勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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デボラさん登場回、だけど主人公視点においてあのデボラさんを再現する事の困難さよ。

それと、感想返信でちらほら書いてましたが、サンタローズ洞窟の天空の剣はパパスさんがグランバニアへ持ち帰ってます。


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ビスタ港→ポートセルミ ●日

 

 

 派手にビスタ港にて見送られた俺は現在、甲板から船員に借りた釣り竿で船べりから糸を垂らしている。

 考える事は主に、ここ最近慌ただしくて整理できていなかった今後の、ドラクエ5のストーリーの流れの確認だ。

 

 もはや原形を留めてないので、どこに何があり、どんなことが起こるのかを参考にする程度のモノでしかないが……。

 これから先、特に記憶が残っているのはルラフェンの町でのルーラ習得と、その先のサラボナの町にて結婚をする……いやまて結婚?

 ないわー、ヘンリエッタとマリアちゃんにあんな事言っておいて結婚に乗り出すとかないわー、親父以上のクソ野郎待ったなしだ。

 

 まぁ一旦とりあえず保留だ、それとポートセルミ南の農村で確か、少年時代にはぐれたベビーパンサーと合流、って待てちょっと待て。

 視線を横に向けてみれば、俺の釣果を期待してお座りしていたチロルとシャドウの2匹と目が合う。

 行く意味ないな、むしろコレ、ビスタ港から船が出るというから急いで乗船したけど、グランバニア行きの船が出るまで待てば良かったんじゃなかろうか。

 

 

 うん、やらかしたなコレ。リュカちゃんに会えたら謝ろう。

 

 

 追記 

 小魚数匹程度しか釣れなかった、どうやら俺に釣りは向いてないらしい。

 とりあえずチロルとシャドウへ渡したら、喜んでゴロゴロと鳴きながら食べてた。可愛い。

 

 

 

 

 

ポートセルミ 〇日

 

 

 一週間ほどをかけ、ポートセルミへ到着したのだが。

 船からチロルとシャドウを伴って降りたのだが、さすが港町とも言うべき繁盛っぷりに思わず驚く。

 

 港の職員にグランバニア行きの船が近々あるか聞いてみたが、俺がポートセルミへ向かう船に乗ってる間に出港してしまったそうなので、諦めてとりあえず港から外へ出る。

 チロルやシャドウの姿に道を行く人々がギョっとするが、行儀よくしている姿に安心するとそのまま歩き去っていく。

 いやぁ、本当にチロルとシャドウは良い子だよなぁ、なんて2匹へ視線を送るとシャドウの姿がない。いや待て、ほんの少しだぞ目を離したの。

 

 チロルに臭いを辿らせつつシャドウの名前を呼びながら探してみれば、屋台のような出店の前でお座りして香ばしい臭いを上げている……串刺しにされて焼かれている魚を爛々とした目付きで見上げていた。

 口元が引きつっている屋台の主人に詫びを入れ、シャドウを小脇に抱えて立ち去ろうとするも、にゃーにゃ―と懇願するように鳴いて魚をおねだりしてくるシャドウ。

 ぐるるる、と喉を鳴らしてチロルがシャドウを窘めるが、やだやだほしいの!と言わんばかりにじたばたと暴れるシャドウ。

 

 余り甘やかすなよと言わんばかりの背中の剣からの意思を感じるが、俺の弟であるホークの息子のシャドウは、言ってみれば甥っ子同然であり。伯父さんは甥っ子を甘やかすモノなのだ。

 内心で自分をそうやって理論武装しつつ、屋台のおっちゃんにゴールドを渡して3本の串焼き魚を買うと、チロルとシャドウが落ち着いて食べれそうな場所を探し。

 程よい具合に人通りが少なく、人目に付きにくそうな場所を見つかったのでそこでチロルとシャドウに魚を与える事にする。

 

 シャドウは喉をゴロゴロ鳴らしながら串焼き魚へ齧り付き、チロルは俺に申し訳なさそうな視線を送ってくるが気にするなと言って背中を撫でてやれば、ぐるると嬉しそうに喉を鳴らして息子同様焼き魚へ齧り付く。

 そんな2匹の様子に癒されつつ俺も魚へ齧りつき、パリっと焼けた皮の中から出てくるホクホクの白身に頬を緩める、割と食べれたら味に拘らない派だがコレは中々に絶品だ。

 考えても見たら、こうやってのんびりとしたのは中々に久しぶりなのかもしれないので、ルラフェンでルーラを習得出来たら少しばかりのんびりぶらり旅をするのも良いかもしれない。

 

 そんな事を考えてたら、男女がなんか揉めてる声が聞こえた。言ってる傍からコレかよ。

 思わず神へ呪いの言葉を投げかけつつ、俺の分を食べたそうに物欲しそうにしてたシャドウへ齧りかけの魚を渡し、チロルにシャドウを見ておくよう頼んで野次馬をしに行く俺。

 

 ひょっこりと覗き込んだそこでは、派手に黒い髪の毛を盛った中々にやんちゃしてる服装の美女が、荒くれちっくな男達に絡まれていた。

 どうも見た感じ、蹲って何かを抱えている農民っぽいおっさんを、美女が庇った事で揉めているっぽい。

 

 どうしたものかと思ったが、見てしまった以上放っておくのもどうかと思ったので、加勢する事にした。

 最初は野次馬根性でやってきた俺を追い払おうとすごんできた荒くれ達だったが、まぁ顔面を掴んで持ち上げて軽く力を込めてやれば謝ってくれたので解放したら逃げ出した。

 その後は平和的に済んで何よりだと頷き、美女へ後よろしくと片手を上げてチロル達のところへ戻ろうとしたのだが。

 

 何よアンタ、あんな事で私に恩を売ったつもり?とか美女に絡まれた。解せぬ。

 どうやら外見通りに気が強いはねっ返りだったみたいだ。まぁぱっと見た感じ細いなりに鍛えてる様子だから、あの程度一蹴出来たのは事実だろう。

 なので素直に、そりゃ悪い事をしたと謝って撤収しようとしたらぐぃっと襟首を掴まれる、何でも腹立つけど礼をしないのも失礼だから飯を奢ってくれるらしい。

 

 

 ついさっき屋台で魚を食ったばかりなのだが、美女の有無を言わさない口調にさっきまで庇われてたおっさんと共に酒場まで連行される俺なのであった。

 

  

 で、その後は、デボラと名乗った美女に半ば強引に拉致られつつ、おっさんを交えて飯を食ったのだが。

 まー……中々に強烈な美女であった、リュカちゃんやビアンカちゃん、ヘンリエッタやマリアちゃんとも違う初めて会うタイプの女だ。

 それで、軽く自己紹介しつつ明らかに良いとこの身なりをしてるデボラが何であんな所に居たか聞いたところ、どうやら彼女は普段はサラボナで両親と最近帰ってきた妹と共に住んでいるらしいが。

 幼少の頃に、誘拐されそうになった自分を庇い、そのまま行方不明になった護衛の人の行方を捜しているらしい。

 

 サラボナに居たままでは情報が集まらない事に業を煮やしたんだとか、やだこの娘中々にアグレッシブだわ。

 ただ、うーん、どうもオルテガが話してた令嬢と情報一致率っぷりが半端ないんだよなぁ。

 そう思って、オルテガから聞いた話を幾つか聞いてみたら、反応が露骨に変化。どうやらビンゴだったらしい。

 

 ちなみにその後、物凄い勢いでどこでその話を誰に聞いたと迫られた、やだ怖い。

 まぁまぁ落ち着けとデボラを宥めつつ、まぁ色々あって人前に出られない姿になってたけど元気に俺の故郷で生きてるよと伝えると共に。

 アイツも、自分が守った令嬢が無事だったかどうか気にしてたよと伝えてやると。良かった、と小さく呟いて手元のワインを一気飲みし、今日は気分が良いから何でも奢るわとお大尽宣言をする。

 既におごりと言う名目で連れて来られたのだが、とは言わない程度には俺も空気を読む事にした。

 

 

 

 

 

カボチ村 〇日

 

 

 昨日はあの後、デボラに庇われていたおっさんに話を聞いて宿に泊まったのだが。

 俺とチロル、そしてシャドウは今おっさんとデボラと共にポートセルミから南にある、カボチ村へ向かっていた。

 

 なんでも、最近村の西の洞窟にタチの悪い山賊が住み着き、最初は食料を、その次はゴールドを、そしてとうとう女を要求してきたらしい。

 このままでは、山賊に搾取され続けた末に干殺しにされてしまうと、おっさんは村長の命令と蓄えを抱えて村を助けてくれる戦士をポートセルミに探しに来たんだとか。

 その結果、大事に抱えていた包みを荒くれに狙われ、そしてあの場面に繋がったらしい。このおっさん呪われてるんだろうか。

 普段の俺ならまぁ、手助けするかどうかと言われれば正直微妙な案件だが、これも贖罪になるのだとしたらやる価値はあると思い、引き受ける事にしたわけだ。

 

 ちなみにデボラは、アンタが行くのならついてくわ。と言い出して強引についてきた。

 何でも、護衛の人ことオルテガの所へ案内させるまで死なれたら困るかららしい、清々しいまでにゴーイングマイウェイである。

 

 しかし、俺はしばらく故郷に帰る気はない事を伝えてついてこられても無駄足になるぞと伝えたのだが……デボラはあっそう。でもまぁアンタ面白そうだしついてくわとの事である、ソレでいいのかお嬢様。

 オルテガはきっと、こんな具合で振り回されていたんだろうなぁと思わず遠い目をしていると、腹の立つ事考えている気がするという言葉と共にデボラにケツを蹴られた。痛い!

 

 

 そうやってる間も歩を進め、日が傾きかけた頃ようやくカボチ村へ到着したのだが。

 丁度、結構な数の山賊達が村の入口で何かをがなり立てていた、お前らみたいな人種ほんとどこにでも居るんだな。少しは種籾を奪うんじゃなく育てる事考えろよ。

 

 何アレ、さいってー。と呟くデボラに、蒼褪めるおっさん。

 とりあえず、チロルとシャドウに二人の護衛を頼みつつ、ホークの剣へ手をかけつつピオリムを発動。

 そのまま走り出し、加速した意識と身体の速度で頭と思われる山賊の顔面へ、蹴り砕かない程度に手加減した飛び蹴りを叩き込んだ。

 

 シン、と静まり返る空気、そりゃそうだいきなり見知らぬ男が飛び蹴り叩き込んできたら誰だってビックリするわな。

 しかし、山賊達が我に返るのを待つ義理もないので、飛び蹴り一発で白目を剥いて伸びている頭らしき山賊の喉元へ、引き抜いたホークの剣の刃を当てて俺は山賊達へ告げる。

 お前らの頭の命が惜しければ、武器を捨てて投降しろと。

 

 

 何故か山賊達から人でなしだとか、鬼だとか、お前の血は何色だぁ!とか叫ばれるが関係ない、むしろ不意打ちで首を斬り飛ばさなかったことを感謝してもらいたいと返したら。

 物凄い勢いで山賊達はドン引きし、慌てて武器を投げ捨てて投降を始める。ふっ、勝ったな。

 

 

 

 

 そんな事やってたら、ピオリム発動した俺並の踏み込みで走ってきたデボラに、良い具合に体重のノった踵落としを叩き込まれた。解せぬ。

 

 

 

 

カボチ村 ×日

 

 

 あの後、食料やゴールドの強奪のみで人命等の略奪まではしていなかった山賊団がどうなったかというと。

 昨日の騒動の後、別の農民の青年がポートセルミへ走り、そこに常駐している衛兵らによって引っ立てられていった。

 

 ちなみに俺はその時、デボラに正座をさせられ説教を受けていた。解せぬ。

 内容は手段を考えろだとか、いきなりあんな事をする奴がいるかというモノだった。

 なので、適当に蹴散らして山賊をアジトへに落ち延びさせた後、煙攻めしなかっただけ褒めてほしいと主張したところ。

 正座したままの俺の脳天に、デボラの踵落としが刺さった。痛い。 

 

 そんな感じにグダグダであったが、カボチ村の村長はゴールドを正座させられたままの俺に渡そうとしていたが、村の立て直しや万が一の蓄えとして重要っぽいから断ろうとしたら。

 デボラに更に説教された、こう言うものを断るのは互いにとって良くないからしっかり受け取れと。この娘さんしっかりしてるのだわ。

 

 ところで、そろそろ正座止めていいですか?今朝からずっと続けてて足の感覚がそろそろないのですが。 

 

 

 あ、こら止めろシャドウ!足にじゃれつくな! 

 

 

 

 

ポートセルミ ■日

 

 

 あの後カボチ村へもう一泊して歓待を受けた後、デボラを伴ってポートセルミへ戻ったのだが。

 なんだか、町の様子がおかしい。魔物の襲撃だとかそういうモノではなさそうだが、なんか妙にざわざわしてる。

 

 そんな事を思いつつ、ひそひそと注目されている事に首を傾げつつ……。

 まだついてくるデボラにいつまでついてくんだよ等と聞きつつ、酒場兼宿屋の扉をくぐったら。

 

 バニーガールのお姉ちゃんがこの前踊ってた壇上で、吟遊詩人が何か詠ってた。珍しい事もあるもんだ。

 だがこう、詩の中にラインハットだとか聞こえて注意を向けると……柔光包む繚乱の聖女だとか、剣鞭交差す救国の姫なんだのと言った背筋が痒くなるワードに。

 トドメとばかりに、舞い降りし邪竜の聖騎士が魔物が化けし太后を討ち滅ぼしただとか聞こえてきた。

 

 思わず真顔になった俺は、そっと気配を消しつつ宿の部屋を取ろうとしたのだが、ぐいっと袖を引かれてつんのめってそちらを見てみれば。

 ニタリ、という表現がぴたりと合う笑みをデボラが浮かべており、すぅと息を吸い込むと。

 

 わざわざ大きな声で俺の名を呼びながら、何を飲むとか聞いてきやがった。このアマぁぁぁぁぁぁぁ?!

 

 酒場の喧騒が、時を止めたかのように静まり、一斉に酒場に集まっていた人々の目が俺へ向く。ついでにデボラはそっと離れていた、覚えてろよ!?

 その後は、顔も知らないおっさんや姉ちゃん、バニーガールにもみくちゃにされながら、飲めや歌えやの大騒ぎになった。

 

 

 思わずチロルとシャドウへ視線で助けを乞うと、2匹ともデボラとお嬢さん方にもふられ倒し身動きが取れていなかった。

 その後はどんどん酒を飲まされた後、とりあえずふらついた足取りで取った部屋へ入り、倒れるようにベッドに横になった事しか覚えてない。

 

 

 

 

 

ポートセルミ ♪日

 

 

 二日酔いと吐き気出呻きつつ起き上がり、ふらつきながら酒場でキンキンに冷えた水を呷りつつぐったりするのみであった。

 デボラがけたけた笑いながら昨晩はお楽しみだったみたいねー、などと言ってきたので恨みがましい目を向けてやるも、どこ吹く風と言った様子で流される。

 

 そのままテーブルに突っ伏してたのだが、二日酔いに効くわよという言葉と共に、デボラが何かのドリンクを置いてきたのでのろのろと手を伸ばしてグラスの中身を呷る。

 正直旅立ちどころじゃないけど、昨日の騒ぎから外に出るのが幾分おっかないので今日は部屋に引きこもってるか、などと考えていたら。

 

 隣に座ったデボラが、何あったか知らないけど、辛気臭い顔するぐらいなら人助けなんてしない方がいいわよ。と告げられた。

 どう言う事だと聞き返せば、自覚ないの?などと呆れられた。解せぬ。

 

 アンタ、相当無理してない?とも聞かれた、最近はむしろ自分に言い聞かせる事なく頑張れてると思うのだが、と素直に返せば大きなため息を吐かれた。

 体のあちこちから、何かが千切れたかのような音立てながら走り出す事を当たり前のようにする時点で、自分が無理をしていると自覚しなさい。と頭をはたかれた、二日酔いの相手にする行為じゃないと思う。

 

 少しは自分勝手に、頑張らない事を覚える事ね。なんて言いながら、言いたいことを言って満足したのか手をヒラヒラ振りながらデボラは店を出ていった。

 

 

 

 そんなに無理をしている自覚はないし大丈夫なんだがなぁ、まだ出来る事があるから最大限頑張ってるだけだし。

 

 

 ……だけど、なんでこんなに心に刺さってるんだろ?

 




デボラさん「アイツの恩人みたいだし、まっ。このぐらい発破かけてやっても損はないわよね」
自分の美貌と親の財産目当てにすり寄ってくる男ばかりを見てきた女性の観察眼は、鋭いのだ。
デボラ感覚では、そこそこ好感度高い故にびしばし指摘してくるデボラさんなのであった。
(興味がない相手には、リメイクDQ6の隠しダンジョンの時みたいにガチで辛辣なタイプの人)

Q.あれ?半竜形態じゃないと変態ピオリム出来ないんじゃないの?
A.筋断裂や身体への負荷と引き換えに、ワンアクション程度なら従来と同様人間形態でも制御できます。ゲーム的にはHP2割ぐらい使う感じ。
次回の日記で出すのですが、今回デボラに辛気臭い顔とか言われたりしてる原因です。


【今日のリュカちゃん】
「ポートセルミの船は、まだかぁ……」
「坊ちゃんが乗った船が行ったばかりですからな、しばらくお時間がかかりそうです」
「じゃあ、ちょっとこの辺りの魔物お友達にしていこっと」
「……あの、お嬢様?まだ増やされるのですか?」
空を飛べる子たくさんお友達になるといいなー、なんてリュカちゃんは思ってるそうです。

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