「はーーい! ウォーミングアップ終了って君達だらしないわねぇ~」
エマはその一言と共に膝を着いて息を乱している皆と一緒にへこたれた。
「まぁ、初日のアタシの授業だったらこんなものかしら。エリオットとエマはまぁ元からこういう訓練をしていなかったから仕方がないとしてマキアスとアリサはもう少し鍛える事ね」
「くっ……」
「しょ、精進します……」
膝を着きかねない程息を乱して必死に受け答えしている二人を見てぼうっとした頭でそれでも凄いですね、と普通に思う。
2人は確か護身術程度くらいしか武術は習ってなかったと聞いているのだが、それでこのサラ教官の扱きに耐えられるのは純粋に凄いと思う。
私とエリオットさんなんか息絶え絶えで動けないというのに。
ちなみに次の段階の人になると息は多少乱れ、汗もかいているが普通のランニング程度くらいに疲れているの人───と言ってもそういった人達が過半数なのですが。
「ん……リィン、それはスポーツドリンクか?」
「ああ。昔からこれが一番お気に入りで体によく効くんだ。良かったら飲むか?」
「ふむ……有難いが……リィンよ。流石に女子に口がついた飲み物を譲るのはどうかと思うぞ」
「あ、済まない……配慮が足りなかった」
「……お前はどうして女子に対してもそこまで明け透けなのだ」
リィンさん、ガイウスさん、ユーシスさん、ラウラさんのこのメンバー。
私達Ⅶ組の中でも主戦力クラスの人達……と言えばいいだろうか?
皆さん、こんなの日常茶飯事という感じでくつろいでいるのが非常に羨ましい。
あ、皆さんがこっちに来ました。
「大丈夫か? エリオット。委員長」
「急に体を止めるのは逆につらい。二人ともキツイと思うが少し歩いたほうがいい」
「は、はい……」
「う、うん……そ、それにしても……皆凄いなぁ」
「何、これも修練の結果で勝手に身に付くもの。エリオットもエマもその内慣れれば私達クラスになれる」
「それにだ。おかしいクラスの体力を持っているのが居るから自慢にならんな」
確かに……と思い全員で視線の先を見てみる。
そこには
「フィー……スタン十個を何と物々交換してくれる?」
「ん、そうだね……クオーツの攻撃2、回避2、後は何らかのレアクオーツを一つくれたらいいよ?」
「絶対に等価交換になってねえじゃねえか! レアクオーツは抜き。攻撃2と回避2だけ……!」
「じゃあ、代わりに各種セピス30くらいでどう?」
何だか楽しそうに意味不明な交渉をしている二人。
レイさんとフィーちゃん。
二人は本当に息も一切乱さないどころか汗も見れないという凄いを通り越して呆れてしまう体力を見せつけられて色々と困ってしまいます。
「く、くそ……あの二人にここまで差をつけられると悔しさを通り越して怒りを感じるな……!」
「それは負け犬の遠吠えだろ、副委員長殿」
「ふ、ふん。君にだけは言われたくないね。大層な家名の割には平民の二人に負けているじゃないか」
「家名が体力になるわけないだろうが、阿呆が」
険悪な雰囲気になりそうなところを誰かが仲裁するのはもうこの数日だけで何度も見てしまった光景であった。
そこで代わりに元気な二人に近づいたのはサラ教官であった。
「フィーはともかくレイも流石ね。お父さんに鍛えられた?」
「鍛えられたというより鍛えなきゃあのクソ親父のせいでどんだけ面倒な修羅場を潜らされたというか……」
「まぁ、そうじゃなきゃ君は二年前とかやばかったでしょ? 感謝はしているみたいだから何も言わないけどね。素直になるにはあの家庭じゃ無理か」
「勝手に結論出されて何を言えと。まぁ、二年前は諸に巻き込まれてやばかったのは事実ですけど。あれは傑作でしたねぇははは」
「ええ、それには全くもって同意だわ。ふふふ」
「二人とも意味なく笑うのはちょっと怖いかも」
何だか和やかから程遠い笑い話が聞こえてちょっと引いてしまう。
でも、それにしても
「レイさんってサラ教官のお知り合いなんでしょうか?」
「そんな感じがするわねぇ……以前聞いたら二人そろって笑顔で知らないとか言ってたけど見え見えよねぇ」
「フィーもフィーで何かを知っているように思えるな」
ラウラさんもやはり気にはなっていたようで三人を見つめる視線には興味……興味?
「うむ。サラ教官は当然だがレイとフィーにも近い内に挑みたいところだ」
「……」
バトルジャンキーという言葉が全員の脳内に響き渡った気がするがきっと気のせいでしょうと全員で思うことにした。
とりあえず、ようやく立ち上がれる程度に体力が回復してきてほっとついたところを狙ったようにサラ教官が手を叩いて集合を示す。
慌てて教官の所に皆整列して教官の言葉を待つ。
「はい、ご苦労さん。皆こんなものでしょう。エリオットとエマは落ち込まないようにね。二人は他のメンバーと違って下地が出来ていないだけだから一か月もしくは二か月くらいでこれくらい付いて来れるようになるわ。幸い二人とも度胸はあるみたいだしね」
「は、はいっ」
「ど、努力します」
「よろしい。アリサとマキアスはさっきも言ったように。リィン、ガイウス、ユーシス、ラウラに関しては予想通りいい動きをしているわ。この調子で精進しなさい」
「はい……!」
自分の授業のときは流石にサラ教官も真面目でいい先生ですね、と本気で思える。
普段はお酒や教頭先生によく怒られているのを見てしまうが、それだけの人ではないというのがこの授業風景を見れば改めて理解できる。
「レイとフィーに関しては可愛げがないわねぇ。もう少しはぁはぁ、ふぅふぅした方がこっちとしたら面白いというのに……」
「はぁはぁ(棒読み)」
「ふぅふぅ(棒読み)」
「こいつらだきゃあ……!」
ああ、サラ教官がキャラを壊して米神に怒りマークを……
二人ともこういう時は普通に手を組んで相手が誰であっても冗談を言うのだから困ったものである。
怖いもの知らずというのは恐ろしいという体現例ですね。
「……ま、いいわ。精々座学で二人は後で苦しんでいなさい」
「はぁはぁ……! ちっくしょう! 疲れちまったぜ!?」
「ふぅふぅ……もう駄目かもしれないね……」
「分かりやすいわねぇ、君達……というかプライドはないの?」
「プライドで自分が救われた覚えが余りないからなぁ……フィーはどうよ?」
「皆無」
なんだか凄い話を聞いているようで聞いていないように聞こえるのが凄い。
というかお二人は今までどんな生活をしていたのでしょうか……?
疑問には思うがプライベートな事なのでそっとするのが一番と思い改めてサラ教官の話に集中する。
「じゃ、初回ということで───皆には模擬戦をしてもらうわ」
「も、模擬戦!?」
「わ、私達がですが!?」
思わずエリオットさんと一緒に驚く。
何せ自分達の戦い方ではチームで戦わせてもらわなければまず勝てるような獲物と能力じゃないですし、何よりも周りのメンバーと違って戦闘方法なんて素人なのである。
これで自分達が何とか出来ると思うほど持てる自惚れが存在しないのである。
「心配しなくてもいいわよ。流石にエリオット、エマの二人にやらせる程鬼じゃないわ。後は……戦い方的にはアリサとマキアスだけど……どうする?」
「いえ、私はやらせてもらいます。折角なので」
「僕の方もそうさせてもらいます。流石に近づかれたら負けるだけという弱点は克服したいので」
「オッケー。と言っても最初は流石にアタシも全員の実力をこの目で一応確認しときたいから……よし。じゃあまずはリィンとレイ。君達二人がやりなさい」
「ほう?」
「へぇ?」
「ふむ」
「……面白い組み合わせだ」
ラウラさん、フィーちゃん、ガイウスさん、ユーシスさんの四人が四人同時に興味深いという感じで反応する。
指された二人はというとリィンさんは生真面目にはい! と返事をしていますし、レイさんは了解ーと頭の後ろで手を組んでフリースタイル。
緊張感がないというかいい風に言えば自然体。
悪い風に言えばやる気がないという感じなのだが
「じゃあ、サラ教官、一つ質問───ルールは?」
「基本、何でも有り。アーツは勿論、それ以外の武器、戦術、戦略。何でも。普通にただの戦闘だと思いなさい。ただし安全面を考慮していない攻撃は流石に止めなさい」
「ラジャー」
そうして彼はガントレットを着けた腕で肩を一度回し……ガントレット?
え……?
だってさっきまでは基礎訓練で装備は今回は着けずにでいいと言われていて本人も装備していなかった。
流石にあれが装備されていたら誰でも覚えている。
ならば何時の間にという思考をそのままに。
笑顔で彼はそのままリィンさんに殴りかかった。
レイは己が放った拳がどうなったかを悟った。
理由は手応え。
人間を殴る特有の肉を討つ感触はなく、物質……鉄を殴った手応え。
「反応良いな……!」
「そりゃどうも……!」
リィンが鞘から中頃まで抜刀をしてこちらの拳を防いだ姿であった。
「っかしいなぁ……本当ならばここでリィンが無様に受けてその後に卑怯だぞって言って───」
「戦いに卑怯もクソもないって言うつもりだったか?」
「……よくわかってるじゃないか」
普通にこういう奇襲をすれば非難されるくらいは覚悟していただけに拍子抜けだ。
というかどうしてお前は俺の考えを読めるんだ。
「……まぁいいや。おい、リィン。ちょっと仕切り直ししねえか?」
「ああ。いいな。だからお前が先に引けよ」
「いやいや、ここはお前が引けよって言ったら拉致が明かんから1、2の三でで仕切り直そうじゃねえか」
「いいぞ……じゃあ1!」
「2の!」
「「3!!」」
同時に剣と拳にオーブメントとお互いの技術によって培ったものが生まれる。
雷と炎。
属性は違うが、互いに威力としては絶大かつシンプルな衝撃が生まれ、鍔迫り合いの状態からそのまま触れ合い爆発する。
「ちっ……!」
「くっ……!」
お互い二メートルほど吹っ飛び着地するが、見たところリィンにダメージはそこまでないみたいだし俺も負傷はない。
ならば、先手必勝こそが一番の早道だと思い身に加速を叩き込む。
「おお……!」
瞬時に二メートルの間合いを詰めて拳の乱打で攻める。
リィンも避けるのが間に合わないと悟ったのか、剣を完全に鞘から抜き放ち防御に専念する。
右脇腹、左膝、顎、股間、頭頂部、鳩尾と左右の腕に左右の足も付け加えた連打をかますが全部リィンが辛うじてというレベルで防ぐ。
「くっ……! し、しつこいし、致命的な個所ばかり狙うな……!」
「うっせぇ! とっとと死ねーーーーー!!」
「模擬戦だぞ、これ!?」
引こうとするリィンに隙を見出し、足を一歩───リィンがおいていた左足を踏みつける。
「ぐっ!?」
足の甲というよりは指を踏みつけたから逃げるのは逆に困難。
しかも、指を踏みつけられるのは甲を踏みつけるよりも痛覚が鋭敏なので痛みで思考と動きが止まる。
これで止めか、と右腕を振り上げ───突然風が吹く。
「きゃっ……!?」
後ろの女子の悲鳴が聞こえたところで
「神風か……!?」
思わず後ろを振り向き、エデンを見ようとするが───見えない!?
「ちくしょう! 抑えるなんて卑怯だぞ!?」
「むしろあんたの頭が腐ってるのよ!」
女子全員からのブーイングに男子の渇望をわからないやつめと思わず思う。
見ろ、周りの男子は目を逸らそうとして釘づけではないか。
なぁ、とリィンに同意を取ろうとすると
「おや?」
リィンは何時の間にか俺の踏みつけ拘束から外れており、間合いを取っている。
それも刀ならば届くが、拳では届かないという絶妙な位置取りに。
「てめぇ……卑怯だぜ!」
「お前がだよ……!」
周りが叫ぶと同時にリィンが瞬発した。
「───二の型、疾風」
目の前からリィンがいなくなると同時にぞくりとした嫌な直感に従い、そのまま膝を曲げて避ける。
すると上の方によく見れば丁度俺の首があったと思われる場所に後ろに出現したリィンの刀が振るわれており、思わず
「殺す気かーー!?」
「ええい、黙って斬られろ……!」
お前、キャラ崩壊激しすぎないかと思うが手首を返してこっちに突き刺してこようとするので慌てて前転して逃げる。
最近の若者は余裕がない……
嘆かわしい問題だな、と思い立ち上がり、構えたところで止まる。
お互いに技を一部開放し、反応速度などは露見したがまだまだ手はお互いにあるという状況。
強いて言うならば
「どうしたよリィン少年? 息が荒れてるぜ?」
「……何のことかさっぱりだな?」
強がりがまだ言える時点で余裕って取ってやるべきか、それとも精一杯って取ってやるべきか。
まだ続けてもいいが、と思いサラ教官をちらっと見る。
サラ教官はこちらの視線にちゃんと気づき周りに見られないようにハンドサイン。
……もう少し攻めなさいねぇ
念には念をということなのだろう。
「しゃあねぇ……」
も少し、本気出す。
リィンはレイの気配が更に凄味が増したことを恐らく誰よりも感じていた。
本人の姿に何か変わりがあるとか、表情が変わったとかではない。
変わったのは気当たりだ。
「っ……」
プレッシャーに押されている。
わかっている。
さっきからレイの態度には余裕しかない。遊んでいるというわけではなく、からかっているなどというわけでもない。
純粋に実力差による余裕があるのだ。
レイとそしてフィーもそうだ。
二人の肉体は正直人間としては有り得ないレベルの練度で作られた一種の武器のような感じがする。
年齢とか、そういうのを無視してこちらの脳内にそういうものだと直接刷り込んでくるほどの強さ。
意思とは関係なく流れる汗もそれに同意してくれる。
そんな相手の感じが変わった。
つまり、これからは余裕を消してかかってくるという意味合いになる。
ああ───これはリィン・シュバルツァーが終ぞ到達できないと諦めた境地ではないか。
その生まれてしまった意識の空白に少年が反応した。
「───CP
すっ、とまるで本当に光のように消えた。
そして上から猛烈な気配と光を感じると思ったと同時にリィンの意識は消えた。
「……うっ」
己の呻きが耳を打ち、同時にそれが意識の目覚めと直結する。
「……くぁっ」
すると同時に全身の痛みが思い出したかのように体を蹂躙して痙攣する。
覚悟も何もしていない状態でこれはマジで辛いとのた打ち回ろうとしたところに。
「お、起きたかよ」
隣から聞き覚えなる……というかさっきまで戦っていたはずのレイの声が聞こえた。
「……つぁ!」
何故か知らないが意地が働いてそのまま一気に起き上がる。
当然、物凄い痛みが倍増して自分に襲い掛かってくるが歯を食いしばって耐える。
見るとここはまだグラウンドであり、保健室に連れられたかと思っていたが違うようだ。
というか正面でまだ他のメンバーが模擬戦をしている所を見ると気絶していた時間はそんなになかったらしい。
「あ! リィン! 気が付いたんだ!?」
「お怪我のほうが大丈夫でしょうか、リィンさん」
「起き上れるところを見ると深い怪我はないみたいだが」
そこに今は見学をしているところなのかエリオット、委員長、ガイウス、アリサが近づいてくる。
見ると模擬戦相手はラウラVSフィーとユーシスVSマキアスだ。
前者はともかく後者はサラ教官、わざとだろうと思うけど今はどうでもいいことだ。
「どうやら無事のようね……全く。レイ、あんたかなりえげつない攻撃して……もう少し加減をしたらどうなの?」
「おいおい、アリサ。これでも一応、加減はしたんだぜ? まぁ、そりゃあちょっとやり過ぎたとは思うけど……本気でかましたら一週間はベッドから起き上がれないし」
「凄かったよねぇ……僕の目からじゃあいきなりレイが空中から落雷のように落ちてきて遠く離れた僕達でも凄い衝撃を受けたもの」
「まぁ、レイもリィンに当てない様に技を放ったから結果的には衝撃だけで済んだから軽傷なのだろう。アレに当たると思うと少し震えそうだ」
「少しで済むんだガイウス……」
というか俺はそんな技を受けそうになっていたのか……。
いやまぁ、人のことは言えない技は幾つか持っているので責めることではないと思うが。
とりあえず今もアリサに叱られているレイに対して聞きたいことやら言いたいことがたくさんある。
「いや、完敗だよレイ……我流って前に聞いたけど凄い腕だ」
「まぁ、生活していた場所が場所なだけで色々巻き込まれるような場所だったからな。腕は嫌でも上がるわけよ。あ、言っとくけど猟兵だったからとかそんなんじゃないからな」
それは何となく解る。
猟兵みたいにミラと闘争の為の技術の割にはどちらかと言うと真向勝負向けの……簡単に言えばまだ実直性がある武道の動きだ。
そういったものとは少しレイの技術は違うと判断できる。
ならばどこでそんなに鍛えたんだよ、と思うがプライベードだしまだお互い話せる段階にはいないだろうと思いそこは頭の片隅に放り込んだ。
「……俺もまだまだだな」
「そうかな? お前の場合は何故かは知らないが何かを恐れているからこの結果のように思えるけど? だってお前───負ける寸前に自分に対して憤りと恐怖を覚えていただろ」
「───」
周りが疑問と沈黙に満ちるのを無視して思わずレイの顔を見る。
すると本人はにやり、と凄いいやらしい表情を浮かべて
「ちなみに適当に言っただけ」
「……あのなぁ」
「にししっ。もう少しポーカーフェイスの練習をしたほうがいいな。このクラスは何だかんだで素直過ぎるメンバーが集まりすぎだしな」
「ちょっとそれどういうことよ」
「ほほぅ? アリサはもう直ぐに表情が顔に出るし、エリオットなんか叩けばいい声で鳴いてくれるし、ガイウスは嘘がつけるような性格じゃなさそうだしエマなんか口が勝手に喋ってくれそうだし、ユーシスもガイウスと似た感じがするしマキアスなんて言わなくてもわかるよな? ラウラは開けっ広げが特徴みたいなものだしフィーは睡眠欲求に素直。いやぁ~ここまで純情メンバーばかりだと逆に将来が心配だなぁ、おい」
「くっ……!じゃ、じゃああんたはどうなのよ!?」
「実は俺……一度トールズの入学に落ちて再試験受けたから皆よりも一つ年上なんだ」
「え!? 本当!? 通りで授業中普通に寝てぐーたらして余裕をかましていると思ったら……」
「うん、嘘だけど」
「───ファイアボルト!」
数秒後に多少焦げたレイが水に濡れながら横で横たわった。
「……ふぅ。ボケるにも一苦労だ……」
「はは、まぁアリサはそこら辺簡単に信じそうだからね。僕が言うのもなんだけどアリサを狙い撃ちにしたからやられる事も覚悟の上だったんだよね?」
「ふふ……わわ、フィーちゃんとラウラさん凄い……! ああ……マキアスさんとユーシスさんはまるで本当の決闘みたいな感じに……」
「大丈夫だろうか、あの二人」
ガイウスの締めに同意するがサラ教官が見ているから大丈夫ではあると思う。
だけど今回の件で完璧に理解した。
やはりこのクラスの戦闘力トップランキングとなるとラウラ、フィー、そしてレイが入るということだ。
その後に俺、ガイウス、ユーシス。そしてそこから僅差でマキアス、アリサ。そしてエリオット、エマという感じだろう。
ただこのトップランキングも少し能力差が激しいかもしれないと思った。
ラウラは単純に鍛錬の量も質も高い。単純な戦闘というだけならばレイとフィーを勝るかもしれない。
ただ何となくだが多分フィーとレイは単純に経験の量がラウラをもっと上回っている気がする。
仮にフィーとレイがやり合ったらどうなると言われたら返答に困る。
今見えているラウラとフィーの模擬戦だけでも十分にフィーが強いのは理解できる。
理解できるが……ちらり、とラウラの方を見るとラウラの表情はあからさまに不満という表情が浮かび上がっていた。
となるとやはり、と言うべきだろう。彼女は手を抜いて戦っている。
しかし、逆に言えばそれでもラウラと対峙して負けていないという事になる。
手を抜いてラウラに競り負けていないと言うと最早練度というレベルだけならばその年齢と性別、小柄な体格という常識を度外視したおかしいレベルということになる。
ならフィーとレイが対峙した場合はどうなるだろう、と思う。
得物的にはフィーの方が有利かもしれない。
だが懐に入ればレイが勝利するかもしれない。
正直読めない。二人の全力を見た後ならばともかく実力の底が見えない二人に対して予測がつかない。
だからこそ自分が余計に井の中の蛙という事を理解する。
自分が強い、なんて幻想を抱いたことは一度だってない。
自分は老師───ユン・カーファイの元で修業し曲がりなりにも初伝を得れたが……得れてそれで終わりであった。
つまるところ、才の限界。
初伝を得れただけでも良しとするべきだ、という内心の声で常に同意している現状。
情けないの一言でしかない。
八葉一刀流の名を落とした弟子と言われても仕方がないことである。
だから仕方がない、と口でも言おうとして
「ああ、ちくしょう……」
───悔しいなぁ。
と口からは全く別の言葉を吐いて空に溶かした。
はいどうも少し時間を空けました。
今回は一応シリアスタイムの時間。
最初の体育の授業という感じのお題です。
今回はわかりやすくリィンにレイは勝ちましたが、チートなくらい強いというわけではないのでお気を付けを。
わかりやすく言えば本来の実力をレベルでやるとサラ教官をおそらく100越えしていると判断するとすればフィーとレイは40~から50くらいでリィンは25くらいと判断しているからです。
つまり、純粋なレベル1はエリオットくらいと自分は思っています。
エマが少し戦闘能力という点で謎ですから少しだけ高く見積もって7くらいですかねぇ
アリサは大体12、マキアスは15くらいですかね。
ラウラは29
ユーシスは20
ガイウスはリィンと同じという感じですね。
ゲームは当然全員の足並みが揃っていないとおかしいですからそうなりますけど現実問題になるとこんなくらいの差だと思います。
フィーはもう少し高く見積もっていいかもしれませんけど……シャーリィレベルくらいはあるんですかねぇ?
とりあえず今回も楽しんでいただければと思います。次回から本編……ですけど多分一気に自由行動日に飛ぶと思います。
何故ならその前日はそこまで改変する意味がないと思うので。
という事で感想よろしくお願いします!!
切実に……!