絆の軌跡   作:悪役

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初の自由行動日 旧校舎編 中編

「まだ二回目だけど、相も変わらず雰囲気がある校舎だよなぁ」

 

「そうだね……僕はこういう雰囲気があるの苦手なんだけどなぁ……」

 

「ふむ……ノルドの民が暮らしている所の近くにこういう雰囲気の遺跡があるからな。俺としてはある意味で慣れたものだな」

 

リィンが旧校舎の鍵を開けている間、俺、ガイウス、エリオットでつい旧校舎を見上げながら談話してしまう。

 

「これで魔獣が出なかったらデートスポットになりそうなものを……勿体ない。彼女の怯えた姿を守るのは男心を擽るものなのに……」

 

「あはは……でも、こういった旧校舎を恐れそうな女子はうちのクラスにいなさそうな……」

 

「二度目だからなぁ……一度目ならばある事ない事を言えばアリサとエマ辺りは何とかなりそうだと見る」

 

「ふむ……アリサはともかく委員長は難しそうだがな」

 

あっはっはっ、と青春を満喫していたところをリィンが鍵を開ける音で一先ず止める。

そして、当然旧校舎の中に入り

 

「うう~……やっぱり暗いなぁ……明かりくらいつけてくれたらいいのに……」

 

「そうだなぁ。俺もそう思うけど……暗かったら暗いだけ魔獣の発見と間合いの取り方が遅れるからな」

 

「暗いだけで精神が不安定になるというのもあるけどな」

 

リィンに同意し、それでようやく本命に入れる。

 

「それにしてもリィン……せめてもう一人バックを呼べなかったのか? これじゃあエリオットにかかる負担が高いチームになるだろうに」

 

「いや……一応、まぁ他のメンバーにも連絡を入れたんだけどラウラとフィーは繋がらないし……」

 

もしかしてあの二人はまだ追いかけっこを続けているのだろうか。

頑張れフィー。負けるなフィー。駄目だったときは黙祷はするから。

 

「ユーシスとマキアスは……」

 

「いや、それは確かに今の時点で二人、もしくは片方だけでも呼ぶのは下策というのはわかっている」

 

二人まとめて呼んだんなら険悪な雰囲気に。

逆に片方だけ呼んでそれでその事をもしも知られたらまた嫌な雰囲気にという悪連鎖になりかねん事くらいは理解している。

だが

 

「せめてエマ。良かったのならばアリサがいればいいんだが?」

 

「委員長は何故かARCUSの連絡が通じないし、アリサはその……俺が急だったから部活が……」

 

ああ、そうなるのか。

委員長はどうしてだろう、と思うが自由行動日なのだしどこかに行ってるのかもしれないと納得する。

そしてアリサは急な話だから部活があって来れないということなのだろう。

確かに初日……ではないのだがそれでもまだ一か月だ。

それなのに急に部活を抜け出すというのは確かに悪く見えるし、部活を蔑にしているようにも見える。

ならばこれも仕方がないのか。

 

「……というか一応聞きたかったのだけど。この中で集団戦を経験した人はいるのか?」

 

するとエリオットは当たり前だが他のメンバーも全員首を振るった。

 

「……リィンはまだわかるけどガイウスは驚いた。部族で集団で狩りをするとかはなかったのか?」

 

「いや、そういうのなら確かに経験はあるが……魔獣相手となると少し頼りない。だからないと思ってくれて構わない」

 

ふむ、となると俺だけなのか集団戦経験者は。

ならせめて要点だけでもエリオットに告げないといけないがポジション的に俺も知っているとは言えないからなぁ。

でも言わないといざという時は危ないから焼け石に水程度でも告げないといけないだろう。

 

 

 

 

 

 

そして、僕達は互いのオーブメントの状況や武器の状態を見ながらエリオットはレイに言われた事を反芻していた。

 

「いいか、エリオット?エリオットの位置は当然皆の背後。つまり戦う場合は殿の位置にいるのが普通だけど何故か解るか?」

 

「え? ええと……僕の能力や武器、技術が近接と相性が悪いから?」

 

「無論、それもある」

 

僕の戦法は基本、アーツを唱えて皆の後方支援であることくらいは初心者の僕でもそこは弁えていた。

勿論、魔導杖で多少の牽制は出来るかと問われれば出来るけどそれでも明らかに雀の涙程度の効力であることも理解している。

甲殻系なら効くかもしれないけどここにいるメンバーはそういうのを気にせず貫いたり切ったり潰したりするメンバーだから気にする必要がない。

 

……あれ? 僕の周り、少し人としてのランクを外している……?

 

それとも軍人はこれくらいが普通なのか。

恐ろしい世界観だ、と思うが気にしていたらストレスが溜まる。

 

「それと同時にまず一つ───一番逃げやすい位置だから仲間の危機を知らせる役目であるということが一つ」

 

「う、うん……でもそれって……」

 

「エリオット。見捨てるんじゃない。それにこのメンバーで太刀打ち出来ないんなら、それならやはり援軍に来てもらうっていうのは正しい選択肢だからな」

 

その場合、エリオット一人で旧校舎を踏破しないといけないけど、とさらっと凄い事を言うレイに冷や汗が流れるが真剣に言ってくれていると思って耳を傾ける。

 

「そしてもう一つ。これもさっきのと同等かそれ以上の役目だと言える───つまり周りを見回す指揮官の役目だな」

 

「し、指揮官!?」

 

それに関してだけは思わず叫んでしまう。

 

「い、いや! 僕、指揮官なんてそんなこと……」

 

「いやな、エリオット。俺も訓練を受けて一か月の人間にどんな無茶振りをしてんだよという自覚はあるんだけどやっぱり必然的にエリオットとエマ、他はマキアスとアリサか。そういったメンバーは指揮官のポジションにいてくれないと困るんだ」

 

何故なら

 

「俺達、前衛……もっと解りやすく言えば俺やリィン、ガイウス、ラウラは特に前に斬り込む事くらいが役目の一種の壁役と掃除役なんだ」

 

ユーシスはアーツ適性があるから下がる時もあるし、フィーも射撃することができるから俺達とは違う役目をすることも出来るけどなと間に挟みながら続きを告げる。

 

「そうなると俺達は前に出るから必然的にどう足掻いても視界は狭くなってしまうんだ。そりゃ多少の気配は読める。けど絶対じゃない。だから後ろから指示があるとかなりこっちとしては楽になるんだ」

 

「……えっとつまり皆を纏め上げろとかじゃなくて危機とかを見たら危ないって指示をしろって事?」

 

「そそ。そゆこと。まぁ、同時に自分の周りもちゃんと見て尚且つ他人のフォローもしなきゃいけないということなんだけど……」

 

途中言葉を濁したのは僕一人に明らかに荷を背負わせすぎだと思ったからなのだろうと思う。

つまり、こう言っているのだ。

誰よりも周りを注意深く警戒し、尚且つ仲間の状態も逐一見ながら更にはフォローし、そして自分も守り抜かなければいけないという。

正直に無茶苦茶だと思う。

ARCUSで普通よりも意思疎通がマシとはいえARCUSのリンクは基本コンビ限定だ。

全員に伝わるほどのリンクの繋がりはまだ一月だからないのだ。

勿論、プロの軍人ならそれくらい出来なきゃいけないかもしれない。

でも、士官学院入りをしたとはいえ僕はそれまでは普通の人生を歩んできたから戦いとかには縁が遠いしどれも荷が重い。

こうしてオーブメントとかの調子を見てみろとか装備の点検とか言われてもよくわからないのが実情だ。

勿論、授業で習った程度の事は出来るけど、手元が皆みたいに自信を持って操作しているわけではないことは周りを見ていたら理解できる。

皆には十分に素質があるとか度胸があるとかは言われているけど士官学院ではそれが当たり前のはずなのだ。

そういう素養で入ってきた人達ばかりなのだから。

 

「……何とかしなきゃ……」

 

周りには聞こえない声で呟く。

例え、自分が望まず入った学院だったかもしれないとはいえやはり自分で選んだ学院だ。

そこで自分がただ足手纏いで生きるというのは怠惰だろう。

頑張ろう、そう思いオーブメントを確認しながら思った。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

装備を確認、さぁ行こうかという事になり俺達は今回は前回の出口を入り口として入り、調査開始であるという所を最初の一歩で狂わされている最中であった、とガイウスは思う。

 

「まさか部屋が縮むとはな……」

 

自分達があの石の魔獣と対峙した部屋は少なくともあの魔獣と自分達が動き回るだけの部屋の広さがあったはずなのに明らかに今の部屋は縮んでいた。

 

「しかもご丁寧に模様替えもしているようだぜ」

 

レイの示唆を聞いて視線を変えると確かに自分達が来た方を入り口にするならば出口の方に見覚えのない石の扉が出来ていた。

どれもこれもまるで最初からそうであったかのように存在を出張している。

これでは自分達の記憶が最初からおかしかったと思いたくなる。

 

「で、でも! こんな事って有り得るの!?」

 

「それが有り得るんだよなぁ、こんなミラクル」

 

エリオットの目の前の物を否定したくなる言動に更に否定を入れたのはレイであった。

それに驚き思わず皆でどういう事だ、と問い詰めると

 

「これと同じ現象にはあった事はないけど規模はともかく同レベルのモノならあったことがある───ある程度予想していると思うが古代ゼムリア文明と暗黒時代の遺産だな」

 

逆にどうしてそんな場所と縁があるんだ、と思うがそれはまだ早いと何度もクラスメイト相手に思った事を内心で再び思い返して話に加わる。

 

「確か……古代遺物(アーティファクト)だったか」

 

「ああ。そういう系の類はな。何があってもおかしくないじゃなくて何かあっても普通だ(・・・・・・・・・)って感じの御伽噺のタイプの悪夢だかんな。部屋が縮むとか模様替えとかあっても気にしてたら禿る」

 

「順応早いな……」

 

リィンのツッコミに同意しつつ、しかしそのまま終わるわけにはいかなかった。

今回の件は旧校舎の調査であって驚くことではない。

 

「どうする、リィン? 一度引き返して報告するというのあるが」

 

「魔獣もうろついているようだしな。気配から察すると俺達よりは格下みたいだけど」

 

「気配で強さって計れるんだ……?」

 

落ち込んだ風に言うエリオットに対して内心で大丈夫だ、と思う。

大丈夫、エリオットも何時か感じ取れるようになる。

なったらどうなるかは知らないが。

 

「……俺達の目的は旧校舎の調査だ。疑問が増えたのならば尚更に解明する手掛かりが欲しい。だからこのメンバーで行けるところまで行こう」

 

「了解した」

 

「うう……やっぱりだよね」

 

「ま、気楽に行こうぜ」

 

リィンの決定に誰も否定せず各々武器を握って階段を下りる。

出来れば今回は何事もなければいいのだが。

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああああ!?」

 

「エリオット! 後ろを見るな!」

 

「何かデジャブを感じる遣り取りだなぁ……」

 

レイのしみじみとした声は無視して俺はエリオットに激励をしてガイウスは殿を務めてもらっている。

後ろには集団……といっても大体10体くらいだろうか。

それくらいの集団がこちらを追いかけている。

台詞を宛てるなら「肉、置いてけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」だろうか。

この旧校舎に入る人間は何かに追われる宿命なのだろうか。

解せぬ。

とりあえず数が多いのでノリで逃げてしまったのだが

 

……このメンバーなら勝てない事はない、くらいかな。

 

リィンは後ろから来る魔獣に対して冷静に戦力差を測ってアクシデントを除けば勝てるだろうとは思っている。

だが、その場合の問題は体力だ。

俺とガイウスとレイは多分大丈夫だからいいとしてエリオットはまだ訓練して日が浅い。

この地下もまだどれだけの広さがあるのか知らないのだから余計な戦いはしない方がいいから逃げ回っているのだがこれでは結局体力を消費してしまう。

やはり仕掛けるか、と内心で作戦を決めようと思っていたところにレイが懐から何かを取り出すのを目撃してしまう。

 

「……ってレイ。それは……」

 

「おうよ。このままじゃあジリ貧だろ? ───おいエリオット! ガイウス! 目と耳を閉じとけよ!」

 

二人の返事を聞くまでもなくレイはそれを後ろの魔獣に投擲する。

慌てて目と耳を塞ぐ。

避けろと言わないのならあれは爆発する方のではなく

 

閃光手榴弾だ……!

 

思った内容が背後で証明される。

 

「……!」

 

エリオットの悲鳴らしきものが聞こえるが耳と目を塞いでいるせいで言葉が聞こえない。

だがそれと同時に背後の魔獣らしいものの呻き声も音として聞こえたので効果は抜群だったらしい。

魔獣と言えども俺達人間と同じで五感はある。つまり、人間が効く攻撃は魔獣も効くのだ。まぁ、中には目とかあるのか? って感じの魔獣もいるのだが効くのだからあるのだろう。

とりあえずこの光と音がある間にスピードを若干速めて後ろの魔獣から距離を取り一分くらいしてようやく足を止めた。

 

「つ、疲れた……」

 

「……今の所後ろから追撃はないようだ」

 

エリオットが膝に手を着きガイウスは後ろを警戒するのを見て安心の息を吐く。

見たところ前方にも魔獣はいないらしく、何か意味深なドアがある。

近くには余り見覚えのない回復装置と……何か意味不明な置物がある。

まぁ、遺跡みたいな校舎だからそういうものもあるのだろうとは思うが、それにしても

 

「……レイ。お前、どうしてあんなの持ってたんだ?」

 

「物々交換。お蔭でクオーツとセピスしょっ引かれた……」

 

悔しそうに言われても俺にはどうしようもないのだが、と思うがつまり真面目に言う気はないという事なのだろう。

まぁ、このクラスは色々と隠し事が多い人間が多いからなぁ、と思う。

例外はそれこそガイウスとラウラくらいだろう。

あの二人は二人で素直すぎる気もするのだが。

余程素敵な両親やら周りに育てられたのだろう。いやまぁ、アリサやエリオット、委員長とかもある意味素直なのだが。

ちなみにひねくれ担当はマキアスとユーシスである。

隠し事担当はレイとフィーとサラ教官だろうか。

 

……まぁ、俺も人のことをとやかく言える立場じゃないしな。

 

内心で苦笑を漏らしながらもう一度周りを見回す。

 

「……見たところあのドアの奥が最後の部屋か……?」

 

「今の所奥に魔獣やら何やらの気配はなさそうだがな……」

 

「風も今は落ち着いている。後ろから魔獣も来る気配はなさそうだ」

 

「と、という事はそこを調べたら終わり?」

 

いきなりの終了宣言に流石に全員呆気なさを感じる。

確かにレイやガイウスの言うように奥の部屋からは魔獣の気配は今の所何も感じない。

つまり、奥の部屋はただの部屋だけかもしくは何かの仕掛けがあるのかの二択だ。

だが、仕掛けというのは普通人の意志によって張られるもの……と言いたいところなのだがこんな摩訶不思議建物で普通を説けるはずがない。

必然的に後手に回るしかないか、と息を吐き回復装置に向かう。

 

「で? どうすんだリーダー?」

 

「誰がリーダーだ……とりあえず一応回復してからあの部屋を見回りに行こう」

 

何事もなければそれで良し。

何事かあったら対応する。

それが一番の最善だろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

レイ達がドアを開いた先は何も変哲が無い広場であった。

結構な広場で講堂まではいかないかもしれないが、ちょっと動き回るには適しているくらいには広い場所ではあったが───逆に言えばそれ以外は何も無かった。

 

「……何かスイッチとか隠し階段とかがあるとかねぇかね?」

 

「ふむ……風は流れていないところを見ると隠し部屋とかは恐らくないと思われる」

 

ガイウスの風発言は信用性があるので、隠し部屋云々はないと見た方がいい。

なら、スイッチなどで何かが起こるとかはあるかな、と思いもう一度危険なものがないかを確認してから四散した。

 

「……そっち何かあるかーーー?」

 

「こっちには今のところ何も無いけど……」

 

「こっちもだ」

 

「右に同じく……どうやらただの広いだけの部屋みたいだ」

 

全員が離れながらも視線を合わしてアイコンタクトをする。

つまり───これで終わりかという。

呆気ないとはやはり思うが、こんなもので終わる遺跡なのだろうかと思ってしまう。

地下の構造が丸っきり変わったくせに最後の最後まで何もない?

終点に何かがあると思い込むのは人間の悪い癖なのかもしれないが……もしくはここが終点ではないか。

 

「……途中で何か見逃したかもしれないな」

 

「レイもそう思うか。俺も同意見だ」

 

「え? でも……そんな所あったっけ?」

 

「まぁ、途中から魔獣に追われてたから見逃したかもしれないと言われたらそうかもしれないが……」

 

ガイウスとエリオットの言いたいことも解る───ずばりそんな場所はなかったと思っているからだ。

追われていたからこそ周りを見回すことは疎かにしなかった。

細かいところはと言われたら流石に頷けないが、それでもこの地下はそこまで広くはなかったのだから無い可能性が高い。

あるとすればそれこそ隠し部屋か。

だが、そうなるとあの魔物の集団の追撃を受けつつ隠し部屋を探さなければいけない。不可能とは言わないが時間と人数が足りない。

手詰まり感に全員でうーーんと唸りながら考え込むが意味は当然ない。

こりゃ今日はここまでかねぇ、と思っていると視界が何故か勝手に動いた。

 

「……?」

 

視界は広場の中央。

そこには丁度エリオットが考え込んで立っている場所でありそれこそそれ以外は何もない場所である。

何もない……何もないのだが───酷く気になる。

 

───瞬間、右手が発熱した。

 

「エリオットォォォォォ!! そこから逃げろ!!」

 

突然の俺の叫びに全員が唖然とした───それがいけなかった。

何故ならエリオットの背後の空間がいきなり光りだしたのを後回しにしてしまったからだ。

最早一切の猶予はない。

だから迷わず俺はエリオットの所に突っ走り本人を蹴り飛ばし───何かによって勢いよく弾かれた。

 

 

 

 

 

 

え……? と思ったが間抜けと言われるが勘弁してほしい。

だっていきなりクラスメイトから突き飛ばされたと思ったら何故かその突き飛ばした本人が自分よりも勢いよく弾き飛ばされて壁を壊した光景を見たのだから。

過程と原因が全く繋がらない意味不明に混乱が生まれ───

 

「エリオット!」

 

倒れている自分をガイウスが引っ張ってようやく混乱が生まれる原因を肉眼で見たことによって把握した。

 

「ま、魔獣……!?」

 

最初の感想で言えば悪魔……というよりは何かデーモンという名前が似合いそうな大きな魔獣。

見た目のみでいえば完璧なパワーファイターっぽくそれが手を振るっている所を見るとああ、あれがレイを吹っ飛ばしたんだな、とかなり他人事に思った。

 

「ミノスデーモンか……!」

 

ああ……やっぱりデーモンって名前が付くんだとそこまで考えようやく思考能力を取り戻す。

 

「レ、レイは!?」

 

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

吹っ飛んだ方向から一瞬で悲鳴の返事が聞こえたので余裕ありそうなので大丈夫なのだろう。

というかあんな勢いで壁にぶつかって痛いって叫ぶだけで済むのだろうか人間は。

鍛えたら種族を止めれる種族って人間の特権なのかなぁ。

 

「レイ! 無事なら叫ぶのは後にしてリンク繋げ! 後で塩塗りこんでやるから!」

 

「リーダー! お前ってやつは! ちっ、まぁいいや! エリオット! 組むぞ!」

 

「え!? あ、うんわかった!!」

 

突如の申し出にびっくりしたが直ぐに条件反射でリンクを繋げる。

既にリィンとガイウスも繋げている。

目の前、普通に暮らしていた僕にとっては見たこともない巨大な魔獣だが周りの皆は恐怖を抱いている様子はない。

これが士官学院生。軍人の卵と言われるようなメンバーなのか。

そして、それは自分から見たらそうは思えないが、他人から見たら自分もそうなのだ。

 

だから頑張らないと……!

 

その想いに反応するかのように

 

「───!!」

 

魔獣の叫び声と共に進撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、長い間待たせてすいません……悪役です。
少し就職活動で忙しくなってしまって恐らく次回もまた時間を空けることになると思います。申し訳ない……

感想よろしくお願いします

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