勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある?   作:社畜のきなこ餅

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11改稿後、一気に文章をアウトプットするのであった。
11話は主に、ドレイクが二人を食ったところを大きく変更しております。
ですので、改稿前のみしか見られていない場合、今回の話は若干話が繋がらないかもしれません。
本当に、申し訳ない。


12

サンタローズ北 〇日

 

 

 オルテガは俺達を家の中へ迎え入れてくれると、すぐに薬草茶を準備し俺達へ出してくれた。

 ヨシュアはへびておとこが甲斐甲斐しく家事をしてる姿に何やら考え込んでいるが、とりあえず細かい事は気にせずお茶を啜る事にしたらしい。

 本当にすまないオルテガ、10年近くほったらかしにして……え?気にしないでほしい?出来た男やで……。

 

 ヘンリエッタとマリアちゃんは、俺の生家が物珍しいのか家の中へ視線を巡らせている。

 ちょっと魔境気味な環境下にあるぐらいが取り柄の普通の家なんだけどなぁ、などと思いつつ。薬草茶を準備しているオルテガへ声をかける。

 

 内容は、ホークとチロルの行方である。オルテガは知らないチロルについてはベビーパンサーの女の子だとも伝えた。

 俺の言葉にオルテガは僅かに動きを止めると、ホークとチロルというキラーパンサーならば主人の部屋に居ますよ。と教えてくれた。

 その時のオルテガの声は、若干震えていた。嫌な予感が俺の中を走る。

 

 その予感が嘘であることを願いつつ俺は席を立ち、子供の頃に比べて幾分か小さく感じる家の中を歩き。

 10年以上立ち入ってなかった自室の扉の前で立ち止まると、大きく深呼吸してその扉を開ける。

 

 部屋の中は殆どあの頃と変化がなく、ホークは部屋の中央付近にあるホーク専用クッションの上で身を丸めるようにして瞳を閉じていており。

 大きく成長したチロルがホークを守るかのように、ホークに寄り添い寝そべっていて……暗い灰色の毛並みをしたベビーパンサーが、チロルの尻尾にじゃれついていた。

 子供の頃はチロルより体が大きかったホークが良くチロルをその羽根で包むように、良く一緒に昼寝をしていたものだが……。

 

 今のホークには体の大きさ以上に、それができない理由があった。

 想い出の中の姿に比べその体は確かに大きくなっていたが、かつて俺の目の前でゲマに握り潰された片翼は半分ほどの長さになっていた。

 思わずホークの名を小さく呼ぶ俺の言葉に、ホークは閉じていた瞳をゆっくりと開けると、俺の顔を見てクルルと嬉しそうに鳴く。

 

 

 俺とホークの声にようやく俺の存在に気付いたチロルもまた嬉しそうな鳴き声を上げ、チロルの尻尾にじゃれついていたベビーパンサーは警戒するようにホークの後ろへ隠れる。

 優しい家族の風景、しかしホークの姿は俺から見てもとても弱々しいものだった。

 

 

 茫然とする俺に、様子を見に来たであろうオルテガがゆっくりと説明を始める。

 10年前のあの日、ホークは血塗れになり片翼を握り潰された状態でありながら、チロルをその足に掴みよたよたとこの家へ逃げ込んできたらしい。

 本来のホークならば多少疲れる程度で平気な距離だが、あの激戦による疲労と負傷を抱えたホークには、その無茶は回復魔法すら効かないほどの後遺症をホークへ遺した。

 

 時を追うごとにホークは弱っていった、チロルが時折ホークを労りオルテガを率先して手伝ったそうだ。

 オルテガの話では、いつもチロルはホークを気遣うように傍にいたらしく、そしてある日チロルの胎が大きくなり始めていたらしい。

 もしかするとホークは、自分がもう長くない事を知っていたのかもしれない、とオルテガは呟く。

 

 知らない内に嫁さんと子供までこさえた兄弟分。そして10年近くほったらかしにしていた俺を見て、嬉しそうに鳴いてくれたホーク。

 俺は気が付いたら跪き、羽毛に隠れて目立たなかったがやせ細っていたホークの体を抱きしめる。

 遅くなってごめん、待たせてごめんと。込みあがる嗚咽を耐えながら呟く俺を、心配すんなよと言いたいかのように嘴で俺の首筋をホークは擦てくる。

 

 そして。

 ホークは、まるで嫁さんと子供を頼む、と言わんばかりに小さく鳴いて、俺の腕の中で静かに息を引き取った。

 子供の頃から、母が居た頃からこの家で共に育ち、たまにケンカし、そして其の度に仲直りしていた兄弟が。共に育った家で死んでしまった。

 

 灰色のベビーパンサーが、縋るように父親であろうホークに顔をぐりぐりと擦り付け、それでも反応がない事に何かを察したのか。悲痛な鳴き声を上げ。

 チロルもまた、耐え切れなかったのかホークの亡骸へ寄り添いながら、押し殺すように声にならない鳴き声を上げた。

 

 

 

 俺の目から涙は出なかった。

 

 

 

 俺は大丈夫だ、まだ頑張れる。

 

 

 

 

 

サンタローズ北 ◇日

 

 

 ヨシュアとオルテガに手伝ってもらい、母の墓標の隣にホークが収まった棺を埋めるための穴を掘り、そして棺を穴の中へ納める。

 灰色のベビーパンサーが、父親の埋葬を止めようと俺に必死に噛みついてでも止めようとしてくる。

 

 この子はきっと、父親の死を受け入れられないのであろう、あの時にあっさりと受け入れてしまった俺と違って。

 棺へ土を被せる手を止めて屈み、灰色のベビーパンサーへ手を差し出す。そして噛まれるが、気にすることなくもう片方の手で灰色のベビーパンサーを撫でて語り掛ける。

 

 お前のお父さんは凄いヤツだったんだぞと、頭もよくて強くてカッコイイ、俺の自慢の弟だったんだと。

 言葉が通じているかどうかは関係なかった、俺はこの兄弟が遺した忘れ形見に自慢したかったんだ。俺の兄弟はとても凄いヤツだったんだって。

 そして謝りたかった、俺があの時ゲマとの闘いでホークに無理をさせたせいで、父子が過ごせていた筈の時間を奪っていたことに。

 

 俺の言葉に灰色のベビーパンサーは、噛んでいた俺の手を離すと血にまみれた俺の手を舐めて離れ、母であろうチロルに縋るように身を寄り添える。

 俺はそんな二匹を見届けてから、ホークの埋葬を再開し……。

 

 

 ほどなくしてホークの棺は土に埋まり。埋葬している間にヘンリエッタとマリアちゃんが用意してくれたらしい十字架を、墓標の上に立てて……祈る。

 今まで傍にいてくれてありがとう、

 そして、すまないと、歯を食い縛りながら祈った。その次の瞬間。

 

 

 ホークの墓標から飛び出してきた光輝く球体が、俺の顔面に直撃した。

 そしてその球体は……なんだその体たらくとしょぼくれたツラはと言わんばかりに俺の周囲を飛び回り。

 まるでやらかした俺を、ホークが突っついてきた時のようにがしがしと俺の頭にぶつかってくる。

 

 

 思わずどよめき、臨戦態勢に入るオルテガとヨシュア、そして球体に顔面を打たれのけぞった俺に駆け寄ってくるヘンリエッタとマリアちゃん。

 だけど、俺は尻もちをついた姿勢のまま、球体に打たれた顔を摩りながら、何故か確信ともいえる気持ちと共にその球体へ……ホークと茫然としたまま語り掛ける。

 

 語り掛けられた球体は、まるでそれ以外の何に見えると言わんばかりに光を明滅させて激しく自己主張すると。

 俺が背中に背負ったままの皆殺しの剣改の柄頭へ、何度もぶつかり……まるで剣を掲げろと言わんばかりの行動を取ってくる。

 

 何も言葉を発していない筈なのに、言葉を交わす以上に分かりやすく感情を伝えてくるホークの魂に俺は困惑したまま剣を抜いて両手に持って掲げると。

 球体は一度俺から離れてチロルと灰色のベビーパンサーの周りを、優しく明滅しながら飛んで回った後に、良くホークが空へ飛びあがっていた時のように上昇した後。

 俺が掲げた剣の、色褪せて光を失ったオーブへと飛び込み、掲げた剣ごと激しく輝き始め……光が収まった後、俺の手には先ほどまで掲げていたものとは大きく形を変えた剣が握られていた。

 

 柄の鍔部分に収められていた色褪せたオーブは、まるでホークの翼のように漆黒の輝きを放ち。鍔は広げられた黒い羽根のような意匠となり。

 握るもの、そしてソレを振るう相手に悪意を与えるかのようなその刀身は、まるで俺がかつて使っていた鋼の剣のような直刃の白刃へと変化していた。

 

 ああ、そうか。ホーク、お前はこんな俺が心配でしょうがなかったんだな、墓で寝てられないくらいに。

 ごめんな、もう置いていかないから。今度はずっと一緒だ、ホーク。

 

 

 

 

 

 

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 ホーク殿の魂によって、主人を堕落させる悪意に満ちた呪いの剣が目の前で変化し、亡き兄弟の遺志に静かに涙を流す主人。

 私は、その姿を……不謹慎ではあるが、とても美しいと思ってしまいました。

 

 ホーク殿はずっと主人を待っていました、もう何時その命の灯火が尽きてもおかしくない体を、ただその強い意志だけで繋いでいました。

 ですが、とうとうその戦いは報われたのですね、ホーク殿。

 それでも、死後も主人を放っておけなくて憑いて行くところにホーク殿らしさを感じずにはおられませんけども。

 

 

「……オルテガ様、ラインハットの方角からまた兵士に扮した魔物が東の海岸に接岸しました」

 

「いつも通り処理しなさいカンダタ。その様な些事、主人らには無用の事です」

 

「御意」

 

 

 音もなく現れ、私の背後から報告をしてきた配下のへびておとこからの報告に、不快さを隠し切れずに少々乱暴な指示を出してしまう。

 前にも兵士に扮した魔物が、ラインハットを治める太后様の為に働く栄誉を与えようなどと言っておりましたが、私の主人はドレイク様ただあの方のみです。

 あの方へ愛を捧げているらしいヘンリエッタ様にマリア様、それと主人を心から心配しているヨシュア様の願いならまぁ多少融通を利かせても良いと思えますが、それ以外など論外ですとも。

 

 主人は10年近く私を放っていたと申し訳なさそうに謝っておられましたが、あの時の私に手を差し伸べてくれたのは主人ただ一人。

 私が忠誠を捧げるには、それだけで十分なのです。

 

 

 

 

 

 あ、でもできればですけども、また旅に出られるであろう主人に私がかつて仕えていた方の行方を、ついでで良いので調べて頂きたいかもしれません。

 

 




ホーク「おめー相変わらずだな兄弟、心配だからついてってやるよ」
こんな感じです、生き別れた兄弟分とのほのぼのな再会ですね。所帯も持ってたし。
追記)配合的にはあばれうしどりとかキャットフライなんですが、展開優先で捻じ曲げました。




【今日のリュカちゃん劇場】
「お父さん」
「な、なんだリュカ。旅立ちは許可しないぞ?」
「ううん、焦っていて準備不足だったことに気付いたからそれはいいの。それより何かお兄ちゃんの事で隠してる事ない?」
「…………ないぞ?本当だぞ?」
なお、主にドレイク情報による原作知識と、彼の父親についての情報を隠してる模様。



というわけで、少し色々とやらかしましたが11話修正&12話をお届けできました。
活動報告ではみっともない愚痴を吐きましたが、作者は大丈夫ですまだ頑張れます。
モチベも持ち直したので、このまま毎日投稿往くぞオルァン!!

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