勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある? 作:社畜のきなこ餅
果たして主人公は、運命に抗う事が出来るのだろうか。
2月5日 まさかの日間ランキング2位……正直手が震えるレベルです。
これからも更新速度の維持と、作品投稿頑張ります。
本当に、ありがとうございました!
芽月 =日
あの後リュカが大きなきんた……もとい金の玉を手に入れ、左腕をぶーらぶらさせたままアルカパへ帰還した俺とリュカちゃんとビアンカちゃんとホーク。
その翌日は、それはもう大変な騒ぎとなった。
主に、俺の重症っぷりで。
パパスさんに懇々と説教をされながら見事な応急手当てをされた後、町の神父さんにも説教をされつつ治療を受ける俺。
俺とリュカちゃんとビアンカちゃん、3人並んでビアンカの母ちゃんから正座で説教を受ける。まるで説教のフルコースだな(震え声)
ちなみに説教の内容は、主に俺は無理のし過ぎと言う事でお叱りを受け、リュカちゃんとビアンカちゃんはそんなに危なかったのならすぐにでも逃げてきなさい。というモノだった。
まぁ、安全を優先するのならば幽霊王の頼みを聞いた時点で一度脱出口を探しておくべきだったというのはある、正直俺の落ち度だ。
だがまぁ、ここで落ち込んでも何も解決はしないのである。次回から生かそう、その為にも痛みはまだあるが左腕も動くようになったし訓練だ。
そう思っていたらパパスさんからの、容赦のない訓練禁止令である。思わず絶望した顔を浮かべた俺であるが、まず完璧に治してからにしろというモノだった。永久禁止じゃなくてよかった。
だがそうなると何をして過ごしたものかと思案する、そうしているとリュカちゃんとビアンカちゃんに右手の袖をついついと引っ張られる。
なんぞ、と思って見下ろせば。猫ちゃんを助けに行きましょう!というビアンカちゃんの気合十分のお顔、そういえばそれが目的だったね。
というわけで、左腕を包帯で吊り下げた格好で二人の幼女に手を引っ張られながら宿を出る俺である。ダンカンさん、その怖い貌で睨むの止めて下さい(震え声)
道行く通行人に、凄いな坊主!やら頑張ったわねお嬢ちゃん!やら褒められつつガキンチョ二人が待っているらしい場所へ向かう俺達3人。
なんで町の人が知っているんだ?と不思議そうに思ってビアンカちゃんに聞くと、ビアンカの母ちゃんがご近所さんに話して回ってたらしい。心配でしょうがない親心と親バカの境目を見た気がする。
まぁその後のガキンチョ二人との話し合いはとてもスムーズに終わった、彼らもお化けが本当に居たとは思ってなかったみたいでむしろ二人に謝罪する程だ。
うむ、小生意気なガキンチョであるが性根は言うほど悪くなかったのかもしれんな、などと謎の上から目線の俺。
気のせいか二人の敵意の視線が俺へ向いているが……はっはぁん、わかった。さてはお前らビアンカちゃんの事好きなんだな?
ちょっとリュカちゃんとビアンカちゃんに男同士の内緒話があると伝えてガキンチョ共と目線を合わせる俺、言う事はビアンカちゃんが欲しいなら俺を倒してからにしろ……などと言うのではなく。
まぁいわゆる、ちょっとした人生の先輩からのアドバイスとエールだ。気になる女の子への意地悪は、嫌われる事に繋がっても決して好かれる事には繋がらないぞー。
俺の言葉にハッとした表情を浮かべたガキンチョ二人は、何故か体育会系的なお礼を言った後走り去っていった。頑張れ若者。
そんなちょっと良い事した気分に浸ってる俺を、何故か不機嫌そうに見てるリュカちゃんとビアンカちゃん。解せぬ。
ともあれそんな些事はさておいて、このベビーパンサー(仮)に名前を付けてやらねばいかんな。と半ば強引に話題を変える俺、なんか納得してない雰囲気出しつつも乗ってくれる二人。天使かな?
そして3人で和気藹々と名前案を出しては話し合った結果、ベビーパンサー(仮)の名前は最終的にビアンカちゃんが出した名前のチロルとなったのであった。
ちなみに俺が出した案のネコとパンサーは両方とも却下された、何故だ。なおリュカちゃんは良い名前が浮かばなかったらしく、ビアンカちゃんに一任していた。
芽月 ◇日
猫、改めチロルを名付け一泊した翌日。
パパスさんの風邪も治った、という名目で俺達はサンタローズへ戻る事となった。
ちなみにチロルちゃんであるが、当初はビアンカちゃんが宿で飼うと息巻いていたものの、ここでまさかのビアンカの母ちゃんが猫アレルギーと判明。魔物でも猫アレルギーでるんだな。
俺が部屋で爆睡してる間に、幼女達とパパスさんの間で話がまとまったのかリュカちゃんが責任を持って世話をすると言う事で決着した。
そして別れの時、未だ諦めきれないビアンカちゃんはうーうー言いながらチロルをぎゅぅ、と抱きしめた後。何かを閃いたのかツインテールの片方を縛っていたリボンを解くとチロルの鬣へ結びつける。
うむ、可愛い。などと思いながら一人と一匹を眺めてほっこりしてたら、何やら頬を赤くしたビアンカちゃんにちょいちょいと手招きされる。
なんぞ?と思い目線を合わせるべく屈んで見たら……頬にキスされた。お兄さんありがとう、大好き!だって。
パパスさん、モテモテじゃないかなんて言いながら愉快そうに笑ってる場合じゃないです。貴方のお友達のダンカンさんの目の殺意がヤバイっす。
後リュカちゃん、ステイ落ち着いて。その怖い顔やめて、いつものほんわか笑顔の君に戻って。お願いプリーズ。
俺は大丈夫だ、まだ頑張れる(震え声)
花月 ×日
アルカパの町からサンタローズの村へ戻り何日か経ち、月を跨いだものの未だ冷える今日この頃である。
リュカちゃんの機嫌?訓練できなかったので手慰みで木片で人形作ってあげたらなんとか持ち直したよ。
その名も一角ウサギ家族シリーズ、二頭身ほどのデフォルメしたうさちゃんファミリーシリーズだ。その出来はパパスさんとサンチョさんも感心する会心の出来である。
どこぞの看板商品っぽい?気のせいだ!
ともあれお人形さんでご機嫌を直したリュカちゃんは、サンチョさんが端切れで作ってくれたお洋服を着せて一角ウサギ家族でおままごとを楽しんでいる。ホークとチロルを相手に。
ホークお前、翼で人形掴めるのかよ……初めて知ったわ。一方チロルは退屈そうにしてるが、リュカちゃんが楽しんでるのでまぁいいかといった様子である。やだこの子賢い。
ちなみに俺は、あまりおままごとの遊び相手には選ばれない。一度迫真の演技をやったら泣かれたからな!その後パパスさんに滅茶苦茶怒られた。
まぁそういうわけで、村の中の頼まれ事もそんなにない事もあって暇な俺である。
パパスさんも家の二階で何やら書物で調べ物に忙しそうだし、サンチョさんはここ最近多いらしい調理器具行方不明事件の捜査に大忙しだ。
激しい動きをしない事大前提とした上なら訓練の許可も下りたことだし、丁度思いついたこともあるので試してみようと思う。
なお、鍛錬許可をもらう際パパスさんからは。お前は一人だと無茶をするし、誰かが居ても無理をしようとするんだなと溜息吐かれた。解せぬ。
というわけで俺は今、サンタローズの村にある教会近くの日当たりの良い場所に立っている。
なぜかと言えば、ここは丁度風が吹き込みやすい場所なおかげで今からやる鍛錬に最適なのだ。クッソ寒いけどな!
ともあれ、意識を切り替えて大きく深呼吸の後自らにピオリムをかけ、しかし素早く動くことはせずゆっくりと準備運動をする。
身のこなしが加速した状況下で、どう体を動かしたらどのように動こうとするかを、何度も反復を繰り返して体へ覚えさせていく。
そしてソレが終われば、次に始めるのは……風で巻き上げられて飛び回る木の葉を、加速した状況下で一枚でも多くつかみ取っていく。
もちろん最初から上手くはいかず、勢い余って予測よりも早く掴もうとしたせいで木の葉を掴み損ねたり、逆に予測よりも遅れて木の葉を掴みそびれて難儀をしつつも。
左腕側へ負担をかけないよう意識した上で集中力を研ぎ澄ませ、予測した木の葉の動きと加速した体の動作を一致させていき、2枚3枚4枚5枚と連続して掴みとれる木の葉の枚数を増やしていく。
更にこのまま続けていけば、ピリオドの向こうへ行ける。なんかそんな風にハイになった意識が変な方向へ転がり始めた頃。
左腕に激痛が走った、どうやらアホみたいに熱中したせいで体への意識が疎かになったらしい。何やってんだという突っ込みは許可する。
やべーやべー、と溜息吐いて鍛錬中断。これ以上続けたら悪化させてしまうと自らのアホっぷりに反省しつつ家へ戻ろうとしたところ。
とても綺麗なお姉さんがこっちを見てました、スタイル抜群でお胸も豊作でした。
そんな頭の悪い感想が頭をよぎるぐらいの美人さんが、俺の事を見詰めていた。その目には喜びか愛情か、そうかと思えば悲しみか、とにかく複雑な感情が目から見てとれるほどに表れている。
とりあえず、何か用ですかと尋ねてみればお姉さんはその顔に微笑みを浮かべ、パパスさんの家の場所を尋ねてくる。
正直怪しいなー、とは思いつつも不思議とリュカちゃんと似てるような気がするお姉さんを見上げつつ素直に教える俺である、美人だしな!
俺の言葉に女性は嬉しそうにお礼を言うと、踵を返してパパスさんの家へ……向かわず。
一瞬、泣きそうな顔をしたと思ったら俺に抱き着いてきた。
敵意も害意も感じなかったと言えばかっこいいが、まぁぶっちゃけて言うと反応できなかった俺はなすがままに抱きしめられる。
なんぞー!?と慌てる俺であるが……。
お姉さんは泣きながら、俺にごめんなさい助けられなくてごめんなさいボクのせいであんな事になってごめんなさい、などと謝る。正直心当たりが全くない。
人違いな気もするが、泣いてるお姉さんをそのままにしておけないので。
俺は大丈夫だよ、頑張れる。
そう言ったら更に抱きしめる力が強くなった、お姉さん意外と力強……ぐぇっ。
暫くして我に返ったお姉さん、ぐったりしてる俺に慌ててベホマをかけて謝った後逃げるように立ち去って行った。
……なんだったんだろう?ベホマのおかげで体が本調子に戻ったし暖かくて柔らかかったからむしろお礼を言いたいぐらいなんだが。
花月 ×日
不思議なお姉さんにあった翌日の事、お姉さんの柔らかさを思い出しつつボケーっとする俺。
ついでに、一つの事に思い至る。アレもしかして未来のリュカちゃんじゃね? と。
それなら割と理由は付くししっくりくる、割と時間軸はズレてるが未来の主人公が過去へ飛ぶイベントがあり、そこでオーブをすり替えるというモノがあった筈だし。
気になって、外へ遊びに行こうとするリュカちゃんへ聞いてみれば不思議なお姉さんに会って、きんのたまを見せたよー。という返答である。
あ、これ完璧にあのイベントだわと俺確信。そうなると、だ。
お姉さんのあの謝罪、ものすごく不穏な気配しか感じないワケだが…………。
まー、順当に考えるとアレだよなーと思い至る、しかしそうなるとなるべく考えないようにしていたけども。
原作の通りに歴史が動き、未来が訪れるのだとしたら。
遠くない未来にパパスさんは殺されてしまい、リュカちゃんは奴隷にされるのだろう。
そしてあのお姉さん、ならぬ未来リュカちゃんの謝罪の言葉からするに。恐らくだが俺は死ぬのだろう、ゲマ達に敗北して。
死ぬのは正直御免である、だがそれ以上に。
見つけ次第叩き斬る事確定の血縁上の父と違い、こんな怪しさこの上ないクソガキである俺にも愛情を注ぎ導き見守ってくれるパパスさんを。
俺に懐きほがらかな笑みを浮かべるリュカちゃんを、あいつら如きに好き放題される事が許せるか? 否だ。
ならば、俺がすべき事は?
俺の命に代えてでも二人を守り、最低でも逃がす事だ。しかし俺に出来るか?
俺は大丈夫だ、まだ頑張れる。
……ん?どうしたリュカちゃん、そんなに慌てて。
……え?今から妖精の国を助けに行くから手伝ってほしい?
ドレイクは、強く決意した