勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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前回までのあらすじ

ドレイク人間に戻る


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サンタローズ北  〇日

 

 

 解脱し、コメントに困る状態のイブールから命のリングも受け取ったので、後腐れなく魔界に殴り込みに行く……その前に。

 リュカ達と子供達を連れて、母が眠るサンタローズ北の生家へと立ち寄る。

 

 目的は二つあり、一つは無事戻れたことの母への報告と。

 もう一つが、一族が守り続けてきた洞窟の踏破である。

 

 

 かつて昔、天空の勇者に打倒された進化の秘法に蝕まれし魔族の勇者、その人物が身に纏っていたモノが眠っているという封印の洞窟。

 その封印されているモノが故に、その魔族の勇者の末裔がエルヘブンに流れ着いてからも、エルヘブンの民と血を交り合わせながら……一族の身で、その洞窟の封印を守り抜いてきていた。

 しかし、母が他界した上に俺以外に母の血縁が存在しない以上、この洞窟に固執する理由も今となっては存在しない。そういう代物であった。

 

 

 名前すら残されていない魔族の勇者の世間に伝わっている末路は、天空の勇者と導かれし者達によって打倒されたというのが通説なのだが。

 どうやら、何かしらの奇跡によって彼の想い人と共に蘇り、ひっそりと血を繋いでいたらしい。書物にも残っていない、エルヘブンの長老らに聞いた話だからどこまで信憑性が高いかは疑問だがな。

 

 

 そんな事情のある、まぁ言ってみれば俺にとってご先祖様が使っていた装備、果たして使い物になるかどうかは横に置くとしても。

 長年、母を縛り付けていた役目を、俺達の手で終わらせるべきだと思ったのだ。

 

 結構な人数になってしまったが、オルテガは相変わらず俺を出迎えてくれた上に、また腕を上げた薬草茶を振る舞ってくれた。

 子供達がお婆ちゃん、俺の母はどんな人だったかしきりに尋ねてくるので、今日は妻達も交えて子供達に母とも思い出話を語る事にした。

 

 

 

 

サンタローズ北  ◇日

 

 

 面倒な仕掛けを乗り越え、洞窟の奥地に封印されていた王者のマントと呼ばれるご先祖様の秘宝を無事回収。

 ちなみに、天空の剣はレックスに継続して使わせ、俺は天空の剣を使う前に使用していた元皆殺しの剣を使う事にした。力任せに振り回しても折れたり破損したりしないし。

 

 奥に安置されていたそのマントは、長い時の流れを一切感じさせない、まるで新品のような誂えをしていた。

 形状としては、左肩に装着する棘付きの肩鎧と黒地の毛皮のマントのような厚手のしっかりとした作りをしており、スタンドから回収して羽織って見るとまるで自分の為に作られたかのように、非常にしっくりとくる作りをしていた。

 

 そして、子供達とリュカ達を伴い安置されていた部屋から出ようとした瞬間、背後から視線を感じたので振り返ったのだが。

 そこには、灰色の長髪をした目付きの悪い偉丈夫と、儚げな美貌を持つエルフの女性が……半透明のまるで幽霊のような状態でそこに立っていて。

 その目には、俺達を慈しむかのような優しい感情が籠っていた。

 

 

 安心してくれご先祖様、とりあえず俺が生きている間は何とかするからさ。

 しかしこう、我ながら思うのだが……マスタードラゴンを父に持ち、かつての魔王であった魔界の勇者の末裔を母に持つとか、どんな血筋なんだろう。

 自分で言うのも何だが、下手したら新たな魔王待ったなしだよな。いや、進化の秘法に蝕まれていたあの時がある意味その状態だったのか。

 

 

 

 

魔界  〇日

 

 

 準備を整え、炎のリングと水のリング、そして命のリングを……エルヘブンへ海路で向かう途中にある洞窟の祭壇に捧げ、魔界への道を開く。

 地上側では、未だマスタードラゴンに戻れないまでも神としての力を持つ親父と、エルヘブンの長老達が控えてゲートの監視と維持をしてくれるらしい。

 

 長老たち曰く、俺の母親を冷遇した末に孤独な生活をさせてしまった罪滅ぼしらしい。まぁ俺自身思うところがないワケでもないが、ソレがあったから母は親父に出会えたワケだから何とも言えないもどかしさよ。

 だから、まぁ。この戦いが終わったら関係者まとめて集めて派手にパーティをしようと俺から提案をする、資金は後で考えよう。

 ……アレ?考えてみたら、俺って戦う事しか碌にできないから。この戦い終わったら碌に金を稼ぐ手立て無くなるんじゃ……やめとこう、今は考えないでおこう。うん。 

 

 

 そんなワケで、リュカ配下の精鋭モンスター達と妻達、子供達にパパスさんを引き連れて魔界に俺達一行は乗り込む。

 ゲートをくぐった瞬間、一瞬視界が大きくブレたかと思った次の瞬間には、薄暗いどこかの祠へと到着していた。

 どうやらここが魔界らしく、全員が揃っているのを確認した上で祠から外へ出てみれば、空から穏やかで優しい声が俺達へ向かって語り掛けてきた。

 

 

 リュカとパパスの姿を見れて嬉しかった事や、リュカの子供まで見れるとは思っていなかった事。

 そして、母親として少々複雑ではあるけども、俺に対してリュカとパパスさん。そして子供達をよろしく頼むと声は語り。

 自分の命に代えてでも、ミルドラースは地上へは行かせないと。穏やかながらも強い決意に満ちた声で告げてくる。

 

 

 その言葉の内容にリュカとレックスは泣きそうな顔を浮かべ、二人を抱き寄せながら空に向かって俺が返答しようとした次の瞬間。

 パパスさんが空に向かって、必ず助け出してグランバニアへ連れ帰ると、だから安心して待っていろと叫んだ。

 

 パパスさんの言葉に、天からの声……マーサさんと思しき女性の声は何かを堪えるように言葉を詰まらせ。

 何かを言おうとするも、その声は言葉にならず、そしてようやく搾り出したかのような声は、助けて……あなた。と言う内容で。

 その言葉に、パパスさんはただ一言。任せろと力強く叫ぶ。

 

 パパスさんにとっては、長年追い求めてきた妻を取り戻せる大事な機会であり、ようやくたどり着いた場所なのだ。

 そりゃぁ、ここで我が身惜しさに帰る事は無いよなぁ。などと思いながら、天からマーサさんが送り届けてくれた賢者の石が、パパスさんの手の中に納まるのを見届けるのであった。

 

 

 

 

 

ジャハンナ  〇日

 

 

 昨日はそのままの勢いで魔王の居城へ吶喊、しようと思ったのだがパパスさんからストップがかかった。

 一刻一秒も惜しいのは事実だが、力任せに突撃して万が一があってはいけない。とのお言葉である。それもそうか。

 

 そんなわけで昨日は、祠から出た先にある平原でドラゴン形態になり、背中に家族達を乗せてジャハンナへ飛んだのであった。

 なお、道中で対空射撃やら呪文を撃ってきた魔物には、光球による無差別爆撃をお見舞いしてある。運がよかったら生きてるだろ。

 

 そして到着した先では厳戒態勢でしたとさ。そりゃそうだ。

 

 

 まぁ色々とすったもんだ在った末に、ジャハンナの街の門番に再就職していたラマダのとりなしで事なきを得たのであった。というかお前魔界におったんかい。

 若干人間っぽい姿になりつつあるラマダに、落ち着いたところで事情を聴いたのだが……。

 

 俺が理性をぶっ飛ばして、ゴンズとジャミとラマダの3匹をデモンズタワー頂上から叩き落とした後、ゲマから預かっていたキメラの翼で大神殿へ戻る……のではなく、3匹で魔界へ飛んだらしい。

 あの状況では大神殿に戻っても成す術もなく殲滅されそうだったのと、俺達と言う脅威を大魔王ミルドラースへ報告する為だったそうだが……。

 

 ミルドラースは、ゲマの献身というかとんでもないやらかしというか、ともあれその活動を一切省みるどころか、這う這うの体で報告に来た3匹に対して興味すら向けなかったらしい。

 目標を達成できなかったのだから当然なのだがな、と自嘲気味にラマダは笑うも。その言葉と態度にラマダは魔王軍から抜ける事を決意し、ジャハンナの街で門番の仕事をするようになったそうな。

 

 

 なお、ジャミとゴンズはエビルマウンテン入口で俺達を待っているらしい。

 ラマダが預かっている伝言曰く、最後の決着をつけよう。と言っていたそうだ。

 

 

 

 

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 いつも通りの、地上とは正反対に薄暗く辛気くせー魔界。

 しかし、今日ばかりはいつもとは違い、周囲がどよめいてやがる。

 

 

「ゴンズよ、来たな」

 

「ああ、来やがったみてーだな。ジャミ」

 

 

 遥か空の彼方から、白銀に光り輝く鱗を持つ巨竜が真っすぐこちらに向かって飛んできているのを見つけた相棒、ジャミが俺に囁き。

 俺は愛用の剣と盾を構えながら、応じる。

 

 

(そうだよなぁドレイク、てめぇがあの程度でこっち側に堕ちるわけねぇもんな)

 

 

 そんな事を考えながら、俺達が見ている先でドレイクが放った……俺達をデモンズタワーから叩き落とした光の球を大量に作り出して、行く手を阻む魔物達を片っ端から叩きのめして進んでくるドレイクは。

 俺達の目の前で翼を広げながら着地し、背中に載せていたアイツのガキや嫁を下ろしてから俺達を見下ろしてくる。

 

 

(つーかよぉ、俺が言うのも何だがお前嫁さん娶り過ぎじゃね?)

 

 

 そんな事を思いながらも、俺の心は歓喜に満たされていく。

 あの時のアイツとの闘いでは、俺達は成す術もなく叩きのめされた。

 故に、あのクソッタレな大魔王に頭を下げながら俺達は、魔界で鍛え直したのだ。俺達を見下してくる連中も無視して、必ず来ると思っていたアイツと再戦する為に。

 

 

「ドレイクよ、ここを通りたくば」

 

「俺達の屍を、越えていきやがれ!」

 

 

 怯えて縮こまっている、普段俺達を見下してくる連中を鼻で笑いながら、俺とジャミは白銀の巨竜となったドレイクの前に立ち塞がり。

 戦いの誘いをすれば、ドレイクはガキ共に何やら手出し無用とか言いやがると、俺達へ向かって巨竜状態のまま一歩進み出た。

 

 

「クハハハハ!嬉しい事言ってくれんじゃねぇか! さぁ、徹底的にやり合おうぜぇ!」

 

「大魔王様に忠誠を真に誓うならばあの時、お前の妻を人質にでも取るべきだったんだろうがな……ここまで愉しい戦いを味わえるのならば、あの時の選択を私は後悔しない」

 

 

 

 

 

 さぁ始めようぜ、俺達の最期の大喧嘩をよぉ!!

 




捏造改変フルスロットルで、王者のマントについて改変しました。
ちなみにドレイクの装備は、ドラゴン形態時はドラゴラムした時にいずこかへ消えて、ドラゴラムが切れたらいずこから戻ってくる装備と同じ感じです。


そして、筆がノりにノったゴンズとジャミの集大成とも言える状態。
DQ5二次創作で、ここまで改変されまくったゴンズとジャミは他にいないのではなかろうか。


それと、今週末辺りに活動報告にて、ドレイクらの特技や呪文。後は装備についてのスペック出しをこっそり出す予定です。予定です。

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