絆の軌跡   作:悪役

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(こそこそ)


魔女と怪物

空の青さに対して、わざとらしく目を閉じながら、レイはさいっこうの昼寝日和のタイミングに心惹かれ、そのまま寝る事を決行する事にした。

今日はもう7月18日の夏服に変わっての初の自由行動日。

段々と外にいるだけで汗が書くような季節になってきたが、この程度の暑さで死ぬーーとか言うような軟さを持っていたら、遊撃士のサポートもそうだが、士官学院生にもなれない。

 

 

 

 

 

故にレイは躊躇う事無く、昼寝をすることにした。

 

 

 

 

場所はトリスタの駅前広場にあるベンチ。

ちょっと一人で独占するのもなんだが、偶にはベッドとか自然のではなく、こういったベンチで昼寝をするのも乙なものなのだから許して欲しいものだ。

マキアスとかユーシスとかそこら辺の堅物に見つかれば、面倒くさい説教が待っていそうだから、わざわざⅦ組のメンバーから時間をずらして、開けっ広げに寝ると決めたのだから、この至福は邪魔させない。

時々、そこらの悪ガキが寝ているのを邪魔しようとしてくるが、そういうのは目を瞑りながら、悪ガキの一人の襟首を掴んで、浮かばせ、揺らしたら大抵、どっか行くから問題無し。

どうでもいいけど、似たような事ならフィーもしているのに、フィーには何故そういったのが寄り付かない? 女の子だからか? 最近の餓鬼はませているぜ……………………

 

 

 

 

 

まーー、フィーはラウラのせいでテンション低いからなぁーー

 

 

 

 

まぁ、見た目通りラウラは実に小綺麗な人間である。

いや、そこら辺は、Ⅶ組全員に言える事だから、他のメンバーはフィーが猟兵と知っても、態度もキャラも崩す事は無い程度には清濁を併せ持っていた。

……………………あーーいや、単純にフィーは無害だから、過去がどうであっても、フィーはフィーだ、みたいなリィン理論を装備している感があるが。

一般人の反応としてはまぁ、ラウラの方が正しいだろうから、別にラウラの反応が心が狭いっていうわけでもないが。

他のメンバーはそこら辺でヤキモキしているみたいだが、レイとしては手助けはしてもいいし、しなくてもいいという感じである。

はっきり言っていいのなら、正直どうでもいい、と言ってもいい。

別にラウラとフィーが唐突に親友になるような事があろうが、逆に、最早殺し合うしかない、とかいう事態になっても構わない。

 

 

 

 

 

レイからしたら等価値である。

 

 

 

 

暖かな光景も、暗く、冷たい光景も、レイにとっては全く同じだ。

何故ならレイには何となくというレベルだが、分かる事があるのだ。

 

 

 

 

 

 

そろそろ、今ある日常は壊れるという確信に近い予感を感じるから

 

 

 

 

妄想と取られても仕方がないが、実際、この手の予感は今の所、全部必中しているのだから、本当に仕方がないではないか、と苦笑するしかない。

レイからしたら全部一緒なのだ。

平和も、戦争も、憎しみも、優しさも、恐怖も、愛でさえ最後には壊れるのだから。

どうして、わざわざ壊れると分かっている物に愛着を持たないといけない。

 

 

 

 

 

人も物も、出来事も、レイからしたらどうせ最後は(・・・・・・)と思う空白でしかないものだ。

 

 

 

 

だから、レイはこうして笑って、昼寝をするのだ。

最後には壊れるにしても、どうせなら楽して楽しんでいた方が気が楽なのだから。

そんな風に思って目を瞑っていると

 

 

 

 

 

 

『────────なら、どうしてそんな風に人に溶け込もうとするのかしら?』

 

 

 

 

するりと脳に入り込む言葉があった。

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

試しに片目を開けてみると、当然、場所はトリスタの駅前広場である────────人の姿所か、人の気配が無いのを自分が知っているトリスタの駅前広場と言っていいのならばだが。

さて、酒をしこたま飲んだ────────なんて格好いい事はしていないし、狸か狐辺りに化かされたか、とかと思うにも、どちらの獣とも縁がない。

完全な異常事態に直面し、レイはどうした物かと考え────────どうも出来ないかと考え直して、そのまま再び両目を瞑って、昼寝を敢行する事にした。

 

 

 

 

 

『────────ふふっ』

 

 

 

その素振りに、声の主……………………恐らく、女性と思わしき、高い声は何かツボに嵌ったのか。

小さく笑うのをレイは聞くが、残念ながらこの空間から人の気配を感じない以上、面と向かって喋る、という事は出来ないのだからしょうがない。

人間、諦めが肝心なのである。

 

 

 

 

『捻くれているのに、可愛らしい子ね。"彼"とも似た反応だけど……………でも、私の質問には答えてくれないのかしら?』

 

「なーーんで、俺がそんなリィンみたいな奴が聞かれそうな痛々しい質問に答えないといけないんだよ。そーーいうのは捻くれていない、可愛らしい子にでも聞けよ」

 

 

 

しっしっ、と手を振るとまた何かツボに嵌ったのか、今度はさっきよるも分かりやすく、楽しそうに笑われるが、知った事ではない。

大体、何が人に溶け込もうとしているだ。

んなの────────生きるのに必要だから(・・・・・・・・・・)に決まっているだろうが。

この手の超常現象を操る類は大抵、こちらの事情を知っていてわざわざ聞いてくるからうざいとしか言えない。

知っている事を一々、ねちねちと人に聞いて、優越感に浸るのだから厭らしくて仕方がない。

 

 

 

「昼寝してるんだからいーからどっか行ってくれないか? それとも殺し合いとかそーいう物騒なのがお望みなのかよ。死人が出るぜ? ────────俺が」

 

『あらあら。そこは男の子として格好つけて、最後には俺が勝つ、とか言わないの?』

 

「プライドなんて生まれた時からねーーよ」

 

『あれだけ生に執着しているのに? それともあれは演技という名の嘘、かしら』

 

「生きようとするのに、嘘も偽物もあるもんか」

 

 

全くもってその通りね、と苦笑する声を聴きながら、俺の昼寝は出来そうにないという事を悟る。

せめてもの抵抗として目を閉じているが、眠れない以上、意味ねえなぁとは思うが、そういうものである。

やれやれ、と本気で溜息を吐いていると

 

 

 

 

 

『────────でも、貴方ほどの人なら知っているでしょう? "人に溶け込まずに生きていく方法" いえ、仮に知らないとしても……………………何なら私が助けてあげてもいいわよ?』

 

 

 

 

ほら、来た。

この類の人間が、超越している癖に他人に対する興味を失わないのだ。

もしくは、超越しているからこそ他人に興味を持っているのかもしれないが、どっちにしろ俺からしたら傍迷惑の一言である。

遠慮なく、もう一回手を振って、断る、と告げる。

それで会話が終わってくれたらいいのに、女は未練がましく言葉を告げる。

 

 

 

 

『何故? 貴方にとって人の世は興味がない、直ぐに壊れてしまうような儚いモノなのでしょう? 執着する事も無ければ、愛着も持たない。夢のような物。なら、いっそ自分の手で壊そうとするか────────完全に無視できる場所が欲しいと思わない?』

 

 

はっ、とレイは初めてこの女に対して嘲笑する。

何て下手な勧誘文句だ。

それで今まで勧誘できていたなら、程度が知れるというもの。

壊れるから自分の手で壊す? 完全に無視する? ────────何て夢見がちな言葉。

まるで、人間という物を理解していない。

人間という生き物は異常、異端、異物という存在に対する狩人だ。

それがほんの些細な事柄であったとしても、違いがあれば、存在する事すら許さない病的な潔癖症を群体として作られた生きもの。

獣や、魔獣ですら、そこまではするまい。

異なる存在に対する排他性ならば、地上に置ける最高の執行者だ。

善も悪も、光も闇も、愛も憎悪も、金も兵器も、権力も武力も────────涙すら利用するのが人間という存在だ。

そんな人間を壊そうとする? 完全に無視できる場所?

 

 

 

 

 

出来る筈も無ければある筈もない。

 

 

 

 

もしも、本当にあるとすれば、それは自分の首を絞めた先に辿り着く場所だろう。

正しく、逝きつく先という笑える場所だが。

そんな旨を伝えると、女は成程ね、と頷きながら

 

 

 

『それは、遠回しに────────私達は負ける未来しかないって言っているのかしら?』

 

「知るか。俺は俺の主観を語っただけで、あんたらがどうなるかなんて読めるわけないだろ。お前らがどんなモノなのかは知らないけど、頑張れば俺の言葉が負け犬の遠吠えになったりするんじゃないか」

 

 

どっちであっても、知らないが。

勝ち犬になろうが、負け犬になろうが、それこそどっちでもいい下らない事だ。

俺の言葉を負け犬の遠吠えと捉えるなら捉えればいいし、餓鬼の戯言と捉えるのも好きにすればいい。

何故なら、どっちも正しいし、捉え方だ。

 

 

 

 

 

 

 

間違いなく、自分の言葉はクソ餓鬼の言葉であり────────どうしようもない程に、人生の敗北者の言葉である。

 

 

 

 

 

だから、負け犬らしく欠伸をして我関せずの態度を貫くだけである、

そんな自分の態度に、そう、とようやく熱が消えたような言葉になってくれたので、諦めたか、と思って、気を良くしていると

 

 

 

 

『────────もう、人間は■くないの?』

 

「■い」

 

 

 

ノイズが混じる。

右手が熱を持ち、空間が軋むのを感じ、この空間の作成者が一瞬、息を呑むのを感じ、つい、力が込められている右手を開け、力を霧散させる。

そのまま、もう一度空間に向けて手を振りながら

 

 

 

「とっとと去れよ人間。怪物に話しかけ続けるのは賢いとは言えないって分かっただろ?」

 

『…………人間、と言うのね。私が魔女で、空間すら簡単に支配する事も理解して、蛇の一員である事も知った上で』

 

「はっ────────可愛い勘違いだ。たかだか多少、人間を超越した程度で、怪物になってしまったって思ってるのかよ。お生憎様。あんたが、そうなるにはまだまだ不幸(しれん)が足りてないわこの幸せ者」

 

 

そう言って、今度こそレイは本気で目を瞑る。

もう語る言葉も無ければ、聞く事もない。

相手が魔女だろうが、蛇の一員だろうが、知った事ではない。

火の粉となって降りかかるなら拳を振るうが、勧誘される程度ならばどうでもいい。

だから、レイにとって魔女の勧誘もまた、何時か壊れる儚い戯言であり

 

 

 

 

 

 

 

『────────そう。貴方は、一人である事を選び続けるのね』

 

 

 

 

 

────────至極、大きなお世話というものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────んあ?」

 

 

ふと、レイが目を開けたら、そこには夕焼けに染まりつつある空があった。

何時の間にか眠っていた事もそうだが、そうなるとさっきの変な女も空間も夢であった、という事になるのだろうかと思うが………………それこそ夢見がちな現実逃避かと思うが………………何やら甘い香りがするのも事実だ。

何らかの花の香…………………香水かとは思うのだが、そういう化粧品に関しては、流石に深い知識も無ければ、花との縁も無い人生+NO興味である。

 

 

 

 

「ま、いっか」

 

 

 

現実であろうが、夢であったとしても、どっちでも同じだ。

どうせどっちであったとしても、レイがする事は見なかった事、無かった事にするだけなのだから。

無駄に騒ぐのも疲れるだけである、と思って、もう一回、昼寝でもしようかと思っているとARCUSからの連絡音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

なーーんで、俺の昼寝を妨げるイベントが連続するのだろうか、と思いながら、ARCUSを引き抜く。

これがリィンからならば遠慮なく即切ってやると思う。

どうせなら、誰から連絡されているのか、名前が表示されるシステムでも無いのか、と思いつつ、取ってみる。

 

 

 

 

「はい、もしもしーー」

 

『─────レイ! 今、どこ!?』

 

 

 

いきなりの問い+相手がアリサである事に一瞬、げんなりしかけたが、口調から察する限り、上段系の叫び声ではない。

一瞬、そういやこの時間帯まで寝ていたって事は旧校舎に付き合えなかったって事で、つまり、サボりに対する説教か、とも思ったが、まぁ、そうであったとしても躱す所存なので、いっかと思い、答えを返す。

 

 

 

「トリスタの駅前広場にあるベンチだが? 今日は俺の飯当番じゃない日だろ? 何かあるのか?」

 

『────────ナイスタイミングよレイ! えーーと、分かりやすく言えばリィンの妹さんが学校に来ていて、ちょっとした事情で、今、迷子になっているの』

 

「ほう。あの偏屈野郎の妹……………………いや、妹と兄を一緒にしてはいけないな。で、何だ? もしかしてあの鈍感馬鹿阿呆間抜けが、妹の家族としての情を無視する発言して傷付けて、泣かせてしまって、そのままどっかに行ってしまった、とかいうオチか?」

 

『…………もしかして、貴方、実は今まで私達をストーカーしていたりする?』

 

 

ド失礼な。

かなり適当に言っただけではあるが────────まぁ、リィンがやりそうな事の最初の一つを言っただけだから、マジでただの偶然なのだが、本当にあの馬鹿は俺を毎回毎回苛立たせる天才である。

まぁ、それは今は置いといて、そうなるとその妹ちゃんは学院か、もしくは街の中をさ迷っているかもしれないから、保護しないといけない、という事なのだろう。

ナイスタイミングという事は、恐らく、トリスタの街の中にいるのは俺だけで、俺が外に居れば、もしかしたらすれ違う可能性が高いから、という事だろう。

 

 

 

「探しゃいいんだろ? 何か特徴もそうだが、俺は一通り、街の中を探した方がいいのか?」

 

『ううん。妹さんと喧嘩したのはついさっきだから、多分、まだ学院内にはいると思うの。今、皆も探し回っているから、貴方はそのまま真っすぐ学院に向かって、それらしい人がいないかだけ見てくれない? あ、特徴は黒い長髪の利発そうな子で、ほら。帝都の聖アストライア女学院の生徒だから、そこの制服も着ているわ』

 

「おいおい。お嬢様か……………………お嬢様だったな。同じ、お嬢様としてアリサも着たらどうだ? リィン汚染を受けているアリサが入ったら、悪目立ちしそうだが」

 

『後で殴るわ。人中を』

 

「酷い殺し文句を聞いた……………」

 

 

やれやれ、と思いながら、通話を切り、立ち上がる。

ここから、士官学院までは全力を出せば10分もかからないし、上手くいけば、校内を探し回っている仲間メンバーと合流して探す事も出来るだろう。

そうして、伸びをしていると、何かやけに右手が鼓動を打っているような感覚がして、んーーー、と唸りながら

 

 

 

 

 

「もしかして、今日あたり、日常が壊れるかなぁ」

 

 

 

 

今から天気が崩れるかなぁ、と呟くように、レイは何となくで感じる、日常の終焉に笑みを浮かべた。

その終焉が悲劇に終わろうが、喜劇に終わろうが、自分にとっては笑みで迎える事だ。

 

 

 

 

 

 

何もかもに諦めてきたのだから、お陰で笑みを浮かべる事だけは得意になった。

 

 

 

 

だから、自分は鼻歌混じりに、さて、崩壊するならⅦ組のメンバーはどういう風に対応してくるだろうか、と思った。

怪物だと恐怖と嫌悪の瞳で、俺を気味悪がるだろうか?

それとも、例え、そうであったとしても、お前は俺達の仲間だーーみたいな感じで、受け入れるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「ま、どっちであっても、結末は同じなんだけどね」

 

 

 

 

何せ、このレイ・アーセルという名の怪物は──────生まれてから、一度でも、めでたしめでたしで終わるような結末を迎えた事が無い。

故に、レイは笑う。

どうせ最後には(・・・・・・・)、と笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

走り去っていく赤い制服を着た少年の後ろ姿を、ある女性は見届けた。

やれやれ、と笑いながら、走っていく少年は、まるで仕方なさそうに誰かを助けに行く好青年のようにしか見えないだろう、と女性は思う。

しかし、今、少しとはいえ、彼の心と接した自分には、最早、痛々しい傷だらけの少年にしか見えなくなっていた。

 

 

 

 

「……………同情する資格はないとはいえ、気分が良くはならないわね。全く……………"教授"の悪趣味も困った物ね………………まぁ、そのお陰でレオンハルトみたいな副産物を見つけれたのだけど……………………」

 

 

 

本来、ミスティという女性はそこまで他人に同情する性格ではない。

必要とあらば排除も考えるし、"壊し"もする。

自分が善性だとは流石に口が裂けても言うつもりはない。

相手が、それこそ自分の"妹"と同世代とはいえ、甘やかそうという気は微塵も無いのだ。

だけど────────偽善である事は承知の上で、アレは流石に酷い、としか思えなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

笑う事しか出来ない子供なんて、最早泣き続けているの同義だ

 

 

 

 

「可哀想な子……………」

 

 

 

どこぞの嘘吐き男ですら、ここまで無残では無い。

 

 

 

 

 

 

 

復讐を諦めた子供が、あんなに滑らかに憎悪を吐き出す姿を、女は見た事が無い。

 

 

 

 

ならば、復讐をすればいい、とも女は言えなかった。

何故なら、彼がもしも復讐をすると言うならば、それは世界(・・)を相手にするのとほぼ同義だから。

比喩でもなく、人とか集団とか、国家ですらない枠組み。

この世全てを憎む、という人間には…………否、怪物ですら成し得ない事を、しなければいけないのだ。

だから、彼は出来る筈がない、と諦め………………自分の命を諦めるように生かす事だけを選んだ。

その事で、ふと、"彼"と少年を対比する。

 

 

 

 

 

"彼"の人生は本人も認める所で、どこにでもある在り来たりな人生で、そこに"何故"という納得がいかない餓鬼の我儘を振りかざしているだけだ、と笑いながら─────瞳の奥に意思の炎を宿す少年であった。

 

 

 

少年の人生は誰もが痛々しいと感想を抱く人生で…………………あらゆる憎悪を前にしても、あれ程の憎しみを知らぬと言える少年なのに………………彼は憎悪を抱いたまま、絶望と失望の道を選び、空白の笑みを浮かべる少年であった。

 

 

 

 

一体、どちらが正しいのだろうか。

いや────────一体、どちらが幸せなのだろうか。

 

 

 

 

 

「…………………魔女が問う言葉では無いわね」

 

 

 

 

去っていく少年の背から視線を切り、女は今の自分の仕事場所に向かう。

魔女から追放された魔女が、少年に対して出来る事も、する事も、少なくとも今の時点ではない。

祈る事なんて似合わない所か、時間の無駄だし、敵になるかもしれない相手にそこまでする気は無い。

だから、彼の幸福を祈るつもりは無いが────────せめて、加害者側の一員として、不運が少しでも少ない人生を歩めるくらいを願うのは大人としてはセーフだろうかと思い

 

 

 

 

 

 

「…………馬鹿ね、そんな事、有り得ないのにね」

 

 

 

 

不運とは切って離せない関係だから、あの子は苦しむ事すら放棄したのに、と女は、魔女はラベンダーの香りを纏いながら、去っていった。

 

 

 

 

 

 

 




(こそこそ。あ、これ、ストックがあったとかではなく、結構リアルに、この前投稿して直ぐに書いて、何か区切りが良かったので投稿しました。


ともあれ、今回は結構、レイの人生に関わる大きなヒントが洩れましたが、そこは楽しんでもらえば幸いです! あ、ちなみに、この4章はほぼレイの話です。いや、まぁ、今までもほぼそうですが、今回はレイというキャラクターが主題になるという感じです。


では、また書けたら次回をお楽しみを────────次回がレイというキャラクターがここまで絶望して歪んだ原因が出るお話になるので。では、こそこそ)

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