、国を想う仲間達と共に食い止めてみせよう。そう思っていたのに………………。
父と母は反乱鎮圧の要請を受けて出撃し討たれた、…反乱の首謀者として。俺も付き人兼護衛の立場を利用し、ニーナ様に害を為そうとした罪で捕らえられた。両親も俺もそんなことはしてないし考えてもいなかった、訴えても聞く耳持たず…両親の死も伝えられた。
…両親の死を知り項垂れて、愛するキールの身が心配になり俺は強引に脱獄。途中で我が手に戻ったグングニルとティルフィング、領地から主の危機を感じてか愛竜が迎えに来てくれた。脇見もせずに戻った領地は地獄だった、…見る影もない。散々に荒らされており、民達と共に我が家に仕える兵達の亡骸が無惨に捨てられている。…そして我が家の前には使用人達の亡骸が、…その中心に父と母の、弟の…キールの首が晒されていた。
大切な人達の変わり果てた姿に俺は慟哭、ただただ泣くことしか出来なかった。俺達が何をした? 国の為に最前線で戦い、尽くしてきたのにこの仕打ちは何だ? 中央にいる者達以上に血を流し、民達にも色々な苦労を負わせてきたのも国の為。ニーナ様にも誠心誠意仕えていたんだぞ! なのにこんな…、こんな結末があっていいのか!!
俺が様々な負の感情に囚われ、慟哭している時に現れた。脱獄した俺を追ってきた者達、父と母を謀って殺した者達、領地を荒らし…キールを殺した者達。…推測ではあるが、この場に現れた時点で確信する。見知った顔の者達、…仲間だと思っていた者達。…血の染み付いた姿を見れば奴等が、…この惨劇を作り出した元凶。…俺はお前達を仲間だと思っていたよ、だがそれは俺の…俺達の勘違いだったんだな? …疎まれていたんだな?
そうか、…なら死んでくれ。飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ、…仇を取らせて貰うぞ? …我が天槍グングニルにて殺戮の限りを尽くそう、…誰一人逃がさん!!
俺に立ち向かってきた
持ち出した家族の首を丁寧に葬った俺はアカネイアを出た。…こんなにも愛した国、…今では憎らしい。いずれ来るであろうドルーアに滅ぼされてしまえばいい、消え失せろアカネイア!!
僅かに残る良心で俺は雲隠れをしようか、…ドルーアに与することがないだけでもありがたく思え。
雲隠れをする前に王都パレスの方角を見る。彼女…ニーナ様には良くして貰った、願わくば無事に生き長らえるよう祈ろう。この祈りが最後の忠誠心、アカネイアにではなくニーナ様個人への。…貴女だけは憎めない、憎めないがさよならだ。
そして、俺はアカネイア聖王国に反逆した悪逆無道の竜騎士として手配された。全ての罪を着せられて、…全国に指名手配を。
しかしアカネイアの魑魅魍魎、中央の貴族達の思惑は外れて他国の反応は冷やかだったようだ。何せ未だに俺は健在なのだから、他国は誰一人俺を売る者がいない。まぁ…他国だからこそ俺の武勇が轟いているわけで、藪をつついて何とやらを気にしているのだろう。そのお陰で平和的に家族と民達を弔えている、…有難いことだ。
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アカネイアが滅んだことで俺は動き出した。この目で確かめたかったのだ、世界がどうなったのかを…。その中でアカネイアとは別の指名手配をされ、リンダとレナさんに出会い今に至った。二人のお陰で心穏やかにいられる、それは間違いない。
……………タリス王の問いで思い起こされた、ニーナ様のことを。あの時から変わらない、彼女個人に恨みがないことを。しかし恨みはなくとも俺は彼女の隣に立つことはない、彼女がアカネイアの王女である限り。罪は晴れたと言われても信じられない、きっと俺を誘き出す謀略の一つだから。本当のことだとしても今更だと思う、俺は全てを失ったのだから。それに疑心は残ろう、歓迎される筈がない。ニーナ様以外は疑わしき俺を歓迎しない、俺自身もニーナ様以外を信じることは出来ない。信じた結果があの結末なのだから、信じられる筈がない。
…結論、どう考えてもアカネイアに戻る気はない。ニーナ様に再び仕える選択肢もない、縁は既に切れている。
故に俺は…、
「…ニーナ様とは縁が切れています、故に彼女の下へ戻ることはないでしょう。風の噂で私の罪は消えたとされていますが、私はそもそも罪を犯してはいない。何せ善良なる者達を虐殺した賊徒を討っただけなのですから、…それを都合良く吹聴する国を信じることは出来ませんよ。アカネイアにしてみれば大罪人、…私の同盟軍参加も歓迎されることはない。…冷静に過去を思い出してみれば、私の同盟軍参加は悪手かもしれません。」
檄を飛ばしたのはニーナ様、その彼女を保護するのがオレルアン。…オレルアンは俺の存在を歓迎しない、アカネイアのニーナ様を保護しているから。…考えないようにしていたことを考えた時、俺が同盟軍に参加をしては要らぬ騒動が起きる。参加を表明してからそれに気付くとは何と愚かな、…しかし今更発言を無かったことにするのもな。喜んでくれたマルス王子に悪い、何よりリンダとレナさんに平和な世で生きて欲しいと願うからには、早々に戦争を終わらせなければならない。自分で言うのもあれだが俺は強い、俺の力が役立つことは間違いない。
さて、…そうなると答えはこれしかない。俺は表舞台に立たず、裏舞台で力を発揮させる。即ち本隊はマルス王子達が、俺達は別動隊として転戦すればいい。オルドレイク隊に苦労を掛けるが、そっちの方がある意味安全かと。そう考えた俺は、自身の考えを皆に伝えようとしたが…、
「オルドレイク殿はタリスを救った、そんな貴殿が裏へ回ることは許容出来ぬ。…アカネイアが気になると言うならば、我がタリス王国が後ろ楯になろう。救国の英雄に匹敵するオルドレイク殿を如何様にしようものなら、我々タリス王国はアカネイアに逆らうことも辞さぬ。」
タリス王は俺の発した言葉で察し、…そのようなことを堂々と言った。その発言に息を飲んだのは俺だけではない、マルス王子とその守役であるジェイガン、リンダやレナさんも驚いた。最も衝撃を受けたのは当事者である俺だろう、…まさかタリス王がそのようなことを言うとは思わなかったのだから。
衝撃を受けた俺は少しよろけてから片膝をつく、そして頭を深く下げると心中で色々な感情が駆け巡る。その感情の中で一番強く主張しているのが裏切り、また裏切られるかもしれないと強く主張してくる。最後にはまた俺が邪魔だと、あの時と同じように全てを奪われるのではないか? どす黒い感情が心中を駆け巡って………。
感情の波の中にいる俺の手を誰かが取った。顔を上げてみればシーダ王女で、
「オルドレイク様の過去が如何なるものか、…私には分かりません。ですが信じて下さい、タリスは貴方を裏切りませんから。万が一…裏切りと思ったのなら、オルドレイク様の手で私をお好きなように………。」
真摯な瞳で俺を見詰めて彼女はそう言った。…タリス王の娘なのだな、…俺の心中を察して先手を取ってくるとは。しかも自身の身を人質に…とまで、シーダ王女は信じている。国を、父を、民達を信じ切っている。だからこそ言える言葉、…シーダ王女は強い女性であるな。
………ここまで言ってくれるのなら、…タリスに身を置き仕えるのも良いかもしれん。…迷惑を掛けるかもしれない、…それでもタリス王とシーダ王女の善意に報いる為には。
自身を見詰め直す為にも俺は………。
オルドレイクは自身のしたことに対して後悔はない。仇を討つのはこの世界では普通のことだから。
悪いのは両親を謀殺した上に領地を荒らし、無用な殺しをした魑魅魍魎の手足となった貴族軍。間諜から内容を知らされた他国もオルドレイクの行動に理解を示した、それ以上にオルドレイクの強さに衝撃を受けた。
故に畏怖を込めて、オルドレイクを『空の覇者』と呼ぶように。
そして武勇の誉れ高い者を謀殺し、その子に背かれて手痛い反撃を受けたアカネイアは信用を失墜させる。それが後のドルーア侵攻の際、マケドニアとグルニア、グラを背かせることになる。
暗黒戦争最後の引き金は、オルドレイクの出奔だったりする。
この物語の裏話。
主人公以外のオリキャラは必要か否か。…アンケート機能を試したいだけでもある。
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必要。
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否。
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原作の敵を味方にし、それっぽく使用。