絆の軌跡   作:悪役

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初の自由行動日 前編

「全くもっていい天気だなぁ……」

 

とレイは初めての自由行動日を満喫していた。

トールズ士官学院。そして特にⅦ組はカリキュラムがかなり厳しくなっている。

それ故にこの自由行動日という制度はいいな、と思う。

完全な休みというわけではないのだろうけど、その間に学校生活で足りなかったものを買いに行けるし、当然遊ぶこともできる。

レイはというと調査……と言えば不穏な言葉に聞こえるからトリスタの町と学校の散歩というのをしていた。

この町は基本狭いが、だからといって何もないというわけでは絶対ない。

学生が扱うような店はあるし、品揃えも基本悪くない。

だからそれに慣れる……というのも勿論あるのだがこれはもう昔……というか実家にいた時からの習慣だ。

初めてきた町は自分の足で歩いてその土地のことを知る。

それを習慣としてきた人の周りにいたものだし、親父が無理矢理色々な所に連れて行くから習慣という形で覚えてしまった。

だから実は特別オリエンテーリングが終わってほぼ直ぐに夜に街道なども出歩いて色々調べたのだ。フィーとサラ教官には気づかれたっぽいが。

そして色々と今も朝早くから出歩いていると色々出会うものなどもあり

 

「お?」

 

喫茶キルシェの前に知り合いがいるのも発見したりする。

 

「ん? ああ、レイか。珍しいな。何時も君は朝早く起きないくせに」

 

「そういう事もあるというものだよマキアス。こんな自由行動日に勉強するとは生真面目だなぁ」

 

「勉強は学生の基本だぞ。君も少しは励んだらどうだ」

 

ははは、と笑って流して勝手に相席する。

それにやれやれ、といった調子で首を振りながら勉強を続けようとしてコーヒーを飲んでいる所を見ながらふと見覚えのある物を見る。

 

「なんだ、マキアス。チェスでもやるのか?」

 

「あ……あ、ああ。父とよくやったものでね。僕もこれには少々自信と面白さがあるからな。暇な時にやるんだ」

 

ほぉ~、と思う。

するとマキアスも折角だからと思ったのか。ノートや教科書を閉じてチェス盤を指す。

 

「良かったら一回やってみないか?」

 

「いいのか? 俺は初心者だぜ?」

 

「ああ。勝ち負けは重要といえば重要だけど何もチェスはそれだけでやるものじゃないからな。相手が初心者でも楽しめたら十分だろ?」

 

「違いない」

 

よしっ、とマキアスも何だか楽しそうな表情を浮かべてチェスの用意をする。

俺もこれは長期戦になるな、と思いながら紅茶を注文する。

こういうのでは甘いものが必要だ。

 

「よしっ、じゃあ駒の動きから教えたほうがいいか?」

 

「いや。基本ルールは知っている。でも俺からだと自信がないから先手はそっちに譲る。」

 

「ふむ……よしわかった」

 

じゃあ、一丁やろうか、と指を鳴らしながらちょい思考を鋭くする。

 

 

 

 

 

 

 

 

リィンはトワ会長からの封筒を受け取りちょっとエリオットの部屋の掃除を手伝ってから外に出てさぁ依頼をがんばってこなすぞと思ってまずは学院に目指そうと思って歩いているとキルシェで難しい表情を浮かべている二人を見つけた。

マキアスとレイだ。

二人ともまるで激戦区の中で必死に生存方法を探す兵士みたいな顔つきであるものを見ている。

チェス盤だ。

その緊張ぶりに周りも二人の傍に集まっているのだが二人とも気にしていない。

思わず近くで見ていると盤面は物凄い攻撃と防御模様になっていた。

ぐちゃぐちゃ、というわけではなくむしろある種の陣形になっているのだが俺が一瞬見ただけでもどれかを動かせば何かが取られたり、キングを危険に晒しかねない。

凄い勝負になっている、と思わず驚く。

見るとどうやら今はマキアスの長考のターンみたいだ。

彼は盤面を見ながら必死に手段を先読みしている。

だからといってレイもその間にどこをどう攻めれば勝てるか、と必死に考えているようで彼も頭に手を付きながらじっと盤面を見ている。

思わず自分が何をしに行く所だったかを忘れて二人の取り巻きに混ざる。

そして数分後にマキアスがナイトを動かした。

その瞬間にレイは苦渋の顔になり約6分くらい考えに考え

 

「───参った」

 

降参の両手を上げた事によって全員が沈黙から大絶賛の声をマキアスに降り注いだ。

 

 

 

 

 

それから暫く、僕とレイはお客さんからも色々褒め称えられて嬉しいやら恥ずかしいやらと色々な思いをしてようやく公園のベンチの座っている。

リィンも何時から見ていたのか、ついでについてきていた。

 

「それにしても人が悪いな君は。明らかに初心者じゃなかったじゃないか」

 

「いやそれに関しては素直に悪いと思っている───がそうでもしないと勝てそうにないと思ったからな」

 

そう言われると僕が何かを言うと器量が狭いみたいで何も言えなくなるじゃないか。

ただ実力を評価されていたのは純粋に嬉しいのでつい顔を背けてしまう。

 

「それにしてもレイ。素人の俺が言うのもなんだけどまだ続けられていたんじゃないか? アレ」

 

「いや、それは確かに続けることは出来た。けどあと予想で後十数手すると雁字搦めにされて最後はチェックメイトだった。あそこに打たれなかったらまだ勝ちの芽はあったんだがなぁ……」

 

ああ、ちくしょう、と本気で悔しがっているのを見ると勝負事には本気になる性格はチェスでも出るみたいだ。

 

「それにしても見事だった……自慢するようで嫌だけどこれでも僕は地元では負け知らずだったんだけど……どうやらそれは捨てるべきだったようだ。クイーンの最強性に拘らずに全ての駒を利用するだけ利用していた……それにあれは何手くらい読んでいたんだ?」

 

「……四手。頑張って五手だな。それでも届かなかった所を見るとどうやらマキアスはもう少し読んでいたみたいだな。ちっくしょう……初戦だからここまでやれたのに次は難しいなぁ」

 

確かに、とマキアスは思う。

最初の方は手を抜いていた……というわけではないがやはり練習気分で挑んでいたのは否定できない。

試合のまだ前半の方に実力を見抜けていなかったら結果は逆だっただろう。

 

「誰とそんなにやってたんだ、レイは?」

 

「ああ。俺は親父がこういうの得意でな。チェスも戦闘も一緒。戦闘は読むものではなく支配するものが口癖な人間でな。お蔭で下手な物真似くらいは出来るようになったけど……親父ほどじゃねえなぁ。こういう理詰めなものでは」

 

つまり本人としては不得意な分野のつもりだったのか……!?

 

それでこの腕なら大したものだ。

 

「よかったらまた付き合ってくれないか、レイ。僕としてはそうしてくれたらうれしい」

 

「暇があったらな。じゃ、勉強を邪魔して悪かったな。リィンは?」

 

「ああ。俺は学院だ。生徒会の手伝いをしなきゃ……」

 

「お人好しな奴だなぁ」

 

二人して帰っていくのを見て僕は勉強も程々にしたからちょっと帰ってさっきの回想戦をしてレイが帰ってきたらもう一度挑むのも悪くないかも、と思い

 

「……あ」

 

そういえばごたごたで僕が彼の分の紅茶の会計を払っていたが、返してもらうのを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後に俺はリィンと校門で別れ、学院の散策をすることにした。

 

「と言っても……」

 

流石に学院の地理は頭に叩き込んだ。

つまり学院を歩いて何かあるかと言えば何もない。部活とかに入っていたのならばあるのだろうけどあんまり入る気がないから意味がない。

一応一通りは回って制覇したのだが、どれもピンとこなかったからそういう時は止めにするのが一番だと思い結局部には入らなかったのだ。

 

「う~~ん」

 

なら冷やかしにでも行こうか。

確かガイウスは美術部、エリオットは吹奏楽部、ラウラは水泳部、アリサがラクロス部だったか。マキアスとエマとユーシス、リィンはまだだったはず。

この中で行くとしたら水泳部は男が見に行くには論外過ぎる。

そんな勇者は結構いそうだが、流石に遠慮しよう。

となると他だがどれも冷やかしに行くには集中して邪魔になりそうだなぁと思う。

とりあえずうろうろとしていたら思考が纏まるだろうと思い、学生会館の前を通り過ぎようとすると

 

「む?」

 

荷物が学生会館から現れてきた。

違う。

荷物を持って小動物じみた少女が歩いてきた。

 

「あれは確か……トワ会長……だっけ?」

 

最初に出会った上級生……一応で後から情報収集したらそんな名前と役職を聞き、更には平民はおろか貴族生徒にまで支持されている稀有な人らしい。

見た目は荷物に押し潰されそうな小動物だが。

 

「というかあれじゃあ……」

 

落ちるだろ。

その結論を支持するかのように

 

「わわっ!?」

 

つるりと滑る我らが生徒会長。

思わず、ドーーン、とポーズをつけながら驚きを表ししつつそのまま駆け出した。

荷物はこけた拍子に上に投げ出している。

ならば、まずは後ろにこけそうなトワ会長の背を腕で持ち、そのまま

 

「え、えーーー!?」

 

一回転させる。

合気のように相手の体を上手いこと一回転させそのまま足から着地させる。

そしてそのままボケーと驚いている間に上から落ちてくる荷物を睨み

 

「ほほほほほほほい」

 

落ちてきた順に積み重ね、そして最後に一礼。

完璧だ。ちゃんと場の流れを読んでトワ会長も拍手している。

うんうん。

 

「では行きましょうかトワ会長」

 

「うんうん───ってび、びっくりしたーーーー!!?」

 

 

 

 

 

「あ、あはは……荷物、大丈夫? 持たせてごめんねレイ君」

 

「いえいえ。女性には紳士たれが帝国男子の基本ですから」

 

とりあえず驚きであわあわ駆け回るトワ会長を説得して職員室に向かう。

何でもサラ教官に頼まれた書類らしくそれって思わず生徒会長の仕事かと思うと本人は凄いキラキラしてお仕事頑張ったよーという事なのでワーカーホリックと内心で浮かべるだけにした。

 

「それにしてもさっきは凄かったね! まるでアンちゃんやクロウ君みたいな事……っていきなり二人の事を言ってもわかんないよ───」

 

「ああいえ。トワ会長と一緒のARCUSの試験をして今のⅦ組の原型みたいな事をした同級生の人ですよね。確かクロウ・アームブラスト先輩とアンゼリカ・ログナー先輩。そしてジョルジュ・ノーム先輩でしたよね?」

 

「……え!? ど、どうして知っているの?」

 

「いや、まぁ……職業病というか」

 

家や前までいた場所の習慣でつい情報を収集することをしてしまうのである。

というか最初はトワ会長のキーワードで言ってたら何時の間にか色々と武勇伝やら何やらを発掘してしまったのである。

主に保健室のベアトリクス先生と談笑していると出たものであった。

それにしても学院長といいベアトリクス先生といいサラ教官といいナイトハルト教官といい化け物クラスが多い士官学院だことである。

特に学院長とベアトリクス先生はマジやばい。

戦ったら百億%負けるしかない。

 

「あ、ドア開けるねー。壁に気を付けてねー」

 

そうこうしている間についたらしく職員室のドアに入る。

失礼します、とちゃんとお辞儀して入るトワ会長を礼儀正しいなぁ、と思わずほほえましいものを見る目で見てしまう。

これが娘を持った父親の心境というものだろうか。この年でそれはどうかと思うので振り払うが。

 

「あら、トワ。ありがと……ってレイじゃない? ……成程ね。昨日は上手く逃げたみたいだけど悪癖は抜けないみたいねぇ?」

 

「む……」

 

第一声から続く皮肉に何か返そうかとは思ったけど事実こうなっていることを言われたら何も言い返せない。

 

「もう一人の重心は簡単にいったけど君は難しいかなぁ、と思ってたんだけど……それもそうか。私達は基本自由的に動いて勝手にそんな風にやっちゃうから企みなんて余計だったか」

 

「……何を言われても今のところ否定できないですから甘んじて受けますけど、とりあえずトワ会長が何のことかわからないという表情でこっち向いたりそっち向いたりしていますから止めませんかね?」

 

正直可愛いが、抜け出さないと変質者になる覚悟を得てしまいそうである。

 

……そういえばトワ会長のファンサークルみたいなものが隠れであるみたいな噂があったような。

 

はは、まさかと思い荷物を置き、談笑している教官と会長を見つつ───ふと窓の方を見ると脈絡なく何故か窓の外にこちらを見ている女子生徒がいた。

 

「───」

 

「───」

 

思わず色々と停止してしまうが、あちらも驚いたのか一瞬止まった後にしかし笑顔になってこっちに手を振りながら去って行った。

手を振るときに何か木の筒みたいなものを持っていた。

そう───まるで吹き矢のような。

初の自由行動日にいきなりそんなターゲットにされるとは思ってもいなかった。

警戒心を高めておこう、とそう思った。

というかうちのクラスは奇跡的なものか狙ったのか。綺麗どころが集まりすぎているから既に平民、貴族生徒から微妙な妬みを受けつつあるのである。

他のメンバーはそういうのに疎いから必然俺一人胃を痛めることになる。

 

 

ああ……幸福(ストレス)が痛い……

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずトワ会長の手伝いを終え、では何をするか考える。

さっきまでは色々とイベントが続いてくれたからいい暇つぶしになってくれたが次からはそうもいくまい。

世の中暇つぶしに事欠かないとはいえそれはちゃんと探す努力もしていないと出ないものなのだ。

さて、次は友情イベントに向かうべきか。それともアクシデントを期待するべきか。

 

「よし。何となくガイウスの所に行ってみよう」

 

基本、適当が信条のレイであった。

 

 

 

 

 

 

「ん? ああ、レイか。よく来てくれたな」

 

「おう、暇つぶしで悪いが来させてもらったぜ」

 

美術室に行くとガイウスが丁度筆休めをしているところだったのか少し立ち上がって幾つか部室に飾っている絵を見ているところであった。

奥で部長らしき人がせっせと彫刻をしているのだが全くこっちを見ない。

そういう人なのだろう、と思いガイウスと一緒に絵を見る。

 

「……美しいな」

 

「……同感だ。こういう絵とか彫刻は俺には作れないけど綺麗だと思うな」

 

「レイも美術に興味が?」

 

「美術というよりそうだな……俺はこういう時が止まったような不変が好きなんだよ」

 

「ふむ……?」

 

意味不明な呟きと思われただろうと思ったけど気にしない。

芸術家の感性じゃなくて俺自身の感性での答えで言っているだけなのだから。

でも、こういう芸術も好きだがやはり自分が好きなのは完成された不変よりも日常という不確かな脆いものである。

何時壊れるか知らない。

否。

恐らく何よりも壊れやすいものだ。

それを誰もが気づいていないだけで些細なことで日常は崩れる。解りやすい例でいえば戦争などで。

戦争など一つの言葉、一つの銃弾だけで簡単に起きてしまうものなのだ。

それを思うとこうして日常を謳歌するということがどれ程貴重なものか。

命なんて儚い。銃弾やナイフ所か。手足もいらない。

最小な凶器かもしれないが言葉でも人は殺せる。

これだけ人の文化は進歩したのに命の儚さだけは永久不変の価値。

 

───故に俺はその一瞬一秒を全力燃焼で生きる。

 

無論、そんな風に生きても後悔は生まれる。

己の選択肢を後悔する日は必ずあるし、日々の澱みはこの身を蝕む。

そういえば何時か、親父が言ってたか。

 

常に全力は結構。だが、しかしそれを文字通り本当に実践してしまったのならばお前は一切自分に言い訳できない事になる。

それは───

 

止められた言葉を想像することは出来るがする必要はないだろう。

さて自分はこの時、何と答えたのだろうか……?

 

「レイ?」

 

「───あ? ああ何だガイウス」

 

「いや……さっきから心ここに在らずといった調子だったぞ」

 

深く考えすぎてしまったか。

折角、遊びに来たのにこれでは申し訳ない。

一度、頭を内心で叩きさっきまでの思考を脳内ゴミ箱に捨てながら何でもないと言ってまた普段通りに話す。

ガイウスもそんな調子で言われたからか、何も言わずに付き合ってくれたのは嬉しいことであった。

 

 

 

 

 

 

 

美術室でガイウスと一通り語り合い、流石にまた絵を描くことになったので俺はお暇して

 

 

「さて……本格的にやることが流石になくなってきたな……」

 

友情イベントにサプライズイベントはこなしたがここからが問題だ。

吹奏楽部に行こうかと思ったがさっき美術室から出て音楽室の前を通った時に演奏されていたので邪魔したら悪いと思って流石に入れなかった。

となると確実に学院にいると思われるのはアリサのラクロス部だがそれも邪魔をしたら悪いタイプだろう。

ふぅむ、と悩みながらとりあえず散歩するかと思い一回の中庭に繋がる扉を開けると

 

「お」

 

「む?」

 

「は?」

 

そこにはフィーとラウラがじりじりと間合いを狭め広げながら対峙しているという不思議な事をしている空間であった。

 

「………………何をやってんだお前ら?」

 

誰でなくても聞くであろう問いをフィーはラウラから一瞬たりとも目を離さないまま

 

「……ウォーモンガー、私を、狙っている」

 

「……非常にわかりやすい解説だなぁ」

 

と思ったが嫌な感じがしたので恐る恐るその感じを辿るとラウラの視線でありそのラウラの視線の内容がこちらを物凄い興味深いという男の意味なら大歓迎。ただしそれ以外ならノーサンキューの視線であり

 

「丁度よかった。レイ。そなたも私と模擬戦をしないか? 無論、全力の」

 

無論という辺りからドアを閉めて逃げようとし───俺からしたら右側にいるフィーの手には何時の間にかガンソードが握られておりその片方がこちらに向けられていた。

 

「……フィーちゃん? 何でそんなものをこっちに向けているのかな?」

 

「……男の人にちゃん付けされたのは初めてだけど囮が必要と思っただけ」

 

つまり死ねと言ってくる猫型少女に舌打ちしてしまう。

迂闊にドアを閉めようと手を動かそうとすればこの少女は問答無用で撃ってくる気配がある。

だが、逆に言えばそれをすれば今度はラウラがその間に詰めてフィーを拘束するかもしれないのだ。

そして更にラウラもフィーばかり見ていたら俺に逃げられる可能性がある。

硬直状態。

少しでも切っ掛けがあれば動けるのに切っ掛けによっては集中攻撃を受けて最悪な目に合う人間が出るかもしれない。

そしてそれは困るから全員動こうにも動けない。

切っ掛けを自分から作るのは不可能だ。

ならば起こすのは自分達ではなく第三者の手によるもので、そしてそれは唐突に来るものである。

 

「……!!」

 

それはARCUSの通信音であった。

恐らくはⅦ組のメンバーかサラ教官からの。というかそれくらいしか自分の番号とARCUSを持っている人間がいないからだ。

そしてそれは自分のものであり、そして当然全員がいきなりの音に驚きに目を見開け

 

「……ちっ!」

 

直ぐに振り払いドアを一気に閉める。

すると

 

「うっわ! 本当に撃ってきやがった……!?」

 

フィーの情け容赦のない射撃がドアを穿ち、窓を穿ち、壁を穿っていった。

必死に後ろに下がりながら頬に一瞬掠める弾丸があり心臓を止めそうになりながら逃げ

 

「……囮が逃げた……退散」

 

「いや、逃がさんぞフィー……!」

 

ラウラとフィーの声が聞こえて、そのまま足音と発射音と風切り音が続いてそのままどこかに行った。

 

「……助かった」

 

間違いなくこの連絡音で二人に隙が生まれなかったらラウラが諦めるまでずっと睨み合いをして一日が終わるところであった。

日頃の行いがいいからだな、と自分に納得をしてARCUSのカバーを手首の振りで開け、誰からだろう、と思い出てみると相手はリィンであり内容は

 

───旧校舎の調査の手伝いをしてくれないか? というものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい何とか今回は早めに投稿できました。
とりあえず自分にとっても初の自由行動日ですが基本、こんな感じでイベント進ませると思います。
他のキャラの視点で書くことも考えましたが、基本リィンを除けば全員部活動をしていますからそうなると全員が全員じゃありませんが部活で半分くらい消費されますからねぇ……かといってリィン視点だと原作と変わらないものになるので多分ですがリィンの視点を書くときはオリジナルのストーリーの時になると思います。
感想、よろしくお願いします!!

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