絆の軌跡   作:悪役

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第三学生寮の掃除 愉快編 後編

一撃必殺。

 

その四文字が脳内で反復する。

そして同時に出来るか、と自分への問いかけも無限ループされる。

そして答えは何時もこうだ。

出来るか? いや出来なくてはいけない。

出来なかったら───尊厳的に死ぬからだ。

 

「そっちにいったぞリィン!」

 

レイの指示と共に部屋の中を動き回っているGがこちらに迫ってきている。

 

「任せてくれ!」

 

こっちに迫ってくるGに向かってこっちから突進する。

だが、Gはまるで意識を持っているかのように急カーブ。真っ直ぐから俺からしたら左下斜めに変更され咄嗟に止まるために両足に力を込めるが

 

「くっ……!」

 

下がまだ掃除したてだからか、滑りそうになる。

やばい、と思う。

相手のGは少々の攻撃で爆発する特徴を持つ。問題はその攻撃がどこまでが有効範囲なのかがさっぱりわからないことだ。

触れる程度の攻撃だけなのか。それともGが攻撃と見なしたものだけが攻撃になるのか。

前者ならまだいい。

だが、後者ならば虫レベルの体躯しか持たないGからしたら俺達の行動全てが攻撃に見えてしまうんじゃないかと思うとぞっとする。

だからこそ必死に踏ん張ろうとするが踏ん張れば踏ん張るほど足が体を支え切れなくなり、結果

 

「くあっ」

 

足が地面から───離れない。

 

「無事か、リィン」

 

「ああ! 助かったガイウス!」

 

横から支えてくれた異国からの留学生に感謝をし、標的に再び挑む。

 

「レイ! 横から回り込め!」

 

「任せろ! ガイウスは背後から挑んでくれ!」

 

「ああ……!」

 

そうして出来上がったトライアングル包囲網により敵は逃げる事が実質不可能になり

 

「はぁ……!」

 

俺の新聞紙ブレードを片手上段で振りおろし───直撃した。

数秒、そのままの状態を維持し爆発が起きないことを確認してから三人で一斉に溜息を吐いた。

 

「し、しんどいぃ……!」

 

「一体を倒すのに必死だものな……」

 

「ああ……手強くはないのだが……一撃で倒さなければいけないという縛りが厳しいな」

 

ここにいるのは全員が魔獣退治の経験を持ち、尚且つ腕が確かなメンバーだ。

だが、達人でも流石に膝下どころか床とほぼ変わらない小ささの魔獣など普通相手しないし、何よりも攻撃と見做されたら自爆というがどこまでが攻撃の判断に入るのかが謎で恐怖だ。

そして何よりも

 

相手の動きが読めない……

 

相手が動物型の魔獣でも足の動き、視線、音で人のレベルまでとはいかないがそれでも読み取れるといえば読み取れる。

虫型でも同じといえば同じなのだがやはり小ささと視線をこっちに向けていないこと……というよりは意識をこちらに向けていないから読み取ることがほぼ不可能だからいきなりの動きについていけないのだ。

ある意味で実戦よりも実戦を味わっているような感覚がする。

とりあえず膝を着きたくなる衝動をこらえて気配察知を鋭敏化させる。

 

「……アリサの部屋にはもうこれ以上の気配はないな」

 

「ああ、俺もそう思う」

 

「同じくだ。変な風も感じない」

 

Gで変な風を感じるようになったらお仕舞な気がするが気にしない事にした。

 

「これでラウラ、エマ、フィー、アリサの部屋は終わり……」

 

「残りは……」

 

「空き部屋とサラ教官の部屋だな」

 

三人で一斉に嫌な顔になる。

何故なら教官の部屋はともかく空き部屋なんてこういう生物が明らかにいそうな気配がプンプンする場所なのだから。

だからと言って無視したらまた後日現れて結局二度手間とかになったら余計に面倒である。

 

「下手したら一部屋に数匹いるとかあるかもしれねえな……」

 

「……だがやるしかあるまい」

 

ガイウスとレイがやれやれという調子で立ち上がり廊下に出る。

俺も一緒に立ち上がり新たな新聞紙をブレードに仕立て上げまずは面倒そうな空き部屋に挑もうとする。

 

「……いるな」

 

「……ああいるな」

 

「……いてしまっているな」

 

こういう時に気配を読める自分達が思わず悲しいと思ってしまう。

いっそ、そう言うのに鈍感ならばある程度探してあ、いなかったよあはは、で何とかなるのになぁと思うがそれでは女子に対しては申し訳ないと思い気を引き締める。

 

「……頑張ろう。逆に言えばもう二部屋だ」

 

「おうよ。とっとと終わらせて休憩しようぜ」

 

「ああ。そうなったら俺がノルドから持ってきたノルドティーを御馳走しよう」

 

全員で気合を入れてガイウスが空き部屋の扉を開け───顔色を変えていきなり俺とレイを突き飛ばした。

いきなりのガイウスの反応に流石に間に合わず、一緒に左右に突き飛ばされる。

受け身はとったが直ぐに行動できずだから先に視線を戻すと。

 

そこには空き部屋の中から光が溢れる光景であった。

 

 

 

 

 

 

レイは突き飛ばされた後、その光景を恐らくリィンと一緒に見ていた。

ガイウスが開けたドアからまるで天使でも降りてきたかのような光あふれる光景。

それをガイウスがただ受けている。

その光景をまるで天使から宣託を受けている巡礼者のような光景だと詞的に思いながら───部屋の光が爆発に代わる光景も見てしまった。

 

「ガイウスーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

リィンと二人で一緒に悲鳴を上げる。

ガイウスは俺達を助けるのに精一杯で避ける事など全く出来ていなかった。

直撃だ。

特徴的な焼けた肌を更に焦がし、頭は最早見るのも苦しい……………………………………リーゼント…………に?

 

「ぶほっ!?」

 

思わずリィンが肺から息を大量に漏らしているが俺も我慢しなければかなりきつい。

それはもうさっきから腹に力を有り得ないくらいに。

 

「ガ、ガイウス! しっかりしろ! 傷はまだ……まだ……まだ浅いぞ! 少なくとも外傷的には!?」

 

精神的にもとはとてもじゃないが口から出せなかった自分が情けない。

 

「そ、そうだ! それにガイウス! お前には帰りを待っている家族がいるんだろう……!?」

 

リィン、それは明らかな死亡フラグと言いたかったが言ったら頑張って保っているシリアスな雰囲気になるから何とか黙った。

そしてガイウスが閉じていた瞳を開けた……がその瞳はまるでこちらを見ていない。

それどころか何を見ているのかさっぱりわからないその視線が超不気味さを醸し出しているが言える筈がない。

そして急にガイウスは笑った。

そう、まるで吹っ切れたかのように。

そして一言。

 

「俺は帰ろう……あのノルドの永遠の青空に……」

 

そうしてガイウスの瞳はゆっくり満足そうな表情になりながら閉じていった。

最早、それ以降は語るまでもない。

最早慟哭の叫びすら出せないこの喉を恨みながら必死に歯を食いしばった。

だから代わりにリィンが

 

「ガイウス? なぁ、ガイウス……ああ……あああああああああああああああああああ!!!」

 

リィンのガイウスを抱きかかえての(しかしガイウスの顔を見ていない)聞きながら俺は件の部屋の中身を見る。

どうして爆発したのか。

何もしていないのにという疑問はやはり予想通りであった。

 

「開けたドアに引っ掛かったのか……」

 

本当に不幸な事故であった。

 

 

 

 

 

 

遂に生き残ったメンバーは俺とレイ。

その二人だけになってしまった。

 

「……」

 

「……」

 

沈黙が重い。

ガイウスを部屋に送ってからもう何も会話していない。

失くしたものを思えばもっと心が苦しくなる。

その弱気が言葉を作ってしまった。

 

「なぁ、レイ───もういいんじゃないか?」

 

「───」

 

自分の口から遂にあきらめの言葉を発してしまった。

故に一度出した諦めを止める口も持たなかった。

 

「だってそうだろう? もう女子全員の部屋も掃除し、空き部屋さえも終えた。残りはサラ教官だけ。でも、流石に教官くらいはもう自分の手で掃除するだろう? ならさ───もういいんじゃないか?」

 

ああ、情けない。

自分の口から何て情けない言葉の羅列が流れているんだと心底思う。思うが───やはり事実だと思うだろ?

なぁ、レイ。そう思わないか?

そう、言外に告げそして本人はこちらに視線を向けずにそうか、といい

 

「じゃあ、それを寝てるメンバー全員の顔と頭やらを見ながら言えよ」

 

「よっし、じゃあ行こうか。残りラストだ」

 

不可能ごとと可能であることの取捨選択くらいは出来る脳は持っているつもりであった。

そしてラストダンジョンに挑む。

───ここに冷静な人間。

この場合は例えばフィーなどがいたのであったらこの二人を見てこう呟いていたのだろう。

 

───目が血走ってるね、と。

 

 

 

 

 

 

「───実はさっきからずっと疑問に思っていることがあったんだ」

 

「んだよ、言ってみろよ」

 

リィンがああ、と呟くのを尻目に女子達の部屋の三階につく。

 

「───どうしてこのゴキバンがこの三階にしかいないのかって」

 

だっておかしいだろう?

 

「部屋は確かに多少埃が積もっていたし、汚れていた。少なくともこうして大掃除するくらいには確かに汚れていたんだろう───でもそれならば男子の二階も同条件だ」

 

「それは俺も思った。だが、気配を探っても二階にはそれらしい気配が存在しなかった」

 

「ああ。俺も同じだった」

 

ならば何故こんな三階にだけ異常事態が発生しているのだろうかという疑問に辿り着く。

そしてそれに二つ仮説があるが。

一つは本当にただの偶然。

流石に魔獣? の行動予測とかは知らないからこの一つ目は結構一番有り得る説ではあったと思う。

そしてもう一つが

 

「つまり発生源が三階にいる場合だ」

 

そうして三階のサラ教官の部屋に辿り着いた。

暫く意識を集中するために目を閉じる。

 

「……いるな。それもでかいのが」

 

「ああ。決定だ。つまりここにゴキバンの親玉がいる」

 

さっきは人を探すつもりで気配を探ったからこいつに引っ掛からなかったが今は小さな虫を探すレベルでの集中力で探っているから見つかった。

というかこんな事になるとは思ってもいなかったからなぁ。

そしてレイと一度視線を合わせる。

お互い頷き一度拳を合わせる。

 

「───行こう、これが最後の戦いだ」

 

何かテンションがおかしい、と脳内のかなり深いところにある理性がそう告げるが体がまるで言うことを聞かないかのようにドアを開け、そして

 

「ってでけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

レイの叫びで冷静さという言葉が一瞬で弾き飛ばされた。

でかい。

そうその叫びには全く同意だ。

何せGくらいの大きさであろうと思っていた俺達にまさか小さなダンボールクラスのGが現れるなんて誰が予想できるというのだ。

予想できるかっ。

 

「これじゃあ一撃必殺なんて無理だ……!」

 

おお、何ということだ。

あれ程小さな敵に手古摺っていたのに大きくなった瞬間に一撃必殺が不可能になるというジレンマ。

今まであれ程頼り甲斐があって誇らしかった新聞紙ブレードが今ではまるで木の枝を持っているような気分である。

 

「というか! 一体どうしたらこんな風に大きくなってしかも今になって出るんだよ!」

 

「知るか! 多分、ベッドに潜んでいたんだろうよ! ギリギリベッドに潜めるサイズだしな……! で、どうなったかはわからんが……何かこのゴキバン。ちょっと赤くね?」

 

「は? いやまぁ、言われてみれば……」

 

確かにというレベルでちょっと赤い気がする。

Gの癖におかしいとは思うが、これでも一応魔獣だし更にはさっきまでのゴキバンは小さかったのもあってそんな細かい所まで見てはいないので大きくなったらこんな存在だったのかと思うくらいで

 

「───いや待て」

 

それだけではないと体が勝手に反応する。

そこに脳の記憶が勝手に当てはまる事例を思いつかせる。

 

そう、こういった体が赤くなる現象……火照る現象を……最近……どこかで……

 

そこまで考えてあんまり掃除されていない部屋の片隅を目が勝手に見る。

そこにはサラ教官のトレードマークの一つのお酒が入って───いるが空っぽなのがある。

 

「サラ教官ーーーー!」

 

つまり、そういうことか。

元凶も原因も全部あの酒豪の年上教官のせいであるという事になった。

 

「というか酒で大きくなって尚且つ繁殖する魔獣ってなんだよ……!」

 

「それは俺も聞きたい……!」

 

思わず殺意すら湧いてくるが現状の改善をすることができないことは明白だ。

これ程の絶望はユン老師との修練の時ですらなかったことだ。

どうするとリィンは頭の中でこの悩みが無限ループしかけたところを

 

「いや待て……逆に考えろ」

 

「逆……?」

 

逆ってどういう事だ、と本気でそう思い先を促させる。

 

「ああ───つまり物理が駄目ならアーツでぶっつぶすってことだ!」

 

「この狭い部屋でアーツなんて出したら周りが吹き飛ぶぞ!?」

 

「ククク……何を言うリィン少年。だから逆だろう……? 周りが吹き飛ぶんじゃなくてサラ教官の部屋だけが吹き飛ぶんだよ……!」

 

いかん、今物凄く魅力的な案に聞こえたがそれをしたら間違いなく後でサラ教官による何かが待っているからやはり却下だ。

 

「大体、お前! アーツ適正最低ランクだろ!?」

 

「貴様……! 人の弱みに漬け込みやがって……! お前もそんなに高いランクじゃなかっただろうが!」

 

「それでもお前よりは上だがな」

 

「どちくしょーーー!!」

 

だんだんと膝を着いて床を叩く馬鹿は無視する。

しかし、どうする?

アーツは却下だがそれでもある意味それ以外の手段を思いつかないのも事実なのだ。

ならやれることはただ一つだ。

 

「こうなったらレイ……俺達のもっとも攻撃力があるクラフトを奴に同時に叩き込むしかない!」

 

「! そうか!?」

 

一瞬で俺達はARCUSを取出し戦術リンクを繋げる。

一撃必殺が無理なら二撃必殺で一瞬で倒すしかないという事だ。

 

「炎よ……!」

 

新聞紙ブレードに敵を燃やし尽くす業火の焔が宿る。

八葉一刀流の技の一つ、業炎撃。

この狭い室内だから本気でやるわけにはいかないがそれでも攻撃力という意味ならば少なくとも初伝の俺の技では随一の戦技!

 

「おお……!」

 

逆にレイは炎ではなく雷。

火と風と時というある意味でアタッカーのオードソックスのオーブメントによる発生。

風ではなく雷が発生するのがレイらしいというべきか。

ただし得手の拳ではなく新聞紙ブレードだからやはり威力は落ちるのだろうけどこの場合は好都合だ。

目配せも呼吸を合わせることもいらない。

戦術リンクがそれら全てを合わせてくれる。

いける、と二人同時に思った。

これならばあの一体を同時による一撃で必殺できると。

じりっ、と前に出て一呼吸。

相手は───動かない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

好機と捉え、二人同時に振り下ろした。

勝った、と最高の達成感と満足を得ながらブレードの行先を見て───愕然とした。

そう、そこには

 

「もう一体……!?」

 

そんな馬鹿なぁ! と叫びたくなるが思わずああ成程と思ってしまった。

そりゃそうだ。

あんなに繁殖したのだから魔獣とはいえ

 

「お母様がいらしたか……」

 

隣のレイが結論を出してそして恐らく男子全員が味わった光が俺達を包む結果になった。

 

 

 

 

 

 

 

「今日はすいません……色々手伝ってもらって……」

 

「ははは、いいよぅ。後輩が色々と迷ったり悩んでたら手伝うのが先輩の仕事だから」

 

「あぁ……流石、私のトワ……今日こそ私の部屋で私の抱き枕になってくれるかな?」

 

「……犯罪の臭いしかしないけどね」

 

「フィ、フィーちゃんっ。アンゼリカ先輩も冗談で言って……言ってるんだからそんな事を言っちゃ駄目よ?」

 

「エマ。それは口籠らなければ信じられる類の言葉だと私は思うぞ?」

 

そうして私達は買い物から第三学生寮の一階に帰ってきた。

途中で入学式に出会ったトワ……会長という人とまさか懐かしいアンゼリカ先輩に会えるとは思ってもいなかった。

買い物をしている間、どれがいいとかどれが必要かを迷っている時に偶然二人が通りかかって私達にアドバイスをしてくれたのだ。

どちらもいい先輩で幸先がいいわね、とアリサは素直にそう思う。

 

「で、男子諸君はまだゴキ……」

 

「あわわ! アンちゃん! そ、それの名を言うのは止めて! 本当に!」

 

「おっと、それは失礼。じゃあ言い直してまだG退治をしている最中なのかな?」

 

「え、ええ……多分、もうそろそろ終わっている頃合いだと思うのですが……」

 

買い物にちょっと時間がかかったからもうそろそろ終わっていてもおかしくはない。

あの時はちょっとテンションがおかしかったから仕方がないとしてやはり流石に礼とかはしなくてはいけないだろう、と思い各自でお菓子やら何やらを買ってきたのだが。

 

「まだ終わってないのかしら……」

 

「それだと流石に三階に行き辛いですね……」

 

うーーーん、と全員で考え込んだ時に───いきなりの爆音が上から聞こえた。

 

「敵襲か!?」

 

「……もしかして私の部屋を掃除しているときに火薬にでも引火したのかな?」

 

「犯人はまさかの身内!?」

 

「いや待て。フィー君を犯人にして牢獄に入れるなど女神が許してもこのアンゼリカが許せないね。男子には悪いがここは事故に……」

 

「アンちゃん! 言っていいことと悪いことがあるよ!」

 

「そ、それよりも急いで男子の皆さんの所に……!」

 

エマの鶴の一声に賛成して全員で急いで階段を上る。

 

「……いやもしかしたら男子の新たな掃除方法なのではないのか?」

 

「だとしてもどんな過激な掃除メニューを生み出しているのよ!? 部屋の中までおじゃんよ!?」

 

「……まぁある意味さっぱりはするんじゃないかな」

 

「フィ、フィーちゃん。会長としてその掃除方法は流石にめっだからね?」

 

「……ふぅ。和むな」

 

「な、和んでいる場合じゃないんですよ、アンゼリカ先輩」

 

そして件の三階に辿り着き恐る恐る周りを見回すがあのおぞましい黒いのはいない事に安堵をし、爆発した部屋を探すが一目瞭然であった。

 

「サラ教官の部屋……?」

 

「別にそこまで掃除を頼んだ覚えはないのだが……リィン達はやると決めたらとことんやる性質だったようだ。うむ」

 

天然は相手にし辛いと結論付けて部屋に近づく。

 

「……ね、ねぇフィー? 一応聞きたいんだけど中には誰か……もしくは何かいる?」

 

「ん。いるのはレイとリィンだけみたい。多分、気絶しているみたいだけど」

 

答えられるフィーも凄いけど問題は二人が気絶しているということだ。

 

あの二人が……!?

 

二人を語れるほど何かを知っているというわけじゃないんだけど、それでも特別オリエンテーリングの時は心強い能力を持っていることくらいは知っている。

強さにしても存在感にしても性格にしても。

その二人が揃って気絶しているなんてただ事ではないと思い、武器を取りに行った方が良いかと思ったが時間がない。

それに気づいたのかラウラとアンゼリカさんが皆の前より立ってくれた。

 

「先陣は我らが務めよう。一応、拙い腕ではあるが剣が無い場合の護身術程度には修めている」

 

「同じく。これでも多少拳には自信がある方でね。その後にフィー君、アリサ君、エマ君で最後にトワと行こう。依存は?」

 

ない、と全員で頷き部屋に徐々に近づく。

無事でいてよね、と内心で思いながら───ラウラが一瞬で蹴破りアンゼリカ先輩が突撃し

 

「───ぶっ。あ、あは、あははははははははははは!」

 

何故かいきなり大笑いしてへっ? と思うが全員動きが止まらずにそのまま部屋に入ってしまい

 

───中にあるのはギャグみたいに真っ黒焦げになったリィンとレイが何故か二人仲良く窓に突っ込んでぶら下っている愉快な状況であった。しかも頭がすごいアフロで。

 

思わず余り表情を変えないフィーですら思わず顔を歪めて全員で笑い、暫く腹痛に悩まされる状況になったのであった。

勿論、諸々全てを片付け帰ってきたサラ教官に対して部屋を掃除することとお酒の管理をちゃんとすることと一週間飲酒禁止の罰を全員で強制的に出し、ぐれてやるぅ、と逆切れされたのである。

 

 

ちなみに後にフィーが男子連中に語ったことがある。

このG。

何でも爆発した後に空気中に散布される粉みたいなものがあり、それを微量でも吸うと軽い混乱の状態異常になることがある、と。

その言葉を聞いて全員で思わず納得して溜息を吐く男子連中がいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は何とか早めに投稿できました……
いやぁ……何を書いているんでしょう自分と思わず言いたくなるのはいつもどおりなのでさておき。
今回で掃除を終えて次回のオリジナルでようやくストーリーとなります。
次回は簡単に最初の武術鍛錬の授業でも……

おかしい……結局五千超えちゃったよ文字数……

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