勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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前回までのあらすじ

最早ゲマの手下A,Bどころじゃなくなった感のある、ジャミとゴンズとの最期の決戦。


33

 

 

 白銀の巨竜の状態のまま、ジャミとゴンズの2匹と相対するドレイク。

 互いの眼光がぶつかり合う張りつめた空気を破ったのは、ゴンズ……ではなくジャミからであった。

 

 

「往くぞぉぉっ!!」

 

 

 バギクロスを唱えた瞬間、パンプアップした脚の筋肉に蓄えた力を解き放ったジャミは、触れるモノ全てを切り刻む暴風と共にドレイクへ突進する。

 大地を抉り、遠巻きに観戦していたグレイトドラゴンの巨体すらも揺らがせる暴風、しかしその暴風の流れをジャミは完璧に御しきり、踏み込みと暴風による加速によって瞬間的に移動したかのように巨竜の足元へ飛び込むと。

 翼をはためかせ退避する暇すらドレイクへ与える事なく、数えて八つの前脚の蹄による連撃を……一撃一撃に渾身の力を込めて叩きつける。

 

 その一撃はドレイクの強靭な竜鱗を以ってすら衝撃を徹し、ドレイクは三撃目まで叩き込まれながらも咆哮と共にジャミめがけて剛腕を振り下ろす。

 キラーマシンのブルーメタルの装甲すらも、濡れ紙のように引き裂くその一撃を、既に連撃を放つ体勢になっていたジャミに避ける術はなく、故にジャミは無理やり上体を逸らしながら残りの5連撃を振り下ろされる鉤爪めがけて連射。

 無理な体勢で放ったソレは、ドレイクの竜鱗に罅を穿った時よりも弱くなるも、致死の一撃であった鉤爪を剛腕ごと止めるには十分であった。

 

 

「クソいてぇぞオイ!随分と鍛えたようだな、ジャミぃ!!」

 

「雪辱を晴らすのだ、このぐらいはせんとなぁ! ソレに、私だけに気を向けてよいのか?」

 

 

 鉤爪と蹄を交差させながら、巨竜と白馬の魔物が視線で火花を散らせ合いながら、互いを称賛すると共に。

 ジャミの言葉に、ジャミを蹴り転がしながらドレイクが視線を上げれば、デモンズタワーの時よりも一回り体を筋肉で膨張させたゴンズが愛用の蛮剣を振りかざしながら、今にも巨竜の頭部を切り砕こうとしていた。

 

 ドレイクとゴンズの視線が刹那の間交差し、次の瞬間ドレイクは飛びのくのではなく。

 翼をはためかせながら、意識と体を加速させ……ついでにジャミを踏み潰そうと踏み込みながら、今にも斬りかかろうとしていたゴンズを頭突きで迎撃。

 ゴンズは鈍い呻き声を吐きながら勢いよく吹き飛び、踏み潰されかけたジャミは体を丸めて側転しながら回避。しかしその瞬間をドレイクは見逃さず。

 

 再度翼をはためかせて空へ浮き上がると、ゴンズとジャミめがけて灼熱の炎を吐きながら、無数に作り出した光球で2匹めがけて一斉射撃を叩き込む。

 迫りくる灼熱の炎、それに対してジャミは凍える吹雪……ではなく、輝く息を膝立ちのような姿勢をとりながら放つと共に。

 襲い来る光球を、ゴンズがその肉体からは想像できない程に軽やかな剣技と、盾捌きで徹底的に捌き切る。

 

 

 先手を打って、必殺と言えるコンビネーションを放ったが見事に逆撃を加えられたジャミとゴンズ。

 そして、仕留めるまでは行かないにしても、痛手を与えられる筈だった攻勢を見事に凌がれたドレイク。

 

 互いが互いを全力で殺そうとし、遠慮も情けも無用の闘い。

 しかし、彼らは互いに、牙を見せながら獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 

「やるじゃねぇか!今度はコイツを食らいなぁ!!」

 

「はんっ!やってみやがれ!」

 

 

 ゴンズは愉快そうにゲラゲラと笑いながら、盾を構えて力を溜めながら後方へ飛びのくと。

 特に合図を出す事もなく、ジャミの前脚の蹄にその短く太い足を乗せ、ジャミが全力で蹄を振りぬいた瞬間溜めたバネを解き放つことでバリスタの矢のごとき勢いで、ドレイクへと殺到する。

 早すぎる突進、しかしあまりにも見え見えなその軌道を放っておくドレイクではなく、意識と体を加速させたまま巨体を回転させ、その巨大な尻尾で打ち返そうとする、だが。

 

 尾撃が直撃する瞬間、ゴンズは狙い通りだと言わんばかりに牙をむき出しにして笑うと、愛用の盾で迫りくる尾撃による衝撃を受け流し。

 驚愕に目を見開くドレイクと目を合わせながら、射出された勢いのまま体を回転させ、盾を砕く事と引き換えにドレイクの尻尾に深い切り傷を刻み込む。

 

 

「あいったぁぁぁ?! この野郎!!」

 

「ぎょえーーー!?」

 

 

 竜鱗を切り裂かれ、夥しい血を流しながら懐へ飛び込んできた辺りで失速した、隙だらけのゴンズを全力で鉤爪で大地へとドレイクは叩き落とし。

 悲鳴を上げながら叩き落とされたゴンズを、巨竜は全力で踏み潰す。

 

 しかし、鍛え抜かれたゴンズの体はそれらを受けても命を落とす事はなく、決して軽くないダメージを食らいながらもゴンズは剛腕で踏み潰そうとするドレイクの足を掴み、荒く鼻息を噴き出しながら耐えきる。

 一瞬の膠着状態、その隙をすかさずゴンズを救う為ではないと自らに言い聞かせながら、ジャミがバギクロスの暴風と共にドレイクへ突進。

 ジャミという暴風と脚力のバネによって射出された肉弾は、ゴンズとの力比べに集中していたドレイクの胴体に見事直撃し、ドレイクの巨体を一瞬浮かせることに成功する。

 

 

「へへ、助かったぜジャミ」

 

「お前の為ではない」

 

「仲良くなってんなぁ、お前ら……!」

 

 

 口から血を吐きながら愉快そうに笑い礼を言うゴンズの言葉に、ジャミが心から不本意そうに吐き捨てる。

 そんな2匹の様子に、軽くない傷を負わされたドレイクは自らにホイミをかけて簡単に止血をしながら、半眼で呟いた。

 

 確実に決着をつけるならば、ドレイクは上空へ飛び上がり徹底的に遠距離から2匹へ攻撃を与えれば、そう苦戦する事なく倒せたかもしれない。

 だがしかし、少年時代からの顔見知りである2匹との決着をつけるのに、そんな野暮な事をドレイクはしたくなかったのだ。

 故にこそ、一匹の白銀の巨竜と、一組の魔物達は真正面からの殴り合いを続ける。

 

 

 互いの始まりは悪意によるモノで、今までも悪意による繋がりが彼らを繋いでいたのは確かだ。

 だがそれでも、確かに彼らの間にも絆は存在したのだ。彼ら自身は全力で否定したのだとしても。

 

 ゴンズが両手で蛮剣を振るっては巨竜の鱗を切り裂き、お返しとばかりにドレイクはゴンズを両手で鷲掴みにしたまま大地へと叩き付け。

 大地に半身が埋まったゴンズへトドメを刺そうとドレイクが大きく息を吸い込めば、メラゾーマとバギクロスを時間差で放ったジャミが業火交じりの暴風をドレイクへ叩きつける。

 かつて、ドレイクの家族達がドレイクを取り戻すべく行った闘いの時よりも、ある意味において苛烈なドレイクの攻撃。

 

 それらを時に真正面から食らい、時に受け流しながらも2匹の魔物は一歩たりとも引く事は無かった。

 観戦をしている魔物達に、ドレイクへの一斉射撃をするよう呼びかければまた変わったかもしれない、だが彼らもまたそのような無粋な真似をするつもりはなかったのだ。

 例え、この戦いの果てに命を落とすとしても。

 

 

 

 そして、長く楽しい時間は、とうとう終わりの時を迎える。

 

 

「へへへ……もう腕がうごきゃしねぇ、ジャミ。そっちはどうだ?」

 

「似たようなものだ、だが。悪くないなゴンズ」

 

 

 ドレイクの灼熱の息の前に左腕を翳したゴンズの左腕と左半身は、もはや炭化し今にも崩れ落ちそうになっており。

 右手に至っては、ドレイクの顎によって噛み千切られた事で、肩から先が既に失われていた。

 

 そしてジャミもまた、幾度もドレイクの竜鱗へ叩きつけてきた蹄は粉々に砕け散っており。

 その全身には、幾度も踏み潰され光球を叩きつけられた事による、無数の傷跡が刻まれていた。

 

 だがそれでも、彼らの顔には悲愴な感情は欠片たりとも存在していなかった。

 

 

「ジャミ、ゴンズ。お前達は確かに強かったよ……」

 

 

 全身にジャミとゴンズから刻まれた傷跡を残しながらも、両足で大地を踏みしめているドレイクは。

 心からの賞賛を2匹の魔物へと送り。その言葉にジャミとゴンズは偉そうなこと言ってんじゃねぇ、とゲラゲラ笑いながら返しながらも。満更でもなさそうな表情を浮かべていた。

 

 

「なぁ、ジャミ、ゴンズ……本当に降る気はないのか?」

 

「お前は俺達を馬鹿にしてんのか?俺達みてーのはな、殺し合いがなきゃ生きていけない魔物だってのはおめーが一番知ってるだろうが。ドレイク」

 

「その通りだ、それにな……私達の主はゲマ様ただ御一人。ソレを違える気は永劫無いのだよ」

 

 

 ゲラゲラ笑いながら返すゴンズに、気取った調子を崩すことなく答えたジャミの言葉に。

 ドレイクは顔を歪めながらも、覚悟を決めると傷だらけの翼を広げ、体内で複数の力を織り上げ混ぜ合わせ始める。

 

 

「そうだドレイク、それで良い……」

 

「へっ、アイツ泣きそうな顔してやがらぁ」

 

 

 己が放てる最大限の攻撃によって葬る事で、せめてもの賛辞を与えようとしているドレイクの心情を、奇妙な事に2匹の魔物は苦笑いしながらもはっきりと感じ取ると。

 ドレイクが咆哮と共に放った、極光のブレスが齎す身も心も光の中へ解き消えて逝くような感覚を感じながら、魔物らしからぬ穏やかな気持ちのまま……。

 

 

 

 

 2匹の魔物は、光の中へ消えて逝った。

 

 その後響いた傷だらけの白銀の巨竜の咆哮は、果たして勝利の雄叫びか。

 はたまた、強敵であった友を自ら殺した事に対する、嘆きの雄叫びか。

 

 この時の心情を、ドレイクは未来永劫語る事は無かったゆえに、真実を知る者は巨竜以外には存在していなかった。

 




誰だお前状態の、ジャミ&ゴンズ。退場です。

今だから言えますが、本作は原作DQ5で影が薄かったり非業な結末を迎えたキャラクターを何とかしたい、と言う裏目標がありました。
ゴンズ、ジャミageはその流れの一環です。
イブールも、主人公に若い頃因縁を持たせて存在感を出しつつ、無残に殺されて手駒Cに終わるという結末を変えたり……。
ポッと出であるが故に、ラマダに妙な属性をつけたりしたのもその一環でした。

残るはマーサ義母さん救出と、ミルドラース爆砕を残すのみ。

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